弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

明日は郵便不正事件判決

2010-09-09 21:11:35 | 歴史・社会
厚労省元局長の村木厚子さんを被告人とする裁判の判決が、いよいよ明日9月10日ですね。
5月26日に郵便不正事件の謎(8)供述調書証拠不採用で書いたとおり、検察による供述調書の相当部分が不採用になりました。検察側が証拠請求していた8人の供述調書計43通のうち、今回事件の主犯である上村被告(事件当時の厚労省係長)と倉沢被告(凛の会元会長)の調書21通はすべて却下です。凛の会元メンバーの調書も却下されました。残る5人の調書は合計で21通ありましたが、そのうちの9通のみが証拠として採用されたのみです。
裁判所のこの判断から類推すれば、明日の判決で村木さんの無罪は確実でしょう。
しかし検察は反省の色がありませんから、必ず控訴するはずです。控訴審ではどのような判断が下るのでしょうか。

郷原信郎著「検察が危ない (ベスト新書)」を読みました。なかなか感想を書く時間が取れません。今回の郵便不正事件との関連で気になった部分があるので書き留めておきます。

郷原氏はこの著書で「特捜検察の暴走」を露わにしようとしています。その中で、「裁判所によるチェックはなぜ機能しないのか」として2つのポイントを指摘しています。その第2について、
「第二に、裁判官は同じ法曹資格者の検察官の集団である検察庁が組織として意思決定し、起訴した特捜事件について、基本的に検察の主張・立証を信頼している。この傾向は、上級の裁判所になればなるほど顕著で、特捜部が起訴した事件に対して地裁で無罪判決が出されても、ことごとく高裁で覆されている最大の理由はこのあたりにあるように思える。」
と述べています。

今回の事件はどうなのでしょうか。
たとえ地裁で無罪判決が出ても、高裁が一転して検察の供述調書が信頼できると判断したら、判決が覆る可能性は十分にあります。
ある人がした供述において、検察での供述調書の記載と法廷での証言とが真っ向から対立した場合、どちらかが嘘であることが明らかです。どちらを嘘と認定するのか。高裁が「検察官の面前で読み聞かせの上で署名をした供述が真実に近い。法廷での証言は信用できない。」と認定したらそれっきりです。

このように考えると、たとえ明日の判決で無罪が言い渡されたとしても、今回の裁判はまだ半分までしか到達していないことになります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする