弁理士の日々

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原子力規制組織制定の動向

2012-06-09 20:36:17 | サイエンス・パソコン
昨日、一昨日と、このブログを訪問される方の数が1000人を超えました。理由は“東電OL”です。私も、佐野眞一氏の「東電OL殺人事件」を読み直しているところです。

一方で、大飯原発再稼働をめぐる動きでご紹介したように、古賀茂明氏によると、原子力規制機関を定めるための国会審議が急速に進んでいるということです。そして、急いでいる理由は、国会事故調が6月中に出すという報告書が公開される前に、原子力ムラにとって都合の良い規制機関を決めてしまおう、という魂胆だというのです。

昨日、古賀茂明氏の最新のメーリングリストが届きました。この中でも古賀氏は
■原子力規制委員会 駆け込み審議は予想通りの展開
として警鐘を鳴らしています。

民主党案では、原子力規制庁という新たな機関を環境省の外局として作ることになっており、事務局は環境省の職員ということでした。これに対して、自民・公明が出した対案では、原子力規制委員会という組織を、公正取引委員会のようないわゆる3条委員会(国家行政組織法第3条に定められている、行政組織の一類型)として設置することになっています。民主党政権は、この点では自民・公明案に譲歩する方向で進んでいるようです。この点は評価できます。

しかし古賀氏は、問題を指摘しています。
『しかし、なぜかこの規制委員会は環境省に置かれることになっている。公取委は内閣府に置かれている。環境省の下に置かれると形式的には担当大臣が環境大臣ということになり、前に指摘した環境省との利益相反等の問題の影響が心配される。また、事務局職員に環境省職員が大量に採用されると、事実上環境省の植民地になってしまう。
・・・
なぜか民主案、自公案ともに新たな規制機関は環境省に置くことになっているのだ。』

●ノーリターンルールの徹底も竜頭蛇尾か
『仮に原子力安全・保安院や経産省の職員を採用する際は、二度と経産省には戻らないようにしなければならない。もし、経産省に戻ることもあるということになれば、その職員は戻る時のことを考えて、経産省が嫌がること、すなわち、原発の安全性を厳しくチェックすることをためらうようになるだろう。』
原子力安全保安院と宇宙開発事業団で紹介したように、民間事故調の報告書では、現在の原子力安全保安院がどのような体質の組織であるかを論じています。霞が関のローテーション職場にしてしまったら、いざということに何ら能力を発揮し得ない組織になってしまうでしょう。
ところが、民主党案では「ノーリターンルール」を幹部7人にかげるというとんでもない狭い範囲にしてしまいました。一方で自公案ではこれを職員全体に拡げましたが、例外有りということになっています。そして修正協議の内容によると、とんでもなく甘い修正になる可能性が高いというのです。
6月中に出されるという国会事故調の報告書でも、現在の原子力安全保安院の問題点が解析され、新たな既成組織がどのような観点で組織されるべきかを提言しているはずです。原子力既成組織に関する今回の国会審議は、少なくとも国会事故調の報告書が出された後に、その提言をベースとして行うべきものです。

●外国人登用の法制化
『もう一つの大きな問題は、日本には、能力があって、しかも原子力村から独立している専門家がほとんどいないということである。とりわけ、日本の安全基準がこれまで完全にガラパゴス化していて国際標準の安全規制を理解している専門家は皆無に等しい。そこで、当面の間は、外国人を幹部に大量登用して、人材育成を含めて彼らに安全規制の主役になってもらうことが必要だ。』
ところが、原発官僚たちは外国人の登用を阻止しようとの魂胆のようです。かれらが考え出した反対の論拠が、権力行使をする公務員には外国人を登用してはならないということです。これをやると憲法違反になるというのです。
原発の規制に関する最高水準の人材が日本にいない以上、外国人を登用するのは、国益に反するどころか日本国民の利益を守るために必要不可欠だと、古賀氏は言います。

大手新聞も、この問題についてはほとんど報道していません。現時点でこの問題に待ったをかけられるのは、橋下徹大阪市長を中心とする大阪維新の会だけかもしれません。
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