山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

2010年北海道くるま旅でこぼこ日記:第20日

2010-09-18 05:06:59 | くるま旅くらしの話

第20日 <7月29日(木)>

【行 程】

道の駅:かみゆうべつ温泉チューリップの湯 → ワッカ原生花園 → 道の駅:葉菜野花 → 道の駅:パパスランドさっつる → JR川湯温泉駅 → ホテルパークウエイ → 川湯温泉・川湯園地駐車場(泊) <169km>

今朝もまた雨で始まるようである。毎日お天気に対する愚痴ばかりを書いているけど、12日に函館に上陸以来、終日晴れた日といえば、たったの2日くらいしかなかったような気がする。今日は道内にもかなりの大雨が降るとの警報も出ているようで、若しかしたら蝦夷梅雨も、内地と同じように梅雨末期の大雨とやらが来訪したのかも知れない。晴れれば暑くなるのは承知しているけど、こんなに暗い空模様ばかりでは、折角の北海道行が翳ってしまう。

この道の駅には、少し離れた所に文化センターのような立派な建物があり、そこにも広い駐車場があって、トラックなどはそちらに泊って休んでいたようである。北海道の土地の広さには、改めて羨ましさを覚える。昨夜は結果的には、温泉の方の駐車場に泊った車は我がSUN号と乗用車が2台ほど居ただけで、駐車場はその広さがひときわ目立っていた。トイレの処理などするために、鉄道資料館側の方に移動する。こちらには数台のくるま旅の車が留っていて、皆さん思い思いに出発の準備をされていた。

今日は久し振りに常呂町(現在は北見市)のワッカ原生花園を訪ねることにしている。ワッカは毎年訪ねる場所なのだが、去年はコース取りの都合で行けなかったので、今年は是非行こうと思っていた。北海道には幾つもの原生花園があるが、自分にとっての格別の原生花園は、ワッカと野付半島である。野草の観察に興味を持つようになって以来、北海道に来て初めてその不思議な植生に驚き、感動したのがワッカだった。内地では高山植物に入るようなものまでが、海辺の原野に他の多くの野草たちに混ざって花を咲かせていたのである。こんな不思議な花園を見たのは初めてのことだった。それから十年以上が経って、ワッカは自分の中では、日本一の野草の天国となっている。

9時頃出発。R238を一路南下して走る。40分ほど走って左折して常呂港方面へ。ワッカ原生花園は、サロマ湖を海から仕切るように細長く突き出た半島の右側(西)の部分にある。港の先の方に架かる橋を渡ると、ネイチャーセンターがあり、そこが原生花園散策の基地となる。10分ほど走って、ネイチャーセンターの駐車場に到着。今日は今のところ雨も降らず、風も吹いていないので、散策には良い条件である。前回の時はカンカン照りの猛烈な暑さで、下着まで汗まみれになったことを思い出す。来訪者はそれほど多くないようだが、20台近くの車が留まっていた。

先ずはネイチャーセンターに行き、現在の野草たちの開花状況を見に行く。ここではその時期の花の開花情報を掲示して提供してくれている。それで、今どんな花がどの辺りで見られるのかの見当がつくのである。ありがたいことだ。原生花園に咲く花の大方の名前などは知っているけど、未だ見たことのないものや知らないものもあり、楽しみである。今日は目一杯野草たちの花の写真を撮ろうと考えている。

一番の楽しみは、今まで一度しか逢えなかったクロバナハンショウヅルと再会するということなのだ。掲示板には今咲いていると表示されていた。ワクワクする。クロバナハンショウヅルというのは、カザグルマ(=テッセン、クレマチスの原種)の仲間なのだが、名前の通り黒っぽい濃い紫の半鐘に似た形の花を咲かせる蔓性の野草で、開花の後にカザグルマと同じ様な、丸い風車状の翁草の咲き後のようなのを残すのである。これは口で説明するよりも、写真を見れば直ぐに判ることである。

