アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

北朝鮮ミサイルの「日本通過」は誤り

2017年08月31日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

    

 今日の本題に入る前に、前回のブログで、29日早朝の「北朝鮮ミサイル発射」に対する”Jアラート騒動”は、「発射直後からミサイルの動きは完全に把握していた」という安倍首相によって仕組まれたものだと言いましたが、それを証明する記事があったので紹介します。

 「政府は発射直後に日本に落下する可能性はないと判断、自衛隊法に基づく破壊措置を実施しなかった」(30日付中国新聞=共同配信)

 安倍首相・政府は、「発射直後」から、たんにミサイルの動きを把握していただけでなく、「日本に落下する可能性はない」と判断していたのです。「地下へ避難を」などというJアラートはまったく必要なかったわけで、あの騒動が「北朝鮮は怖い」という世論を強めるためのものであったことは明白です。

 さて、30日付の全国紙、地方紙の1面は1紙(朝日新聞)を除いてみな同じ見出しでした。「北朝鮮ミサイル日本通過」(朝日は「日本上空通過」)。しかし、この「日本通過」は誤りです。

 「日本通過」とは日本国すなわち日本の主権が及ぶ領空を通過したという意味であることは明らかです。ところが、北朝鮮のミサイルは日本の領空を通過してはいません。

 「領空」とは、一般に、「大気圏に限られ、宇宙空間には及ばない」(「広辞苑」)と理解されています。さらに専門的な説明はこうです。

 「領空の限界 領空の水平的な限界は、領土・領水の限界と一致する。…垂直的な限界については、問題が多く、いまだに決定されるに至っていない。現在のところ、地球を回る人工衛星の最低軌道あたりをもって限界とするというのが一般的な了解である」(国際法学会編『国際関係法辞典』三省堂、2005年)
 問題が多いという立場に立っても、少なくとも「人工衛星の最低軌道あたり」が限度というのが学会の「一般的な了解」です。

 今回のミサイルはどうだったでしょうか。政府の発表によれば、最高高度は約550㌔。前回までのロフテッド軌道と違いほぼ水平に近い軌道を描きました(写真右はNHKの解説より)。
 一方、大気圏は上空100㌔まで。そしてスペースシャトル、国際宇宙ステーションなどの軌道は約400㌔です。すなわちミサイルは大気圏をはるかに超え、「人工衛星の軌道」からも150㌔も上を飛んだのです。日本の「領空」を通過していないことは明白です。
 したがって、「日本上空通過」とは言えても、「日本通過」とは言えず、各紙の大見出しは誤りだということになります。

 「日本」=「領空」と「日本上空」=「宇宙空間」の違いは重大です。「領空」を無断で通過したのならもちろん日本の主権侵害ですが、「宇宙空間」ではそれは成り立ちません。

 緊急時の情報伝達を研究している日本大学危機管理学部の福田充教授はこう指摘します。
 「領土、領海に着弾することと、上空を飛ぶことは全く意味が違う。それぞれの詳細な個別の事象を冷静に合理的に分析する必要がある」(29日のNHK「ニュース9」)

 どこの国であろうとミサイル発射が平和に逆行することはいうまでもありません。しかし、その批判は事実に基づいて冷静に行われなければなりません。「日本通過」という誤った大見出し=情報は、ミサイル発射と日本(日本市民)の関係を正しく判断することを阻害し、「北朝鮮の脅威」を煽動するだけです。

 今必要なのは、朝鮮半島の危機的状況の原因な何なのか、平和的な解決のためにはどうすべきか、日本(われわれ)はどういう立場で何を主張すべきかを考え議論することです。
 そのためには、北朝鮮に対する予断と偏見、差別意識を排した、冷静で正確な情報・報道が不可欠です。


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「北朝鮮のミサイル」へ過剰反応、なぜ米韓合同軍事演習を批判しないのか

2017年08月29日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 29日午前6時過ぎ、日本のテレビはいっせいに一色に染まりました。「ミサイル発射」「地下に避難を」と警告するJアラートです(写真左)。長野県以北は携帯電話も鳴り響いたことと思います。

