弁理士の日々

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マイケル・グリーン氏の発言

2010-07-22 21:16:22 | 歴史・社会
7月20日の日経朝刊「経済教室」で「同盟再構築~米国からの視点~下」と題してマイケル・グリーン氏(米戦略国際問題研究所~上級顧問・日本部長)が論評しています。
私自身が(ひょっとしてこうなっているのではないか)と懸念していたことが語られているので、念のためここにメモしておきます。この発言が正しいかどうかは今後の検証ですが、実態を表しているような気がします。

「米政府は、鳩山政権がとった一連の行動に衝撃を受けた。それは、アジアにおける米国の戦略を困難なものにし、同時に同盟国としての日本の信頼性を深く傷つけた。」

《東アジア共同体(EAC)構想》
オバマ政権内部のアジア通は、EACが目新しいアイデアではなく、さほど重大視すべきでないとわきまえていた。しかしアジアの友好国数カ国の首脳がホワイトハウスを訪れて鳩山構想に懸念を表明するにいたって、オバマ政権は心配し始める。中国と北朝鮮がやや強硬姿勢を強めているときに、日本の新政権は同盟の信頼性を弱めるつもりかと案じたのである。

《普天間基地移設問題》
2009年10月に最初の環境影響評価が完了し、仲井真弘多沖縄県知事と主要閣僚が計画推進に支持を表明した際、米政府は官邸がこの機をとらえ、重大事に発展しかねないこの問題をうまく処理するものと考えた。だが鳩山前首相は、最も事情に通じた専門家が「実現不能」と助言したにもかかわらず、県外移設を約束してパンドラの箱を開けてしまう。こうして自ら政治的危機を招いた末に、ついに7ヶ月後にはその助言の正しさを認めることになった。

《民主党の過剰な反官僚姿勢》
日本で起きたのは、官邸が政策立案の経験に乏しい評論家から過大な影響を受け、官僚を蚊帳の外に置くという事態だった。官僚は政策実行のための省庁間のすりあわせや米国との調整を行うこともできず、大局的な戦略的構想を練るべき閣僚級の人間が、課長補佐クラスのこまかい仕事をやることになった。

《小沢一郎前幹事長の影響》
小沢氏は安全保障政策、税金、金融規制などの問題に干渉する力を持ち、実際にもその影響力をたびたび行使した。ただしそれは国家の利益のためではなく、間近に迫った参院選で優位を確保するという、目先の戦術的目標のためだった。
---------以上---------

普天間問題については、なぜ鳩山政権があのような迷走を繰り返すことになったのか、その検証を行おうとしてまだ手が着いていません。今後の課題です。

鳩山政権と官僚との関係についてのグリーン氏の指摘は、私が懸念していた状況になっているとの指摘でした。すべての省庁が同じ状況であったわけではないでしょうが、少なくない省庁において行政が機能不全に陥っていたのでしょう。現在も続いているのでしょうが。
この点に関して、[田原総一朗のニッポン大改革]での田原氏と長谷川幸洋氏の対談長谷川幸洋・東京新聞論説委員 インタビュー vol.1「民主党政権は国民をなめていた」に、関連する面白い話が載っていました。
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長谷川:(管総理)が12月30日に基本計画をまとめ6月に成長戦略を出しましたけど、あの成長戦略の中身を見ると、あれは政府が、内閣が作った文章というよりは、経済産業省のお勉強ペーパーですよ。
田原:あれを見て、作った経済産業省の課長に言ったんです。「これね経済産業省のペーパーとしてはいいけど、農業問題、厚生労働問題、なんにも入ってないと。つまり縦割の一番悪い例だ」と。
田原:実はね、この経産省の幹部に、「なんでこんなもの作ったんだ」と僕は聞いたんですよ。そしたら、ほんとうはね、自民党時代こういうものを作るときには、経産省の局長だか課長クラスが財務省とも話をし、外務省とも話をし、当然農水省とも話をしてやったんだと。(民主党になって)脱官僚依存となっているから、まず大臣に言わなきゃいけない。ところが、経産大臣に言っても「ああそうか」と何にも反応がない。だから「内閣を刺激をするために我々は作ったんだ」と。それを(管総理が)丸のみしちゃったわけね。
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民主党政権は、政治主導で霞が関の縦割り行政を排除しようとの趣旨でしたが、実態は、政治主導の主役たるべき政務三役がむしろ弊害となり、縦割りがより一層ひどくなっている、というお粗末でした。
コメント
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