shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤル②

2019-07-21 | The Beatles
 今回は「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤルの後半戦。UKマザーはニュージーランドとイタリアで、フランスとブラジルは独自マトだ。前回の北欧3強対決も面白かったが、今回も中々個性的な音で、Sさんと二人で大いに盛り上がった(^o^)丿

⑤ニュージーランド盤(4N/3N, 167g)
 Sさん:良い音ですね。まさにUKの音です。
 私:音圧は普通ですが、しっかり作り込んだ良い音という感じですね。手堅いというか...
 Sさん:UKマザーの各国盤は4N/3Nの組み合わせが多いみたいですが、そのせいか 3NのB面の方が音圧は高く感じます。
 私:「Eight Days A Week」の例のベース、ボンボンボンボン~♪ が気持ち良く聞こえるのもそのせいでしょうね。
 Sさん:「I Don't Want To Spoil The Party」も「What You're Doing」もすごく良い音してますね。バックの音がとてもよく聞こえます。
 私:やっぱりB面の方が良いですね。
 Sさん:細かい所を聴き比べてみたいのでもう一度ノルウェー盤をかけてみてもいいですか?
 私:どーぞどーぞ。
 Sさん:うわぁ~、やっぱりコレが一番ですわ。
 私:ズウゥ~ンと響きますね。低音の、もひとつ下の帯域まで音が出ている感じです。
 Sさん:別テイク聴いてるみたいですよ。
 私:ギターを縦横無尽に弾きまくってる感じが最高ですね。「For Sale」のB面がこれほどド派手に鳴り響くノルウェー盤はやっぱり別格ですよ。

⑥フランス盤(145g)
 Sさん:これが例の高いヤツですか... ジャケットが良いですね。
 私:はい、横野さんがTVで紹介されてたのを見て欲しくたまらなくなり、方々探して買っちゃいました。TVでは20~30万とか言ってましたがいくら何でもアレはちょっと盛り過ぎ。仙台の某レコ屋でも十数万円ぐらいしますが、ネットで根気強く探せば10万円以下でありますよ。私のは4万円弱でした。コレはもう100%ジャケ買いです(笑)
 Sさん:音デカいですね。「Help!」の時と同じ元気な音です。
 私:60年代前半のフランス・モノラル盤は大体ラウド傾向にありますね。
 Sさん:ヴォーカルがグイグイ前に出てきます。
 私:この「I'm A Loser」なんてまるで “John Lennon & The Beatles” という感じですよ(笑) 聴いてて楽しくなってくる、めっちゃ直球勝負の音ですね。
 Sさん:さすがフランス、我が道を行きますね(笑)
 私:倍音とか響きとか細かいことを気にせず、とにかくガンガン攻める...(笑) ある意味、モノラルにピッタリの発想と言えますね。まさに “火の玉ストレート” な音。
 Sさん:モノラル・サウンドのド真ん中を外してませんよね。
 私:これこれ、この「Rock & Roll Music」... この曲が一番よく鳴る音作りですね。
 Sさん:ジョンのヴォーカルが凄いですよ、これ。ジョンが目立ち過ぎです(笑)
 私:ジョン好きにはたまらんレコードですね。これなんかモロに “John Lennon & The Beatles”!!!
 Sさん:これだけヴォーカルが映えるレコードもそうないと思いますよ(笑)
 私:まさにエンターテインメントの極致!
 Sさん:エンジニアが完全にジョンのバンドやと思い込んでますね。ポールが脇役みたいな扱いです。
 私:うわぁ、この「Eight Days A Week」なんかもうジョンの独壇場ですやん! 
 Sさん:やっぱりこのエンジニア、ジョンのファンですよ(笑) バックの演奏は “鳴っとったらエエ” みたいな感じでハンド・クラッピングもおとなしい... ガチの “ヴォーカル・アルバム” ですね。
 私:ジョンのヴォーカル全振りアルバム...(笑)
 Sさん:「I Don't Want To Spoil The Party」間奏のギター・ソロのおとなしいこと...(笑) 
 私:それに引き換え、ジョンの一人二重唱の大きいこと...(笑)
 Sさん:これ、もうノルウェー盤とは別のレコードに聞こえちゃいますね。
 私:ジョンと他の3人との差別化が凄いです。
 Sさん:ベースも小さいですし、ポールの存在感が希薄ですね。
 私:いやぁ、ホンマに色んな意味でおもろいレコードですわ。今回の「For Sale」はノルウェー盤の優勝で異存ないですけど、このフランス盤には是非とも審査員特別賞をあげたいですね(笑)

