shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ウルグアイ盤特集⑧「All The Best」

2021-03-21 | Paul McCartney
 ポールの「All The Best」ウルグアイ盤を手に入れた。70年代に出たウルグアイ盤は真空管を使った独自カットのおかげでUKやUSのオリジナル盤では味わえない濃厚なサウンドが楽しめることが多いが、このレコードがリリースされたのは1987年ということで、80年代後半のウルグアイ盤の音ってどうなんやろ...??? という好奇心から是非とも手に入れて聴いてみたいと思っていたアルバムだ。
 このレコードはかなりレアらしくeBayではカスリもせず。Discogsには去年から1枚だけ€150のNM盤が出ていたのだが、バカ高い送料を入れて2万円オーバーではとてもじゃないが手が出ない。仕方がないのでいつものように“お気に入り”に登録して毎日チェックしていたところ、別のセラーからVG+ながらほぼ半額に近い$80の盤が出品され、しかもオファー可ということだったのでダメ元で $72でオファーしてみたところラッキーなことに即OKが出て、結局送料込み$100ポッキリで念願の「All The Best」を手に入れることが出来たのだ(^o^)丿 まさに待てば海路の日和あり... である。レコードが届いた翌日、私は早速B-SELSにこのレコードを持ち込んだ。
 私:「All The Best」のウルグアイ盤が手に入ったんで持って来ました。
 Sさん:おぉ、マトのPMTVが手書きですね。これは楽しみです。
 私:どうですか?
 Sさん:音が濃いですね。
 私:でしょ? 派手さはないんですけど、音の密度がめっちゃ濃いんです。
 Sさん:このA④「Ebony And Ivory」、音の奥行きが違いますね。
 私:確かにUK盤やUS盤では聴けない音です。
 Sさん:B①「No More Lonely Nights」のギター・ソロが何とも良い音してますね。
 私:たまらんですよ、コレは。それとB②「Silly Love Songs」のベースも良い音してますやろ?
 Sさん:とってもタイトですね。
 私:余計な贅肉を削ぎ落としたような、そんなベースの音です。
 Sさん:いやぁ、素晴らしいですねぇ...
 私:B③「Let 'Em In」のドラムの音、エエでしょ?
 Sさん:気持ち良いですねぇ。あれ?このB④「C Moon」だけ音が違いますね。
 私:そうなんですよ。ここまでの3曲がめちゃくちゃ音が良かったせいもありますけど、急にガクン!と落ちたような感じで落差が激しいんです。一体どーゆーことなんでしょうね???
 Sさん:不思議ですね。
 私:今日はこの後用事があるので続きは次来た時でエエですか?
 Sさん:もちろんです。
 私:何なら置いて帰りますからお時間のある時に聴いてみますか?
 Sさん:エエんですか? それは嬉しいです。UK盤とじっくり聴き比べてみます。

ということで「All The Best」をSさんに預けた私は1週間ほどしてから再び B-SELSを訪れた。
 私:UK盤と聴き比べてみて何か収穫はありましたか?
 Sさん:ええ、例の「C Moon」の謎が解けました。
 私:エーッ、ホンマに??? 凄いですやん!!!
 Sさん:実はUK盤と見比べてみたらウルグアイ盤の方がかなりデッドワックスの幅が狭くなってるんですよ... ほらね。で、「C Moon」の溝の位置がかなり違うでしょ?
 私:なるほど、ホンマですね。
 Sさん:つまり最初の3曲でかなり溝幅を贅沢に使いすぎたんじゃないでしょうか。
 私:なるほど、で、途中まで来て慌てたと...(笑)
 Sさん:そうそう...
 私:レースで言うたら燃費も考えずに前半飛ばし過ぎて、後半になってガス欠やばい... みたいな感じですかね(笑)
 Sさん:ハハハ... まぁそんなところでしょうね。
 私:なるほど、それなら辻褄が合いますね。いかにも大らかなウルグアイらしい話ですわ。
 Sさん:あくまでも私の想像ですけど...
 私:いや、その仮説当たってると思いますよ。とにかくこれでスッキリしました。
 Sさん:謎が解けたところで、続きを聴きましょうか。
 私:C②「Another Day」のアコギの音がめっちゃ気持ち良いですね。
 Sさん:C③「Maybe I'm Amazed」のギターの音もすごく良いです。
 私:C⑤「Once Upon A Long Ago」、音の世界がとっても雄大ですね。
 Sさん:この曲、UK盤と聴き比べてみませんか?
 私:是非お願いします。
 Sさん:UK盤もかなり良い音してますが、ウルグアイ盤はその上を行く感じです。
 私:音の種類がちょっと違うという感じですね。
 Sさん:もう一度ウルグアイの方を...
 私:これはもう、のっけから全然違いますよ。ウルグアイの方はヴォーカルを引き立てて活かす音作りになってますね。ヴォーカルとバックの演奏とのバランスが絶妙と言うか...
 Sさん:UKの方が音作りが派手なのに対し、ウルグアイの方は何とも懐かしい音になってますね。
 私:じゃあSide-4いきましょか。
 Sさん:D③「My Love」のエンディングで感動してるところにいきなりD④「We All Stand Together」のイントロ...
 私:いかにもポールらしいセンスですよ。多分アメリカ人には理解できないでしょうけど。てゆーか、US盤は選曲違いでそもそもDラス2曲は入っていなかったっけ(笑)
 Sさん:このD⑤「Mull Of Kintyre」のイントロ、たまりませんね~(≧▽≦)
 私:ホンマに... もう鳥肌モンですよ、これは。ポールのソロ名曲の数々をこうしてエエ音で聴けるっちゅーのは最高ですね。買うて良かったですわ。

ウルグアイ盤特集⑦「Tug Of War」

2021-01-01 | Paul McCartney
 あけましておめでとうございます。去年から新型コロナのせいでめっちゃ不便な生活が続いてますが(←マスクすんのホンマに鬱陶しい!!!)こればっかりはどうしようもないのでパンデミックが収束するまでじーっと耐えるしかありません。ライヴは無くなるわ、レコードは中々送ってけぇへんわで音楽生活も今まで通りというワケにはいきませんが、このブログはそんな中でも何とか細々と続けていけたらと思うとりますので、今年もどうぞよろしくお願い致します。

 去年の秋にB-SELSで聴かせていただいてその音の良さに瞠目し、それ以来狂ったようにやってきたウルグアイ盤の蒐集も12月の末に最後の大荷物が届き一段落、コロナでどこかの空港に足止めを食らっていたと思しきレコードたちが一気に8枚も届いてとても幸せな年の瀬を過ごすことが出来た。みんなそれぞれ良い音で鳴ってくれて大喜びしたのだが、中でも1枚とびきりの高音質で驚かせてくれたのがポールの「Tug Of War」だった。ウルグアイ盤のポールのソロはどれもこれも皆音が良くてハズレ無しだが、この「Tug Of War」は例の「Band On The Run」と並ぶスーパーウルトラ高音質。こいつは是非ともSさんにも聴いてもらおうと思い、早速B-SELSに持ち込んだ。

 私:ポールの「Tug Of War」、やっと来ましたで。めっちゃ音良かったんで持ってきましてん。
 Sさん:ほぉ~、それは楽しみです。
 私:これですねんけど。
 Sさん:盤質上々ですね。手書きのマトもエエ感じやし...(と言いながらレコードに針を落とす)
 私:どうですか?
 Sさん:うわぁ、コーラスめっちゃキレイですね。
 私:エエでしょ? 昔、オーディオ装置を買い替えてグレードアップした時に感動した、あの感覚ですわ。
 Sさん:いやぁ~いいわ、これ! ポールの歌声もギターの音色もストリングスの響きもみんな何とも言えない温かい音ですね。
 私:盤質の良さも効いてますね。
 Sさん:NMですやん。
 私:そうなんですよ。とてもウルグアイ盤とは思えないピッカピカの盤で、初めて見た時はビックリしました(笑)
《ここでB①「Ballroom Dancing」のエンディングのあまりにも見事な響きに2人同時に “ホォ~” と感嘆の声を上げる》
 Sさん:何ともエエ音鳴りますね。いやぁ素晴らしい...
 私:最高ですね!(と2人して最後まで聴き入る...)
 Sさん:もう1回A②「Take It Away」聴いていいですか?
 私:どーぞどーぞ。
 Sさん:期待を裏切りませんね。ウルグアイ盤の「Tug Of War」ってどんな音するんかと思ってましたけど、ホンマにコーラスがキレイです。
 私:ドラムも何とも言えない気持ちの良い音で鳴りますね。
 Sさん:血がキレイになるというか、身体に良い音という感じです。
 私:上手いこと言わはりますね。
 Sさん:いやぁ、この音は予想を超えてましたね。1音たりとも聴き逃したくない、そんなレコードですよ。
 私:喜んでいただけて何よりです。何と言ってもウルグアイ盤の素晴らしさを教えていただいた恩人ですから...(笑)
 Sさん:まぁ針飛び盤とか色々ありましたけど、そこでくじけやはらへんかったからこそ、この「Tug Of War」に辿り着けたんですよ。
 私:まぁ言うてみれば「Tug Of War」のニンバス盤みたいなもんですかね。
 Sさん:「Tug Of War」が「Sgt. Pepper's」のような芸術作品として聴けるというか、1曲1曲よりもアルバムを通して聴いて感動するという、そんな感じですね。
 私:ニンバス盤と同じで、良い音で聴くと内容の素晴らしさが更に際立つという良い例やと思います。
 Sさん:これを切ったウルグアイのエンジニアも凄いですよ。大胆な切り方してますよね。繊細と言うより大胆... で、その大胆さが見事ツボにハマったということでしょう。
 私:1年の最後の最後で凄いのが聴けました(^.^)  それにしてもビートルズ関連のレコードの中で最もしょーもないレーベル・デザインのこれが一番音が良かったというのも何か面白いですね。

