15日の「代執行訴訟第4回口頭弁論」(福岡高裁那覇支部)。翁長知事に対する国の「反対尋問」で、つぎのやりとりがありました。
国側 現在、普天間飛行場の危険性除去について、現実的で実現可能な方法について、あなた自身の具体的な考えはあるか。
知事 10年前に硫黄島にP3Cに乗って行った。向こうは住民がいない。自衛隊のタッチアンドゴーをやっている。沖縄の負担を受けてもらえないかと言ったことがある。努力はしたが、今の考えということは申し上げることはできない。
国側 考えがあるけれども言えない。
知事 県外移設という考えは持っている。具体的にはどこかと言われると、ないという話だ。
軍用機に乗って普天間の移設先を探しに行った、というのも驚いた話ですが、この問答で国側が裁判官に印象づけようとしたのは、“翁長知事は「県外移設」といいながら、具体的な考えは持っていない”ということです。
しかし翁長氏はこう答えるしかないでしょう。「具体的にはない」のは事実ですから。
ここには翁長氏の致命的な弱点・欠陥が表れています。それは、日米政府と同じ「普天間移設」論の土俵に上っていることです。「県外移設」論は「普天間移設」論の一案にほかなりません。
日米政府の言い分は一貫して、普天間返還には代替の移設先が必要だ、本土でも探しているが見つからない、ということです。
これに対して翁長氏の「県外移設」論は、「日本の安全保障は日本国民全体で考え、負担を分かち合う」(「代執行訴訟陳述書」)べきだとして、普天間基地の機能を本土へ移設すべきだというものです。
日米政府と同じ「移設」論に立つ限り、「移設先」はどこにする?代案は?・・・という議論が繰り返されます。
そもそも基地を本土へ移す「県外移設」論では基地被害を含め日米安保体制問題の抜本的な解決にはなりません。各種世論調査の結果が示しているように、それは沖縄県民多数の意見でもありません。
普天間は「移設」ではなく、「無条件・閉鎖・撤去」です。日米政府と同じ「移設」論の土俵に乗ってはなりません。
そもそも県民の願いが結実した「建白書」(2013年1月28日)は、「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」としており、「県外移設」論は排しているのです。
翁長氏は「建白書の精神」に基づくと言いながら、「建白書」に反する「県外移設」論を繰り返しています。
「反対尋問」の翌日に県議会で表明した「2016年度県政運営方針(所信表明)」(2月16日)でも、「県外移設を求めてまいります」と3回も繰り返しています。
これは明らかな「建白書」違反であり、県政与党「オール沖縄」陣営の一致点でもありません。
例えば「県外移設」に反対の日本共産党は、今回の口頭弁論後も機関紙「赤旗」の「主張(社説)」(17日付)で、「『移設』の不当性いよいよ明白」のタイトルのもと、「普天間基地は、『移設』条件なしのへ閉鎖・撤去こそ必要です」と、「建白書」に沿った主張を強調しています。
そうであるなら、共産党はなぜ翁長氏の「建白書」違反の「県外移設」論に対して抗議しないのでしょうか。なぜ見て見ぬふりをしているのでしょうか。それは公党として、県政与党としての責任放棄ではありませんか。
日米安保体制の必要性を繰り返し強調する翁長氏が自発的に「移設」論から脱却することはまず考えられません。そうである以上、「建白書」にもとづいて、翁長氏を「県外移設」ではなく「無条件閉鎖・撤去」の立場に立たせることが、県政与党の役割ではないでしょうか。
23日から県議会で翁長氏の「県政方針」に対する代表質問が始まります。共産党はじめ県政与党の質疑が注目されます。