花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

鎌倉夫人

2018-02-25 17:01:09 | Book
 先だって山登りへ行く電車の中で読み始めた立原正秋著「鎌倉夫人」(角川文庫)ですが、その後の通勤電車も使って読み終わりました。主人公の鎌倉夫人がライオンを連れて鎌倉の若宮大路を散歩する書き出しに、この後の展開はどうなるのだろうかと期待していたものの、いたって通俗的な内容だったのでいささかがっかりしてしまいました。古都鎌倉でライオンを飼う夫人が相当にかっ飛んだ行動をしてくれるのではと思ったのですが、ただのよろめきドラマでした。現実の身の回りにこんな人はいませんが、ことよろめきドラマにあっては見慣れたキャラクターでしょう。鎌倉夫人とその夫、そして鎌倉夫人の父親の後妻が三角関係にあり、家庭内はいさかいが絶えません。家庭外では、鎌倉夫人とその妹、そして従兄弟の三角関係が展開されます。ふたつの三角関係を軸に話が進んでいく訳ですが、そこはよろめきドラマにありがちな付いたり離れたりで「好きにやれば」といった感じです。ただ、最後はかなりかっ飛んでいて、鎌倉夫人と従兄弟が鎌倉夫人の夫と父親の後妻を殺害します。その殺し方は、飼っているライオンに食い殺させるというものでした。何だか無理やり話を終わらせた感が無きにしも非ずですが、この小説が週刊誌の連載であったことを考えると、話の内容も終わり方も諸事情のなせることかなと思いました。それから、連載されていた週刊誌が主に男性が読む雑誌だったからでしょう、女性の反感を買うだろうなと思われる女性軽視的な箇所が随所に見受けられました。
 さて、娘から「面白い本があれば紹介して」と言われています。教育上、それから私がこんなものばかり読んでいると思われるといけないので、「鎌倉夫人」は紹介出来ません。今、通勤電車で読んでいる「羊と鋼の森」(宮下奈都著・文春文庫)はピアノの調律師の話ですが、登場人物の他者へのまなざしがやさしく、繊細で感受性の強い主人公は周囲の人の言葉からいろいろな影響を受け、自分との対話を通じて成長の糧としていきます。主人公が他者と響きあっていくところが、読者にも共鳴してくる好著です。子どもに紹介するのはこちらの方かなと思います。