弁理士の日々

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東大博物館でラミダス猿人「アルディ」の骨格を見る

2009-10-04 15:26:59 | サイエンス・パソコン
440万年前のラミダス猿人の化石から全身像を復元することに成功したというニュースが、10月2日の新聞に載りました。東大の諏訪元・教授らの国際的研究グループの成果ということです。
一人分の女性の全身骨格も含まれ、この女性は「アルディ」と名付けられました。
10月3日の日経新聞によると、「ラミダス猿人の頭と骨盤の復元模型は10月末まで、東京都文京区の東京大総合研究博物館で展示されている。」とあります。

ネットには以下の記事が。
「衝撃的だった」と諏訪教授=ラミダス猿人化石、東大博物館で複製展示(
10月2日16時42分配信 時事通信
「エチオピアで見つかった約440万年前のラミダス猿人化石のうち、頭骨と骨盤の複製の臨時展示が2日、東京・本郷の東大総合研究博物館で始まった。国際調査隊の主要メンバーとして、人類最古の全身骨格を分析した論文を共同発表した諏訪元(げん)教授(55)は記者会見で、「類人猿と人類との中間段階が分かり、衝撃的だった」と話した。
 諏訪教授は1992年12月17日、エチオピアの半砂漠地帯で、初めてラミダス猿人の大臼歯化石を発見した。その後、頭や腰、手足の化石も見つかり、「盆と正月が10回分ぐらい来た感じ」の大発見に沸いたが、細かくもろい破片が多く、復元作業は難航。
 しかし、諏訪教授らが、自動車や航空機の部品検査に使われていたマイクロCT(コンピューター断層撮影装置)を工夫して導入し、高精度の復元と分析を可能にした。」

3日(土曜)はちょうど出かける用事があったので、その帰りに本郷に立ち寄り、東京大総合研究博物館を見学してきました。
博物館内部は写真撮影厳禁なので、写真は玄関のみです。

“新聞発表されたので、博物館は黒山の人だかりに違いない”と覚悟して出かけたのですが、全然そんなことはありませんでした。ラミダス猿人の化石レプリカは、展示場の一角にひっそりと展示されています。案内標識もないので、係の人に尋ねてやっと場所がわかりました。ラミダス猿人を見る客は当初私一人です。多いときでも数人がのぞき込んでいるだけでした。

展示してあるのは頭骨と骨盤のレプリカのみです。
骨盤については、骨盤の片側(腸骨か寛骨)の出土標本そのものを模したレプリカ、その標本に基づいて作成した白色の復元模型(骨盤片側)、さらにはそれに基づく骨盤全体の復元模型です。
頭骨については、出土した頭骨標本の破片群を模した多数の黄土色のレプリカ、それらを組み合わせた白色の復元模型頭蓋骨です。
骨盤の出土標本レプリカは、骨の原型をとどめず、著しく変質しています。このような変質化石から、よくもとの骨の形を推定できるものだと感心しました。

骨盤の復元模型については、その横に「ルーシー」(320万年前のアウストラロピテクス(アファール猿人))の骨盤模型が展示されていて、比較できるようになっています。
骨盤の上部(腸骨で形成される部分)については、ルーシーと同様、その形状が直立二足歩行の特徴を十分に具現しているようです。一方骨盤の下部(恥骨)についてはルーシーよりも長く、これは四足歩行霊長類の特徴のようです。

頭骨の復元模型については、その横に現生チンパンジーの頭骨が比較展示されています。口は現生人類よりも出っ張っていますが、チンパンジーと比較すると出っ張りは少ないようです。係の人の説明では、「チンパンジーに比較して犬歯が小さくなっている」ということでした。

この博物館を2年前に訪問したとき、「異星の踏査~アポロからはやぶさへ」という特集展示を行っていたのですが、博物館の入り口にルーシーの全身骨格模型が展示されていました。今回はその全身骨格模型は展示されていません。聞いてみたら、“東大にはあるが展示していない”ということでした。
人類が直立二足歩行を手に入れるにいたる過程については、全身骨格模型を比較してみると非常によくわかると思います。今回、440万年前のアルディーが見つかったのですから、
 チンパンジー → アルディー → ルーシー → 現生人類
の4体の全身骨格模型をぜひ並べて展示する企画をお願いします。

人類が四つ足歩行から直立二足歩行に進化するに際し、体の仕組みは直立二足歩行に適するように種々の改良を加えました。

上から順に並べると以下の通りです。
① 頭蓋骨と背骨との結合位置の変化
② S字状の背骨
③ 内臓を下から支える広い骨盤
④ 大腿を後ろに蹴り出す股関節と大臀筋
⑤ 大腿骨下端の面の角度
⑥ 土踏まずの形成
⑦ 足の親指が他の4指と離れていない

今回発見された「アルディー」は、③の広い骨盤を備えていますが、⑥の土踏まずは未形成、⑦の足の親指は猿と同様に離れたまま、であるようです。
一方、2年前に私が見た「ルーシー」の骨格模型では、少なくとも⑦足の親指は他の指と離れていませんでした。

以上の知見のみから見ても、ヒトが直立二足歩行に適した体の仕組みを手に入れたのは、一どきに改造したのではなく、何百万年もかけて少しずつ改良を重ねてきた結果であるということがよくわかりました。
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