夜風がひんやりしている。
このあいだまでの猛暑が嘘のようだ。
もう、半袖Tシャツさえあれば、というわけにいかない。
これは毎年のことなのに、妙に慌てる。
なぜだか急にきれいな腕時計が欲しくなり、
銀色のブレスレット風のを買ってしまった。
じつは家にいるときはまったく必要としないし、
むしろつけていると邪魔だからつけない。
そして外出の機会はきわめて少ないのだから、
われながら意外な買い物である。
ソーラー電池なので、ひきだしにしまっておくと
停まってしまうから、本棚にピンでぶらさげてある。
ときどき横目でちらっと眺める。
欲しくなったのには、きっと何か意味があると思う。
いまはまだ、それが何だか、自分でもわからない。
月がきらきらと明るい。
これが満月になれば十五夜だ。
十五夜に何か重要なイベントがあり、
そのためにこの腕時計が必要なのかもしれない、
と考えてみるが、空想はそこで行き止まりである。