shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

JAM / The Yellow Monkey

2012-01-10 | J-Rock/Pop
 “祭り” 第4回目の今日はロッカ・バラッドの名作「JAM」である。彼らの全シングルの中で「BURN」に次ぐ売り上げを誇るこの曲、私なんかあのイントロを聴いただけでもうこみ上げてくるものがあるのだが、秀逸な歌詞をエモーショナルに歌い上げる吉井さんのヴォーカルはもう魂の叫びといった感じで、何度聴いてもゾクゾクさせられる。
 “暗い部屋で一人 テレビはつけたまま... 外は冷たい雨” という状況で “君は眠りの中 何の夢を見てる~♪” と愛する人のことを想った経験は誰にでも一度はあると思うが、ちょうど暗闇の中に一筋の光を見い出すかのように、様々な苦難や逆境に負けずに大切な人のために頑張っていこうというポジティヴなメッセージが込められている。 “過ちを犯す男の子 涙化粧の女の子~♪” のラインは吉井さん自身の実体験からきているのかもしれないが(笑)、結構身に覚えがあって共感する人も多いのではないだろうか? とにかくこの曲は、一にも二にも歌詞を聴くべき作品なのだ。
 それと、物議を醸した “外国で飛行機が墜ちました ニュースキャスターは嬉しそうに 「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」~♪” の部分だが、私にはこの「いませんでした」3連発はその後に続く “僕は何を思えばいいんだろう? 僕は何て言えばいいんだろう?” の単なる前フリにしか聞こえない。むしろ “こんな夜は 逢いたくて 逢いたくて 逢いたくて~♪” の「逢いたくて」3連発の方が遥かにインパクト大で、私の胸を激しく締め付ける。この印象的な “君に逢いたくて~♪” のラインは、ちょうどオウムの地下鉄サリン事件とか阪神淡路大震災とかで不安な世の中だった時に、あまり家にいてやれなかった娘さんに向けて書いたのだという。ロック・スターと言えども人の親... ツアー先のホテルの部屋で娘さんのことを思いながらこの歌詞を書いたのかもしれない。
 そういえば、吉井さんはレコーディング中に最後の “また明日を待ってる~♪” の部分で感極まってしまい、ワンテイクで録った中でココだけ歌い直しを余儀なくされたらしい。分かるわぁ、その気持ち。そして最後のトドメというべきか、まるで “泣け!” と言わんばかりにピアノが鳴り響き(←ホンマにココ最高です!!!)、大団円を迎える。実にツボを心得たニクいアレンジだが、このピアノで涙腺が決壊する人は結構多いのではないだろうか? 私なんか、この曲を大音量で聴いた後は魂抜かれるというか、ほとんど放心状態だ。
 ファンの間では良く知られた話だが、この曲の成功は当時コロムビア・レコードで彼らのプロモーションを担当していた故・中原繁氏の尽力によるところが非常に大きかったらしい。吉井さんが中原氏に寄せた追悼文から抜粋すると;
「ある日自分が抱えている不条理を、全部紙に書いてそれに曲を乗せた7分近いバラッドを作った。社会的なこと、プライベートなこと等、思うことを遠慮なく全部書いた。今ならそのまま世に出せるが、当時はそういうわけにはいかなかった。少しづつ詩を削っていき、5分ちょっとの曲になった。録音したその曲を聴いて彼が言った。『これは代表曲になるよ。会社の上の人間がなんて言おうが、オレが絶対売ってやるよ!』と。JAM という自分の子供が正式に認知されたようで、とてもうれしかった。 《中略》 最近取材なんかで、俺たちに影響を受けたっていう若くて有名なミュージシャン達と話すと、みんな『JAMは最高ですよ』って言ってくれるんだよ。俺たちの夢は大成功したんだよ...」とのこと。う~ん、実に泣かせるエエ話ではないか!
 2001年の東京ドーム・ライヴで、この曲を歌う前に吉井さんは中原氏への思いを語った。「そいつのおかげで JAM は世の中に出たと言っても過言ではない曲です。そいつはこの JAM のイントロで起こる大歓声がとにかく好きなヤツでした... 今日は皆さんに協力していただいて、聴かせてあげたいな、と。そしてツアー中に死んでしまったコンサート・スタッフにも捧げたいと思います。」という MC に続いてドームに響き渡る JAM のイントロ、そして湧き起る大歓声... 天国にいる二人に届けとばかりに熱唱する吉井さんの姿は実に感動的で何度見ても目頭が熱くなる。イエロー・モンキーは “ド派手でエロくてカッコイイ” だけじゃないのだ。
 洋楽ロック界にエアロスミスの「ドリーム・オン」があるように、邦楽にはイエロー・モンキーの「JAM」がある。今やもう日本のロックのスタンダード・ソングと言っても過言ではないこの曲、彼らと同じ時代を生きてて良かったなぁ... と思わせる大傑作だ。(可愛い子供が出てくる PV は ココ で見れます)

JAM