「McCartney Ⅲ」

2020-12-28 | Paul McCartney
 2020年も残すところあと4日、このブログは音楽日記のつもりで書いているので1年の最後にはいつもその年を振り返るようにしている。今年は新型コロナウイルスのせいで日常生活の面では決して良い年とは言えなかったが、そんな悪い状況の中でも “一生もの” と言っていいレコードにたくさん巡り合えたし、新たにウルグアイ盤という高音質な各国盤コレクションを充実させることもできたしで、音楽面では決して悪くない1年だった。それもこれもすべてB-SELSとSさんのおかげなので、この機会に改めてお礼を言いたいと思う... 1年間どうもありがとうございました.. そして来年もよろしくお願いしますm(__)m
 そしてここからが本題なのだが、年の瀬も押し詰まった12月19日にポールから我々ファンに素敵な贈り物が届いた。ポールがロックダウン中に(「封鎖」を意味するLockdown に引っ掛けてロックが出来ない “Rockdown” という造語を使っている...)たった一人で作り上げた新作「McCartney Ⅲ」である。ポールが一人で曲を書き、すべての楽器を演奏した「McCartney」(1970)、「McCartney Ⅱ」(1980)の流れを汲む宅録シリーズの第3弾だ。
 最近の新作はCD、デジタル配信、アナログレコードと様々な形態で発売されるのがお約束だが、私は迷うことなくアナログレコードを選んだ。好きな音楽は出来るだけ良い音で聴きたいし、車の中で聴く分にはCDレコーダーを使ってCD-Rに焼けばいいだけのこと。ましてやデジタル配信なんて論ずるにも値しない。私はヴィンテージ・オーディオで聴くアナログ・レコードの音が一番好きなのだ。
 この「McCartney Ⅲ」を初めて聴いた時は “何か地味なアルバムやなぁ...” というのが正直な感想だった。今にして思えば、私にしてはかなり低い音量で聴いていたように思うのだが、2回目にアンプのヴォリュームを上げて聴いてみたところ印象がガラリと変わり、その後何度も大音量で繰り返し聴いてその良さを実感できた次第。そう、このアルバムを小音量で聴いても全然面白くないのだ。出来るだけ大きな音で、良いオーディオ装置で聴くとその素晴らしさが分かる仕掛けになっていると思う。
 アルバムはA①「Long Tailed Winter Bird」というインスト・ナンバーで幕を開ける。今回の「McCartney Ⅲ」は「NEW」や「Egypt Station」のように徹底的に作り込んだ “王道ポップ・ミュージック” とは一味違う素朴な内容のアルバムになるのではないかと予想していたが、いきなりザ・ファイアーマンっぽいインスト曲が来るとは思わなんだ。まぁアルバム全体のオーバーチュアという感じだが、ザクザク刻むアコギのリズム・カッティングが耳に心地よいナンバーだ。
 そして本アルバムのハイライト曲と言えるA②「Find My Way」だ。プロモ・ビデオで様々な楽器を演奏するポールの姿を見てその健在ぶりが確認できたのが何よりも嬉しいし、ドラムを叩いている姿を見るととてもじゃないが78歳には見えない。 ノリの良いキャッチーなメロディー・ラインはポールの十八番だし、ベテランならではの巧みなアレンジにも唸ってしまう。後半部のドラムの響きやギターの音色はどことなく「Mirage」期のフリートウッド・マックを想わせるものがあって気持ち良いことこの上ない。
 そして何よりも素晴らしいのがその歌詞だ。“(I Can) Find My Way”、つまり“自分の道は見つけられる” というタイトルなのだが、“I walk towards the light... Idon’t get lost at night.(僕は光に向かって歩く... 夜でも決して道に迷ったりはしない)” という前向きな歌詞、そして “Now you’re overwhelmed by your anxieties... Let me help you out... Let me be your guide... I can help you reach the love you feel inside.(今はコロナ禍で苦しんでいると思うけど、僕が手を貸して導いてあげるよ... 君の内にある愛に手が届くよう手助けがしたいんだ)” と聴く者を励ましてくれるメッセージに勇気づけられる。この曲でポールは “コロナなんかに負けんなよ... 希望を持って生きようぜ!” と私たちに語りかけてくれているのだ。フランシス・コッポラの息子さんが監督したというオフィシャル・ビデオと歌詞付きのビデオの両方を貼っときましたので、前者は元気なポールの姿を、後者はそのポジティヴな歌詞を十分堪能してください。
Paul McCartney - Find My Way (Official Music Video)

Paul McCartney - Find My Way (Lyric Video)


 いかにもポールらしいアコギ・ナンバー③「Pretty Boys」やシンプルなピアノの重苦しい響きが印象に残るA④「Women And Wives」も良いが、何と言ってもA⑤「Lavatory Lil」が個人的にはめっちゃツボ(^.^)  ちょうどB'zがアルバム「Magic」で聴かせてくれたような歌謡ロックっぽいテイストのリフが脳内リフレインを起こし、今のところA②と並ぶ愛聴曲になっている。ヘヴィーなギターのリフがカッコイイA⑥「Slidin'」でA面をしめるのは「Abbey Road」の「I Want You」みたいなモンか。
Paul McCartney - Lavatory Lil (Lyric Video)


 B①「Deep Deep Feeling」は8分を超える長尺曲だが、やや単調でメロディーが薄いように感じられて私的にはイマイチ。B②「The Kiss Of Venus」は安心安定のポールなアコギ・バラッドなのだが、高音部で声がややキツそうなのがファンとしては聴いてて辛いところ。B③「Seize The Day」はビートリィな雰囲気が横溢で結構気に入っている。やっぱりポールはこういう曲を作らせたら上手いですな。B④「Deep Down」のソウルフルなヴォーカルは “ポール、攻めてるなぁ...” の想いを強くさせてくれるグルーヴィーなナンバーで、聴き込めば聴き込むほど味わいが増すスルメ・チューン。B面ではこの曲と次のB⑤「When Winter Comes」が気に入っている。
 A①のギター・リフをリプリーズっぽくアタマにくっつけた(←ちょうどBラス前に置かれた「Ram On」の、あの感じ)B⑤「When Winter Comes」は何と1992年にジョージ・マーティンとの共同プロデュースでレコーディングした未発表曲をそのまま使っており、28年前の録音ということもあってポールの歌声の艶やかさに惚れ惚れしてしまう。SさんもB-SELSの日記コラムで絶賛されていたが、これはホンマにたまりませんな...(≧▽≦)  ビートルズ・ファンは、仮に歌っているのが「森のくまさん」や「どんぐりころころ」のような童謡であったとしても、ポールのこの “声” を聴いただけでフニャフニャと腰砕け状態になってしまうのである。
Paul McCartney - Winter Bird / When Winter Comes (Lyric Video)


 最後になるが、「McCartney」と「Mccartney Ⅱ」の次に出たアルバムをそれぞれ思い出していただきたい。そう、完全無欠のポップ・アルバム「Ram」と「Tug Of War」である。ポールがソロで好き放題やってガス抜き(?)をした後には必ず音楽史上屈指のスーパーウルトラ大名盤が生まれているのだ。歴史は繰り返すと言うが、コロナ禍終息後にワールド・ツアーに向けてリリースされるであろうポールの次作が今から楽しみになってきた。

ということで、2020年最後のブログはポールの「McCartney Ⅲ」でした。そして来たる2021年にはいよいよピーター・ジャクソンが監督した映画「Get Back」が劇場公開されますね。私が蛇蝎のごとく嫌っているディズニーが絡んでいることに一抹の不安がありましたが、先週YouTubeにアップされた公式の映像を見て、今はウキウキワクワク感がハンパないです。あ~楽しみじゃあ... (≧▽≦)   それでは皆様もどうぞ良いお年をお迎えください。
「ザ・ビートルズ:Get Back」先行特別映像|2021年8月27日(金)世界同時劇場公開!

