山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

アルメリアの花に寄せて

2024-02-03 08:53:38 | 宵宵妄話

 アルメリアという花をご存知でしようか。和名を浜簪(ハマカンザシ)と言います。花言葉は、「思いやり」「心遣い」「歓待」というのだそうです。実に適切な花ことばだと思います。

 4、5日前、近くのホームセンターへ寄って冬に販売されている花たちを見ていましたら、横の方にこのアルメニアの小さな鉢が置いてありました。寒い所為なのか、カンザシ風に良く咲いている花はたった二つで、モヤモヤと茂った細い葉の中に蕾が3つほど並んでいました。何だか急に嬉しくなりました。

 私には、この花に旅の思い出がくっついて離れないでいるのです。そのことをほんの少し書いて見る気になりました。何のことかと思われることでしょうけど、この花にまつわる私の大切な旅の思い出の一つなのです。

それは、北海道の北端の町、稚内を訪れた時のことでした。この町を何度も訪れているのですが、ここへ来ると、いつも稚内公園の脇にある森林公園キャンプ場に泊ることにしていました。稚内公園は、稚内の市街地を下方に見下ろし、遠く樺太の島を望むことができる高台にある広大な公園で、その森林の脇に造られた無料のキャンプ場は、くるま旅の者には真にありがたい施設なのでした。

広い公園の中には、高さ80mもある開基百年記念塔を初め幾つかの記念施設や記念碑などが作られています。キャンプ場の近くなので、車を置いてから歩いてそれらの施設を見聞するのが楽しみでした。施設だけではなく、広大に広がる大きな景観を味わうのも楽しみでした。稚内は、太平洋戦争が終るまでは、日本領だった樺太へ渡る基地の港であり、ここから遥かに見える島との間を大勢の人たちが行き交っていたのです。その時代の頃を想像しながら、更には宗谷岬から樺太が島なのか大陸と繋がっているかの確認のために向かって北海の荒海を小舟に乗って旅立った郷土の英雄、間宮林蔵(この方は守谷市の隣のつくばみらい市の出身で、我が家から2kmくらいの所に生家があるのです)の樺太冒険の旅のことなどを想い描きながら、ここからの大きな景色を見るのを楽しみにしていたのです。

何回目かの訪問の時に九人の乙女の碑や氷雪の門のあるエリアを歩いていた時に、足元に作られている花壇に赤紫の丸い穂のようなものを付けた花が咲いているのに気がつきました。それまでに見たこともない花でした。私は野草や草花の観察に興味関心があって、知らない花を見つけると、確認しないではいられない人間なのです。花壇にあった表示板には「アルメリア」と書かれていました。それまで見たことも聞いたこともない花でしたが、何故か強く印象に残ったのです。すぐ傍に氷雪の門や九人の乙女の碑などがあったので、この花は北国に咲く花なのではないかと思ったのでした。おとなしげに咲いている花たちを見て、この花は、終戦末期に、邪悪で悪辣で極悪非道な人間の権化そのもののロシア人軍隊が攻め入って来る直前に、命の限りを尽くして電話局員としての使命を果たしながら自決せざるを得なかった9人の乙女たちの魂を慰めながらここに咲いているに違いないと、そう思ったのです。それ以来樺太や稚内、北方領土などの言葉を耳にする度に、あの稚内に咲いていたアルメリアの花が眼前に現れるようになったのです。

コロナのパンデミックに襲われて5年以上も旅をしないままでいる内にアルメリアのことはすっかり忘れていたのですが、思いがけもなくその名の名札を付けられた小さな鉢に入った花を見つけて、直ちに買うことを決めたのでした。

今その鉢は私の机の上を日中の日差しを探して移動しています。草花たちは皆日差しが大好きですから、水やりと一緒にその願いを叶えてやるように、私なりに努めているのです。

私の所にやって来てから10日ほどが過ぎました。当初たった二つだけだった開花した花はすっかりその役割を果たして消え去り、蕾だった花が二つほどその後を次いで丸く咲き始め、新たに幾つかの蕾が膨らみ始めています。毎日ほんのわずかですが、花たちの命の動きを見つめていると、あの稚内の思い出が様々に甦って来るのです。20年に亘るくるま旅の中では、数多くの野草たちの草花に出会って、心を慰められて来ていますが、その中でも印象に残る花の一つがアルメリアで、それを今毎日身近に見ていられることに幸せを感じています。

      

 私の机上のアルメリアの花。記事を書いている間に少し大きくなりました。稚内では、この花は花壇として咲いていました。

 

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