shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Down To Earth / Rainbow (Pt. 1)

2012-11-15 | Hard Rock
 ロック・バンドにとってそのイメージを決定づける最も重要な要素の一つがリード・ヴォーカリストの “声” である。たとえギタリストが主役のバンドであってもそれは変わらない。ヴァン・ヘイレンのヴォーカルがデイヴ・リー・ロスからサミー・ヘイガーに変わった時も全く別のバンドに生まれ変わったかのような印象を受けたが、リッチー率いるレインボーもまた同様で、初代ロニー・ジェイムズ・ディオ、2代目グラハム・ボネット、3代目ジョー・リン・ターナーという違ったタイプのヴォーカリストを擁していたこともあって、それぞれの時代によってかなりアルバムの雰囲気が異なるのだ。
 そんなレインボー歴代ヴォーカリスト3人の中で私が断トツに好きなのが2代目のグラハム・ボネットである。三頭体制の中で強烈な個性を誇っていたロニーの後釜というのは並大抵なことでは務まらないが、ロニーに勝るとも劣らない強烈な個性の持ち主であるグラハムの起用はまさに大正解で、さすがは御大!と言いたくなる見事な人選だ。
 グラハム・ボネットの最大の魅力はその声である。ロニーがどちらかと言うと “吠える” タイプのヴォーカリストなのに対し、グラハムは血管がブチ切れんばかりに青筋を立てて “叫ぶ” タイプのパワー・シャウターで、そのハスキー・ヴォイスで強烈なシャウトをぶちかます様はフォリナーのルー・グラムを更にパワー・アップしたような感じ。ビブラートを使わないそのストレートな唱法は当時のリッチーが目指していた “初期アメリカン・ハードロック的なサウンド” にピッタリだ。
 グラハムのもう一つの特徴はそのユニークなファッション・センスである。短髪・リーゼントで派手なスーツかアロハにサングラスというスタイルはどうみても街のチンピラそのもので、故・横山やすし師匠にそっくりなのだ。長髪・皮ジャンが定番のハードロックの世界では異端中の異端であり、ステージでもビデオでも思いっ切り浮いている。私なんかこの時期のレインボーのビデオを見るといつも彼にばかり目が行ってしまい、さすがのリッチーやコージーもやっさんのバックバンドに見えてしまう(笑)
 それはともかく、私はレインボーの歴史の中でこの “グラハム期” のサウンドが一番好きなので彼がアルバム1枚きりで脱退してしまったのが本当に残念だが、そういう意味でもレインボーの全アルバム中で最も愛聴しているのがスタジオ録音アルバム4作目にあたるこの「ダウン・トゥ・アース」なんである。
 アルバムからの第1弾シングル⑤「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」はラス・バラードが書いたポップ・ソングのカヴァーであり、コージー脱退の引き金になったことでも知られるナンバーだ。事の顛末は、まずプロデューサー兼ベーシストのロジャー・グローヴァーがこの曲を気に入り、レインボーをコマーシャル路線に持っていこうとしていたリッチーもこの曲をカヴァーすることに賛成したが、コージーは大反対。彼が言うには “この曲はレインボーには向いていない... ファンは何だこりゃ?と思うだろう... 良い曲であることは間違いないが俺たちはレインボーだろ?... 今まで君臨してきた分野の音楽があるじゃないか... 「スターゲイザー」や「バビロンの城門」みたいな曲をやった後にどうしていきなり「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」なんだよ? 気は確かか? リッチーがそういう方向に行くつもりなら俺は抜けて他の事をやった方がよさそうだと決心したんだ。” とのこと。まったく以てごもっともである。
 結局コージーが折れて “わかった。やるよ。ただし1回しか叩かない。それで終わりだ。” ということになったらしいが、コージーの機嫌を損ねるリスクを考えればそうまでしてこの曲をやる必要があったのかは大いに疑問だ。この曲のヒットとコージーの脱退を天秤にかければ、レインボーが失ったものはあまりにも大きかったと言わざるを得ない。尚、1993年にこの曲をカヴァーしたブライアン・メイのバックでドラムスを叩いていたのが他ならぬコージーというのも考えてみれば面白い巡り合わせであり、この曲のベストと私が信ずるのがそのブライアン・メイ・ヴァージョンなのだ。やはり曲とアーティストの相性というのは大事やなぁと思う。
Russ Ballard - Since You've Been Gone (Supersonic, 1976) FAMILIAR ???

Rainbow - since you've been gone

The Brian May Band - Since You've Been Gone


 不幸なことに私がリアルタイムで初めて聴いたレインボーがこの曲で、ラジオから流れてきたのを聴いて “何じゃいコレは? ホンマにあのリッチーがやってるんかいな...(>_<)” と幻滅したものだった。今ではさすがに寛容になったのか当時ほど抵抗はなくなったが、それでも自分から進んでこの曲を聴こうとはあまり思わない。ボストンとジャーニーとサヴァイヴァーを足して3で割ったようなコテコテのアメリカン・パワー・ポップを何が悲しゅーてブリティッシュ・ハードロックの王道であるレインボーで聴かなアカンのか? 結局この曲で偏見を持ったせいで私はレインボー入門に少し遠回りするハメになってしまったが、もしもあの時ラジオでかかった曲が①「オール・ナイト・ロング」や⑧「ロスト・イン・ハリウッド」だったとしたらその時点で即レインボーの大ファンになっていただろう。
 結局この曲はアメリカでは彼らにとって初のチャートインを果たしたものの57位止まりと振るわなかったのだがイギリスで6位まで上がるスマッシュ・ヒットを記録、アメリカン・マーケットを意識してイギリスで大ヒットというのも考えてみれば皮肉な話である。 (つづく)

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