ウルグアイ盤特集⑥「Ram」「McCartney」

2020-12-24 | Paul McCartney
 ウルグアイ盤の「Ram」を買ったら中身違いのチリ盤が届いた話は前に書いたが、その後セラーに “どーなってるねん!” と怒りのメールを送ったところ、“ごめんなさいm(__)m  私が中身を入れ間違えたみたいです。今、手元にチリ盤のジャケットに入ったウルグアイ盤「Ram」がちゃんとあるので大至急送ります。チリ盤はお詫びのしるしに取っておいて下さい。” と平謝りされ、 それから2週間ほどして本物の「Ram」が送られてきた。
 本来ならばこれでメデタシメデタシとなるはずなのだが、物事はそううまくは運ばなかった。“おぉ、エエ音しとるやないか... やっぱり70年代プレスのウルグアイ盤はエエわ(^.^)” と嬉々としてA面を聴き終えB面にいくと、B①「Heart Of The Country」でいきなり針飛び... “あちゃ~ またかよ...(>_<)” と思って盤をチェックしようと立ち上がった途端に更に畳み掛けるように針が飛びまくる... 前にも書いたと思うが、まるで“水切りショット”のように針が横滑りしていくのである。更にB②「Monkberry Moon Delight」とB③「Eat At Home」でもそれぞれ1ヶ所ずつ針飛びがあり、これではとてもじゃないが音楽を聴けたものではない。
 私は “困った時のSさん頼み” でこのレコードをB-SELSに持って行って一緒に聴いてもらったところ、“これは酷いですねぇ... 私の知る限りでも最もタチの悪いキズです。直せるかどうか分かりませんが、出来るだけやってみましょう。” と言って下さったので、そのお言葉に甘えて「Ram」をB-SELSに入院させた。果たして満身創痍の我がラムちゃんは無事社会復帰できるのだろうか???  それから1週間経って、私は再びB-SELSを訪れた。

 私:こんばんは。ラムちゃんの具合いはどうですか?
 Sさん:一応直しましたよ。かなりやっかいなキズでしたけど... 一緒に聴きますか?
 私:はい、お願いします。(B①から聴き始めるが、問題の箇所で針飛び...)やっぱりちょっと無理っぽいですね。
 Sさん:あれ? さっき聴いて確認した時は飛ばなかったのに... (とルーペで盤面をチェックしながら)ちょうど音溝に平行に細かいキズが無数に入ってるんですよ。で、1つの箇所を直すとそれで又別の箇所が飛ぶという悪循環なんです。
 私:レコード針で変な擦り方したんですかね?
 Sさん:いや、あれは針ちゃいますよ。砂です。
 私:えっ、砂???
 Sさん:そうそう、めっちゃ細かい砂が音溝につまってて、それを布か何かで拭いた時にできたようなキズです。
 私:ひょえ~、砂ですか。それって盤面削ってるようなもんですよね。そういえばジャケットを包んでるビニール、どれもこれも茶色く汚れてますけど、あれってひょっとして泥の汚れなんか...
 Sさん:そうですね。ウチではティッシュを濡らして拭き取ってます。
 私:なるほど! それはエエこと聞きました。今度ウチのも試してみます。(←家に帰ってやってみると効果テキメンでティッシュが瞬く間にまっ茶色に!!! もちろん同じサンドイッチ式ジャケットのブラジル盤のクリーニングにもオススメです) 日本に住んでたらレコード溝に砂が入り込むなんて全く想像つきませんが、ウルグアイってバーレーンみたいに空気中に砂が舞ってるのかもしれませんね。各国盤集めるのも大変ですわ(笑)
 Sさん:ハハハ... たしかに。でも悔しいなぁ... もう1回やらせてもらっていいですか?
 私:えっ、いいんですか? 私としてはありがたいお話しですけど...
 Sさん:(メガネの奥の眼をキリッと光らせながら)プロの意地がありますから。
 私:わかりました。よろしくお願いします。

それから1週間後...
 私:まいど(^.^)
 Sさん:「Ram」今度こそ大丈夫やと思います。まぁ聴いてみて下さい...(とB面に針を落とす)
 私:おっ、直ってますね。凄いなぁ...
 Sさん:多分これで大丈夫やと思いますが、もしまた次飛んだら諦めて下さいね。
 私:もちろんです。ホンマにありがとうございます。Handle with Care します。
 Sさん:じゃあ改めてA面から聴きましょうか。(A①「Too Many People」が流れる...)いいですね。しっかりとした良い音です。さすがウルグアイ!
 私:めっちゃ鳴りが良いですよね。ギターの高音部の伸びが気持ち良いです。
 Sさん:音がクッキリしてますね。少し前に聴いたインド盤「Ram」は音がまろやかでしたけど、こっちはクッキリ。いやぁ、面白いですね。
 私:メリハリがあってとっても力強い「Ram」ですね。同じウルグアイ盤「Wild Life」の場合と同じでUKマザーですが、ウルグアイならではの音になってます。針飛び直してくださってホンマにありがとうございました(^.^)
 Sさん:いえいえ、お安いご用です。
 私:もう1枚、ウルグアイの「McCartney」持って来たんですけど、聴きます?
 Sさん:聴きます聴きます!
 私:(A①「Lovely Linda」を聴きながら)良いでしょ?
 Sさん:良いです良いです、めっちゃ良いです!!!
 私:針が飛ばへんウルグアイ盤は怖いモンなしですわ(笑)
 Sさん:安心安定のウルグアイ、っていう感じですね。このレコードは溝の状態もかなり良いですよ。素晴らしい音です。
 私:マトはA面が2UでB面が3Uか...
 Sさん:そういうマトの違うマザーがウルグアイに送られたということですね。
 私:これも “当たり” ということは、現時点でウルグアイ盤のポールのソロは「McCartney」から「McCartney II」まで全部音が良いということですね。
 Sさん:確かにそうなりますね
 私:ウルグアイのチューブ・カッティングの音って「Tug Of War」にピンズドやと思うんです。絶対に手に入れたるぞ...
 Sさん:それは楽しみです。
 私:でも針飛び盤だけはもう堪忍してほしいですわ。

        

ウルグアイ盤特集③「Band On The Run」

2020-11-07 | Paul McCartney
 前回の「Red Rose Speedway」と一緒に買ったのが「Band On The Run」だ。ウルグアイ盤を集中的に買い始めて1ヶ月ほど経ったが、今のところハズレ無しでどの盤も良い音で鳴ってくれて実に楽しい。そんな高音質ウルグアイ盤の中でも3指に入るのではないかと思えるくらい音が良かったのがこの「Band On The Run」だ。それでは早速B-SELSでのSさんとのやりとりをご覧ください。

 私:じゃあ次は「Band On The Run」いきましょか。これもめっちゃ音良かったですよ。どうですか?
 Sさん:(タイトル曲のイントロが流れると同時に手でOKマークを作り、アコギかき鳴らしパートに入ったところで)めっちゃ音いい!!! まるで上限が無いようなスゴい音ですね。
 私:音のコクとキレがめちゃくちゃハイレベルで両立してるでしょ。
 Sさん:このA②「Jet」のエンディングのところ、素晴らしいです。
 私:予想の斜め上を行ってますわ。
 Sさん:こんな力強いA③「Bluebird」は他ではちょっと聴けないですね。
 私:ポールのヴォーカルが生々しいです。
 Sさん:A④「Mrs. Vandebilt」、これもうたまりませんね!
 私:(満面の笑みで音楽に合わせて身体を揺らすSさんを見て)マスク越しに目が幸せそうに笑ってますやん(^.^)
 Sさん:最高の「Vandebilt」ですね。盤質がめっちゃ良いのも効いてるのかもしれませんが、とにかく音が素晴らしいです。これは Loud Cut を超えました!!!
 私:“Loud Cut より Tube Cut”ですね(笑)
 Sさん:良い音なのでヴォリュームを上げても全然うるさくない...(^.^)
 私:むしろ耳に心地良いですね。
 Sさん:(B②「No Words」のギター・ソロを聴いて)このギターの音、凄いですね。
 私:いやはや、もう何と言っていいか... 圧倒されまくりですわ。
 Sさん:このB④「1985」、倍音出まくりですね。ちょっと出過ぎかなと思うくらい凄いです。
 私:カッティング・レベルも高いですねぇ...(^.^)
 Sさん:真空管の中高域伸びる伸びる...(≧▽≦) 音が共鳴し合ってハウリング起こすんちゃうかというレベルまできてましたね。3人で作ったので音を分厚くするために重ねてるんですけど、とにかくこんな「Band On The Run」は他では聴けないですよ。まるでウイングスにフィル・スペクターが加わったかのようなこの厚みはビックリです。
 私:ハハハ、フィル・スペクターとは上手いこと言わはりますねぇ。「Band On The Run」ってLoud Cut にUKマト3、そしてもちろん例のニンバス盤と筋金入りの超高音質盤が揃ってますが、こいつはその中でもエース級ですよ。
 Sさん:今聴いたのは私の予想を超えてました。こんな「Band On The Run」があったのか... という感じです。音の違いがハッキリしすぎてて。
 私:そうそう、初めて聴いた時、私もブッたまげましたもん。
 Sさん:「Speed Of Sound」だけやったらウルグアイ盤の音の良さはたまたまかもしれないですけど、ポールのソロを3枚聴いてみて3枚とも当たりやからこれは確実かなと思ったんです。で、ウルグアイ盤の音が良いなんて言ってる人なんて他におらんかったんで、私が「日記」に書いたんです。
 私:なるほど...
 Sさん:この「Band On The Run」を聴いて、shiotchさんが他のウルグアイ盤も買う気にならはったのがよく分かりました。
 私:そうなんですよ。このレベルの音が他にもあるかもしれんと思うと居てもたってもいられなくなりまして...
 Sさん:特にヴォーカルが良く聞こえますね。ジョンの声なんかめっちゃ合いそうですよ。
 私:この音で「Stand By Me」なんか聴いたらチビリまっせ(笑)
 Sさん:shiotchさんのことやからすぐに手に入れそうですね。
 私:いや、実を言いますともう買いましてん。ジョンの「Rock 'n' Roll」と「Mind Games」。それとポールの「Ram」も...
 Sさん:えーっ、もう買わはったんですか! すごいなぁ...
 私:いやぁ、ウルグアイで久々にビートルズ・コレクターの血がたぎりますわヽ(^o^)丿
 Sさん:それにしてもアナログ・レコードってホンマにすごいですね。まだこれだけ楽しみを与えてくれるんですから...
 私:奥が深いというか、まだまだ音の良い盤を探す楽しみがありますよ。
 Sさん:確かに...
 私:今週もエエ週末になりましたわ(^.^)

