shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

BURN / The Yellow Monkey

2012-01-04 | J-Rock/Pop
 私は歌謡ロックが大好きだ。歌謡ロックとは簡単に言えばアン・ルイスの「六本木心中」や B'z の「孤独のRUNAWAY」のように日本人特有の歌謡曲的なメロディーをビートの効いたロックの形態で演奏したもので、ロックも歌謡曲も両方とも大好きな日本人である私にとっては三度の飯より好きなジャンルなのだ。
 そもそも日本人がロックをやる場合、それはどこまで行っても和製の歌謡ロックにしかなりえない。イエロー・モンキーのフジ・ロック・フェスでの挫折(←洋楽アーティスト達との競演ということで敢えてヒット曲を外した洋楽ロック的なセットリストが裏目に出てしまったのだが、吉井さんは後に自伝の中で「自分たちは歌謡ロックをやってるっていう負い目があったから過去の楽曲の中で一番ロック的なものを用意した...」と激白している)を例に挙げるまでもなく、アメリカやイギリスといったロックの本場で通用するようなロックを日本人が目指す必要など更々ないと思う。和の心、つまり歌謡曲的な要素を内包した日本人としてのアイデンティティーを堂々と前面に押し出しながらロックをやればいいのだ。私の大好きなB'zも、サザンも、そしてもちろんこのイエロー・モンキーも歌謡ロックの最も完成された世界を確立し、その可能性を音楽的にとことん追求することで邦楽史を塗り変えてきたのではなかったか。洋楽ロックの雰囲気を模してただギターをかき鳴らしシャウトするだけでは、それこそ黄色いサルの単なるモノマネに堕してしまう。
 イエロー・モンキーの音楽性を一言で言ってしまえば “70'sロックの危険な匂いを撒き散らしながら昭和歌謡っぽい日本人的なメロディーを80'sロックの親しみやすいサウンドで表現した歌謡ロック” だと思うのだが、そんな “日本人にしか作り得ない歌謡ロック” 路線の最高傑作が「LOVE LOVE SHOW」に続くシングルとして1997年にリリースされて彼ら最大のヒット曲となった「BURN」である。
 この曲を初めて聴いた時はそのあまりのカッコ良さにブッ飛んだ。これがあのチャラい「LOVE LOVE SHOW」を歌ってたのと同じバンドなのかと我が耳を疑うくらいのテンションの高さである。バリバリのロック・サウンドでありながら、圧倒的にして感動的なラテン歌謡メロディーの連続放射によって “ハードボイルドな歌謡ロック” として屹立しているのだ。何よりも感動を覚えるのはイエロー・モンキー特有の “胸をかきむしるような衝動” が怒涛の如く押し寄せるその曲想で、“これぞ日本のロックが到達した金字塔!!!” と小躍りしたものだ。その後も何百回聴いたか分からないが、その初期衝動的確信に変わりはない。
 まずは風雲急を告げるようなイントロにズンドコズンドコと縦横無尽に暴れまわるドラムスが乱入し、そこへ切っ先鋭く切り込んでくるピアノが絡んでくる瞬間のカッコ良さ。このイントロを始め、要所要所をキリリと引き締めるピアノの音色がこの曲の名演指数を劇的にアップさせている。メロディアスなヒーセのベース・ラインには耳が吸い付くし、躍動感に満ちたアニーのドラミングに胸が熱く火照る。ワウを使ったエマのギター・ソロも圧巻だ。終盤でここぞとばかりに飛来する “フッフー♪” コーラスで “悪魔を憐れむストーンズ好きです大会” へとなだれ込んでいくマニアックな展開にもニヤリとさせられる。とまぁ挙げていけばキリがないが、とにかくこの曲には “これぞ最高傑作!” と強く思わせる魔法のような抗いがたい魅力が満載なのだ。
 吉井さんによると、この曲は夫婦喧嘩の後に出来たとのことで、台所で一服してる時に “かぁ~ぎり~なぁい よ~ろ~こびぃは♪” のフレーズが閃き、速攻で自分の部屋に行ってラジカセに録ったという。なるほど伝説誕生とはそういうものか。この “かぁ~ぎり~なぁい よ~ろ~こびぃは♪” のパートでロビンのダブルトラック・ヴォーカルが生み出すハモりの微妙なズレには何度聴いてもゾクゾクさせられるし、 “思い出” を “おもい ディー” とスパニッシュで処理しようという発想も素晴らしい。それにしても “夏の海とか冬の街とか 思い出だけが性感帯~♪” なんて粋なフレーズ、一体どうすれば思いつくのだろう? “飛べないトリは とり残されぇて~♪” のラインは吉井さんお得意のダジャレなんだろうか?
 又、凡百の洋楽ロックを軽く凌駕する PV のカッコ良さも特筆モノ。金髪ロン毛でシャツの前をはだけた吉井さんは全盛期のロバート・プラントにそっくりで妖艶なカリスマ・オーラが全開だ。特に流れるような指先の動きとベルトのトカゲのバックル(笑)にご注目! 髪を振り乱しながらギターを弾きまくるエマはジミー・ペイジが憑依したかのようだし、ワイルドなアニーのドラミングもボンゾを彷彿とさせるカッコ良さ。ハードロッカーそのものといった感じのヒーセはジョーンジーというよりもジーン・シモンズか。
 中期以降のほぼ全てのシングルの PV を担当した鬼才、高橋栄樹氏が監督を務めたこのビデオは山形県の蔵王山頂と古屋敷村で撮影されたもので、人里離れた集落といった佇まいが日本的な曲想とバッチリ合っているし、カラーとモノクロを織り交ぜながらコラージュ的に挿入されるビルや日本舞踊のカット、縁側に置いてある肉から吉井さんの眼がにゅ~っと出てくる合成映像(←この眼ヂカラ凄いです!)とか、もう意味不明ながら実にインパクト抜群で、単なる PV の枠を超えた映像作品として立派に成立しているように思う。私的には全ての邦楽の中で一番好きな PV と言ってもいいかもしれない。
 残念なことに、 YouTube にアップされてた「BURN」のPV動画が “Record Industry Association Of Japan による著作権侵害の申し立てにより削除” されてしまったのでネットで色々と調べてみたところ、何とドイツの動画サイト(!)にアップされてるのを発見、ゲシュタポみたいな日本レコード協会の奴らもドイツのサイトにまでは手出しは出来んやろ...(笑) ということで、ココをクリックして、曲良し、演奏良し、映像良しと三拍子揃ったイエロー・モンキーの最高傑作をとくとご覧下さい。