弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

郵便不正事件・FD日付改竄

2010-09-22 21:46:11 | 歴史・社会
今週19日から21日にかけては北海道に旅行に行っていました。旅先の旅館でテレビニュースを見ていると、郵便不正事件で検事がフロッピーの日付を改竄したようなニュースが流れています。ニュースを見ただけではわけが分かりません。

そもそも私の頭の中では、上村元係長が偽造した証明書のフロッピーの日付は6月1日であって裁判でも確定していたはずです。今になって何で改竄の話が出てくるのだろうか。

自宅に帰って朝日新聞を読んではじめてわかりました。
今回の日付改竄事件は、朝日新聞の特ダネだったのですね。フロッピーが上村被告側に返却されていたというのもびっくりですが、そのフロッピーを朝日新聞社が借り受け、詳細に調査した結果として日付改竄が明らかになったといいます。

2010年9月21日朝日朝刊によると・・・
『FDは2009年5月26日、上村被告の自宅から押収された。FDの押収後に調べた特捜部の捜査報告書などによると、初めは「04年6月1日1時20分06秒」と記録されていた。
検察側は、上村被告が村木氏から証明書の不正発行を指示されたのは6月上旬であり、上村被告が証明書を作成したのはその後という構図で関係者の供述を集めていた。証明書が6月1日未明に保存されていたという証拠は、検察側にとって都合の悪いものだった。
FD内に記録された証明書の最終更新日時が書き換えられたのは09年7月13日。検察側の構図と合う「04年6月8日」とされ、FDは3日後の09年7月16日、上村被告側に返却された。
しかし、FDはその後、公判で証拠としては採用されず、代わりに、証明書の最終更新日時を「6月1日」と正しく記載した特捜部の捜査報告書が証拠採用された。捜査報告書は村木氏側に証拠として開示され、村木氏側から公判に証拠請求されたためだった。主任検事は、裁判を担当する地裁公判部に捜査報告書が引き継がれていたことを知らず、報告書はそのまま村木氏側に開示されたとみられる。
捜査報告書の存在の重要性に気付いたのは、大阪拘置所での勾留中に開示証拠をチェックしていた村木氏本人だった。検察が描いた構図と、上村被告が文書を作成した日時がずれていると、弁護団に連絡した。弁護団は今年1月の初公判の弁護側冒頭陳述ではこの証拠を生かして、「検察の主張は破綻している」と訴えた。』

村木裁判の初公判(本年1月27日)、検察側冒頭陳述では「村木被告(当時課長)が04年6月上旬、上村被告(当時係長)に偽証明書の作成を指示した」ということになっています。すでにフロッピーの日付が6月1日であることを知っていながら。そしてその事実が捜査報告書に記載済みでありながら。
検事たちは、フロッピーの日付が6月1日であると記載された捜査報告書の存在を完全に忘却していたのでしょうか。
そしてその捜査報告書の存在と重要さに気付いたのが村木さん本人だったという点がまたすごいです。そこから弁護側の独自調査が始まり、初公判の弁護側冒頭陳述で実は裁判の勝敗はついていたのかもしれません。

村木厚子さんの裁判を見守り支援する部屋から探ってみます。
検察側冒頭陳述
『倉沢の要請を了承した被告人(村木厚子さん)は,平成16年6月上旬ころ,上村に対し5月中の目付で公的証明書を作成して被告人のところに持参するように指示した。
これに対し,上村は,・・・・・を伝えた上で,それでも公的証明書を発行して良いか,その指示を仰いだ。
被告人は,上村に対し,「先生からお願いされていることだし塩田部長から下りてきた話でもあるから,決裁なんかいいんで,すぐに証明書を作ってください。上村さんは,心配しなくていいから。」などと告げ,早急に公的証明書を作るように指示した。
上村は,被告人に対し,その指示を了解し「凛の会」に対する公的証明言を作成次第被告人のところに持参する旨答えた。』
弁護側冒頭陳述
『上村が本件証明書を作成した日時については,上村のフロッピーディスクに記録された文書ファイルのプロパティによれば,平成16年6月1日未明(午前1時20分06秒)以前であることが明らかである。
したがって,上村が6月上旬ころになって,被告人から指示されたことを契機として,本件虚偽証明書作成に踏み切ったという検察官の主張は,この点でも破綻している。』

初公判の段階で、大阪地検は村木さんによる上村被告への偽造指示のロジックが破綻していることを思い知らされました。今回逮捕された大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)は、その頃東京地検に応援に行っていたようです。
その後ほどなくして、大阪地検の上層部も前田容疑者から聞いて改竄の事実を知ったことでしょう。

それにしても、まだ動機や手口を含めて、全貌が見えません。
前田容疑者は、「日付の改竄がないか自分で調べているうちに、誤って日付を改竄してしまった」と言い訳しているようですが、これもすでに破綻しています。前田容疑者が使ったというソフトは、日付変更はできるが改竄の有無を評価する機能は有していなかったといいます。
だいたい、専門家でもない検事自身が大事な証拠のフロッピーをいじくり回すなど、捜査の基本から完全に逸脱しています。
そしてその大事な証拠を、日付改竄の数日後に上村被告側に返却したというのも意味が分かりません。
弁護側からフロッピーが証拠として提出されるのを待ち、そこで日付が6月8日になっていることから検察有利に推移する、という作戦でも立てていたのでしょうか。そうだとしたら、それこそ検察が自分を全否定するようなあるまじき暴挙です。無実の人を故意に冤罪に陥れようとする行為ですから。

公判の場で、捜査報告書の記述からフロッピーの日付が当初は6月1日であったことがすでに明らかにされ、問題のフロッピーは返却されて上村被告側が保管しています。改竄の事実が白日の下にさらされるのは時間の問題だったといっていいでしょう。
改竄の事実を知らされてしかしその事実を公表しなかった大阪地検上層部は、問題が露見するのをただ恐れおののいていた毎日だったのでしょうか。
それとも本当に「大したことはない」とたかをくくっていたのでしょうか。

私は今年2月27日の記事「郵便不正事件の謎」で、「これで大阪地検特捜部が負けることになったら、重大な汚点を残します。民主党連立政権下で、大阪地検特捜部は潰されるのではないでしょうか。」と発言しました。
しかし民主党政権によって潰されるのではなく、大阪地検特捜部が自壊して消滅することになりそうです。
コメント
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