弁理士の日々

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原子力規制委法案、衆院通過

2012-06-16 15:33:22 | サイエンス・パソコン
原子力規制委法案、衆院通過へ
2012/6/15 13:52
『原子力安全行政を一元的に担う独立性の高い原子力規制委員会を設置する法案が15日午後の衆院本会議で可決、衆院通過する。・・・法案は参院でも午後の本会議で審議入りし、今国会で成立する見通しだ。
原発事故などが起きた場合、技術的・専門的な知識が必要な判断は規制委に委ねる。
・・・
規制委は9月までに発足する見通し。独立性の高い国家行政組織法第3条に基づく「三条委員会」とする。有識者で構成し事務局として原子力規制庁を置く。規制庁に移った場合に出身省庁に戻さない「ノーリターン・ルール」は経過措置を設けて原則として全職員に適用。平時の防災体制として、首相を議長とし全閣僚らで構成する原子力防災会議を創設する。』

原子力規制組織の法制化について、古賀茂明氏は「原子力ムラによって骨抜きにされつつある」とずっと危惧していました(大飯原発再稼働をめぐる動き原子力規制組織制定の動向で紹介)。それでは、衆議院で通過したという法案はどんな法案になっているのでしょうか。

昨日、ちょうど古賀茂明氏のメーリングリストが届きました。以下のように論じておられます。

●3条委員会が完全骨抜きに
『形は3条委員会なのだが、よく見ると独立性は極めて弱くなってしまった。・・・
修正協議の過程で、原子力防災会議(仮称)という組織を作ることが突如浮上した。・・・この会議は「原子力事故が発生した場合に備えた政府の取り組みを確保するための施策の実施の推進をする」と書いてある。』
原子力防災会議に置かれる事務局職員にはノーリターンルールが適用されないので経産省や文科省などの原発推進官庁の官僚が大量に出向してくることが予想されます。『そして、彼らの親元の原発推進の意向を受けて、規制委員会が厳格な安全規制を行うことをとことん妨害するだろう。
こんな組織をおくことは百害あって一利なし。直ちにこんな修正は葬り去らなければいけない。』
搦め手からこのような姑息な手段で骨抜きが図られているということですか。

●規制委員会事務局も原子力村の植民地に-ノーリターンルールの骨抜き
『「推進官庁への配置転換を認めない」として、「ノーリターンルール」を適用するように見せながら、いくつもの抜け穴を作った。』
例えば、いったん他の省庁に配置換えして、その後すぐに親元の経産省等に戻すことは可能です。
さらに、5年間は例外規定を設けているので、5年間はノーリターンルールが適用されません。また、ノーリターンルール適用は「給料アップ」等の処遇充実策を実施するまで先送りするという規定が入るそうです。給料アップをしない限り、いつまでたってもノーリターンルール適用が開始されないということでしょうか。

●国会事故調の報告書は3年間無視
国会事故調の報告書が6月に発表されるのですから、本来はその報告書を待って新たな規制機関の議論をするべきだったのです。それを待たずに急いだのは、国会事故調の厳しい指摘を免れるためだ、と古賀氏は言います。
野田総理は、記者の質問に対して、「(事故調報告書の)ご指摘というものを真摯に受け止め」とだけ発言したのだそうです。「反映する」と言わずに単に「真摯に受け止める」とだけ発言したのは、霞が関レトリックでは事実上無視することを意味するのだそうです。
『この法律の見直し規定では、40年廃炉とは別に、規制委員会などの見直しを3年後とした。事故調の報告書はその規定の中で「踏まえる」とだけ書かれた。踏まえれば無視してもよい。「反映する」とは書かれなかった。「尊重する」とさえ書いてもらえなかった。しかも、踏まえるのは3年後だ。つまり、3年間は完全無視ということだ。
事故調の報告書が出たら、おそらく、今の法案のような骨抜きの規制体系は根底から否定されることになる。それが6月末に出たら、それを反映しろという議論が出る。それに対抗するために、3年間は無視してよいという条文を予め入れる訳だ。
本当に呆れてしまう。怒る気力さえなくなってくる。』

6月15日に衆議院で可決したという法律案は、いったいどのような法律なのでしょうか。衆議院や参議院のホームページで探しましたが、どうしても該当する法律案を見つけることができません。古賀氏が言うように、本当に自公民の裏談合で決められており、国民もマスコミも実態を把握できない状況に置かれているようです。
コメント
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