そもそもペパーズのニンバス盤というのは1984年にイギリスの Hi-Fi Today というオーディオ専門誌が企画した超高音質盤のことで、同じイギリスにある Nimbus Records というクラシック音楽専門のインディ・レーベルに制作を依頼、カッティング工程から使用するビニールの材質に至るまで徹底的に音質にこだわり抜いて作られ、メールオーダーのみの1,000枚限定で発売されたというビートルズ・コレクター垂涎のレコードだ。発売当初は通販限定ということもあってそれほど話題にも上らなかったようだが、そのスーパーウルトラ高音質ぶりが徐々に評判を呼び、その稀少性と相まって最近ではウン十万円というプレミア価格で取り引きされているようだ。
さて、ここからが前回の続き。久々に緊張しながら(笑)そのニンバス盤に針を落とすと静寂の中からアルバム・タイトル曲のA①がスタート。おぉ、これは今まで何百回何千回と聴いてきた「ペパーズ」とは明らかに違うサウンドだ。一言で言うと “ビートルズが目の前にいる” のである。このレーベルは自然な音場再生によるナチュラル・サウンドを標榜していたというが、確かにスピーカーの前でリンゴがドラムをバシン!と叩くのが見えるのだ。ヴォーカルもまるで薄皮を剥いだように実にリアルな響きで、A②「With A Little Help From My Friends」なんか “リンゴ、歌うまなったんちゃう?” って思ってしまったし、A③「Lucy In The Sky With Diamonds」ではジョンがスピーカーのすぐ横に “立って” いるのが分かるのだ。これこそまさに、音圧がスベッたとか重低音がコロンだとかいう次元を完全に超越した至高のサウンド。オーディオの世界では “スリー・ディメンション” とか言うらしいが、まさに “んほぉ~、ニンバス盤たまんねぇ~” 状態である(笑)
A④「Getting Better」のイントロのギターの音がキンキンしていないのにもビックリで、かなりの大音量で聴いていたにもかかわらず、他の盤のように耳に突き刺さってくる感じが全くないのだ。そして更に驚いたのはハイハット・シンバルの音が実にリアルな金属感を表現していることで、シューン!シューン!と空間を立ち昇っていくその鋭利なサウンドには言葉を失う。シンバルの艶、そしてベースの艶... すべてが艶々しい。またまた “んほぉ~” である(笑)
A⑤「Fixing A Hole」ではハープシコードの音が実にクリアでビックリ(゜o゜) リンゴのハイハットによるアクセントも実に効果的に響く。一つ一つの楽器の音が屹立すると曲の表情まで変わってくるから不思議である。A⑥「She's Leaving Home」ではジョンとポールのヴォーカルの細やかなニュアンスまでしっかりと表現されていてこれまたビックリ(゜o゜) ストリングスの響きもさすがクラシック専門レーベルだけあってお見事という他ない。A⑦「Being For The Benefit Of Mr.Kite」は何と言ってもリンゴの変幻自在なプレイが白眉。他のドラマーでは絶対に無理だろうなと思わせるスーパー・ハイ・テクニックを駆使して音楽の根底を支えるリンゴに惚れ惚れする。又、ポールが来日公演の際に “弾きながら歌うのは大変” と言っていたベース・ラインの難しさもコレを聴いて初めて分かった気がした。
B①「Within You Without You」は、正直言うとコテコテのインド音楽を5分以上も聴くのが耐えられずにこの曲だけ飛ばして聴くことの方が多かったのだが(←「LOVE」に入ってる「Tomorrow Never Knows」との複合リミックスは大好きなんやけどね...)、このニンバス盤では5分を超える演奏時間を忘れて思わず聴き入ってしまった。とにかくシタールやタンブーラの音が生々しいのだ。今まで “冗長で退屈” と思っていたこの曲が全く苦痛に感じなかったのには正直本当に驚いた。
