東日本大震災以降,コロナ禍にあっても,この10年は,全国的に土地や建物の価格は,上昇傾向にあり,この傾向は,今後も続くと予想されています。不動産の上昇局面で,賃料の増額請求をされると,毎年のように増額請求されたら大変だと,不安に思う方も多いと思います。
賃料増額は,貸主から一方的に行えるものではなく,貸主と借主の合意を基本とし,協議や調停で合意ができない場合には,借地借家法(旧借地法,旧借家法)の定めに基づき,「事情変更」があれば,裁判で増額される場合があります。この事情変更について,裁判所は,前回の増額から時間の経過を必要としています。例えば,東京地判平成5年9月27日は,「このように長年にわたって当事者間の合意により形成されてきた賃料額及びその形成過程は,将来における賃料改定に当たっても十分考慮されるべきものであり,原告らとしても,賃借人の存在を知った上でこれを買い受けたのであるから,従前の賃料額の形成過程を尊重すべきものである。ところで,最近における本件建物の賃料月額の推移をみると,昭和六二年ころ以降が三万円,平成元年九月分以降が四万円,平成三年九月分以降が六万円と,原告らが本件建物を取得する直前と比較すると,三,四年の間に倍額になっているのみならず,原告らが本件において増額を求めている時期は,前回の増額の時期からわずか一年経過後にすぎないのであって,賃料上昇の程度が従前に比べて甚だしくなっていることが認められる。」として,「近隣建物の賃料額に比較して本件建物の賃料額が低廉であるからといって,現時点において改定を要するほど本件建物の賃料額が相当性を欠くに至っているとまでは認め難い。よって,賃料増額事由の存在は認められない。」と判示しています。つまり,1年経過した程度では,事情変更は認められないので,増額は認めないとしています。これは,2年経過でも同じで,3年経過以降,不動産の価格が上昇していれば,増額の可能性が出てきて,年数が経つにつれて,その可能性は高まってくるというイメージです。このように,毎年のように増額請求は難しいので,貸主の言うとおりに,値上げに応ずる必要はありません。(弁護士 種田和敏)
賃料増額は,貸主から一方的に行えるものではなく,貸主と借主の合意を基本とし,協議や調停で合意ができない場合には,借地借家法(旧借地法,旧借家法)の定めに基づき,「事情変更」があれば,裁判で増額される場合があります。この事情変更について,裁判所は,前回の増額から時間の経過を必要としています。例えば,東京地判平成5年9月27日は,「このように長年にわたって当事者間の合意により形成されてきた賃料額及びその形成過程は,将来における賃料改定に当たっても十分考慮されるべきものであり,原告らとしても,賃借人の存在を知った上でこれを買い受けたのであるから,従前の賃料額の形成過程を尊重すべきものである。ところで,最近における本件建物の賃料月額の推移をみると,昭和六二年ころ以降が三万円,平成元年九月分以降が四万円,平成三年九月分以降が六万円と,原告らが本件建物を取得する直前と比較すると,三,四年の間に倍額になっているのみならず,原告らが本件において増額を求めている時期は,前回の増額の時期からわずか一年経過後にすぎないのであって,賃料上昇の程度が従前に比べて甚だしくなっていることが認められる。」として,「近隣建物の賃料額に比較して本件建物の賃料額が低廉であるからといって,現時点において改定を要するほど本件建物の賃料額が相当性を欠くに至っているとまでは認め難い。よって,賃料増額事由の存在は認められない。」と判示しています。つまり,1年経過した程度では,事情変更は認められないので,増額は認めないとしています。これは,2年経過でも同じで,3年経過以降,不動産の価格が上昇していれば,増額の可能性が出てきて,年数が経つにつれて,その可能性は高まってくるというイメージです。このように,毎年のように増額請求は難しいので,貸主の言うとおりに,値上げに応ずる必要はありません。(弁護士 種田和敏)
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