ウルグアイ盤特集②「Red Rose Speedway」

2020-11-03 | Paul McCartney
 A①「Big Barn Bed」のイントロがスピーカーから流れてくると同時に “おぉ、コレは!” と思わず頬が緩む。何というリッチなサウンドだろう。「Wings At The Speed Of Sound」や「McCartney II」で聴いたのと同傾向の、温かみのある濃厚なサウンドだ。73年の「Red Rose Speedway」でこれなら、少なくとも70年代プレスのソロ作品はほぼ“当たり”と考えても良いのではないか。これはえらいこっちゃである。A面はほぼNM状態で大満足(^.^) B面がちょっとチリチリいうのが玉にキズだが、そんなマイナスを補って余りある音の太さに心を奪われてそのうちノイズが気にならなくなるくらい良い音だ。
 続いて「Band On The Run」、「赤盤」と聴いていくが、これが更に凄くってもう大コーフンヽ(^o^)丿 何がどう凄いのかの詳細はまた別の機会に書くとして、とにかく届いた3枚ともが “大当たり” だったので、私を“ウルグアイ盤桃源郷”へと誘って下さったSさんへのお礼に報告も兼ねてすぐにでも行かねばと思い、その週末にB-SELSを訪れた。

 私:ウルグアイ盤買いましたで!
 Sさん:えーっ、もうですか ... いつもながら凄い勢いですね(笑) で、何を買わはったんですか?
 私:「Red Rose Speedway」と「Band On The Run」です。
 Sさん:うわー、これ聴きたかったんです。早速かけましょう。
 私:どうですか?
 Sさん:(ギター・ソロを聴きながら)おぉ、いいですね。めっちゃいい!
 私:濃厚でしょ? A②「My Love」の重低音の響きもたまりませんね。
 Sさん:いやぁ、音に隙間が無いっていうか、たっぷり詰まってますね。
 私:アナログの良さを絵に描いたような音ですよね。音の “熟れ具合” がタマランですわ。
 Sさん:そうそう、ウルグアイ盤やったらこういう音するやろなぁと予想していた通りの音でした。
 私:曲調と音がまたよぉ合うてるんですよ。
 Sさん:いやぁ、いいですねぇ...(としみじみ)。これは独自マトですか?
 私:すんません、あんまり音が良かったんで見るの忘れてました(笑) どーなってます?
 Sさん:とても薄くて見にくいですが、枝番が無いので独自マトでしょう。
 私:じゃあB面いきましょか。
 Sさん:B①「Single Pigeon」みたいなこういう曲に一番合う音ですね。
 私:はい、おそらくポールのアルバムの中でもこの「Red Ros。e Speedway」が一番ウルグアイ盤の音作りに合う内容だと思います。
 Sさん:1つ1つの音が力強いです。
 私:音の密度が異様に高いですよね。Bラス・メドレーのギターがシャープに飛び出してきます。
 Sさん:これ、UK盤より良いんじゃないですか?
 私:ヴォーカルやギターは特に聴かせますよね。
 Sさん:何ていうのかな... “感動的な音” と言っていいと思います。
 私:音像が雄大に広がっていく感じです。
 Sさん:レコードから湯気が立ち上ってそう... 倍音の出方とかキリが無いくらいで、この音どこまで上っていくんやろかという感じですね。
 私:こういう音は他のレコードでは聴いたことないです。それで又その音がそれぞれの曲とコワイくらいに合うてるんですよ。
 Sさん:ホンマにレベルの高い音ですよね。
 私:Sさんもさっきおっしゃいましたけど、私も聴く前にアタマの中で想像していた通りの音が実際に出てきてビックリしました。期待を裏切らない音でした。
 Sさん:いや、期待以上の音でしたよ(^.^)
 私:喜んでいただけて何よりです。

ウルグアイ盤特集①

2020-11-01 | Paul McCartney
 各国盤蒐集の世界は奥が深い。ちょうど昨年末くらいで音の良さそうな国のレコードは一通り手に入れて一段落したと思っていたのだが、考えが甘かった。今年に入ってからB-SELSで南ローデシア盤の存在を教えていただいて “まだまだ世界は広いなぁ...” と感心していたところに今度はチューブ・カットのウルグアイ盤である。例の「McCartney II」をお店で聴かせていただいた時の衝撃はここのブログに記した通りだが、HPの「日記」コラムを読んでそれなりにイメージしていた音を遥かに超えるその濃厚な音はまさに “百見は一聴にしかず” と言えるもので、その日家に帰ってからすぐにビートルズ関連のウルグアイ盤の情報収集に取り掛かったのは言うまでもない。
 しかし困ったことにガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」にも例の横野さんのレコード・コレクションHPにもウルグアイ盤など載っていないし、ネットでググってみても有益な情報がほとんどない。まぁ当然と言えば当然なのだが、「McCartney II」「Wings At The Speed Of Sound」「Wild Life」と3枚聴いて3枚とも当たりだったことを考えれば他の盤にも大いに期待が持てるので、大人しくここで引きさがるわけにはいかない。私は意を決して “ビートルズのウルグアイ盤蒐集” という道なき道を進もうと心に決めた。
 まず手始めにeBay でソロを含むビートルズ関連のウルグアイ盤を検索してみたところ、見たこともないジャケットが何種類も出てくるわ、タイトルがスペイン語で何のこっちゃ全然ワカランわでいきなり出鼻をくじかれる。それでもめげずに色々見ていくと「Help!」以降はUKと同じっぽいのだが、それでもレーベルが青、赤、薄水色と色々あってどれを買えばいいのかよく分からない。私はとりあえずビートルズ本体は後回しにして、メンバーのソロ・アルバムから狙っていくことにした。60年代プレスの南米のレコードはブラジル盤で懲りているのでどうしても懐疑的になってしまうし、何より実際に聴いて音が良かった3枚はすべて70年代プレスの盤だったからだ。
 私は一通り検討した結果、とりあえずポールの「Red Rose Speedway」と「Band On The Run」を買うことにした。南米からレコードを買う時は紛失の危険性が非常に高いので少々送料が高くても追跡可能な書留便にする必要があるが、この2枚はどちらも同じセラーが出しており、送料をケチりたい私のニーズにピッタリだったからだ。このセラーはとてもフレンドリーな人で、メールでやり取りをするうちに意気投合して(←この人はポールの大ファンで、モンテビデオ公演に2回行ったとのこと...)同じ送料($33)であと2枚は送ってあげれるよとのことだったので、ついでに「赤盤」も一緒に購入。1枚当たり送料$11なら御の字と言えるだろう。因みに3枚とも盤質VG+ で$50だったが、10%オフのオファーを快諾してもらってそれぞれ$45で買うことができた。
 それから9日後、いつものように仕事から帰るとリビングのテーブルの上にどデカい荷物が置かれていた。“何やろ?ノートパソコンの修理とか出した覚えないけどなぁ...” と訝しく思いながら差出人を見ると URUGUAY云々と書いてある。えーっ、もう届いたんかいな! 地球の裏側からやしコロナとかもあるしでてっきり1ヶ月ぐらいかかるもんやと思っていたのでビックリするやら嬉しいやら(^.^)
 早速梱包を解いてレコードを取り出す。まずは盤面チェックからだが、いきなり「Red Rose Speedway」のセンター・レーベルが剥がれていてビックリ。このあたりは南米らしいおおらかさということろだろうが、私としてはレコードの盤質さえ良ければレーベルが剥がれていようが書き込みがあろうが全然気にならない。とりあえずスティックのりで応急処置をして一丁上がり。他の盤も目視で気になるようなキズが無いので一安心だ。私はレーベルを貼りつけたばかりの「Red Rose Speedway」をターンテーブルに乗せて “どうかエエ音で鳴ってくれよ...” と祈りながら全神経を耳に集中した。 (つづく)