B②「When I'm Sixty-Four」はクラリネットが他では聞いたことがないような柔らかい音を出しており、ポールが意図したオールド・ジャズ風の音世界を上手く表現するのに一役買っている。とにかくここで聴ける楽器の音色、そしてその響きは特筆モノだ。B③「Lovely Rita」も各楽器の分離が素晴らしくて、音が目の前でクルクルと回転しているかのような錯覚を覚えるほど。この躍動感はハンパない。特にリンゴの一撃必殺バシン!は快感そのものだ。
B④「Good Morning Good Morning」はジョンの声のリアリティーが段違いで、“ヴォーカルに強いニンバス盤” との思いを強くした。動物たちのSEもリアルそのもので、ニンバス・エンジニアの完全無欠な仕事ぶりに思わず笑ってしまう。B⑤「Sgt. Pepper's (Reprise)」はノリ一発で聴くべきアッパー・チューンだが、音の良さゆえにこの曲のドライヴ感に更なる拍車がかかっており、聴いてて思わず身体が揺れてしまう超絶グルーヴィーな仕上がりになっている。演奏時間は短いが、ロックンロール・バンドとしてのビートルズの凄みがビンビン伝わってくるキラー・チューンだ。
そしてラストのB⑥「A Day In The Life」はもう圧巻の一言! 例のオーケストラの不協和音パートはこれまで聴いてきた盤の中で一番音楽的な意味を持って耳に響いたし、何よりも凄いのはリンゴのフィルインの生々しさで、先ほども書いたように彼の目立たないスーパー・ハイテクニックを思う存分味わえるのがこのニンバス盤の旨味ではないかと思う。それと “ポールのミドル・パートから後半のジョンのパートへの繋ぎ部分の “ア~♪” を歌っているのはジョンかポールか?” でファンの間でも意見が分かれていたが、これを聴けば声質的にも歌い回し的にも(ジョンに似せて歌っている)ポールだと分かるだろう。
A Day in the Life Multitrack "Ahhhs..." John or Paul?.wmv
LP両面を聴き終え、そのあまりの素晴らしさのためにその後に続けて他の盤を聴く気になれず、結局2回連続でニンバス盤を聴いてしまった。このレコードは色んな仕掛けというか音が入っている “音のおもちゃ箱” みたいなアルバムなので、何度も繰り返し聴くと頭の中がお花畑状態になってドッと疲れるのだが、ニンバス盤に限っては全くそんなことがなく、何度続けて聴いても疲れるどころか寿命が10年は延びたように感じられた。私はこの感動と興奮をぜひとも Sさんと分かち合いたいと思い、ちょうど開店1周年記念日の1週間ほど前に B-SELS に持っていった。 (つづく)
さて、ここからが前回の続き。久々に緊張しながら(笑)そのニンバス盤に針を落とすと静寂の中からアルバム・タイトル曲のA①がスタート。おぉ、これは今まで何百回何千回と聴いてきた「ペパーズ」とは明らかに違うサウンドだ。一言で言うと “ビートルズが目の前にいる” のである。このレーベルは自然な音場再生によるナチュラル・サウンドを標榜していたというが、確かにスピーカーの前でリンゴがドラムをバシン!と叩くのが見えるのだ。ヴォーカルもまるで薄皮を剥いだように実にリアルな響きで、A②「With A Little Help From My Friends」なんか “リンゴ、歌うまなったんちゃう?” って思ってしまったし、A③「Lucy In The Sky With Diamonds」ではジョンがスピーカーのすぐ横に “立って” いるのが分かるのだ。これこそまさに、音圧がスベッたとか重低音がコロンだとかいう次元を完全に超越した至高のサウンド。オーディオの世界では “スリー・ディメンション” とか言うらしいが、まさに “んほぉ~、ニンバス盤たまんねぇ~” 状態である(笑)
A④「Getting Better」のイントロのギターの音がキンキンしていないのにもビックリで、かなりの大音量で聴いていたにもかかわらず、他の盤のように耳に突き刺さってくる感じが全くないのだ。そして更に驚いたのはハイハット・シンバルの音が実にリアルな金属感を表現していることで、シューン!シューン!と空間を立ち昇っていくその鋭利なサウンドには言葉を失う。シンバルの艶、そしてベースの艶... すべてが艶々しい。またまた “んほぉ~” である(笑)
