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中庸 元田東野

2013-03-03 17:34:41 | 文学
幕末・明治の漢学者、元田東野(1818-1891)の漢詩です。元田の名は永孚(ながざね)です。

   中庸

勇力男児斃勇力
文明才子醉文明
勧君須擇中庸去
天下萬機歸一誠

  勇力ノ男児ハ勇力ニ斃(たお)レ
文明ノ才子ハ文明ニ醉フ
君ニ勧ム須ク中庸ヲ擇(えら)ビ去(ゆ)クベシ
天下ノ萬機ハ一誠ニ歸ス



勇気をたのみ、腕力をほこるものは、結局は粗暴と無分別によって身を亡ぼしてしまうものであり、ただ文明にあこがれる才子は文明に心酔するあまり、わが国固有の美点長所を忘れて無節操軽薄な人物となりかねない。そこで、君にぜひ勧めたいことは、常に不偏中正の道
を選び、これに則した考えをもち、行動をとることである。「中庸」にあるごとく、天下のあらゆることが起こる微妙な点は、すべてただ一つの誠によるものであるから、それを失わないようにしなければならない。

 起句、承句は平凡ですが、転句、結句は優れていると思います。特に、「天下ノ萬機ハ一誠ニ歸ス」は名言でしょう。

明治中期、明治政府は欧化政策を急速に推進したのですが、元田は、この風潮を苦々しく思い、この漢詩を賦して、東洋の心を示して、社会に警鐘を鳴らしましました。

 元田東野は熊本藩士の家に生まれ、祖父、自泉より厳しい漢学教育を受け、藩校、時習館では横井小楠らと知り合い、その感化を受けました。明治4年には明治天皇の侍読となり、以後20年に亘って天皇に進講をしました。この間、教育勅語の起草にも参加しました。明治
天皇が「朕は菊花よりも元田が詩吟を愛するなり」仰せられたという詩吟の名人でした。

        「吟剣詩舞道漢詩集 絶句編」  日本吟剣詩舞振興会編
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