真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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最近、蝶々は…
友松直之
/
2014年05月05日
「
最近、蝶々は…
」(2014/製作・配給:株式会社コスタエスト/監督・脚本:友松直之/原作:内田春菊『最近、蝶々は…』《新潮文庫刊》/エグゼクティブ・プロデューサー:紫垣雅一/プロデューサー:桐島正樹・石川二郎/キャステイング・コーディネーター:五十嵐学/音楽:シトー/撮影・照明:田宮健彦/録音:井手一郎/助監督:大西裕/ヘア・メイク:松平薫/衣装:吉田実穂/特殊造型・特殊メイク:石野大雅/特殊造型:ゼライ直井/特殊効果:近藤佳徳/スチール:高橋大樹/ポスター撮影:佐藤学/監督助手:高野平・島崎真人/撮影・照明助手:俵謙太・川口諒太郎/衣装助手:河口節子・松浦美幸/特殊効果助手:田村卓海/特殊メイク助手:佐野千尋/制作応援:奥渉/編集:西村絵美/CG合成:新里猛/ロケ協力:田中尚仁・ファンテッド・桃源郷公園・須田造園・一宮温泉病院/日本兵衣装提供:カミカゼ/制作協力:有限会社アウトサイド/出演:後藤理沙・徳元裕矢・黒木歩・川又シュウキ・希咲あや・金子弘幸・朝霧涼・あん・稲葉凌一・倖田李梨・文月・世川翔子・若林美保・衣緒菜・ホリケン。・高杉心悟・伊藤正博・青山真希・冨田じゅん・カミカゼ・田村卓海・鈴美はな・石黒繭子・百地優子・不貞妻マリコ・内田春菊)。
開巻は
鍵穴シリーズ
とは流石に異なり戦闘シーンを新撮した、まさかの1945年(昭和20年)南方戦線。連合国に負ける前に何でだか日本軍は同士討ち、高杉心悟を残しほぼ全滅する。一人彷徨ふ高杉心悟は亡骸から血を吸ふ妖しい蝶の群生と、群れの中心に佇む判り易くいふとセイレーン演出の後藤理沙を目撃。慄く高杉心悟と、髪をざんばらに微笑む後藤理沙とを押さへてタイトル・イン。原作を素通りしておいて何だが、そんなところから話が始まるとは思はなんだ。
六時半のスマホの目覚まし、独身独居のキャリアOL・篠塚留可(後藤)の朝。起き出す後藤理沙のお芝居、早くも透けずに見えた底に潔く諦める。ユニットバスの洋式便座に腰かけた留可は驚く、膣内に、正しく身に覚えのない男の精液が残つてゐたのだ。基本的に女の考へてゐることは理解出来ない以前にする努力も半ば放棄してゐるが、それは驚くよな。出勤する留可と擦れ違ふ平和タクシーは客を乗せてゐる訳ではなく、女タクシードライバーの高原(トメに座る春菊先生)が娘の駒子(あん)を学校に送るところだつた。留可の勤め先、の休憩室。部課長の野本圭子(黒木歩/ex.宮村恋)以下、総勢六人の女が『女性自分』誌の「毎晩幽霊に犯される私」なる与太記事を肴に盛り上がる。ここで倖田李梨と文月(ex.かなと沙奈)が留可の同僚、もう二人には力尽きる。一人深刻な留可の様子を、圭子は気に留める。一方、土間こと通称ではなく自称ドマックス(金子)の店。ドレッドの金子弘幸が軽薄に、もとい軽快に飛ばしてて楽しい。「毎晩幽霊に犯される私」を書いた、東都出版『女性自分』編集部の萩本征幸(徳元)がドマックスに、昨今下世話な界隈を騒がせる“蝶女”の都市伝説について取材する。「私の二匹の蝶、見たい?」を決め台詞に男を漁る女にドマックスもお世話になりつつ、蝶女の正体を探つた常連客は、噂通り確かにそれ以来店に現れなくなつてゐた。引き続き目覚める毎に大量のフローバックやキスマークに悩まされる留可は、萩本に接触。ナルコレプシー気味に寝落ちた留可は蝶女の人格を発現、春菊先生のタクシーでラブホに連れ込んだ萩本を大胆に捕食するも、事後は一転我に帰り助けを求める。
辿り着ける限りの配役―ドマックスの店のハクい女給、これ誰だ?―残り川又シュウキは、留可らとは別の部署の間宮和也。何故かあんの向かうを張るロリッロリした造形の希咲あやは、萩本が踏んでしまつた東都出版の契約社員・越川樹里。冨田じゅんが席次推定で『女性自分』編集長。朝霧涼は萩本が留可と蝶女に関して助言を求める大学時代同級生の精神科医で、若林美保は朝霧先生とコンビを組むセラピスト・山田。伊藤正博は入院する現在ver.の残存兵、衣緒菜(ex.吉瀬リナ)は萩本の眼前、七十年ぶりに“蝶”を目撃し逆上した伊藤正博に松葉杖で突き殺される看護婦。稲葉凌一(ex.隆西凌)は春菊先生の旦那。最強のex.勢青山真希(