 午前5時58分ごろ 北朝鮮がミサイル発射
   6時2分   Jアラート
   6時7分   ミサイルが北海道上空通過
   6時16分  エムネットが「北海道から太平洋へ通過」と発表

 このかん、東北、北海道のJRは、本社の指示で、その場で列車を止めました。
 「ミサイルがどこに堕ちるか分からない」という恐怖がふりまかれました。

 ところが午前8時前、記者会見した安倍首相はこう言いました。「発射直後からミサイルの動きは完全に把握していた」(写真中)。小野寺防衛相は午前10時過ぎの記者会見で、「日本に飛来する恐れはなかったので、破壊措置は実施しなかった」と述べました。
 それならあの”アラート騒動”は何だったのか。

 政府・防衛省は発射直後からミサイルの軌道を把握していたのです。仮に、途中で墜落する恐れがあるとしても、襟裳岬を通る軌道において長野県や茨城県、栃木県まで「警戒対象地域」にする必要がどこにあるのでしょうか。

 早朝日本列島を震撼させた”Jアラート騒動”は明らかな過剰反応と言わねばなりません。というより、「北朝鮮は怖い」というイメージを植え付けるための安倍戦略と見るべきでしょう。

 安倍首相や菅官房長官は、「これまでにない深刻かつ重大な脅威」だと繰り返しました。しかし、北朝鮮のミサイル(衛星)が日本の上空を通過したのは今回が初めてではありません。5回目です(1998年8月、2009年4月、2012年12月、2016年2月)。「日本の危機がこれまで以上に高まったわけではない。冷静な対応が必要」(ジャーナリスト・青木理氏、29日テレビ朝日モーニングショー、写真右の右端)だとの指摘はその通りです。

 重要なのは、私たちはいま何をすべきか、何を主張すべきかです。

 今回北朝鮮がミサイルを発射させたのはなぜでしょうか。「コリアレポート」編集長の辺真一氏(写真右の左端)はこう指摘します。

 「金正恩氏は一貫して米韓合同軍事演習の中止を要求していた。その点でのアメリカの出方を見守ると言った。ところがアメリカは合同演習を強行した。北朝鮮にとっては、米韓合同軍事演習がレッドラインだった。それが強行されたのだから、北朝鮮がミサイルを発射したのは自然の流れであり、やるべくしてやったということだ」(上記モーニングショー)

 安倍首相は直ちにトランプ大統領と電話会談し、「日米の立場は完全に一致している」とし、「強固な日米同盟」の下、アメリカとともに北朝鮮への圧力をさらに強化すると述べました。

 北朝鮮のミサイル発射に対して戦中の「空襲警報発令」を思わせるJアラートで過剰な恐怖感をあおり、アメリカ追随の日米軍事同盟をさらに強化し、米日韓軍事一体化、大軍拡を強行する。これが安倍政権の狙いです。

 私たちが考えなければならないのは、どうすれば戦争を回避し、話し合いで朝鮮半島・東アジアに平和をもたらすことができるかです。
 その第一歩は、北朝鮮が「レッドライン」としている米韓合同軍事演習をやめさせることではないでしょうか。アメリカに追随する安倍政権はその真逆を突き進んでいます。

 日本のメディア、「識者」、コメンテーターから、「米韓合同軍事演習は中止すべきだ」との声がまったく聞こえてこないことは、不思議であり、恐怖です。


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「安倍さんこそ、脅威」―室井佑月さんの勇気ある卓見

2017年08月28日 | 日米安保と東アジア

     

 日本の政界、言論界、メディアが異口同音に「北朝鮮の脅威」を喧伝する中、たいへん注目されるコラムが、27日付の琉球新報1面に掲載されました。筆者は作家の室井佑月さん(写真左は同日の琉球新報より)。
 「真っ先に考えてー米追随の脅威」と題した室井さんのコラムを全文転記します。

 米国が北朝鮮を先制攻撃した場合、阻止に動く。北朝鮮が米国を先制攻撃した結果、米国が報復措置として武力を行使したとしても、中立を保つ。そして、半島有事の際には、米朝どちらにもくみせず、ロシアと協調すると、中国は共産党機関紙を使って宣言した。

 この国もそうしたらいいのに。同盟国の米国が北朝鮮を先制攻撃しないよう説得し、北朝鮮が米国を先制攻撃し、その報復で米国が武力行使したとしても中立であると決め、半島有事が絶対に起きないよう、米朝どちらにもくみせず、この国同様、被害を受けそうな韓国や中国と連携することは難しいことなのか?

