真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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OL日記 あへぐ牝穴
森山茂雄
/
2008年12月21日
「
OL日記 あへぐ牝穴
」(2003/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:森山茂雄/脚本:佐野和宏/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:伊藤一平/監督助手:松丸善三/撮影助手:馬路貴子・藤本秀雄/録音:シネキャビン/スチール:佐藤初太郎/現像:東映ラボテック/協力:高円寺ビストロ「K」・《有》オフィスバロウズ・中村美穂・中沢匡樹・《有》ガルウイング・長谷川九仁広・吉野充・宇佐美和彦・BAMBOO HOUSE/出演:佐々木日記・片岡命・色華昇子・山口玲子・柏木舞・真央はじめ・神戸顕一・池島ゆたか)。出演者中、池島ゆたかは本篇クレジットのみ・・・・ではあつたのだけれど、後述する。
行きつけのオカマバーでママの翔子(色華)と、大学時代軽音サークルの二つ後輩で、現在は取引先の会社に勤める馬場有也(片岡)を相手に、OLの中田礼夢(日記)がポップに頭を抱へる。ここは素直に、「ドリームハンター麗夢」からのインスパイアを看て取つてよからう。話してみろと急かされるも初め拒んでゐた礼夢は、終に重い口を開く。礼夢の奇想天外な悩みとは、「アタシの夢に出て来た人が、アタシと同じ夢を見てる」といふもの。礼夢はオカマバーで、何故だか大嫌ひなオヤジ上司・吉幾多三(神戸)を相手にストリップを披露する夢を見る。明くる朝、悪夢と浅い眠りとに気分の冴えない礼夢の前に現れた吉は、明らかに礼夢のストリップを見てゐた気配を窺はせる。しかも、再び夢の中に出て来た吉の顔を今度は礼夢が思ひ切りひつかくと、次の日の吉は、夢の通り顔中傷だらけであつたといふのだ。まるで取り合はない有也に対し、理解を示す翔子は礼夢に、夢の内容をよく思ひ出してみるやう促す。店で吉を相手に裸で踊る礼夢の艶姿を、翔子も見てゐたのだ。
歪んだ色男ぶりが狂ほしくハマリ役の真央はじめは、実は言ひ出せない想ひを礼夢に寄せる有也は余所に、礼夢が憧れる有也の会社の先輩・渋川陽平。山口玲子は、夢の中に渋川が登場し礼夢がぬか喜びしたのも束の間、渋川が礼夢ではなく抱く、同僚の雨野晴美。山口玲子は後にも先にも全くの純然たる濡れ場要員に止まるが、因みに渋川と晴美の絡みが展開されるのは、無印国沢実の「
人妻たちの性白書 AVに出演した理由
」(2001/主演:青山円)で、野上正義が片瀬めぐみを相手にするのと同じ部屋。柏木舞は、完全に酔ひ潰れた礼夢を部屋にまで送り届けた有也が、礼夢の渋川への想ひを成就させる目的で、即ち自らは身を引くために、そのまま
礼夢の部屋に呼ぶ
風俗嬢・沙香里。初めは3Pはお断りだと臍を曲げてゐた沙香里は、有也の説明を聞くや納得すると同時に同情し、心を尽くす。それはそれで、三人目の脱ぎ役の女優の存在まで含め酌めぬでもないが、それならば、おとなしく有也が自分の部屋に帰つてから呼べばいいものではないのか。流石に人の部屋に、加へて酔ひ潰れてゐるとはいへ主も居るにも関らず、そこにデリヘルを呼ぶなどといふのは些か不自然も度を越さう。挙句にその主は惚れた女、無理の役満だ。
有也は食事を御馳走すると称して渋川を礼夢の部屋に連れて来ると、ひとまづ三人での夕食後、デザートを買つて来ると偽り退場する。
ヒロインが見る不可思議な形態の夢の物語は、何時の間にか、ヒロインに対して抱へた終ぞ伝へられぬ片想ひに悶々とする、ダメ男に焦点を移す。最も身近で、しかも一番自分を大切に想つて呉れてゐた人物の存在にヒロインが気付くのと、全方位的な消極性に首まで浸かつたダメ男が、漸く重い腰を上げ目出度く結ばれる段に、明確に手間が足りない。展開が適当になし崩されてしまつてゐるやうに、一旦は思へた。実は今回、仕事終りに小屋の敷居を跨いだのは、尺も3/4を概ね経過した時点であつた。そのままグルッと丸々もう一周して―因みに残りの二本は『
新・監禁逃亡
』の再見と、どうといふこともない宇田川大悟のVシネ―改めて全篇を通して観た際、私の心は洗はれた。心ない渋川に蹂躙され失意のまゝ眠りに就いた礼夢が目覚めた翌朝、予感を胸にアパートの通路に出てみると、そこに一呼吸置いて有也が現れる。昨晩肩のぶつかつた結構ハンサムな労務者(伊藤一平)にノサれた有也が、傷だらけの顔で「俺・・・」と口を開くと礼夢は、<
「判つてる、夢で見たの」
>。ダルで砕けた佐々木日記の口跡が、慎ましやかな名台詞を撃ち抜く。二人が共有した予兆を明示しないストイックさは、娯楽映画としては如何なものなのかといつた点に微妙に疑問の余地を残しつつも、忘れ去られた訳では決してなかつた基本設定が、さりげなくも決定力のあるエモーションを轟かせる。粗忽なヒロインと生きて行く強さに欠いたダメ男とが、もし会へたらな夢に背中を押され結ばれる、何てロマンティックなんだ。そこからの二人の濡れ場が、前夜の有也と翔子の相克に尺を割き過ぎたのか、あるいは無茶の大きな沙香里のパートは丸々不要ともいへるのか、やつとこさ漕ぎつけた礼夢と有也のセックスが描写として中途に終つてしまふのは重ね重ね痛く、全般的な完成度の面に於いてはひとまづ兎も角、一点突破の可能な決戦兵器たるべきワン・シーンを有した一作。時にさういふ映画の方が、強い印象を残すこともある。痛快なラストの一オチも、終幕を爽やかに飾る。
出演者クレジットには、確かに池島ゆたかの名前があつた。m@stervision大哥のレビューにも、“腰だけ出演”とされてある。ところが、今回5/4回観たものの、何処に池島ゆたかが登場してゐたのだかさつぱり判らなかつた。情けない話がプロジェク太上映の小屋につき、カットが飛んでしまつた訳でもなからうに、とも思へるのだが。他に翔子の店に、それぞれ二人連れづつの女客男客が登場。女の二人連れは、翔子ママにオッパイを触らせて貰ふ、欠片も羨ましくはないが。
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