yoshのブログ

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髪の落つるを歎ず 白居易

2019-01-04 06:49:24 | 文学
中唐の詩人、白居易の七言絶句を紹介します。

  嘆髪落

多病多愁心自知
行年未老髪先衰
随櫛落去何須惜
不落終須変作糸

髪ノ落ツルヲ歎ズ

多病(たへい)多愁 心自ズカラ知ル
行年(こうねん)未ダ老イザルニ 髪先ンジテ衰フ
櫛ニ随ヒテ落去ス 何ゾ惜シムヲ須(もち)イン
落チザルモ 終(つい)ニ須(すべか)ラク変ジテ糸ト作(な)ルベシ

「訳」
病気がちで悩みが多いことは、われながらよく承知しているが、
まだ老齢に達していないのに、頭髪のほうが先んじて衰えてしまった。
櫛とともに抜け落ちようと、惜しむ必要があろうか。
抜け落ちずとも、結局細い白糸のようになってしまうのだから。

 「鑑賞」
801年頃の作。「行年未だ老いざるに」と嘆くのも道理、白居易はこのときまだ三十歳でした。彼はこの前年、科挙に合格しましたが、当時の制度では、吏部の試験に合格しないと官職につけないため、これを目指して猛勉強中であり、心労が重なって頭髪に衰えがあらわれたのでしょう。苦労のかいあって803年に試験に合格。生涯の友である元稹(げんじん)と同僚になりました。その元稹への手紙で「まだ老齢でないのに、歯が抜け髪が白くなった」と愚痴をこぼしたということです。
試練のときが長すぎ、さすがに楽天的な白居易も気が滅入ることが多く、めずらしく虚無的な影が漂うこの詩は、そんな彼の姿を如実に映しだしています。

 井波律子 「中国名詩集」岩波書店
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