![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/3d/e46b968a7f6bd1ecc9e51597773352ff.jpg)
東京近郊の新興住宅地にしばらく住んでいたことがある。
マンションの6階で、ベランダから見下ろすと、
もうひとつマンションが建つくらいの四角い空き地があり、
秋にはセイタカアワダチソウの黄色い花でいっぱいになった。
その空き地に、いつのまにか、斜めの道が一本できた。
駅へ急ぐ通勤や通学の人たちが、近道として通るらしい。
最短の対角線が、人ひとりぶんの幅に踏みしめられ、踏み固められ、
しだいに草が生えなくなって、周囲との境界がくっきりしてくる。
道というものは、このようにしてできる、ということを知った。
それは30何年か前のこと。
山に住むようになって、あたりをよく気をつけて見ていると、
斜面ややぶの中などに、ときどき訳ありげな隙間がみつかる。
道のような、道でないような、しかし、あきらかに、通路。
いわゆる「けものみち」だ。
動物はだいたい一定のテリトリー内を移動しながら餌をさがす。
基本的には最短ルートで、少しでも通りやすいところを通る。
そのほうが余分なエネルギーを消費せず、危険も少ないからだ。
一度踏んだところは、さらに通りやすくなるので、また通る。
その結果、鉛筆で何度もなぞったような道が、あちこちにできる。
上の画像は、そのひとつの、入り口。
左に置いたのは、わたしの帽子。
比べてわかるように、とても小さな道で、幅は20センチほど。
上手に撮れていないけれど、向こうはゆるいカーブの下り坂で、
秘密のトンネルみたいにやぶの中に続いている。
ワンダーランドのアリスではないが、
わたしが身長30センチくらいだったら、
きっと歩いてみたくなるような道だ。
最初に見つけたのは、たしか夏に入る前だった。
その後も草に埋もれてしまう様子がないところをみると、
定期的に「上書きされて」いるのではないかと思う。
さて、誰の道だろうか。
どう見ても、鹿には狭すぎるし、頭がつかえて窮屈だ。
猪も、大人だとちょっと狭いかな。
それに、なんとなく、猪にしては小綺麗すぎる。
タヌキやアナグマなら通れる。
もちろん猫でも通れる。
のぞきこんでいると、背後で栗の実が落ちる音がする。
「ぽさっ」というのは空っぽのイガだけ。
「ぼてっ」というのはつやつやした実が詰まっていて、
はじけ飛んだ実が草むらにころがっていく。
栗の木は何本かあるが、ここのは特に実が大きく、ころんと丸い。
身長30センチだとしたら、ひとりで持てるのは
ひとつか、ふたつがいいところ。
急いで戻って、手押し車をとってこなくては。
30センチのわたしの住むおうちは、この道の先にあるらしい。
マンションの6階で、ベランダから見下ろすと、
もうひとつマンションが建つくらいの四角い空き地があり、
秋にはセイタカアワダチソウの黄色い花でいっぱいになった。
その空き地に、いつのまにか、斜めの道が一本できた。
駅へ急ぐ通勤や通学の人たちが、近道として通るらしい。
最短の対角線が、人ひとりぶんの幅に踏みしめられ、踏み固められ、
しだいに草が生えなくなって、周囲との境界がくっきりしてくる。
道というものは、このようにしてできる、ということを知った。
それは30何年か前のこと。
山に住むようになって、あたりをよく気をつけて見ていると、
斜面ややぶの中などに、ときどき訳ありげな隙間がみつかる。
道のような、道でないような、しかし、あきらかに、通路。
いわゆる「けものみち」だ。
動物はだいたい一定のテリトリー内を移動しながら餌をさがす。
基本的には最短ルートで、少しでも通りやすいところを通る。
そのほうが余分なエネルギーを消費せず、危険も少ないからだ。
一度踏んだところは、さらに通りやすくなるので、また通る。
その結果、鉛筆で何度もなぞったような道が、あちこちにできる。
上の画像は、そのひとつの、入り口。
左に置いたのは、わたしの帽子。
比べてわかるように、とても小さな道で、幅は20センチほど。
上手に撮れていないけれど、向こうはゆるいカーブの下り坂で、
秘密のトンネルみたいにやぶの中に続いている。
ワンダーランドのアリスではないが、
わたしが身長30センチくらいだったら、
きっと歩いてみたくなるような道だ。
最初に見つけたのは、たしか夏に入る前だった。
その後も草に埋もれてしまう様子がないところをみると、
定期的に「上書きされて」いるのではないかと思う。
さて、誰の道だろうか。
どう見ても、鹿には狭すぎるし、頭がつかえて窮屈だ。
猪も、大人だとちょっと狭いかな。
それに、なんとなく、猪にしては小綺麗すぎる。
タヌキやアナグマなら通れる。
もちろん猫でも通れる。
のぞきこんでいると、背後で栗の実が落ちる音がする。
「ぽさっ」というのは空っぽのイガだけ。
「ぼてっ」というのはつやつやした実が詰まっていて、
はじけ飛んだ実が草むらにころがっていく。
栗の木は何本かあるが、ここのは特に実が大きく、ころんと丸い。
身長30センチだとしたら、ひとりで持てるのは
ひとつか、ふたつがいいところ。
急いで戻って、手押し車をとってこなくては。
30センチのわたしの住むおうちは、この道の先にあるらしい。