「Wild Life」聴き比べ大会②

2020-10-26 | Paul McCartney
 ウルグアイ盤がたまたま稀少なマト9だったことがきっかけで始まった「Wild Life」聴き比べ大会もいよいよ佳境に突入... それでは早速前回の続きをご覧下さい。

 私:UKマト9お願いします。
 Sさん:非常にシャープですね。
 私:キリッとしてますね。バスドラのドスンと腹に響くような感じもタマランです。
 Sさん:ハイハットの音ひとつ取っても違います。
 私:切れ味が鋭いですね。よぉ切れるナイフみたい...
 Sさん:それにしてもこの曲をここまで掘り下げて聴き比べる企画、中々ないですよ。
 私:確かに...(笑) じゃあ次はUKマト11いきましょか。
 Sさん:聴きやすい音になりましたね。
 私:ハチャメチャさが巧く削られてます。
 Sさん:なぜ9から11になったのか分かった気がします。
 私:続けて聴くとよく分かりますね。
 Sさん:ポールも大きな音を希望したと思うんですよ、PLAY LOUD みたいな。
 私:ジョンの「Cold Turkey」や「Instant Karma!」と同じコンセプトですね。
 Sさん:そうそう。で、エンジニアが何回も切り直してマト9を作ったんだけど、商品としての聴きやすさを考えて最終的にマト11に落ち着いた...
 私:私もそう思います。いやぁ、これは面白い!
 Sさん:じゃあ次はブラジル盤にいきましょう。
 私:どうですか、これ? 私は気に入ってるんですけど。
 Sさん:めっちゃデカい音!(笑) ゆったりと言うか、おおらかと言うか...
 私:厳しいUKの音の後にこれを聴くと何だかホッとしますね。
 Sさん:ギターがとっても良い音してますね。奥行きもしっかりありますし...
 私:UKとは明らかに違うけれど、とっても親しみを感じる音です。
 Sさん:ギターが特に良いんですが、ドラムの音の柔らかさも良いですね。UKはドラムの音が硬いんですよ。
 私:これ、南米繋がりの余興のつもりで持ってきただけなんですけど(笑)エライ気に入ってもらえてよかったです。
 Sさん:いえいえ、すごく良いですよ。UKの音とは違うけれど、ギターとかキーボードの音がすごく良いです。
 私:それと、ヴォーカルがかなり前に出てきますね。独自マトはホンマに面白いですわ。
 Sさん:確かに。当たり外れはありますけど、これは当たりですね。B面も聴いていいですか?
 私:もちろん! 気の済むまでどーぞ(笑)
 Sさん:おぉ、B面の音は更にこのアルバムに合ってるような気がします。温かみのある音が。それに盤質がすごく良いじゃないですか!
 私:NMですね、これは。
 Sさん:いいなぁ、ブラジル盤。これは “当たり” ですよ。
 私:UK盤もウルグアイ盤もブラジル盤も音にそれぞれ独自の魅力があることが改めて分かりました。いやぁ、今日はホンマに楽しかったです(^.^)

「Wild Life」聴き比べ大会①

2020-10-22 | Paul McCartney
 ウルグアイ盤を一気買いしたその5日後、ちょうど仕事に空きが出来たので昼から有休を取って、UKとスウェーデンのマト9盤、そして南米繋がりということでついでにブラジル盤の「Wild Life」も持って、再び B-SELSを訪れた。台風が近づいていてあいにくの天気だったが、その方がお客さんが来なくて(←雨の日はレコードが濡れるの嫌ですからね...)聴き比べに好都合だと思ったからだ。

 私:「Wild Life」に行く前に、まず「Wings At The Speed Of Sound」の開封やりませんか? 筆おろししたミント・サウンドを一緒に聴きましょうよ。
 Sさん:前に店にあった盤は凄い音してましたけど、まさかあの音をミント盤で聴けるとは...
 私:ハサミをお借りできますか?
 Sさん:どーぞどーぞ。
 私:サンドイッチ・カヴァーの外袋を切るのって初めてです。緊張するなぁ...
 Sさん:(取り出したレコード盤面を見て)ちょっとビニール焼けありますねぇ... エエ音で鳴ってくれよ...
 私:(A①「Let 'Em In」がスピーカーから流れる)おぉ、これは素晴らしい!!! ポールの声がふっくらして優しく聞こえます。
 Sさん:う~ん、良い音ですねぇ...
 私:A④「Beware My Love」のアコギの音がすごく良い! こんなの初めてですよ。
 Sさん:ねっ、良いでしょ!
 私:ポールのシャウトが突き抜ける感じがたまりませんね。クリアーで、それでいてめっちゃパワフル!
 Sさん:ベースもパワフルです。
 私:でも何が凄いって、ジョー・イングリッシュの鬼神のようなドラミングですよ。ありとあらゆるテクニックを使って、死力を尽くして作り上げるリズムが思う存分堪能できます。これ1曲だけでも一万円の価値ありますね。
 Sさん:ホンマにこれカッコイイわ(^.^)
 私:いやぁ、こんな凄い盤のミント初聴きを一緒に出来て良かったですわ。それじゃあいよいよ「Wild Life」の聴き比べにいきましょか。どんな順番で聴きます?
 Sさん:そうですねぇ... まずは王道であるUKマト9の音を聴いて、それからウルグアイがどれくらい健闘してるのかを知りたいです。
 私:同じ「Wild Life」でもこーやってジャケットを並べてみるとやっぱりUKが圧倒的に鮮明ですね。次いでスウェーデンとブラジルが同じくらい... ウルグアイのジャケはボヤケてみえますね。
 Sさん:違いがハッキリ出ますね。
 私:全曲聴いてると比較しにくいので、どれか1曲選んで比べませんか?
 Sさん:A③「Love Is Strange」が一番違いが分かりやすそうなので、それで比べましょう。色んな音が入ってますからね。
 私:じゃあお願いします。
 Sさん:(スピーカーから音が出ると同時に)これこれ、この音!!! やっぱりすご~い音してるわ。
 私:ただただ圧倒されます。
 Sさん:ラウドカットかと思うくらい凄い音でした(^.^)
 私:じゃあ次はウルグアイで。
 Sさん:どうですか?
 私:おぉ、同じマトなのにちょっと違いますね。
 Sさん:大健闘してますけど、違う音ですね。
 私:でもこの迫力は捨て難い魅力ですよ。
 Sさん:ウルグアイの方はマザー刻印無しか... 中域が強いですね。
 私:押し出し感がハンパないです。
 Sさん:UKの方は怖い音というか...
 私:厳しい音と言ってもいいかもしれません。
 Sさん:ドスが効いてますね。それと比べるとウルグアイの方は優しい温かみのある音に聞こえます。
 私:じゃあ次はスウェーデン盤おねしゃす(笑)
 Sさん:確かにマトは9ですけど、よく見ると別にマトが書いてある “二重マト” になってますね。
 私:先の2枚に比べると音の厚みがちょっと薄いですね。
 Sさん:音がおとなしいです。これは面白い!!! もう1回UKマト9聴いて、次に店にあるUKマト11聴いて、最後にブラジル聴くというのでいいですか?
 私:もちろん! お任せします。
 Sさん:面白くなってきましたね...(^.^)  (つづく)

