弁理士の日々

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中央公論 佐藤優・手嶋龍一対談

2007-03-31 19:12:13 | 歴史・社会
起訴休職外務事務官である佐藤優氏は、背任罪等に問われ、一審有罪(執行猶予)、二審も有罪となり、現在上告中です。

背任罪は何かというと、イスラエルの学者を日本に招いたり、イスラエルで開かれる学会に日本人を派遣するのに際し、その費用として、対ロ支援委員会予算を充てたことが、支援委員会の協定違反だということです。
しかし、佐藤氏が外務省に黙って予算を充てたわけではありません。外務省条約局が決済して予算が充当されました。

もしその行為が違法であるとしたら、罪に問われるのは、起案者である佐藤氏ではなく、決済した条約局の責任者であるはずです。ところが、裁判では条約局責任者の罪は一切問われず、佐藤氏のみが背任で有罪判決を受けています。

一審では東郷和彦元欧亜局長の証言はありませんでしたが、二審では証言し、「支出は外務省が組織として認めたことで、佐藤君の責任ではない」と証言しました。しかし判決は、東郷証言は証拠で裏付けられていないとして採用されませんでした。

佐藤氏の「国家の罠」によると、佐藤氏が支援委員会予算を充てようと図ったとき、条約局のノンキャリ官僚のひとりがこれに反対しました。それを聞いた鈴木宗男議員が、佐藤氏から頼まれもしないのに、条約局を怒鳴り上げたのです。その後、決済はおりました。そして条約局の上司は、催促されてもいないのに鈴木議員に詫び状を提出します。
この詫び状が、佐藤裁判では佐藤氏に不利な証拠として外務省から提出されました。

しかし、たとえ怒鳴り上げられたとしても、それに怖じ気づいて意に反する決済をしたのだとしたら、やはり決裁者が処罰されるべきです。議員に怒鳴り上げられて高級官僚が違法行為をすることが無罪だなんて、信じられません。


中央公論4月号で、佐藤優氏と手嶋龍一氏の対談で「外務省は“武装解除”される」という記事が載っています。

外国と結んだ条約の解釈については、外務省条約局が国としての解釈権限を有していると理解されています。裁判所ではありません。例えば、日本とアメリカが結んだ条約について、日本は日本の裁判所が解釈し、アメリカはアメリカの裁判所が解釈するとしたら、条約の解釈はちぐはぐとなり、破綻します。条約局のこの権限を「有権解釈権」というそうですが、佐藤裁判の高裁判決はその権限を否定しているというのです。

手嶋氏「今回の控訴審の判決で、『有権解釈権』を真っ向から否定された外務省は、今後の対外折衝で手負いになってしまいます。どんな条約や協定を結ぼうと、司法当局によっていとも簡単に覆されることが明らかになったのですから。このままでは、日本外交の“武装解除”が急速に進むでしょう。」

外務省は、佐藤氏一人が有罪になれば事足れりと考えるのではなく、自分の役割をよく見つめ直すべきでしょう。
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