初めてワッカに来た時、偶然にもこの花に出会ったのだった。図鑑でしか見たことがなかったのだが、直ぐにそれだと判った。野草に関心を持ち出すと、一度も会っていないものでも、野に出れば花の方から呼びかけてくれるような気がする。勿論図鑑を見ていなければ名前も姿もわからないのだけど、見ていれば自然とそうなるのだから不思議である。その様にして確認した野草が幾つかある。この時は実に嬉しい。感動も大きいのである。クロバナハンショウヅルはその中の代表的な野草なのだ。

とにかく未だ一度しか実物にあったことがない。今日はどこで会えるのかが楽しみだ。花園に入ると、たちまち野草たちの歓迎を受けた。一番盛大だったのは、アキカラマツとカセンソウ、それにノコギリソウだろうか。いや、クサフジやナデシコやナミキソウなども結構声を掛けてくれていたように思う。アキカラマツは、東京では玉川上水の側道辺りに多く見られるのだが、その花を見ることが殆どできなかった。というのも、花が咲く前に雑草として刈り取られてしまうからなのである。それがここに来ると、何の心配もなく花を咲かせている。真に地味な花で、野草に関心のない人たちには、それが花なのだと気づかないほどではないか。派手な花ばかりに目が行くのは人の常なのだと思うけど、それだけでは本物には気づけない。野草の観察を始めて以降、花の美しさというのは必ずしもその色や形だけではないということに気づくようになった。それは花だけではなく、人間についても同じように言える気がする。

写真を撮り続けながら、目当てのクロバナハンショウヅルを探す。なかなか手を挙げてくれない。挙げていても遠すぎて気づかないのかもしれない。20分ほど経った頃だろうか、遂に見つかった。思わず、おおっ!と声が出てしまった。来る度に会いたくて焦がれていたものにようやく再会を果たした瞬間だった。黒っぽい花というのは、自然界には少ないようである。クロバナハンショウヅルのきりっとした姿は、真に印象的である。一度見たら忘れられない。かなりの数の半鐘形の花をつけて歓迎してくれた。その後も、他の場所にたくさん咲いているのを確認した。大歓迎振りで、少し有頂天になってしまったようだ。

   

何年ぶりだろうか、ようやく今年はクロバナノハンショウズルに会うことができた。この花はこの季節のキング的な存在ではないかと自分は思っている。咲き終わった後に、風車のような髭を生やすからである。

海辺の方にも出向いて、オホーツクの厳しい冬を耐えて乗り越えてきたウンランやハマニガナなどの小さな花を撮る。ハマエンドウも。花という雰囲気では無いけど、コウボウムギやハマボウフウも至る所に根を下ろしていた。ハマベンケイソウを見たいと探したが、なかなか見つからなかった。これは後で、邦子どのがネイチャーセンターの人に訊いて、その場所に出向いて確認することが出来た。さすが、専門家はその所在にも詳しい。

   

ハマベンケイソウの大株。やや肉厚の葉は弁慶草と呼ばれる花の特徴だが、これほどたくさんの花をつけているのを見たのは初めてだった。ここのハマベンケイソウは、以前静岡県の伊良湖近くの浜で見たよりも小型のように思えた。

2時間ほど散策をしたのだが、歩いたのはセンターから500mに過ぎない距離である。花園は、4km以上に渡っているのだから、詳しく観察しようとすれば、数日は必要であろう。でも、2時間でもここの現在の主役のほとんどにお目にかかることができて十二分に満足だった。実に楽しい時間だった。

観察を終えた時は12時を過ぎており、珍しく邦子どのが食欲を示していた。久し振りに外食にしようと、近くにある船長の家という店に出向く。この店は本来は民宿であり、超豪華な海の幸が味わえることで有名でもある。我々はまだ泊ったことがなく、邦子どのは予てより知人などからその情報を得て、泊りたがっているようである。今日は豪華とはゆかないけど、ま、少しの海鮮料理で我慢して貰うことにする。自分としては、海の幸は大好きだけど、ウニやイクラやカニ、エビなどという食べものはもう卒業済みで、健康のことを考えると、一大決心が必要なのである。ま、一年に一度の馬鹿食いくらいは大目に見ていいのかもしれない。

食事の後は、今日の宿を川湯温泉の駐車場にすることにして、一路南下を続ける。網走市街を抜け、小清水町経由で清里町札弦の道の駅に寄って、汚れた車の拭き掃除をした後、上手く行けばさくらの滝で、サクラマスの遡上ジャンプを見物したいなどと考えている。

