shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

情熱の花 / ザ・ピーナッツ

2011-10-02 | 昭和歌謡・シングル盤
 日本橋猟盤ツアー報告もいよいよ最終回、垂涎のローザ盤を首尾よく手に入れモーレツに高揚した気分で Disc JJ を出て最後の目的地であるサウンドパック・アナログ店へと向かう。ココはその名が示すように今の時代には珍しいアナログ・レコード中心のお店で、私のようなレコード大好き人間にとっては神戸のハックルベリー、京都のホットラインと共に重要文化遺産的な(?)存在のレコ屋なのだが、通路がめちゃくちゃ狭くって店内で客同士が行き違うだけでも一苦労なのが玉にキズ。しかも悪いことに狭い入り口の左手がシングル盤コーナーになっており、比較的新しい時代の盤が見やすい上段のエサ箱に、私のお目当ての60's歌謡はその下にほとんど地面に直置きで敷き詰められているので他の客が入ってくるたびに立ち上がってやり過ごさせなければならない(>_<)
 この日は台風のせいで暑さは比較的マシだったが、湿気が高い中をかなり歩き回ったこともあって汗だくになりながら窮屈な姿勢を強いられ、私の集中力はそろそろ限界にきていた。10年ぐらい前なら京都→梅田→難波と廻っても平気やったのに、やっぱり年齢による気力体力の衰えなのか、それともネット・オークションでラクして探すことを覚えてしまったからなのか、 “今日は十分収穫あったし、ちゃっちゃと見て帰ろかな...” などと不埒なことを考えながら注意力散漫になりかけていた。そんな電池切れ状態からいきなりテンションMAX へと激変させてくれたのが、他でもないザ・ピーナッツの「情熱の花」だった。
 ザ・ピーナッツの66年以降のシングルはヤフオクで比較的簡単に手に入るのだが、60年代初めの盤は中々出てこないし、たまに出てきてもスタート価格が高く、しかも競争が激しくて値段が吊り上るので、とてもじゃないが私のような貧乏コレクターには手が届かない。ラッキーなことに「可愛い花」と「恋のバカンス」はたまたま安く買えたのだが、さすがに人生そんなに甘くなく、未だに「ふりむかないで」が手に入らない。「情熱の花」もそんな “垂涎盤リスト” の上位に位置する1枚だったのだが、それが何と盤質良好で1,200円である。私は基本的にシングル盤に1,000円以上は出さない主義なのだが入手困難盤は例外で、この機会を逃せば恐らくずっと買えないだろうと考えて一気に買いを決めた。
 ザ・ピーナッツは60年代半ばに「恋のバカンス」(1963)や「恋のフーガ」(1967)でザ・ワン・アンド・オンリーな “無国籍歌謡ポップス” を完成させるが、その源流と言えるのが1959年にリリースされたこの「情熱の花」である。元々はベートーベンの「エリーゼのために」からアダプトしたメロディーをベースに作られた「Passion Flower」という曲で、カテリーナ・ヴァレンテの歌でヒットしていたものをザ・ピーナッツがカヴァー、オリジナルのラテン・アレンジをベースにしながらも変幻自在なコーラス・ハーモニーを活かして彼女らの代表曲の一つに仕立て上げたのだ。それにしてもデビュー曲の「可愛い花」がジャズで今度はクラシック... 1959年という時代を考えれば実にユニークな選曲である。このあたりにも宮川先生の音楽的な嗅覚の鋭さというか、センスの良さが光っている。
 この「情熱の花」には59年のオリジナル・ヴァージョンの他に、67年のアルバム「ザ・ピーナッツ・デラックス」に収録されたリメイク・ヴァージョンが存在する。私の経験ではヒット曲の再録ヴァージョンというのはアレコレいじりすぎてオリジナルの良さを殺してしまう場合が多いのだが、この'67ヴァージョンはオリジナルと甲乙付け難い出来栄えだ。ベースになっているのはハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスっぽいノリノリのアメリアッチ・サウンドで、そこに「ラバー・ソウル」なサウンド・プロダクションを大量投下、途中でビゼーの「カルメン」を添い寝させるなど、とにかくザ・ピーナッツという不世出のコーラス・ユニットを得て思う存分腕をふるう宮川泰シェフの遊び心満載のアレンジが実に愉しい。
 ただ、一つ不思議なのはこのリメイク・ヴァージョンの歌詞がオリジナルとはかなり違っていること。手持ちのレコードを調べてみたが、オリジが “訳詞:音羽たかし、水島哲” で、リメイクが “作詞:ダイヤモンド・シスターズ” という表記になっていた。両方の歌詞を並べてみると...
【'59 ver】
  小さな胸に 今宵もひらくは
  情熱の花 恋の花よ
  初めてふたりが ちぎりをかわした
  その想い出が 妖しくにおう
  小さな胸に 今宵も咲いた
  血潮のような 赤い花びら
  叶わぬ恋と 知りつつ今も
  その切なさに 夜ごと震える
【'67 ver】
  私の胸に 今日もひらく
  情熱の花 あなたを求めて
  初めて会った 雨のあの夜
  その想い出が 涙を呼ぶの
  恋は気ままな 青い風よ
  そっと知らぬ間に 心をくすぐる
  あなたの愛を 求めて今宵も
  情熱の花 胸を焦がす
テレビやライヴのステージでは後者の歌詞で歌っていることが多いように思うのだが(←ラスト・コンサートも後者でした...)、リメイクするにあたってわざわざ歌詞を変える理由が何かあったのか興味深いところ。とにかく曲調もアレンジも歌詞も違う2つのヴァージョンが存在するザ・ピーナッツの「情熱の花」、 私はどちらも大好きなのだが、サービス精神満点の宮川先生のこと、きっと “両方聴き比べで楽しんで下さいな...(^o^)丿” ということなのかもしれない。

☆1959年のオリジナル・ヴァージョン
情熱の花


☆1967年のリメイク・ヴァージョン
ザ・ピーナッツ 『情熱の花』


☆ザ・ピーナッツがカヴァーしたカテリーナ・ヴァレンテのヴァージョン
Passion Flower - Caterina Valente (France version) - "Kaipuun Kukka".wmv


☆イタリアン・ポップスの女王ミーナのヴァージョン。ザ・ピーナッツ以外ではコレが一番好き!
Mina Mazzini - Passion flower - Mina50


☆【おまけ】私はザ・ピーナッツとザ・ヴィーナスを聴いて初めてベートーベンの偉大さを知りました(笑)
ザ・ヴィーナス / キッスは目にして (Live)