 トランプさんと金正恩さんの挑発合戦を、西側諸国だけでなく、共産国のトップだって、非難している。安倍さんだけかも、トランプさんをむやみに支持しているのは

 10日の閉会中審査で、小野寺防衛相は北朝鮮がグアムに向かってミサイルを発射した場合、この国の存立危機事態に当たると言った。よって集団的自衛権行使が可能になると。
 北朝鮮のミサイルが、この国の上空を通過し、グアム沖30~40㌔に着弾したところで、今すぐに米国がどうなるわけでも、この国がどうなるわけでもない。

 こういうことをいうと、「いいや、この先、北朝鮮が米国本土に届くミサイルを開発したら大変だ」という人がいる。そして「米国が北朝鮮の脅威にさらされるということは、日米同盟を結び、米国の核の傘に守られているこの国にとっても脅威なのだ」と。

 しかしあたしは、日米同盟を守るため、今すぐにでもこの国が米国と一緒に戦わなくてはならなくなるほうが脅威なのだ。なので、トランプさんと一緒に拳を振り上げる安倍さんこそ、脅威

 この国のリーダーなら、トランプさんに頭を撫でてもらうことより、この国の国民が犠牲にならないことを真っ先に考えてほしい。権力の私物化、自分だけ、お仲間だけの、彼に言っても無理ですか?    (8月27日付琉球新報1面「日曜の風」より。太字は引用者)

 室井さんの発言の中でもっとも注目したのは、「日米同盟を守るため…米国と一緒に戦わなくてはならなくなるほうが脅威なのだ」という指摘。これこそ日米軍事同盟=日米安保体制の本質です。
 そして室井さんが言う「米国が武力行使したとしても中立であると決め」とは、日米安保条約を廃棄して非同盟中立の日本をつくることにほかなりません。日米安保条約第10条は、「いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する」と明記しています。

 安倍政権に批判的な司会者やコメンテーターが次々番組から降ろされている中、テレビ出演も多い室井さんが公然と鋭い安倍批判を行うことは勇気がいることでしょう。

 朝鮮に対する差別と偏見、日米安保体制(軍事同盟)タブーが蔓延している状況は、朝鮮半島と日本にとっての危機です。室井さんの見識と勇気に、多くの識者・言論人・メディアが続くことを望みます。


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「北朝鮮の脅威」煽って過去最大の軍拡強行

2017年08月26日 | 日米安保と東アジア

     

 防衛省は来年度予算の概算要求で過去最大の大軍拡予算を計上します。主な特徴を挙げてみます。

★総額5兆2551億円(過去最大、17年度当初予算比2・5%増)
★地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」(2基で1600億円。しかし「事項要求」として金額示さず
★最新鋭ステルス戦闘機「F35」(6機、881億円
★改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」(472億円
★垂直離着陸輸送機オスプレイ(4機、457億円
★地対空誘導弾パトリオット「PAC3」改良型「PAC3MSE」(205億円
★弾道ミサイル探知新方式自記警戒管制レーダー(MIMO)開発費(196億円
★現行の自動警戒管制システム改修(107億円
★南西警備部隊の施設整備(552億円
★「島しょ防衛用高速滑空弾」研究費(100億円
★自衛隊初の宇宙部隊創設に向けた監視システム詳細設計(44億円

 こうした巨額の予算(市民の血税)が投じられる装備品はほとんどアメリカからの購入です。社会保障予算が圧迫される(たとえば医療・介護保険制度見直し)の一方で強行される大軍拡。市民の批判を避けるために振りまかれているのが「北朝鮮の脅威」にほかなりません。
 それは産経新聞や読売新聞だけでなく、あらゆるメディアに浸透しています。

