弁理士の日々

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ラミダス猿人「アルディ」が意味するもの

2010-01-26 20:44:51 | サイエンス・パソコン
ディスカバリーチャンネル「今、映像で蘇る人類最古の女性アルディ」で放映された内容について、先日報告しました。

関連記事として、アルディピテクス・ラミダス国立科学博物館の記事も見つかりました。

《チンパンジーとの共通祖先から現生人類に至る進化の過程》
人類の進化を
チンパンジーと共通の祖先 → アルディ → ルーシー → 現生人類
と比較してみると、
①アルディで二足歩行をまず獲得。足の親指は離れたまま。脳の容積はチンパンジーなみ。
②ルーシーで足の親指が他の4本と一緒になり、土踏まずも獲得。
③さらにその後、脳の容積が増大し、より優れた知能を獲得して現生人類に至った。
という過程を経ているようです。

チンパンジーなどの類人猿と対比したときの現生人類の特徴として、以下の点が挙げられます。

(1) 直立二足歩行
 ① 頭蓋骨と背骨との結合位置の変化
 ② S字状の背骨
 ③ 内臓を下から支える広い骨盤
 ④ 大腿を後ろに蹴り出す股関節と大臀筋
 ⑤ 大腿骨下端の面の角度
 ⑥ 土踏まずの形成
 ⑦ 足の親指が他の4指と離れていない
(2) 脳の容積が3倍以上大きく、道具を使い、言葉を持ち、高等知能を有する。
(3) 顔が平坦(口が前に飛び出していない)。
(4) 言語を発することのできる喉頭を持っている。
(5) 体毛がない。皮膚に汗腺を有する。
(6) 発情期の喪失(年中が発情期)
(7) 犬歯が小さい。

このうち、アルディ段階で確実に獲得しているのは(1)の③であり、⑥⑦はルーシー段階で獲得です。①②④⑤はよくわかりません。(2) (3) はルーシーでも獲得していません。(7) はアルディの段階で変化しています。

アルディ、ルーシーで直立二足歩行を獲得し、結果として脳容積の増大を受け入れる準備ができ、その後のある段階で脳容積の増大が始まったのでしょう。
(4) (5) (6) がどのようなタイミングで変化したのかも不明なままです。


《人類はなぜ二足歩行を手に入れたのか》
以前、アフリカのサバンナでの生活を最適化するため、二足歩行が始まった、との説がありました。しかしアルディ発見の結果、アルディが森林に棲息していたことが明らかとなり、サバンナ最適説に見直しがかかりました。

チンパンジーなどの類人猿で犬歯・特に雄の犬歯が大きいのは、雌の獲得を巡って雄同士が争うためです。雄と雌の体の大きさも違います。
それに対しアルディを含むラミダス猿人は、男も女も犬歯が小さく、男女の体格差も大きくありません。
このような身体的特徴から、一部の類人猿のように,身体の大きなオスがメスを独占していた訳ではなさそうで、配偶相手をめぐる諍いは少なかったと考えられています。強いオスによるメスの独占ではなく,手にした食糧を決まった女性のところへ運んでご機嫌をとったり,女性が子育てに専念することができるよう手助けをするなど,一夫一婦の関係が成立していた可能性もある、と考えられているようです。

そして二足歩行の意味です。
番組では、配偶者の女性が子育てに専念できるよう、できるだけ多くの食料を配偶者のもとに運ぶことができる男性がもてたのではないか。直立二足歩行により、手で食料を運ぶことができるので、これが直立二足歩行の理由ではないか。と推測していました。

《東大諏訪教授による骨格の三次元再現》
東大の諏訪教授は今回、マイクロCTスキャンで骨の破片を三次元計測し、その結果をコンピュータ内で組み合わせ、さらに復元した結果をプラスチック模型として作成したと番組で紹介されました。
国立科学博物館の『アルディ』を復元するというサイトでは、このときに使われた三次元プリンターが紹介されています。
三次元プリンターは光を当てると固まる液状のアクリル樹脂を土台となる平面に吹きつけ,層状に塗り重ねることで立体を作るのだそうです。このようなハイテク技術の結果としてアルディが再現されたのですね。
コメント
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