yoshのブログ

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「奧の細道」と漢籍

2023-06-25 06:27:26 | 文学
  有名な「奧の細道」の中で芭蕉は漢籍を参考にしています。
     
      「奧の細道」の有名な序文。
月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして行きかふ年もまた旅人也

      これは李白の「春夜桃李園ニ宴スルノ序」とほぼ同じです。即ち
      「夫レ天地者ハ萬物ノ逆旅、光陰ハ百代ノ過客、而シテ浮生ハ夢ノ如シ」

また、出羽・立石寺での句
          閑さや岩にしみ入蟬の聲

この句に関しては、中国六朝・梁の詩人・王籍の詩に「若耶溪に入る」という漢詩があります。
蝉噪林逾静
鳥鳴山更幽

 (読み方)
蝉噪(さわ)ぎ林逾(いよいよ)静かに
鳥鳴き山更に幽(いう)なり

立石寺の芭蕉の俳句は、この漢詩を踏まえた可能性があります。
なお、「若耶渓(じゃくやけい)」とは、浙江省にある風光明媚な渓流の名です。

また、象潟(きさがた)での俳句
象潟や雨に西施(せいし)がねぶの花

この句にある西施は、楊貴妃らと並ぶ中国古代四大美女の一人です。西施は越王勾践から呉王夫差に献上されたのですが、夫差は西施の容色に溺れ、呉国を滅亡させてしまいました。つまり傾国の美女です。(史記、司馬遷)

南宋の蘇軾は「雨にけむる西湖(せいこ)を把(も)つて西施(せいし)に比(ひ)せんと欲つすれば、淡粧濃抹(たんしょうのうまつ)総(すべ)て相(あひ)よろし」と、西湖と西施を称えました。芭蕉はこの蘇軾の詩を知っていて象潟の句の参考にした可能性があると不肖は思います。

   半藤一利 「歴史探偵 昭和の教え」 文春新書




    

     

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