 「弾道ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮は、アジア・太平洋地域の平和と安定に対する脅威となっている。日本への攻撃に備え、防衛力を適切かつ効率的に整備することに異論はない」(25日付東京新聞社説)
 「弾道ミサイル発射で世界を威嚇し続ける北朝鮮の挑発行為は非難されて当然である」(26日付琉球新報社説)

 安倍政権の思うつぼです。一方、外国識者の目はもっと冷静で客観的です。

 「北朝鮮は、グアムから飛来して自分たちの領空近くで実施される米軍爆撃機による演習が、空爆という実戦行動にいつ転化してもおかしくないと受け止め、極度に警戒している」「北朝鮮は…朝鮮戦争休戦協定の平和協定への転換や、核兵器の相互削減や軍備管理、在韓米軍の撤収、または地域の平和維持軍として地位変更などを議論しようとしているとみられる。非核化は強制されるのではなく、核兵器が必要のない安全保障環境になれば、自らの判断で廃棄するという主張だ」(元韓国大統領政策諮問委員・董龍昇氏、16日付中国新聞=共同配信)

 北朝鮮の1回目の「ミサイル発射」が1993年。その18年前の1975年にはすでに米韓合同軍事演習は始まっています(21日のブログ参照 ttp://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20170821)。どちらが「挑発」しどちらが「脅威」かは明白です。

 日米両政府とメディアが振りまく作為的な「北朝鮮の挑発・脅威」論が、過去最大の軍拡の隠れミノになり、日本・東アジアの平和と市民の暮らしを脅かしている事実を、私たちは直視する必要があります。

 


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軍縮会議で高校生大使の演説を妨害した「国」はどこか

2017年08月24日 | 核・被爆者と日米同盟

     

 毎年8月スイスで開かれるジュネーブ軍縮会議で、これまで3年続けて行われてきた高校生平和大使代表の演説が、今年は行われませんでした(22日)。

 大使を派遣する市民団体「高校生平和大使派遣委員会」が事前に外務省に今年も演説を打診したところ、「外務省の担当部局である軍備管理軍縮課から「今回は難しい」との回答があった。明確な理由の説明はなかったという」(20付中国新聞=共同配信)。

 外務省の高見沢将林軍縮大使は、演説ができない理由を「ルールにのっとっていない、という国がで出てきた」からだと言いました(22日、写真中)。
 高見沢氏は高校生大使らに、「「軍縮会議では通常、政府代表の発言しか認められない」と説明、一部の国から強い懸念の声があったなどと話した」(23日付中国新聞=共同配信)といいます。

 その「国」とはどこなのか。なぜ今年に限りその「国」はクレームを付けたのか。高見沢氏は一切口をつぐんでいます。

 しかし、関係者には見え透いた話です。
 「平和大使たちは核兵器禁止条約(今年7月採択ー引用者)への共感を示しており、関係者は「日本政府が署名しないと明言する条約について演説で言及されることを懸念したのではないか」と指摘した」(20日付中国新聞=共同配信)

 平和大使OBで明治学院大大学院生の林田光弘さん(25)は、「高校生は被爆者からバトンを託され、スピーチの準備をしてきた。核軍縮の議論を進めるうえで、被爆者の思いを受け入れることは不可欠なはずだ」(23日付東京新聞「こちら特報部」)と演説の中止を悔しがるとともに、「高校生たちがスピーチで、禁止条約に触れることに危機感を覚えての対応ではないか」(同)と指摘しています。

 高校生平和大使の演説が中止になった(妨害された)背景に、核兵器禁止条約があることは明白でしょう。そして、クレームをつけた「国」とは、「被爆国」でありながらアメリカに追随して条約に反対し会議に出席すらしなかった日本政府自身であること、すなわち高校生スピーチへのクレームと中止は安倍政権の自作自演である可能性がきわめて濃厚だと言わざるをえません。
 そうでないと言うなら、高見沢氏は高校生大使の演説を妨害した「国」がどこなのか明確にすべきです。