⑦イタリア盤(4N/4N, 153g)
 私:さぁ、次はSさんの大好きな赤いレーベルですよ(笑)
 Sさん:カッコエエなぁ... (≧▽≦)
 私:どうですか、この音? 「Help!」ではイタリア盤がブッチギリの優勝でしたが...
 Sさん:(しばらく沈黙した後で)う~ん、もうちょっと何か欲しいなぁ... まぁさっきのフランス盤の後やから余計にそう感じるのかもしれませんが...
 私:この「Kansas City」、ちょっとフェイド・アウトが早過ぎやしませんか?
 Sさん:そうですね... 何か変でした(笑)
 私:「With The Beatles」や「Help!」で聴けた、あのイタリア盤の音じゃないですね。
 Sさん:基本的にUKの音なんですけど何かもの足りない... 倍音がちょっと足りないのかな。
 私:「Eight Days A Week」は重低音の低いところが出てないですね。
 Sさん:高いところもイマイチ出てないから音に艶がない...
 私:ノルウェー盤はまるで演奏してる姿が見えるようでしたし、フランス盤ではジョンの唾が飛んできそうで思わず顔をよけずにはいられませんでしたが、このイタリア盤はただそこでレコードが鳴ってるって感じです。音が平面的なんですよね。立体感がない。
 Sさん:ちょっと元気がないですね。迫力不足というか...
 私:音がスピーカーから飛び出してこないんです。前回の優勝者がまさかの... という、よくある展開ですね。

⑧ブラジル盤(141g)
 私:最後はコレで笑わしてもらいましょか。
 Sさん:確か以前に一度ココで一緒に聴きましたね。
 私:はい、初期のブラジル盤を5枚ほど一気聴きして思い切りズッコケた記憶があります。今回は “色物枠” でのエントリー(笑)
 Sさん:ジャケットで「In Italy」と思わせといて中身は「For Sale」... しかも曲順もメチャクチャで、A①「Rock & Roll Music」A②「Kansas City」とド派手な曲から順に並んでるのが笑えます。当然A面ラストは一番地味な「I'll Follow The Sun」(笑) B面ラストが「Words Of Love」で終わる「For Sale」っていうのもある意味すごいです。
 私:まったく、何考えてるんでしょうね、ブラジル人は。音の方は... う~ん、なんか昔のカセットデッキで鳴らしてるみたいな音ですね。良く言えば素朴な音。ハッキリ言って倍音がどうの、という次元じゃない。
 Sさん:でもイタリア盤よりは元気ありますよ。フランス盤と比べても、少なくともポールはこっちの方が喜ぶと思います(笑)
 私:ジョン以外の3人は、でしょ?(笑)
 Sさん:まぁブラジル人エンジニアがビートルズというバンドの音楽をちゃんと理解できてなかったのかもですけど...(笑) 一応黒っぽい音にはなってますけど、少なくともカントリーのフィーリングは無いですね。何か農園で作業してる時のBGMみたいな感じです。
 私:そりゃあボサノバの国ですからね。ジョアン・ジルベルトのカントリー&ウエスタンなんて想像できないでしょ(笑) まぁこのレコードはハイファイとは別世界の音ですけど、何か味があってコレはコレで許せるなぁ。もしも66年の武道館公演で開演前のプレ・ショウ・ミュージックがあったとしたら多分こんな音で鳴ってたんちゃうかなぁ、って思います。
 Sさん:なるほどねぇ。何となくわかる気がします。このB①「Eight Days A Week」、演奏は遠いですけど手拍子は近いです。
 私:ベースもショボイなぁ... まるでシンセで出してるような音ですね。
 Sさん:B②「Honey Don't」は逆に演奏が近いですね。さっきよりベースがグイグイきますしギターも響きわてたってます。
 私:このメチャクチャなバラつき具合がブラジル盤(笑)
 Sさん:「I Don't Want To Spoil The Party」なんて、パーティーがとっても楽しそうですよ。哀愁はほとんどないですけど...(笑)
 私:Bラスの「Words Of Love」もノーテンキに明るいというか、カラッとしててエエんとちゃいますか。エンジニア、多分何も考えずに切ってますよ、コレ。
 Sさん:明るい「For Sale」っていうのもねぇ... まぁ最初からそれを狙ってこういう曲順にしたのかな?
 私:鋭い分析ですね。このブラジル盤はビートルマニアが酒の肴にして盛り上がるのにはピッタリの1枚と言えるのではないでしょうか。

ということで2回にわたってお届けした「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤルは如何でしたでしょうか? 文中に書いたように、ウィナーは文句なしにノルウェー盤で特別賞がフランス盤ということで満場一致(←2人しかいてへんけど...)。それにしてもいかに音が違うとはいえ1枚のアルバムを8回続けて聴いても全然飽きるどころかまだまだ聴きたいと思わせてくれるビートルズの音楽って改めて凄いなぁと思いました。