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漢詩 蘇軾

2015-03-23 05:43:27 | 文学
先日、時代劇「銀漢の賦」を見ましたら、いい漢詩が二首ありました。どちらも北宋の詩人、蘇軾(1036~1101)の作品でした。それを紹介します。


中秋月

暮雲収盡溢清寒
銀漢無聲轉玉盤
此生此夜不長好
明月明年何處看

暮雲収マリ盡キテ清寒溢ル
銀漢聲無ク玉盤轉ズ
此生此夜長(とこしえ)ニハ好カラズ
明月明年何處(いずれのところにか)看ン

「訳」
日暮れがたの雲はすっかりどこかへかくれて、すがすがしい冷気にみちている。
天の川のせせらぎは音もたてず、ただひとつ玉の盤(満月)を転ばしている。
わが生涯、いつまでもこんなすばらしい中秋の月の夜にあえるものではない。
この明月を、来年はいったいどこでながめることだろう。

  登玲瓏山

何年僵立両蒼龍
痩脊盤盤尚倚空
翠浪舞翻紅罷亜
白雲穿破碧玲瓏
三休亭上工月延
九折巌前巧風貯 
脚力尽時山更好
莫有限将趁無窮

何年僵立(きょうりつ)ス両蒼龍
痩脊(そうせき)盤盤トシテ尚オ空ニ倚(よ)ル
翠浪舞イ翻ル紅ノ罷亜(ひあ)
白雲穿(うが)チ破ル碧キ玲瓏(れいろう)
三休亭上工ミニ月ヲ延(ひ)キ
九折巌前巧ミニ風ヲ貯(たくわ)ウ
脚力尽キル時山更ニ好シ
有限ヲ将(も)ツテ無窮ヲ趁(お)ウコト莫レ

 「訳」

玲瓏山にある青い龍にも似た二つのそびえたつ高い峰は何年もの間そこにあったのだろう。
峰は痩せた老人の背骨のように曲がりくねって空に倚りかかるようだ。
そこを登ってゆくと、紅く色づいた稲田を背景に青葉が波のように翻り、青い玲瓏山の両峰が
白雲を突き破ってそびえ立っている。
山頂近くには曲がりくねった九折巌が続き、その近くには、月を眺め風を貯えるのにちょうどよい三休亭が設けられている。
歩き疲れて、足を運ぶ力も尽きようとする時、高山の景色はひときわ美しく見える。
しかし、自分は所詮限りある人間の身、これ以上、無窮の美を追い求めることはしないでおこう。

最後の二行に深い味わいを感じます。

葉室麟 「銀漢の賦」 文芸春秋
  近藤光男「漢文大系 17 蘇東坡」 集英社
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