 仮にその「国」が日本自身でないとしても、安倍政権がその「国」のクレームに唯々諾々と従った責任は免れません。

 一方、軍縮会議では高見沢氏やアメリカのウッド軍縮大使が、北朝鮮の「核・ミサイル開発」を一方的に非難し、「われわれはあらゆる手段をとる用意がある」(ウッド氏)、「日本も最も強い言葉で非難する」(高見沢氏=写真右)と、核兵器の先制使用も含めて北朝鮮を威圧しました。

 被爆者の願いを託された高校生大使の演説の妨害と、北朝鮮に対する核攻撃も辞さない威圧。それは核兵器廃絶に背を向け続ける核大国とその追随勢力の大国主義という同じ根でつながっています。 


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「ビキニ核被災」をめぐる知られざる沖縄差別

2017年08月22日 | 沖縄と日米安保

     

 21日始まった米韓合同軍事演習は「核攻撃を想定」(22日付共同配信)して行われています。在日米軍が集中している沖縄は、「核戦争」の脅威の最前線に置かれていますが、沖縄の「核被害」はそれだけではありません。

 沖縄はかつて、日米両政府によって、核・放射能被災で露骨な差別を受けた歴史があります。アメリカによる太平洋・ビキニ環礁での水爆実験による核被災、いわゆる「ビキニ核被災事件」(1954年3月1日)です。

 その「知られざる過去」が、2人の研究者・運動家=北上田源沖縄平和ネットワーク事務局長、山下正寿ビキニ核被災検証事務局長の論考(沖縄タイムス7月11、12、13日付)で明らかになりました。要旨を紹介します。

 ビキニ被災では第五福竜丸事件が知られているが、その他にも全国で漁船を中心にのべ992隻の船が汚染マグロを廃棄した。
 
 当時米軍の占領下にあった沖縄では、米軍が騒動の火消しに躍起になった

 フィリピンの南方でマグロ漁に出ていた銀嶺丸大鵬丸が那覇港に戻ると、米軍が検査を行い、「放射能はない」と断定した。当時沖縄で放射線を測定する機器を持っていたのは米軍だけだった。

 全国的には沖縄近海でとれた魚から放射線が検出され廃棄されているにもかかわらず、沖縄では近海でとれた魚は放射能検査の対象にならなかった
 当時沖縄で暮らしていたほとんどの人々が、放射能に汚染された未検査の魚を口にしていたことが予想される。

 銀嶺丸と大鵬丸の乗組員らを調査したところ、元乗組員68人中17人が40歳代半ばから50歳代で亡くなり、そのうち11人の死因ががんだった。

 この時期の沖縄における放射性降下物の数値は、本土の各地点に比べて平均で約2倍高くなっていたが、その事実は住民に知らされなかった。米軍が沖縄に迫る放射能の脅威を確実に把握しながら、沖縄の人々には安全性を強調する二重基準で対応していたことは明らかだ。

 50年代に米軍は沖縄に原子力発電所を建設する計画を立てていた。そうした状況において沖縄の人々が身近に迫る放射能の脅威を知ることは、米軍にとって都合が悪かったのだろう。

 55年1月、本土では米政府が法的責任を問われる代わりに被災した乗組員に総額200万㌦(7億2000万円)の慰謝料を支払ったが、沖縄は対象から外された

 「米軍基地が集中する沖縄では、ビキニ核被災の後にも原子兵器(核兵器)の配備、原子力潜水艦の寄港、劣化ウラン弾の問題など、放射線の脅威がさまざまな形で県民生活を蝕んできた。そう考えるとビキニ核被災は決して過去の問題ではない」(北上田氏)

 「米民政府下でビキニ事件の情報コントロールがなされ、日米政治決着による慰謝料支給からも外された。ビキニ事件でも最も「棄民政策」が徹底したのが沖縄である。
 日本政府に沖縄のビキニ被災の追跡調査を求め、アメリカ政府に対してなんらかの損害賠償請求を検討すべきである」(山下氏)

 ビキニ核被災事件はまだ終わっていません。「核兵器禁止条約」が採択されたいま、それにそろって背を向けたアメリカ政府と日本政府の、沖縄に対するビキニ事件の責任を追及することは、わたしたち全ての責務ではないでしょうか。