A⑤「Fixing A Hole」ではハープシコードの音が実にクリアでビックリ(゜o゜) リンゴのハイハットによるアクセントも実に効果的に響く。一つ一つの楽器の音が屹立すると曲の表情まで変わってくるから不思議である。A⑥「She's Leaving Home」ではジョンとポールのヴォーカルの細やかなニュアンスまでしっかりと表現されていてこれまたビックリ(゜o゜) ストリングスの響きもさすがクラシック専門レーベルだけあってお見事という他ない。A⑦「Being For The Benefit Of Mr.Kite」は何と言ってもリンゴの変幻自在なプレイが白眉。他のドラマーでは絶対に無理だろうなと思わせるスーパー・ハイ・テクニックを駆使して音楽の根底を支えるリンゴに惚れ惚れする。又、ポールが来日公演の際に “弾きながら歌うのは大変” と言っていたベース・ラインの難しさもコレを聴いて初めて分かった気がした。
B①「Within You Without You」は、正直言うとコテコテのインド音楽を5分以上も聴くのが耐えられずにこの曲だけ飛ばして聴くことの方が多かったのだが(←「LOVE」に入ってる「Tomorrow Never Knows」との複合リミックスは大好きなんやけどね...)、このニンバス盤では5分を超える演奏時間を忘れて思わず聴き入ってしまった。とにかくシタールやタンブーラの音が生々しいのだ。今まで “冗長で退屈” と思っていたこの曲が全く苦痛に感じなかったのには正直本当に驚いた。
B②「When I'm Sixty-Four」はクラリネットが他では聞いたことがないような柔らかい音を出しており、ポールが意図したオールド・ジャズ風の音世界を上手く表現するのに一役買っている。とにかくここで聴ける楽器の音色、そしてその響きは特筆モノだ。B③「Lovely Rita」も各楽器の分離が素晴らしくて、音が目の前でクルクルと回転しているかのような錯覚を覚えるほど。この躍動感はハンパない。特にリンゴの一撃必殺バシン!は快感そのものだ。
B④「Good Morning Good Morning」はジョンの声のリアリティーが段違いで、“ヴォーカルに強いニンバス盤” との思いを強くした。動物たちのSEもリアルそのもので、ニンバス・エンジニアの完全無欠な仕事ぶりに思わず笑ってしまう。B⑤「Sgt. Pepper's (Reprise)」はノリ一発で聴くべきアッパー・チューンだが、音の良さゆえにこの曲のドライヴ感に更なる拍車がかかっており、聴いてて思わず身体が揺れてしまう超絶グルーヴィーな仕上がりになっている。演奏時間は短いが、ロックンロール・バンドとしてのビートルズの凄みがビンビン伝わってくるキラー・チューンだ。
そしてラストのB⑥「A Day In The Life」はもう圧巻の一言! 例のオーケストラの不協和音パートはこれまで聴いてきた盤の中で一番音楽的な意味を持って耳に響いたし、何よりも凄いのはリンゴのフィルインの生々しさで、先ほども書いたように彼の目立たないスーパー・ハイテクニックを思う存分味わえるのがこのニンバス盤の旨味ではないかと思う。それと “ポールのミドル・パートから後半のジョンのパートへの繋ぎ部分の “ア~♪” を歌っているのはジョンかポールか?” でファンの間でも意見が分かれていたが、これを聴けば声質的にも歌い回し的にも(ジョンに似せて歌っている)ポールだと分かるだろう。
A Day in the Life Multitrack "Ahhhs..." John or Paul?.wmv
LP両面を聴き終え、そのあまりの素晴らしさのためにその後に続けて他の盤を聴く気になれず、結局2回連続でニンバス盤を聴いてしまった。このレコードは色んな仕掛けというか音が入っている “音のおもちゃ箱” みたいなアルバムなので、何度も繰り返し聴くと頭の中がお花畑状態になってドッと疲れるのだが、ニンバス盤に限っては全くそんなことがなく、何度続けて聴いても疲れるどころか寿命が10年は延びたように感じられた。私はこの感動と興奮をぜひとも Sさんと分かち合いたいと思い、ちょうど開店1周年記念日の1週間ほど前に B-SELS に持っていった。 (つづく)