B-SELSでウルグアイ盤を一気買いした②

2020-10-15 | Paul McCartney
 前回に引き続きウルグアイ盤特集である。私の興味を引いた「日記」コラムについては既に書いた通りだが、店頭に置かれていたウルグアイ盤の商品説明ポップにもSさんの熱い想いが込められていたので、忘れないようにここに書き留めておきたい。
 まず「McCartney II」は他の文字の3倍くらいの大きさでデカデカと“必聴!! ウルグアイ” と書かれており、その下に“インパクトのあるジャケよりも... ただ音を聴いて下さい” とある。これを見て “聴いてみたいな...” と思わなければ真のポール・マニアとは言えない。
 次に「Wild Life」だが、これも大きな文字で“超レア! ウルグアイ orig” とあり、“レアUKメタルマザー・マト9、UKのA面マトは通常11ですが、それよりも早い 9 が使われています、UKでは激レアマト!!” と“レア”というパワー・ワード3連発に続いて “盤質良く、音は大迫力!!” と書いてある。「Wild Life」マト9がいかに入手困難かはポールのコレクターなら誰でも身に沁みて分かっているが、そんなマト9の音がウルグアイ盤で聴けるというのだからこれはえらいこっちゃである。
 最後に「Wings At The Speed Of Sound」だが、デカい文字で “奇跡のシールド!! 極レア! ウルグアイ盤未開封” とあり、その下に“過去にもこのレコードを扱いましたがおそろしく良い音でした。真空管カットと思われます。今回は奇跡の未開封です” と、これまた凄い熱量だ。これは絶対に聴きたい、いや、聴かねばならぬ... と思った私は “3枚まとめて1000倍返し...じゃなかった、一気買いだ!!!” と怒涛の半沢モードに突入。頭の中でお金の算段を考えながら全神経を耳に集中した。それではここから前回の続きをどーぞ;

 私:おぉ、この「Wild Life」もイケますやん!
 Sさん:そうなんですよ。記憶にあるUKマト9の音と比べようとしてるんですけど...
 私:あれ売っていただいたの1年半も前ですもんね。今度持って来ますからじっくりとマト9比較しましょう。
 Sさん:いいですね!!! 何と贅沢な聴き比べ...(笑)
 私:ついでにスウェーデン盤マト9も持って来ますわ。やるなら徹底的に... ね。
 Sさん:楽しみです(^.^)
 私:それにしてもこのリンダのバック・コーラス、最高ですね! 彼女のヴォーカルについて色々言う人いますけど、一体どこに耳付けとんのじゃ?って思いますわ。「Ram」も「Wild Life」もリンダのヘタウマ・コーラスがあってこその名盤でしょ。
 Sさん:私もそう思います。他の女性歌手やったらこうはいかないですよね。
 私:そうそう、ポールのソロ作品におけるリンダの声はとっても重要ですよ。夫唱婦随とでもいいますか、とにかくポールとリンダの声って抜群に合うんですよ。
 Sさん:「Wild Life」談義、盛り上がりますねぇ...(笑)
 私:2人ともこのアルバムめっちゃ好きですからね。まさか「Wild Life」で語り合える人に出会えるなんて夢にも思いませんでしたもん...(笑)
 Sさん:私もです。
 私:(そうこうするうちにB面が終了)あぁ、コーヒー飲むのも忘れて聴いてしまいました。じゃあ、この3枚全部下さい。
 Sさん:えっ、ホンマに???
 私:ホンマのホンマです。(←いつもこのパターンやな...)
 Sさん:でも「Wild Life」はUKのマト9盤持ってはりますやん。
 私:微妙に音が違うんですよ。もちろんUKが王道の音なんですけど、このウルグアイ盤の音も捨て難い魅力があるんです。こちらでいただいた「Rubber Soul」や「Revolver」のインド盤、「A Hard Day's Night」の南ローデシア盤、「Rubber Soul」の南アフリカ盤なんかと同じですわ。大好きなレコードは色んな味付けで楽しみたいでしょ?(笑)
 Sさん:なるほど。
 私:今度「Wild Life」マト9持ってきますんで、その時にじっくり聴き比べしましょう。

B-SELSでウルグアイ盤を一気買いした①

2020-10-13 | Paul McCartney
 私はB-SELSホームページの「日記」の大ファンで、“今日は更新されてるやろか...” とワクワクしながら1日に何度もチェックしている。特に先週からは “各国盤強調週間” ということで、スペイン、フランス、インド、ベネズエラ、ウルグアイ、インド、ペルーと、まるで “レコード万博” さながらのヴァラエティ豊かなラインナップのお話しを楽しく読ませていただいているのだが、中でも特に興味を引かれたのが10/1と10/2に連続投稿された2枚のウルグアイ盤だった。
 ウルグアイと言われても頭に浮かぶのはサッカー選手のスアレス(←ワールドカップの試合で相手に噛みついたことで有名)ぐらいで、似た国名のパラグアイとの区別もつかないし、そもそもどこにある国かすら知らない。だから最初は “ウルグアイねぇ... そりゃあ確かに珍しいんやろうけど肝心の音はどうなん???” と眉に唾を付けながら読み始めた。
 ところがすぐにいつもは冷静沈着なSさんの文章がやけに熱いことに気付いた。曰く、“レコードに針を落とした途端、スピーカーの前に釘付けになる。途中で席を立つことができない。” “「UK盤がUS盤が」、「マザーがスタンパーが」といった次元の話ではない。UK盤のどれだけスタンパーが若い盤を持ってきても、この音にはかなわない、いや、この音は出せないと思う。” とまぁベタ褒めである。Sさんの文章は常に行間を読むように心がけているのだが、このウルグアイ盤に関する限りは行間もヘッタクレも無い “火の玉ストレート” な表現で大いに驚かされた。
 更に私にとってトドメの一撃となったのが “真空管カッティング” というパワー・ワード。20年前にオリジナル盤の音の凄さに開眼した時から筋金入りの真空管至上主義者を自負している私としてはどうしてもこのレコードの音が聴きたくなり、翌日の土曜日に B-SELS に行くことにした(←最近このパターンばっかりやな...)

 私:今日は昨日の日記に書かれてたウルグアイ盤を聴かせて下さい。
 Sさん:もちろんです。どれがいいですか?
 私:「McCartney II」をお願いします。
 Sさん:わかりました。このジャケット、いいでしょ?
 私:これはカッコエエですね。
 Sさん:(レコードに針を落として...)どうですか?
 私:おぉ、こんなA①「Coming Up」は初めて聴きましたよ! UK盤とは明らかに違いますね。コレめっちゃエエですやん!!!
 Sさん:そうなんですよ。私もビックリしました。
 私:何か演奏の重心が下がったような感じで、どことなく軽~いイメージがあった「Coming Up」に重厚感が出てますね。いやぁ、コレは凄い。
 Sさん:そしてA②「Temporary Secretary」...
 私:テクノっぽい音作りの曲に絶妙なサジ加減の温かみが加わってホンマに気持ちエエですね。「日記」にも書いておられましたがこれほどとは思いませんでした。いやぁ、参ったなぁ... 各国盤でこんな音が聴けるとは、ホンマに世界は広いですね(笑)
 Sさん:この音の素晴らしさを伝えたくて「日記」に2回連続で書いたんですよ。
 私:わかります。真空管カッティングで聴く「McCartney II」、たまらんですよ!!!
 Sさん:B面も良いでしょう?
 私:ホンマに温かみのある音ですね。このアルバムってテクノの影響がどーしたこーしたと、どうしても表面的なサウンド・プロダクションに目が向いてしまいがちですが、真空管カッティングによってそのあたりのアクの強さが中和されたおかげで、曲本来のメロディーの素晴らしさが存分に味わえますね。
 Sさん:この音の良さを分かっていただけて嬉しいです。
 私:私の方こそ、ウルグアイ盤なんてSさんに薦められなければ間違いなくスルーしてたでしょうから感謝感謝ですよ。確か「日記」には常連さんが「Wings At The Speed Of Sound」のウルグアイ盤を絶賛されてたと書いておられましたが、それもこんなに良い音だったんですか?
 Sさん:はい、これと同じ真空管カッティング系の素晴らしい音でした。今、お店にあるのはシールドされたミント盤なんですけど...
 私:えっ、シールド? 凄いなぁ... 南米に特別な仕入れルートでも持ってはるんですか???
 Sさん:ハハハ、まさか...(笑) これは多分デッドストックでしょうね。
 私:なるほど。さすがにシールド盤を聴かして下さいとは言えないので、次はこの「Wild Life」を聴かせていただけますか? 
 Sさん:いいですよ(^.^)    (つづく)

