二年前の今日は史談会の例会が開催された日である。そのときの澤氏の出席の連絡である。
添え書きにあるように、この例会では澤氏に「ヒマラヤの東西を分ける世界のドングリ文化」という、アカデミックなそして少々色違いな議題でお話をいただいた。
氏はまぎれもない史談会の会員であったが、世界を股にかけたどんぐりの研究家で、「世界のドングリ博士」と言われた人である。
ドングリの研究は仕事の延長上のものだろうが、彼の本職は環境設計家(ランドスケープデザイナー)である。
その彼が、当日出席者のためにドングリのクッキーを焼いて持ってきてくれたのである。
熊本日々新聞に例会開催の記事が出て、一般のドングリ愛好家も多く出席された。
好評に味を占め、その一年後に再度お話をいただいた。その時はペットボトルにドングリコーヒーを作ってこられ出席者にふるまわれた。
そして二か月ほど後に、原因不明の病になられて長い入院生活となった。コロナ禍もありお見舞いにも行けずにいたが、帰らぬ人となられた。
痛恨の極みである。捨てることのできないこのハガキは、その時彼がまとめた「ヒマラヤの東西を分ける世界のドングリ文化」の冊子とともに大事に保管している。
ご苦労をおかけしたことにお礼申し上げたところ、「この機会にまとめ上げることが出来たので、お礼はこっちから申し上げたい」とのことであった。
長年にわたり「澤家累代の歴史」をまとめあげられ、私もいささかのお手伝いをした。後書きには特に名前をご紹介いただいた。
海釣りが趣味で、釣果のタイなどを車でわざわざ届けてくれたこともあった。史談会会員の垣根を超えお付き合いいただいたが、ハガキに見えるやさしさが御人柄であった。
コロナ禍の中、お見舞いもできずお別れしたことが、まことに無念である。合掌。