少し走ると大きな湖が目に入る。能取湖である。この湖名をどう読むのかが判らなかった。「のうとり」と呼んでいたのだが、これは「のとろ」と読むのだと後で気がついた。北海道の地名は、大和のアイヌ征服のゴリ押し感が強い。土地は征服できても地名だけは文化として残ったのかも知れない。その能取湖は、サンゴ草が有名だが未だそれを見たことがない。秋になると葉を朱に染めたサンゴ草が湖畔を赤く彩るという。その場所に行ってみたいと思っている。何時になったらその季節まで旅を延ばせるのか今は未定であり、その時が来るのを楽しみにしている。網走に近づくにつれ、能取湖の水面が荒波立って来ていた。走っている感覚では、左右の草木などはさほど風に揺れてはいないのだが、湖の彼方では、風が強いのかも知れない。

間もなく網走市街に入る。網走といえば、北の最果てのようなイメージがあるけど、湧別町辺りから見れば、大都会である。刑務所というのは、多くの場合は都会の外れ等に造られていることが多い。昔は犯罪者を離島や孤島などに送り込んだようだが、今ではその様なことをしたら、そこが犯罪者の天国になってしまいそうである。網走番外地が有名なのは、昔の映画の中での話であり、現在の姿では無い。犯罪者を収容する施設が観光資源となるような話には、あまり好感をもてないのが、馬の骨の付き合いにくいところなのであろう。(こりゃ、脱線)

網走を抜けると、道は自動的にR244となる。右に濤沸(とうふつ)湖を見ながら走る頃から一段と風が強くなり出した。嫌な予感がする。SUN号は風には滅法弱い。特に横風は要注意である。邦子どのはワッカで歩き疲れたのか眠っている。静かになるときは眠る時である。外の強風などに気づかないのは幸いである。少し行って、葉菜野花という妙な名の道の駅にちょっと立ち寄る。何もないのでパス。直ぐにR244と別れて右折してR391に入り小清水町市街を抜け、少し先から札弦(さっつる)方面への道道に入る。風は一段と厳しく強くなり、さすがの邦子どのも途中から目覚めたようだっした。時々雨粒が落ちてくるようだけど、雨降りとはならないのがありがたい。しかし、この強風は何とか早く止んで貰いたい。間もなく道の駅:パパスランドさっつるに到着。ここには水があるので、それを使わせて貰って汚れた車を拭く。洗車などは論外である。水も最小限で済ませるようにして、拭き終るのに小1時間ほど時間がかかった。この間疲れた邦子どのは午睡。車が少しきれいになり、気分も少し回復する。この道の駅からは斜里岳が大きく見えるはずなのだが、黒雲に覆われていて、全く見えない。アイヌの神様達は、よほどに何か懲らしめの相談でもしているのであろうか。

札弦を出て、道道から再びR391に入り、川湯方面へ。途端に雨となった。この辺りはずっと前から雨降りだったのかも知れない。野上峠を下っても雨はかなりの勢いで降っており、先ほど拭いたばかりの車体はもとの汚れに戻ってしまったに違いない。何だか無駄な骨折りをした感じがする。間もなく川湯エリアに入って、先ずはJR川湯温泉駅に行き、摩周の水を補給する。ここの水は美味い。水を汲んだ後は、近くのホテルパークウエイに立ち寄り湯をする。ここの温泉は、我々の気に入っている場所で、いつも入ることにしている。川湯は硫黄の匂いのする湯が多いようだが、ここの湯は、匂いはなく、ソフトである。そして料金も300円と安い。1時間ほど温泉を楽しんだ後は、川湯園地の森の中にある駐車場に車を止める。ここが今夜の宿である。未だ小雨が降っている。風は止んだようだ。既に18時近くになっており、辺りは暗闇の中である。留まっている車は数台ほどか。とにかく、疲れているので、早めに食事を済ませ、寝床にもぐりこむことにした。

※ 原生花園の花については、追って別途ご紹介したいと思っています。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2010年北海道くるま旅で... | トップ | 2010年北海道くるま旅で... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

くるま旅くらしの話」カテゴリの最新記事