shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Honaloochie Boogie / The Yellow Monkey

2012-01-07 | J-Rock/Pop
 アーティストのルーツを知るにはカヴァーを聴くに限る。イエロー・モンキーが公式に録音したカヴァー曲は由紀さおりの「夜明けのスキャット」以外に、キッスの「シャウト・イット・アウト・ラウド」や T.REX の「ティル・ドーン」(←渋っ!!!)などがあるが、そんな中でも出色の出来なのが今回取り上げるモット・ザ・フープルの「ホナルチー・ブギー」だ。
 イエロー・モンキーの音楽性はストレートなロックンロールからへヴィー・メタル、はたまたフレンチ・ポップスや昭和歌謡に至るまで、その外見からは想像もつかないぐらい幅が広く、彼らの楽曲には様々なジャンルの音楽のエッセンスが散りばめられているのだが、何と言っても彼らが最も大きな影響を受けたのがデビッド・ボウイや T.REX を始めとするグラム・ロックで、このモット・ザ・フープルも70年代前半のイギリスで “バイオレンス系グラム・ロックの雄” としてブイブイいわしていたくちだ。
 この「ホナルチー・ブギー」は1973年に「すべての若き野郎ども」に続くシングルとしてリリースされたものの UK チャートのトップ10にも入らなかったナンバーなのだが、そんなマイナーな曲に目を付けるあたり、さすがはイエロー・モンキーだ。このカヴァーは元々(←ダジャレじゃありません...)モット・ザ・フープルへのトリビュート・アルバム「モス・ポエット・ホテル」に提供されたもので、イエロー・モンキーのアルバムではトライアド・レーベル時代の全音源を収録した6枚組「コンプリート・ボックス」やベスト盤「アクトⅡ」(←フェイド・アウトで終わらないコンプリート・ヴァージョンが聴けるのはこの盤だけ...)、そしてレーベルの枠を超えたオールタイム・ベスト「マザー・オブ・オール・ザ・ベスト」(初回盤3枚組のみに収録)に入っている。
 タイトルの Honaloochie っていう言葉は辞書を引いても載ってないのでネットで調べてみると、どうやらヴォーカルのイアン・ハンター(←金髪カーリーヘアにギンギラグラサンというバリバリのグラム・ファッションの人)の造語らしく、 “多くの若者達が集まってロックンロール大会を開く場所” を表しているらしい。なるほどね(^.^)
 このカヴァー・ヴァージョンのキモは何と言っても吉井さんの名訳による日本語詞で、原曲にかなり忠実な訳でありながらも要所要所で吉井節が炸裂、コレがまた気怠さ溢れるユル~い曲調とバッチリ合っていて実に良い味を出しているのだ。特に語りのパートなんかいかにも吉井さんらしい展開で、 “お金がないから 仕事に行かなきゃ... でもアイツにこき使われるのは 小さいクツを履くくらいイヤなんだよな... 休んじゃお お腹すいたな...” には思わずニヤリ。 “Wanna tell Chuck Berry my news, I get my kicks outta guitar licks” を “チャック・ベリーって何だ~♪” とやってしまうアッパレなまでの強引さにも大爆笑だ(^o^)丿
 歌詞の大意としては “今はこんなだけど、いつか見てろよ!” という貧しい若者の心の叫びなのだが、 “Get in time, don't worry 'bout the shirt shine” を “ボロは着てても心は錦~♪” と訳した吉井さんのセンスには完全に脱帽だし、 “今日はダメでもいつか神様♪” なんてニートな若者にも希望を与える必殺の名フレーズだろう。自分が売れなかった時代を思い出しながら書いたような “社会のルールよすいません いつかロックンロールで返します♪” のラインは実に微笑ましい限りだし、 “ロックンロール大臣... いいよね~♪” のパートは何度聴いても“エエなぁ...” と心底共感してしまう。
 “クールな歌詞職人” 吉井和哉の天才が如何なく発揮されたこのイエロー・モンキーによるカヴァーはモット・ザ・フープルの原曲が霞んでしまうほどの素晴らしさで、ビートルズじゃないが “カヴァーがオリジナルを超える瞬間” を体験できる。この曲だけでなく「ロックンロール黄金時代」や「メンフィスからの道」といったモット・ザ・フープルの他のヒット曲も吉井さんの訳詞によるイエロー・モンキー・ヴァージョンでもっともっと(笑)聴いてみたい、そんな気にさせる傑作カヴァーだ。

THE YELLOW MONKEY - HONALOOCHIE BOOGIE


Honaloochie boogie mott the hoople
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