真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2007/監督:長谷川和彦では又してもない/出演:坂口拓・松浦佑也、他)。かういふ地点から見事実際に映画の完成・公開にまで漕ぎ着けたことに関しては、素直に評価出来さうな気もするが。
 ざつと見渡したところ、映画ファンの多くは今作を概ね高く評価してゐるやうである。“概ね高く”どころではない絶賛の嵐すら、労することなく散見される。にも関らず蛮勇を振り絞る、こともなく。当サイトに於いては決然と一言で片付ける。

 フィルムで撮れ、タコ。

 全篇を通して情けないキネコ画質にやきもきさせられつつ、最終的に追ひ詰められた連合赤軍と完全に包囲した機動隊との、苛烈な筈のあさま山荘攻防シーンに於いて、映画としては完全に詰まれてしまふ。徒に臨場感だけならば溢れてもゐるが、外光はトビまくり、画面の中で何が起きてゐるのだかまるで判然としない。かういふ点にこの期に拘泥してみせるのも、多分に時代からは後れた物言ひに過ぎないことも承知の上でなほのこといふが、小屋に木戸銭を落とした観客に、三時間強も見せる品質の代物では毛頭ない。シネアストとしての若松孝二の良識を疑ふ、とまでいふのは大人気なく、潤沢な製作資金が集まらなかつたならば、90分に収めた上でフィルムで撮ればいいのだ、といふのは流石に暴論に過ぎるか。ともあれ、あくまで映画としては一見の価値無し。ひとつの大事件に対しての、同時代人としてのオトシマエ、としてならば議論はまた全く別である。いはゆる山岳ベース事件。総括、といふ名の仲間内での大量リンチ死。若松孝二は、徹底して一連の地獄を容赦なくトレースした後に、最終的にはその衝撃的な悲劇に対して、一体如何様にしてあの時彼等はさうした事態に至つてしまつたのか、に関して今回ひとつの答へを出す。吐いたばかりの唾を飲み込むやうなことを申すが、その叫びからは、映画監督若松孝二としての、撃ち抜かれた決定力が確かに伝はつて来る。

 ブント関西派の塩見孝也役が我らが拓ちゃんこと坂口拓と知り、拓ちゃんがマジ当てのジェット・パンチで内ゲバを闘ひ抜くシークエンスを期待したが、勿論あらう筈もなく。そもそもが、「お前の観る映画ぢやねえよ」といふ反駁に対しては、おとなしく頭を垂れる。とはいへ無謀といふか勇猛果敢といふか、あの拓ちゃんが展開する、あるいはさせられた観念的な長台詞は、それはそれとして出色。不器用で逆説的なリアリティを狙つた上での配役であつたならば、正しく大ベテランとしての卓見であらう。
 ピンク勢からは、松浦祐也が、何故か“松浦佑也”名義で登場。ほんの少しだけ。一応ピンでは抜かれるものの、台詞も無い。


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