山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

日生の五味の市

2009-11-13 02:23:49 | くるま旅くらしの話

相生から国道250号線を赤穂市に向かって走り、市街を通過すると日生(ひなせ)の町に入ります。日生町は平成の大合併で備前市となりました。今頃の旅では、新しい市や町の名が障害となって、その土地が持つ古来からのイメージが消し去られてしまうのを感ずることが多のですが、日生がその中に入るのかどうかは今のところ判りません。

日生を「ひなせ」と読める人が、地元近郊以外に住む人でどれくらいいるのか判りませんが、私の場合は読めたのでした。何故なのか自分でも不思議に思っていましたら、車を走らせているうちに小豆島行きのフェリー乗り場があるのに気づき、なるほど、これで日生のことを知っていたのかと思い出したのでした。30数年前初めての転勤で高松に5年間ほど在住したことがあります。その時に小豆島に行く機会があり、小豆島から発着しているフェリーを調べている時に、山陽側からは日生という所からも小豆島に行けるのだと知ったのでした。その後一度も日生の航路を利用したことも無く、日生の地を訪れるのも初めてのことなのですが、昔のことを思い出し、妙に親近感を感じたのでした。

日生の町は海と島に囲まれています。国道を走っているときは、四方の山が島なのか半島なのか判らない感じです。海があまりにも穏やかなので、湖なのではないかと勘違いしてしまいそうです。畑地のような平地は殆ど無く、紅葉間近な樹木をたくさん蓄えた小高い山が、海の傍まで迫ってきている箇所が多いようです。島自体も山陽側の本土と同じ状況ですから、橋が架けられれば島であるというような感覚はなくなってしまいそうです。でも今のところはどの島にも橋は架かっていないようでした。

走っている内に何度か「日生五味の市」という看板が目に入りました。市といえば、何か定期的に海産物でも販売する場所があるのかなと思ったのですが、どうやらそうではなく常設の施設らしいと判りました。瀬戸内の海産物には掘り出し物が多いということを、5年間の高松での暮らしで知っていますので、これはどうしても寄らなければならないと考えたのでした。旅の楽しみの一つは、何と言っても「食」に関することです。特に私は海の幸への憧れが強いのです。肉よりは魚に興味関心があるのです。

ということで、道案内板に従ってそこへ行ってみることにしました。海沿いの細い道を500mほど入って行くと、船溜りの傍にかなり広い駐車場があり、その向うに市場らしい建物と何か会館のようなものが建っていました。車を駐車場に留め、早速市場の中を覗いてみました。あるある、いろんな魚が売られていました。しかし今日はこれから備前の焼き物の里を見に行くつもりなので、生の魚を買うわけにはゆきません。それでもワタリガニがあったら1~2匹せしめたいなと思っていたのですが、生きている奴はなく、茹でたのが売っていました。我が家では生きているのを買って来て茹でるのをモットーとしているので、敬遠するしかありません。これは相棒の主義なのです。

買わなくても、魚のあれこれを見ているだけで楽しいのですが、本当のところは何か一つぐらいは手に入れたいのです。一回りが終る頃の場所に、揚げたての魚の唐揚げを売っている店がありました。少し体格の良い若い女性が、それを作って販売しているようです。唐揚げは2種類あって、一つはママカリ、もう一つは名前の判らないものでした。ままかりはイワシによく似た小魚ですが、これは瀬戸内海では有名で、飯(まま)を借りに行かなければならないほど美味い、というところから名付けられた魚だといわれています。実際に高松の港などで何匹も釣ったことがありますが、ま、イワシと同じくらいの美味さだったと思います。もう一つの判らない方を訊いて見ますと、シズということでした。ママカリは細身ですが、この魚はアジを平べったくしたような形をしています。どちらを買うか迷ったのですが、シズの方を選びました。どちらもたった3百円ですから、一つずつ買っても差支えは無いのですが、我々の旅の考えでは、グルメに嵌(はま)るのは危険だと考えているものですから、1品に止めるのが常道なのです。

そのシズの唐揚げを買って、意気揚々と車に戻ったのですが、お昼には少し早いけど、わざわざ冷たくなるのを待って食べることもあるまいと、早速口に入れることにしたのでした。いヤア、これが美味いこと、実に美味いのです。骨の抵抗は殆ど無く、いつも小骨を確実に喉付近に引っ掛ける相棒ですら、事件を起こさずに賞味できたのでありました。最近、これほど美味い魚の唐揚げを食べたことはありません。300円で4匹もあるのです。いヤア、美味かったなあ。感動の時間でした。

   

シズ(=エボ鯛)の唐揚げ。4匹で3百円という超廉価である。いヤア、今年最高の唐揚げの味でした。一杯やれなかったのが残念でした。

相棒は近くの店で「かきおこ」というのを食べたがっていましたが、相生の所にあったものと比べて少し値段が高いのが気になって実行には移さなかったようでした。私の方はそのようなものがあるのには全く気づかず、「かきおこ」というのは一体何なのだろうと思ったのですが、どうやらそれは牡蠣入りのお好み焼きのことらしいのでした。

その後で改めて気をつけてみていると、日生の町の中には「かきおこ」の看板を掲げた店がいくつもあり、この辺りの名物となっていたようでした。相棒の食べ物に対する感性は、なかなかなものだなと思いました。家に帰ったら、牡蠣を買って来て自分で作るのだと気合を入れて話していましたが、今のところその意気込みはどこかに潜めてしまっているようです。

家に戻ってから「シズ」という魚を調べましたら、なんと「エボ鯛」のことではありませんか。美味い筈です。エボダイの干物といえば、これは王様といっていいのではないかと思います。それの唐揚げなのですから、美味くないわけが無いのです。ママカリを選ばずにエボダイを選んだのは大正解だったのでした。

旅先でのしょうもないない話ですが、このような日常の積み上げの中に旅の楽しさがあるようにも思っています。今度日生を訪ねる時には、必ず五味の市に行き、もう一度シズの唐揚げを買い、更に少し気張ってママカリも賞味したいなと考えています。そして、相棒には何としても「かきおこ」を味わって貰いたいと思っています。

コメント
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