古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

原発と権力(1)

2011-10-19 | 読書
『原発と権力』(山岡淳一郎著、11年9月刊ちくま新書)は考えさせられる本でした。以下、その終章から。
 【日本ではほとんど議論されていないけれど、中国、米国、インド、フランスなどは今後、間違いなく「トリウム原子力」の開発に力を入れるとみられる。
 核燃料になるトリウムは、天然資源で、豪州やインド、中国、米国などに広く分布し、資源量はウランの4倍以上といわれる。トリウムはモナズ石という鉱物中に6~9%含有されているが、じつはモナズ石の50%前後がレアアースなのだ。レアアース採取後の残渣にトリウムが含まれていることになる。
 トリウムにはどんなメリットがあるのか。
「核不拡散」の効果が高い。トリウムは原子力の燃料に使っても、核兵器に転用可能なプルトニュームをほとんど生まない。
 一般にトリウムの使用は「溶融塩炉」が適しているとされる。亀井立命館大学衣笠総合研究機構・研究員は言う。
「水を使って熱を取り出す既存の原子炉に比べて、溶融塩は高温でも圧力が低い。5気圧程度です。今使っている軽水炉は沸騰水型で70気圧、加圧水型で160気圧。圧力の低い分、装置は丈夫に作られる。燃料棒を使わないので、頻繁に発電をとめて燃料交換する必要もない。高レベル放射性廃棄物の主な成分となる超ウラン元素を生じない。」
「燃料がもともと溶融しているので燃料棒のメルトダウンはない。もし、液体燃料が加熱すると炉の底の小さな栓が溶けて、燃料は炉の下の容器に重力だけで排出されてガラス固化体に変わります。この固化体に放射性物質は閉じ込められ、外には放出されません。」
 トリウム原子力は従来のウラン・プルトニューム原子力より優れているようだが、プルトニュームを生まないという最大の利点が、皮肉にも、研究開発を阻んだ。権力者たちは、プルトニュームの軍事転用という昏い欲求を満たせないトリウムを無視してきたのである。

 じつは、米国は世界に先駆けてトリウム溶融塩炉をこしらえ、1965~1969年まで無事故で実証実験を終えている。担当したのはオークリッジ国立研究所の物理学者ワインバーグだった。が・・・権力者はプルトニュームという「余禄」がつく原発を欲した。ニクソン大統領はワインバーグを解雇し、トリウム原子力を「お蔵入り」にした。
 日本では、トリウム原子力が政権内で議論されたことは、ない。溶融塩炉を開発したワインバーグが首相の中曽根に手紙を送り、トリウム原子力を提案したが、なしのつぶてだった。「こんな礼を失した政治家は見たこともない」とワインバーグは怒ったとつたえられる。】
 つまり、現在の原発は核兵器の原料プルトニウムを生み出すために作られた!