閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

リュートの謎(と、毒りんごの謎のつづき)

2011-09-30 08:32:05 | 

先日の「ブレーメンの謎」で、「ろばがリュート弾くかしら」と書きましたら、
同じくグリム童話に、ろばがリュートを弾く話があると、
さんごさんが教えてくださいました。

そうそう、「ろばの王子」(KHM144)がありました!
これは、ろばの姿で生まれた王子・・見た目はろばだけれど
人間だということの証しのように、リュートを巧みに弾くのですね。
(前記の岩波の金田訳では、こっちもリュートは「琵琶」、
王子は「若さま」、教えるのは「お師匠」になっておりますが・・笑)

これは、グリムの中ではやや珍しい話のような気がします。
望んだ子が、ろばとして生まれたにもかかわらず、
王様は(王妃を説得して)世継ぎの王子として大切に育てますし、
王子も終始、誇り高い貴族として堂々とふるまい、
お坊ちゃん育ちの天真爛漫さでよそのお城の居候となり、
そのまんまお姫様をもらって・・

全体としては、よくある民話のパターンではあるものの、
表現の端々になんとなく創作っぽさが感じられ、
(それがグリムの筆によるものか、語り手の趣味だったのか、
わかりませんが・・あるていど知識階級のあいだで、
口承ではなく文字で書かれて伝わったものかもしれない)
多くの「シンプルで土臭い」話とは一味違う雰囲気があります。

わたしは、この話を最初に読んだときに、訳文のせいか、
ろばのあつかましさがノーブルに感じられなかったのに加え、
「え? 脱げるんだったの?」と、そこが唐突で・・
魔法が解けましたとか、そういう手続きが示されていないので
何か釈然としない話だなあと、そのまま忘れておりましたが・・
(子供でしたのでね。これって、オトナの話、でしょう?)

で、あらためてひっぱり出して、この話の解説を読んだところ、
「ろばがリュートを弾く」というのは「できない相談」をあらわす
決まり文句であるそうな。

な・る・ほ・ど、そうだったのかー。

さんごさん、貴重なヒント、ありがとうございました。
うん、この話は、ぜひリュート演奏つきの「語り」で
聞いてみたいものですね。
(質の良い再話で、ね)

 

グリムがらみで、もうひとつ。
「毒りんごの謎」に関連して、時鳥さんから
「金星みたいな黄りんごもある」
という面白いご指摘をいただきました。
金色というか、薄い黄色、クリーム色に近い
・・なるほど、かなり「白」っぽいですね。

金星の親はゴールデンデリシャス。
この品種ができたのは1890年頃。
そのまた親は、と調べてみると、
1804年にアメリカでできたGrimes Goldenと、
1600年代にすでにヨーロッパにあったGolden Reinetteとの
自然交雑によるもの・・と言われているらしい。
つまり、黄色いりんごも、かなり昔からあったということで。

Grimes Golden・・
名前に一瞬ひっかかりましたが、
これはグライムズさんという人が発見した品種ということで、
グリムと、関係は、ないですね・・。

いや、それより、金星というりんごは、
袋をかけて育てるときれいな金色になりますが、
途中で袋を破って日にあてると、そこだけ赤くなる。
白くて、片頬だけ赤いりんごができあがる。
縦にふたつに切れば、半分白で、半分赤。

お妃、そうやって作ったのか!
(いや、違うって・・)

 

コメント
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