真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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いんらん家族 姉さんの下着
深町章
/
2012年03月09日
「
いんらん家族 姉さんの下着
」(1991/製作:伊能竜/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/撮影:下元哲/照明:田端一/編集:酒井正次/助監督:榎本祥太/監督助手:渋谷一平/撮影助手:山川明人/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:浅野桃里・橋本杏子・水鳥川彩・南城千秋・川崎季如・芳田正浩)。製作の伊能竜は向井寛の、脚本の周知安は片岡修二の変名。
画面右半分は夜干しされた姉さんの下着、左上方を左から右に通過する電車。更にその下、左半分大半にタイトルが入る、スマートな構図のタイトル・イン開巻。
夜の園山家、高校三年生の渉(南城)が、受験勉強に悪戦苦闘する。とはいへ、最盛期に青い性欲になかなかどころか捗らず、ついつい荒木経惟の特集を組んだ『芸術新潮』の同年五月号―十七八にしては、随分おかずが渋い―を引張り出しては、自家発電に勤しむ。そこに折悪しく、コンピューター会社に勤務する姉の明子(浅野)がお夜食のバナナを持つて来てしまひ、渉はポップにバツの悪い思ひをする。因みに、何気に重要な外堀として園山家の母親は、渉が中学生の時に死去してゐる。翌朝、高卒ゆゑ中小企業の係長止まりの園山(川崎)は、前夜の粗相を内心引き摺る渉に、無神経にハッパをかける。ところで、どう読ませるのか判らない川崎季如とは、川崎浩幸時代から更に遡る、現在かわさきひろゆき。この人は、吃驚するくらゐ今と変らない、あとほかには山竜も。朝食もそこそこに飛び出した渉と合流する水鳥川彩は、優等生の同級生・江藤倫子。兎にも角にも水鳥川彩には、伝説的にセーラ服がよく似合ふ。浅野桃里を経て水鳥川彩が登場したところで、画面の彩度が急に上がる感は否めない。倫子の兄・江藤(芳田)は明子と同じ会社のエリート社員、兼恋人の仲にあつた。渉と同じ悩みを抱へる倫子が、同様に机の抽斗に忍ばせてゐるのは、こちらは本木雅弘のヌードが掲載された『an・an』誌であつたりする辺りは微笑ましい。そんなこんなしつつ、弾みで風呂上りの明子の半裸を見てしまつた渉は、いよいよ性的な鬱屈を募らせるのも通り越し拗らせる。
配役残り橋本杏子は、素性・間柄ともにまるで不明ながら園山と逢瀬を重ねる悦子、多分苗字は黒崎。登場順に浅野桃里×水鳥川彩×橋本杏子と来ると、新東宝なのに、まるでエクセスのやうなパワー・バランスを思はせる女優三本柱ではある。
jmdbの検索結果に従へば、同年六作前の「
いんらん家族 義母の寝室
」(脚本:周知安/主演:井上真愉見)から、「
いんらん家族計画 発情母娘
」(2003/脚本:岡輝男/主演:麻白)まで足かけ十三年に全七作が製作された「いんらん家族」シリーズ第二弾。
改めて整理
してみるに、これで未見なのは第三弾「いんらん家族 花嫁は発情期」(1993/脚本:周知安/主演:桜井あつみ/1999年旧作改題時新題が『花嫁の悶え 恥づかしいSEX』)と、第五弾「超いんらん家族 性欲全開」(1994/脚本:双美零/主演:林田ちなみ/1998年旧作改題時新題が『どすけべ家族 性欲まみれ』、2003年二度目の旧作改題時新題が『すけべ家族 浴室の絡み合ひ』)の二作。ここはどうにか、網羅を狙ひたいところである。話を本作に絞ると、基本線は他愛ない受験生悶々物語で、手数の薄い始終を周到なモノローグで埋める展開は、ビリングに反し最も頼りない主演女優に綺麗に連動して、然程の訴求力は感じさせない。さうはいへ橋本杏子が二度目の絡みで親爺を引きつけた一夜、二人きりの姉弟が禁忌を犯す件には、終に正しく一線を越える緊張感の漲る、近親相姦映画のハイライトとして十全な磐石の決定力が花開く。ところが、そこから幾分余した尺を、最後は―南城千秋と―水鳥川彩の濡れ場で締める、戦略的なアンコールまでは全く有難いものでもあつたのだが。事の最中に仕出かしたと狼狽しかけた渉を、更なる愕然に叩き込む、唐突かつ微妙にメロウなバッド・エンドは些か不可解。素晴らしくスマートであつた開巻と、概ね長閑な全篇を想起するにつけ、何故に藪から棒に居た堪れない着地点を選択したものか、如何ともし難い釈然としなさを残す。
再びところで今作、1995年最初の旧作改題時新題が、何となく国映作のタイトルを思はせる「姉・弟 恥戯のたはむれ」。1997年二度目の際には「いんらん家族 近親ナマ下着」、今回は旧題ママによる、十四年ぶり三度目の新版公開となる。何処の甲子園出場校だ、あるいはヤク中が御縄を頂戴する回数か、といつた風情すら漂ふ。
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