Freshen Up Japan Tour Nagoya Dome 11.8 2018 / Paul McCartney

2020-03-25 | Paul McCartney
 前回取り上げた Nanker レーベルの「Final Night In Japan 2020 Live At Nagoya Dome」は通販で買ったのだが、そこのお店を利用するのは初めてだったのでクイーンの他のタイトルやビートルズ関連のタイトルで何かエエのはないかいな... と色々チェックしていた時に偶然見つけたのが同じ Nanker から出ているこのブルーレイ盤「Freshen Up Japan Tour Nagoya Dome 11.8 2018」だった。
 ポールのナゴド映像はライトハウスでもらったギフト盤が一番気に入っているのだが、自分が見に行ったライヴをハイ・クオリティなブルーレイで 、しかも “サイド・スクリーンとステージを捉えた完全固定映像” と “ステージのみを捉えた完全固定映像” という2種類の違った目線からポールのライヴが楽しめるというのだからこれは絶対に買いである。メイン・カメラが1階3塁ベンチ上付近最前列あたりということで、自分が体験したのと大体同じような角度から見れるのも嬉しい。そこの店はクレジットカードが使えず代引き着払いのみという実に不便極まりないシステムなので単品で買うと代引き手数料を支払うのがバカらしくなるが、私の買い物はクイーンとポールの2タイトルで送料無料になっていうことナシ。ということで、前回 “春のクイーン祭りでもやったろか” とか書いたが前言撤回。まぁナゴド繋がりということで... (笑)
 届いた盤をまずディスク1から視聴開始。ところがサイド・スクリーンなどどこにも映っておらず、ただひたすらステージのみを撮っている。当然ディスク2も同じだ。一方ディスク3と4はサイド・スクリーンをメインでずーっと映しており、ステージはハッキリ言っておまけ程度と考えた方がいい。要するにスクリーン・ショットとステージ・ショットがメーカーの説明と真逆だったのだ。まぁどっちがどっちでも問題はないが、それにしてもエエ加減なメーカーやなぁ...
 実際に観た感想だが、ディスク1と2の“ステージのみを捉えた完全固定映像” の方はステージ上のポールが近くもなく遠くもなくというビミョーな距離感。しかも文字通りの “完全固定映像” なので画面がやや単調で、数曲観るとサイド・スクリーンが恋しくなってくる。このディスク1&2はまさに、“ライヴに行って双眼鏡も何も使わずにただジーッとステージを見つめている”... そんな感じなのだ。
 一方 ディスク3と4の “サイド・スクリーンとステージを捉えた完全固定映像” の方は ディスク1&2に比べるとステージ上のポールはかなり小さくてハッキリ言って米粒程度の大きさなのだが、それを補って余りあるのがサイド・スクリーンに映し出されるプロ・ショット映像で、単調極まりないディスク1&2よりは遥かに楽しめる。スクリーン下のトランスレイションがバッチリ映っているのも面白い。もちろん理想を言えばクイーン・たまアリ映像のような “かぶりつきのクロース・ショット” がベストだが、それが無理ならこのように割り切ってサイド・スクリーンに映し出されるプロ・ショットをキレイに観れるのがいい。結局実際のライヴ会場での我々の目線に一番近いのがこのディスク3&4の “サイド・スクリーンとステージの映像” ということになるのだろう。ラストのドアラまでバッチリ映ってるし...(笑) ただ、曲間のMCでピントがボケるのが玉にキズ。ポールのライヴは喋りも重要な要素だということが Nanker さんには分かってらっしゃらないようだ。
 音声面は “高品質なオーディエンス録音最高峰のアルティメイト・サウンドを映像にシンクロ” しているとの看板に偽りナシのスーパーウルトラ・ハイ・クオリティ。情報によると Nanker の名古屋ブートはあの T&J がネット上にアップしたマトリクス音源を使っているらしいとのことだが、この音を聴いてその可能性は非常に高いと思った。私にとって2種類の映像はどちらも及第点の出来だったが、この素晴らしい音が手に入っただけでも買った甲斐があったというものだ。このブルーレイ4枚組アイテムは私にとって、あのニャゴヤの夜のリマインダーとしては十分な逸品... だがや。

Highlights Of Wings Over Europe 1972

2020-02-24 | Paul McCartney
 前回は「White Album」の1G盤を取り上げたが、今年に入ってゲットした大物はあの1枚きりで、最近はさっぱり良い出物が無い。ここはひたすら耐えて待つしかないな... などと考えながらいつものようにメールチェックしていたら、浜松のブート屋さんKentからメルマガが来ていたので “まぁどーせストーンズとかフロイドとか、そのへんやろ...” とあまり期待せずに開いてみると、何とそこには今が旬のクイーンを差し置いて(笑)WINGS の文字がデカデカと躍っているではないか! それも3アイテム同時リリースときたもんだ。
 へ?何で今頃ウイングス?と思いながらラインナップを見てみると、「James Paul McCartney」の映像をブラッシュアップしたDVD「JPM Definitive Edition」、アントワープでのライヴをサウンドボードで収録したCD「Antwerp 1972 Soundboard」、そして初期ウイングスのライヴをプロショットで収録したDVD「Highlights Of Wings Over Europe 1972」とのこと。これはえらいこっちゃである。オリジナル盤漁りが小休止かと思ったら今度はブートレッグ... ビートルズ・コレクターに気の休まる時はない(笑)
 これら3アイテムの中で一番私の興味を引いたのは「Highlights Of Wings Over Europe 1972」だった。メーカー・インフォを読んでみると、何とあの「Red Rose Speedway」のスーパーデラックス・エディションに入っていた「The Bruce McMouse Show」からネズミのアニメ部分を取り除き、代わりに演奏シーンをパッチして、更に「Wings 1971-73」ボックスに付いていた「Wings Over Europe」音源をシンクロさせることによってネズミの声を消し去り、実際の1972年ツアーの曲順通りに並べ替えて当時のポールのライヴを疑似体験できるようにしたというスグレモノらしい。
 そもそも私はコンサートのライヴ映像に余計なテーマを付け加えるという手法が大嫌いで、ゼップの「The Song Remains The Same」やマイケルの「Moonwalker」など、大きな期待を持って映画館に行ったものの退屈すぎて途中で寝そうになった音楽映画は枚挙にいとまがない。ゼップならギンギンのハードロックの演奏シーンを、マイケルならキレッキレのダンス・シーンだけをひたすら流してくれればいいものを、ワケの分からんイメージ・シーンやら子供だましの陳腐なストーリー展開やらで大いにガッカリさせられたものだ。
 ポールの「The Bruce McMouse Show」も例外ではなく、“おぉ、ポール若いなぁ... リンダも頑張っとるやん(^.^)” とライヴにのめり込もうとすると例の忌々しいネズミのアニメが出てくるのである。これでは興醒めも甚だしい。そんなネズミどもを退治して消し去ってくれるとは、さすがはライトハウス。そう言えば去年のこの時期にも確か映画「Let It Be」からヒステリックなオバハンを見事に消し去ってくれたっけ。
 ということで届いたDVDを早速視聴。おぉ、これは確かにウザいネズミのアニメがキレイさっぱり消されて... いると思っていたら、4曲目の「Blue Moon Of Kentucky」にネズミのシーンが残っとるやん(>_<) 9曲目の「My Love」もそう。一体どーなってんねん? 何でこんな中途半端な仕上がりになってるのか私には良く分からないが、ネズミとキレイさっぱりおさらばできると思っていた私としては正直ガッカリだった。
 ただ、それ以外のシーンは見事に再構築されているし、エンディングのシーンも実に巧く処理してあるので、この2曲だけ我慢すれば若かりし頃のポールのライヴがオフィシャル級の美麗映像で拝めるというワケだ。少なくともリモコンの早送りが欠かせなかった「The Bruce McMouse Show」よりは遥かにストレスなく楽しめるので、やっぱり買って正解だったと言えるだろう。

「スネークマンショー」&「増殖」

2020-01-16 | Paul McCartney
 ちょうど今から40年前の今日、ウイングス初の日本公演のために成田に到着したポール・マッカートニーが大麻不法所持で逮捕された。“寝ても覚めてもビートルズ” だった高2の私にとってポール・マッカートニーという人はまさに “現人神” と言ってもいい存在。そんなポールをナマで見れるのが楽しみで楽しみで、私はなけなしの小遣いを叩いてチケットを買い、1月28日のフェスティバルホールのコンサートを一日千秋の思いで待っていた。あの日、学校から帰ってきてテレビをつけたらちょうど晩のニュースをやっていて、手錠をはめられたポールの姿が目に飛び込んできた時は一瞬時が止まったような感じでアタマの中が真っ白になった。
 しかし私は公演中止のショックよりもポールが留置場に入れられていることの方が心配で、数日間拘留された後無事釈放されて国外強制退去になった時はむしろホッとしたというのが正直なところだった。その後、2月の寒空の下、新大阪にあったウドー音楽事務所までチケットの払い戻しに行ったのだが、払い戻し窓口のちょうど真横で幻となった来日公演のパンフレットを売っており、返金されたお金はその場でパンフに化けたのだった(笑)
 それから数ヶ月して「マッカートニーII」がリリースされ、例の「Frozen Jap」という曲のタイトルが物議を醸したが、私にとってポール逮捕の記憶を何よりも鮮明に思い出させるのは伊武雅刀と小林克也をフィーチャーしてシュールな笑いを追求したアルバム「スネークマンショー」の中に入っていた「はい、菊地です」という寸劇で、 “ポール逮捕をネタにすんなよ...” と思いながらもそのバカバカしいまでの面白さにハマってしまい、何度も何度も繰り返し聴いたものだった。まぁ “寒空に鼻水垂らして、なけなしの小遣い叩いて切符買った” 一人としては今聴いても高2の冬にタイムスリップしてしまう。
 私にとっては後輩刑事が “先輩、イギリスと戦争するつもりですか!” と菊地を制しながら小声で(笑)“すみません、私にも1枚お願いします...” と自分もサインをもらおうとするくだりが一番のツボ。“さっきカツ丼とってやったら喜んで食っとりました...” って、ポールがカツ丼食ってる姿を想像しただけで何だか笑えてきて、ポール逮捕のショックで凹んでいた私は何となく救われたような気がした。
 それにしてもこんなコントが成立するのって音楽界ではポールぐらいしかいないのではないか。警視総監がサインを欲しがるほどの人気と知名度を誇るスーパースターなんてどう考えても他にはちょっと思いつかない。ミック・ジャガーやフレディ・マーキュリーでは貫目が足らんし、やっぱりビートルズは格が違うなぁと改めて感じ入った次第。
Snakeman Show - はい、菊地です


