真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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すけべをばさん 熟れすぎた乳房
新田栄
/
2008年04月21日
「
すけべをばさま 娘の彼と
」(1994『すけべをばさん 熟れすぎた乳房』の2007年旧作改題版/製作:サカエ企画/配給:新東宝映画/監督:新田栄/脚本:高山みちる/企画:中田新太郎/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/助監督:国沢実・北村隆/撮影助手:島内誠/照明助手:藤森照明/音楽:レインボー・サウンド/効果:時田グループ/出演:三條俊江・西野奈々美・坂入正三・山科薫・神坂広志・荒川友二)。出演者中、荒川友二は本篇クレジットのみ。今回―後述する―新版ポスターには、堂々と脚本が岡輝男と誤記されてある、ちやんとして欲しい。
スナック「ロック」にて、カメラマンの柏木直文(山科)と、アシスタントの山岡樹(神坂)がグラスを交す。熟女もののエロ本を手に、これまでは専らセーラ服少女のグラビアを手掛けて来た柏木は、自らも熟女ヌードに挑戦してみようと俄に思ひ立つ。そこに来店するや開口一番、「ねえマスター、最近いい男来ないかしら?」とマスター(荒川)にこれ見よがしに持ちかける秋村としえ(三條)登場。としえは夫・誠二(坂入)が糖尿で勃たなくなつてしまつて以来、男に飢(かつ)ゑてゐた。柏木が熟女ヌードのモデルを探してゐるのを看て取つたとしえは、早速立候補。とんとん拍子に話は進み、カット明けると「ようし、行つてみようか!」といふ柏木のかけ声とともに、場面変つたスタジオで撮影開始。といふ模様を、柏木の背後から抜きながらのタイトル・イン。
ここまでで二分強
、テンポがいいにもほどがある。新田栄の実は案外と堅実な地力が、発揮された開巻ではある。撮影が始まるや単なるグラビアに止(とど)まらず、柏木の指示で彼女もゐるといふのに、山岡がとしえとの絡みの相手を務める羽目になる。ここで文字通りの全貌が明らかとなる、今作の決戦、ではなく終末兵器こと主演の三條俊江。をばさんパーマにをばさん面にをばさんボディ、看板を些かも偽ることなき、正真正銘の“エロをばさま”―だから後述する―である。誰に似てゐるのかといふと、
顔も体型も岡田謙一郎によく似てゐる
。個人的には欠片の需要も持ち合はせず、食傷こそすれ我が愚息はピクリとも蠢動だにせぬが、そんな三條俊江を主演に迎へたピンクが製作されてのける辺りに、最早この期には世界の広さすら感じ取ればよいのか。
西野奈々美は、としえの娘で女子大生のさゆり。貪欲なとしえは、誠二は勃たないまゝに、媚薬と淫具を駆使した夜の営みに日々盛んであつた。さゆりはそんなとしえを「最低、淫乱、メス豚」と口汚く罵り、母親と、性への嫌悪を露にする。一方山岡の彼女といふのが実はさゆりであるところから、劇中世界は連関を見せ始める。冒頭から詳らかなとしえの貪欲に加へ、さゆりの複雑な心象をメイン・プロットとして並べ立てた展開は、さりげなくも巧みである。最終的にはさゆりが母親に対しても、性に関しても理解を示すに至るといふ着地点は、ホームドラマとしても、ピンクとしても全く順当。岡田謙一郎、ではなく三條俊江に脊髄反射で臍を曲げてしまひさへしなければ、実は作劇自体としては決して際物に堕することのない、実直な水準作である。偶さか男性機能を回復した誠二ととしえの夫婦生活に続いて、こちらはすつかり性に目覚めたさゆりと山岡の濡れ場を、最終的には看板を曲げてでも映画の締めに持つて来た点に関しては、新田栄の観客に対する良心と捉へたい。
例によつて
今作は、2003年に「すけべをばさん 年下狂ひ」として既に(少なくとも)一度改題新版公開されてゐる。更に補足すると、新東宝公式サイトのピンク映画配信頁には、「をば様たちの痴態 淫熟」(1994/脚本:高山みちる/主演:鶴見としえ)、「淫臭!! 年増女の痴態」(1995/脚本:岡輝男/主演:如月じゅん)の二本とともに、「エロをばさま」シリーズとして一括りにされてゐる。「エロをばさま」シリーズ・・・・何だかなあ、といつてしまへばそれまででもある(笑)。三作を以てシリーズを成す、といふのは後付に過ぎないやうな気もするが。「をば様たちの痴態」は2003年に「をば様味くらべ SEX自慢」、2007年には再び「人妻を狂はせた 不倫の夜」、「年増女の痴態」は2003年に「年上の女 すけべ大好き」と、それぞれ矢張り旧作改題されてゐる。どうせ「年増女の痴態」も、今年辺りに恐らく再び改題新版公開されるのであらう。
性にオクテで未だ幼い、といふキャラクター設定の説明も兼ね、山岡の部屋にてさゆりが夢中でファミコンのテトリスを遊ぶシーンがある。1994年といへば、ファミコン(発売1983年)後継機のスーファミことスーパーファミコンすらもが既に1990年には発売されてゐるのだが。新田栄のそこいら方面への無頓着ぶりが窺へるのか、それともあるいは、1993年に発売されたテトリスフラッシュを遊んでゐたのか。ゲーム画面からは、無印テトリスに見えたのだが。
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