閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

スープのつくりかた

2013-02-07 15:57:15 | 絵本のつくりかた


閑猫堂って「水玉屋さん」だったのね、と言われそうな今日このごろ。
たまには本業(←ほんとか?)の話もしてみましょう。


3冊の絵本が、少しずつずれて進行中です。
おしごとの流れは、だいたいいつもと同じ。
場面割りをして文章を書きます。
文章をもとに、画家さんにラフ(下絵)を描いていただきます。
それを見て、思ったことをお話しして、問題点があれば、
編集者さんと画家さんと相談して、他の人たちの意見もききながら、
絵を修正していただくこともあり、文章を変更することもあり。

そうしていくうちに、ちょっとだけあいていた隙間がきちっと詰まり、
ちょっとだけゆるんでいたねじもしっかり締まって、
全体の姿がくっきりあらわれてきます。
絵がついて、色がついていくうちに、それまで気づかなかった
「この本の重要テーマ」がふっと浮かびあがってきたり、
思いがけない名案がひょっこり生まれたりするので、
この過程はものすごーく楽しいのです。

わたしは協調性が不足気味の人間なので、
基本的に何でもひとりでするほうが得意なのですが、
ヒトひとりぶんの頭の容量なんてたかが知れており、
小さい鍋は早く煮詰まる。
そして、ひとりではできないこともいっぱいある。
ことわざに、船頭多くして舟山にのぼる・・とか、
コックが多すぎればスープが不味くなる・・とかいいますが、
必ずしもそうとは限りませんでしょう。
それぞれが厳選した材料を持ち寄り、それぞれの特技を生かして、
おいしいスープができないわけがない!というのがわたしの考え。

口で言うのは簡単だけど絵に描くのはむずかしい、というものが
この世にはたくさんあります。
絵も文もひとりでかかれる方なら、「描きたいものを書く」
(≒「描きにくいもの、描きたくないものは書かない」)
という選択も可能かもしれませんが、そうでない場合、
とんでもなく変な注文をするヒトがときどきいますので、ね。
(前に翻訳した話で、ハリネズミがシャツを着ている設定があり、
これ、どうやって絵に描くんだろ?と心配したことがあります。
さいわいにして、それは絵本にはなりませんでしたが・・笑)
今回も、空飛ぶぺらぺら猫だとか、象さんの「観音隠れの術」だとか、
ぺらぺら猫プラス四つ葉のクローバーだとか・・
勝手なことを言ってあちこちご迷惑をおかけしております。

いや、言ってる本人だって実物は見たことがないわけで、
絵を目にして初めて「わ! ほんとにいたんだ!」と驚いたり、
「なぁるほど、こういうのだったのね」と深く納得したり。
無からナニカをつくりだすのが言葉。
そのナニカにカタチをあたえてくれるのが絵。
わたしは自分では絵はぜんぜん描けないんですが、もしかしたら、
描けないからこそ言葉を自由に使えるのかもしれません。

3冊のうちの1冊は、電車が出てくる絵本です。
この中に、色の違う電車が立体交差ですれ違うシーンが
あったらいいなあと思って、それを書きました。
わたしの頭の中にあったイメージはJR秋葉原駅・・
首都圏の方はおわかりと思いますが、ホームが2層になっていて、
山手線、京浜東北線が並走する上を総武線が横切っている。
だから黄色と緑の電車の立体すれ違いは日常的に見られる・・
と思っていたら、取材に行ってきたM(この人が絵を描くのです)が、
「ホームから両方見える場所は、ない!」と。

ええー、そうなの?
おっかしいなあ、ぜったい見た気がするんだけど。
と言ってもはじまらない。
ヒトの記憶なんていい加減なものです。
どうする?
秋葉原駅をちょっと改造させてもらって、見える「こと」にする。
本当に見える別のモデル駅をさがす。
どこでもない架空の駅と電車をつくっちゃう。
それとも・・あきらめて他のシーンに変更する?

フィクションで子供向きの絵本なので、どの手も「あり」だと思いますが、
さて、どうなりますでしょうか。

そういう感じで、この春には相次いで「美味しいスープ」が完成しそうです。
おたのしみに。

 

本日の「いいね!」

ドミノキャット (動画)


茶々さんも、やってみよっか?

「・・やだ」 

 

コメント
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