 スネークマン/ YMO 関連のポール・ネタではもう一つ、YMOの10インチLP「増殖」に入っていた「ナイス・エイジ」の間奏部分に挿入された福井ミカ(←言わずと知れたサディスティック・ミカ・バンドのヴォーカル)のナレーション “ニュース速報;22番は今日で1週間経ってしまったんですけれども、でももうそこにはいなくなって、彼は花のように姿を現します... Coming up like a flower...”(←22番とはポールの拘置所内での番号)も忘れられない。「増殖」リリースの2ヶ月前に出たばかりのポールの最新シングル「Coming Up」のフレーズをさりげなく挟み込むあたりはさすがYMOだ。
Nice Age - YMO


【おまけ①】ワシが初めて「スネークマンショー」を知ったのはのぉ、ラジオ番組で偶然耳にした「スター・ウォーズ」のパロディーじゃった。色んな方言が飛び交う「帝国の逆襲」の吹き替えをやっとったんじゃがのぉ、こいつがまたえっとぉオモロぉて、カセットに録音して擦り切れるほど聴いたもんじゃった。「スター・ウォーズ」シリーズは何ちゅーてもよぉ、クソネズミに買収される前のⅠ~Ⅵが最高なんじゃ。ワシみたいな「仁義なき戦い」好きの「スター・ウォーズ」ファンじゃったら何回聴いても笑いが止まらんのじゃけぇ、かばちたれちょらんといっぺん聴いてみてつかいや。
スネークマンショー 仁義なき帝国の逆襲 方言篇


【おまけ②】「スネークマンショー」の代表作と言えばコレ。レコードやCDに入っている音声のみのヴァージョンももちろん面白いが、2人がテレビの「ドレミファドン」に出た時の貴重な映像(←“ヤングに話題集中のスネークマンショー” というテロップが時代を感じさせますな...)がYouTubeにアップされていたので是非ご覧あれ。尚、後半に入っている西城秀樹と桑田佳祐によるレコード店ヴァージョンもめっちゃオモロイ(^.^)
スネークマンショー これなんですか?


【おまけ③】「スネークマンショー」の隠れ名作としてイの一番に頭に浮かぶのが、選挙カーがちり紙交換カーに徐々に洗脳されていく「正義と真実」。伊武雅刀と小林克也の名人芸がジワジワきます...(^.^)
正義と真実/スネークマンショー

ベースが轟く「Silly Love Songs」のUSプロモ・シングル盤

2019-12-11 | Paul McCartney
 私はレコード屋という空間が大好きな “レコード馬鹿” である。しかし毎週末レコ屋巡りをしていたのは遠い昔の話で、京阪神のレコ屋はほぼ壊滅状態となり、レコードを買うのはネット・オンリーという状態がかれこれ10年以上も続いていた。だからちょっと足を延ばせばディスクユニオンを数軒はしごできる東京近郊のコレクターがうらやましくて、“東京か横浜かリバプール(笑)に生まれたかったなぁ... 奈良なんかお寺ばっかりでホンマに何もないわ(>_<)” と自らの不遇を呪った(←そんな大袈裟な...)ものだった。
 しかしそんな状況が一変したのが昨年のことで、何が言いたいのかもうお分かりだと思うが、何とこの奈良の、しかも近鉄奈良駅の真向いという一等地にビートルズのアナログ・レコード専門店が出来たのだから長生きはするモンである。今では “奈良に生まれてホンマに良かったぁ...(^.^)” と喜んでいるが、それもこれも音楽にあまり縁のない奈良という土地にビートルズ・オンリーのレコ屋を開くという暴挙、じゃなかった快挙(笑)を成し遂げられたSさんのおかげと心から感謝している。
 最近は世間ではあまり話題に上らないスタンパー・コードの重要性や他社委託プレス盤の面白さといったディープなネタを色々教えていただいていることもあって、私の音楽日記であるこのブログも自然とB-SELSネタばかりになってしまっているが、懲りずに今日もまたまたB-SELS関連の話をしたい。
 そうそう、本題に入る前に是非とも書いておきたいことが1つあった。先週「My Sweet Lord」のシングル盤を買いにB-SELSに行くと、Sさんが黄色い紙袋を差し出された。“何ですの、これ?” と伺うと、長崎から来られたKさんというお客さんがたまたま私のブログを楽しんでおられる方で、長崎名物のカステラみやげを託ったとのこと。まだお会いしたこともない私なんぞのために何ともありがたいことである。Kさん、ホンマにありがとうございます! 早速美味しくいただきましたです(^.^)  そう言えばKさんがSさんに “これはカステラ界のゴールド・パーロフォンです。” とおっしゃったそうで...(笑) ビートルマニアにだけ通じる名言ですね。金パロごちそう様でしたm(__)m いつかお会いする機会があればニンバス級の美味しさを誇る “つよしのコロッケ” をごちそうさせていただきます(^.^)
 さて、長~い前置きはこれくらいにして、ここからが今日の本題である。少し前のお店HPの「日記」のコラムにSさんが「Jet」「Maybe I'm Amazed」「Sally G」のUSプロモ・シングルのネタを連続投稿されており、それらのプロモ盤でしか聴けないモノラルの野太いサウンドが大好きな私は我が意を得たりとばかりに嬉々として読ませていただいたが、Sさんが第4弾として選ばれたシングルが「Silly Love Songs」で私は “???” となった。というのもこの曲のプロモ・シングルは通常の “モノラル/ステレオ” カップリングではなく、Sさんもコラムの冒頭に書いておられたように両面ステレオで、“エディット・ヴァージョン/フル・ヴァージョン” というカップリングだったからだ。
 私は半年ほど前に B-SELS でポールのUSプロモ・シングルにモノラル・ヴァージョンが入っていることを教えていただいて、鬼のようなプレミア価格が付いた「Country Dreamer」(→eBayで$500、ユニオンで9万円!)以外はすべて手に入れていたが、「Silly Love Songs」はモノラルでないことと、ズタズタに切り刻まれたエディット・ヴァージョンに興味をそそられなかったこともあってあっさりとスルーしてしまっていた。
 しかし、私と音の好みが非常に似ているSさんが “音が素晴らしい”、“ベースとドラムスの音がとてもタイト”、“生に近い鮮度の高さ” とべた褒めし、“聴く価値は十二分にある” と言い切っておられるのだ。これは何としても聴かねばなるまい。
 私はSさんの日記を読み終わるとすぐに Discogs と eBay でこのレコードを検索。Discogsには1枚だけ VGの盤が出ていたがシングル盤1枚に€20近い送料を取るボッタクリ・セラーだったのでパス。一方 eBayの方には $4でNM盤が1枚出品されており、当然こちらを購入。送料込みで2,000円なら御の字だ。
 届いたレコードはSさんが日記に書いておられた通りの轟音盤で、これこそまさに45回転パワーとでも言うべきか、とにかく音がデカいのだ。特にポールのベースが強烈で、まるで鋼鉄の指サックをして(←あるかそんなもん!)弾いてるんじゃないかと錯覚するくらい重々しいベースがブンブン唸る様はまさに圧巻の一言! 「オーディオ・フレッシュンアップ」作戦が功を奏してキレッキレの音で鳴るようになったアルテック・ヴァレンシアから迸り出る重低音の凄まじさに腰を抜かしそうになった。
 このシングル盤を聴いて改めて思い知らされたポールの凄さは「Silly Love Songs」という甘口ナンバーにタイトでヘヴィーな辛口リズムを配したところ。こうして旨口ヒット・ソングが生まれたのだ。ポールの天才ここに極まれりと言いたくなるようなスーパーウルトラ名曲名演... ポールのベースを凄まじい音で聴いてみたいというマニアに超オススメの1枚だ。
Wings - Silly Love Songs - Short Version 45RPM