ex.逢崎みゆ
)は、夫婦の会話もお留守に稲葉凌一が見入るワイドショーに見切れるリポーター役のハーセルフ。ホリケン。(ex.句点レス)は朝霧先生と萩本に接見する、多分弁護士?低予算映画界的にはオッソロシク豪華な布陣である。
シレッと筆を滑らせるとあの嘉門洋子がカモンし倒す衝撃作「
出逢いが足りない私たち
」(2013)の要は第二弾企画、一般映画の感想をしかも公開前に何でまたドロップアウトが負け戦に関らず吹いてゐやがるのかといふのも、友松直之の掌の上でまんまと踊らされる同一の事情に基く。とはいへ今回の俺様は一味違ふ、遂に外付けDVDドライブを導入!わはは、これでもうネカフェに用はない。どうでもいい閑話は休題、裸の威力込みで何もかもが、嘉門洋子と比べると後藤理沙がスケール・ダウンしてゐる感は否み難い。その分友松直之が前に出たのかどうかは知らないが、世流も織り込み比較的順当あるいは穏当なサイコサスペンスであつたデアタリに対して、今作はスラッシュ方面にフル加速。伊藤正博が衣緒菜を出し抜けにグッチャグチャにするや、留可だか蝶女は自宅を本当に血に染める大暴れ、締めるは捥ぐは抉るは刺すはともうやりたい放題。絞殺された―かに思はせた―圭子を見て当然萎えたチンコを、蝶女に捥ぎ取られた上てめえでしやぶりやがれと口に突つ込まれる間宮の姿には、男ならば誰しもキンタマが震へ上がらうといふものだ。反面、最終的には正体の不明な邪欲が不滅に連鎖する、案外オーソドックスなラストはおとなし目にさへ映る。箍をトッ外した人体損壊描写に萌える、今時の琴線を個人的には持ち合はせないゆゑ、正直あまり得意な部類の一作ではない。オッパイは許さないのに残虐には手放しで甘い、規制基準がちぐはぐなつべに上げられた予告を見て二の足を踏むヘタレに、友松直之はオッパイもたつぷり登場すると太鼓判を押して下さつたものの、蓋を開けてみると満足にも何も濡れ場をこなすのは訴求力が高いのか低いのかよく判らない主演女優のみで、これだけの面子を揃へてゐながら希咲あややあんさへ脱ぎはせず、グロ映画としては兎も角エロ映画的には全く物足りない。阿鼻叫喚以上に最も肝を冷やしたのは、そんな中鏡の前で春菊大先生が裸身を御披露しかけた瞬間といふのは内緒だ。但し特筆すべきはこれだけ、後藤理沙サイドの他愛ない方便を主に徹頭徹尾商業主義全速前進な企画にあつて、端々に鏤められた平素の友松節含めここまで我を通してみせる友松直之の画期的な制作モデル。実は一番重い一撃のエモーションを誇る森山茂雄が沈黙し、“エクセスの黒い彗星”松岡邦彦が完全に失速した今、多フィールドに跨る縦横無尽の快進撃で問答無用の友松直之。テクニカルなものロジカルなものをこつこつこつこつ積み重ねた末に、真逆のアプローチで終に天才と同じ高みに到達する。とり・みきの定義による“ポップ”に最も近い男・城定秀夫。旧態依然の牙城を守り続ける、アイドル映画のみならず娯楽映画の静かなる鬼、我らがナベこと渡邊元嗣。目下量産型裸映画の三強は、この三人に絞られるといふ意を改めて強くした次第。巷に溢れる映画学校は単に本業にあぶれた無職よりも、ツイッターに耽る時間を削らせた友松直之に教鞭を執らせた方が余程学生の為になるのではなからうか。女学生を片端から喰つてしまふから駄目?それはさうかもな(´・ω・`)
コピー厳禁のサンプルDVDと同封された、フライヤーが非常に微笑ましい。十日の土曜日から二週間ヒューマントラストシネマ渋谷にて、“悶々とレイトロードショー”といふのが振るつてゐるし、都合三度設けられた舞台挨拶とスペシャルトークショー。初日の後藤理沙と春菊先生と友松直之による舞台挨拶が行はれる五月十日を、“初日はゴトウの日”としてゐるのがさりげなく爆発的に可笑しい、コスタエストがノリノリである。
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