shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Kenny Burrell (BLP-1543)

2019-06-25 | Jazz
 私には長いこと探してるのに中々見つからない垂涎盤が何枚かあって、毎日そんなレコードのことばかり考えて過ごしているのだが、そういう入手困難盤を数年越し、ヘタをすれば十数年越しでついに手に入れることができた時の嬉しさはもう筆舌に尽くし難い。つい最近も長いこと欲しくて欲しくてたまらなかったレア盤を一気に何枚か買えて大喜びしたので、今日はその内の1枚を取り上げようと思う。
 そのレコードというのはハードボイルドな音色でカッコ良くスウィングするジャズ・ギタリスト、ケニー・バレルのブルーノート・レーベルにおける2枚目のアルバム(BLP-1543)で、その内容の素晴らしさもさることながら、ポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホルが描いたイラストをフィーチャーしたカッコいいジャケット・アートワークのせいでとてつもないプレミア付きで取り引きされているレコードなのだ。
 アンディ・ウォーホルといえば何と言ってもストーンズの「Sticky Fingers」(←例のジッパー付きジャケットのヤツね...)が断トツで有名だが、他にも同じストーンズの「Love You Live」やルー・リードの「The Velvet Underground & Nico」(←有名なバナナ・ジャケのヤツ)、ビートルズ関連ではジョン・レノンの「Menlove Ave」といったアルバムのジャケット・アートワークを手掛けており、その唯一無比と言えるデザイン・センスでレコード・コレクターの間でも抜群の人気を誇っている。
 このようにウォーホルのデザインしたロック・アルバムのジャケットは主に60年代後半以降のものになるが、それ以前の、ウォーホルがまだ “ごくごく普通のイラストレイター” だった頃に手掛けていたのは50年代ジャスのアルバム・アートワークだ。中でもジョニー・グリフィンの「The Congregation」とケニー・バレルの「Blue Lights Vol. 1」「Blue Lights Vol. 2」、そしてこの BN1543番「Kenny Burrell」(← Goldmine の Price Guide では「Kenny Burrell, Volume 2」となっているが、正式には self-titled abbum だ...)はかなり有名で、もちろん中身の音楽も素晴らしい。
 私はケニー・バレルの大ファンで、彼のアルバムはほとんどすべてオリジナル盤で持っているのだが、そんな中で唯一この1543番(← BNの1500番台は紛らわしいタイトルのアルバムが多いので、レコード№で呼ぶ方がかえってわかりやすいケースがある...)だけがどうしても手に入らなかった。まぁそれもこれもジャズ・レコードゆえのプレス枚数の少なさ、ブルーノート・レーベル人気による価格高騰、そしてそれに輪をかけるウォーホル・プレミアの3つの要因が重なったせいなのだろう。
 そういうワケでこのアルバムは滅多に市場に出てこず、たまに出てきたとしても1957年に出た Lexington Ave. アドレスの1stプレス盤は大体 $1,000~$1,500ぐらいで取り引きされていて全く手が出ないので、それと音がほとんど変わらないであろう New York, USA アドレスの2nd プレス盤(1963年リリース)に的を絞って何とか3万円以内で手に入れたいと思って虎視眈々と狙っていた。思えば私が eBayを始めてから今年でちょうど17年になるのだが、それより前の数年も入れると約20年越しということになる垂涎盤だ。
 そんな New York, USAの1543盤が eBayに出品されたのは先月の半ばで、ちょうどペパーズのニンバス盤の件でモヤモヤしていたこともあって、その鬱憤を晴らしてやろうと不退転の決意でスナイプ、終了直前まで $113だったところに $320を突っ込み(笑)結局 $213で落札できた。送料込みでも25,000円程度でゲットできて大満足だ。
 届いた盤は結構スリキズがあるものの、傷に強い BN盤とオルトフォンのモノ・カートリッジの相乗効果のおかげでチリパチ音が音楽の邪魔をすることはなく、コスパは上々と言えるレベル。演奏内容の方は CDでイヤというほど聴いてきたので隅々まで分かっているつもりだったが、やはりオリジナル・アナログ盤で聴くと音の厚みが段違いだし、ウォーホルのジャケットを見ながら聴くと更に音楽に深みが増すような錯覚すら感じてしまう。CDや配信ではこうはいかない。
 1956年3月に NYで行われたブルーノート・レーベルにおけるバレルの初セッションから5曲(トミフラのピアノ入りカルテットが A④B①の2曲+フランク・フォスターのテナー入りクインテットが B②③④の3曲)、同年5月に行われたデビュー盤「Introducing Kenny Burrell」(BLP-1523)用セッションからキャンディドのコンガが入った A①、ソロでガーシュウィンの名曲を美しくつま弾いた A②、そしてカフェ・ボヘミアでのケニー・ドーハムとのライヴ音源からの A③(←ドーハム名義の「Round Midnight At Cafe Bohemia」に入ってる同曲とは全くの別テイクで、こっちの方は曲の前半部でバレルのソロが大きくフィーチャーされている!)の計8曲で構成されており、様々なフォーマット、メンツの中で粋にスウィングするバレルの魅力が全開だ。
 中でも私が一番気に入ってるのが A④「Moten Swing」で、まさに“間”の芸術としか言いようのない絶妙なテンポ設定でバレルが淡々とこの曲を料理していくところが超カッコイイ(≧▽≦)  オリジナル・モノLPならではの轟音でドスン、ドスンと腹に響くオスカー・ペティフォードのベースに歌心溢れるトミー・フラナガンのピアノと聴き所が満載だ。それにしてもヴァンゲルダー・カッティングの LPはホンマに音がエエなぁ... (≧▽≦)
Moten Swing