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米韓合同軍事演習強行!挑発しているのはどちらか

2017年08月21日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 アメリカは21日、韓国軍との合同軍事演習を開始しました(今月31日まで)。
 米韓軍事合同演習とは何でしょうか。その歴史と内容を共同通信の配信記事(21日付中国新聞)から見てみましょう。

 主な米韓合同演習(出典は韓国国防白書、在韓米軍ホームページなど)

 ★フォールイーグル 1985年以降毎年実施
           例年3,4月ごろに実施
           作戦能力向上を目的に兵器を多数動員する野外機動訓練
           今年の参加兵力は米韓合わせて31万人前後とみられる

 ★キー・リゾルブ  1994年から毎年開催
           フォールイーグルと同時期に実施
           コンピューターシミュレーションで有事の米軍増援兵力の受け入れ能力や指揮態勢を点検する指揮所演習

 ★乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン 1975年以降毎年実施
                     例年8月ごろ実施
                     米韓連合軍の作戦能力向上を目的にコンピューターを用いて行う指揮所演習
                     今年の予定参加兵力は韓国軍約5万人と米軍約1万7500人

 上記のほかに小規模な演習は年間数十回に及ぶ。

 有事の作戦統制権は在韓米軍司令官が持っており、朝鮮戦争の休戦状態が崩れて戦争になれば、韓国軍は事実上、米軍の一部として動く。

 当然、単純な「訓練」ではない。米韓は防衛目的と主張するが、北朝鮮が侵攻した時の反撃能力だけでなく、北朝鮮指導部の抹殺や体制転覆が可能だと見せつけ、軍事挑発や核・ミサイル能力の高度化をやめるよう威嚇する意味合いも大きい。

 以上が共同配信記事の概要です。

 米韓合同軍事演習(乙支フリーダムガーデン)が開始された1975年。その前年には民青学連事件(1974年4月)が起こるなど韓国の民主化運動に対する朴正熙政権の弾圧が強まっている中で米韓合同演習は始まりました。
 また、北朝鮮が最も脅威としているフォールイーグルが始まった1985年。北朝鮮は「核の挑発」どころか、この年の12月にNPT(核拡散防止条約)に加入しています(1993年脱退)。
 北朝鮮が「ミサイル実験」を始めたのは1993年から。「核実験」は2006年からです。

 時間的経過だけではありません。アメリカは「死の白鳥」の異名をとる最強の戦略爆撃機B-1B(グアム駐留)を盛んに「演習」に派遣しています。北朝鮮はその中止を再三求めていますが、アメリカは今回の「演習」でも参加を否定していません。

 重大なのは、米韓合同演習に日本が無関係ではないことです。米軍との一体化を強めている自衛隊(F2戦闘機)は、韓国へ向かうB-1B爆撃機と九州上空で共同訓練を行っています(写真中)。

 ハリス米太平洋軍司令官は韓国国防相との会談で「常に戦う構えを維持している」と北朝鮮をけん制しました(20日)。

 北朝鮮の朝鮮労働党機関紙は、「火に油を注ぐように情勢をさらに悪化させる」と米韓合同演習の実施を批判しました(20日)

 以上の経過、双方の主張を先入観なしにみれば、軍事的挑発を開始し繰り返しているのはどちらなのか、アメリカ(同盟国の韓国、日本と一体)なのか、北朝鮮なのかは、明らかではないでしょうか。 


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「北朝鮮の脅威」を喧伝する狙いは米国製武器の売り込み

2017年08月19日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 トランプ政権と安倍政権が「北朝鮮の挑発・脅威」をさかんに喧伝する狙いは、やはりここにあったのか。
 そう思わせたのが、17日行われた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)です。

 同委員会の「共同発表」は、「増大する北朝鮮の脅威を抑止し、対処するため、同盟の能力を強化する」(18日付共同配信)と「北朝鮮の脅威」を前面に出して日米軍事同盟の強化を表明。「日本は次期中期防衛力整備計画を見据え、同盟における日本の役割を拡大し、防衛能力を強化させる」(同)と、日本の軍事力強化を約束しました。
 具体的にはどういうことか。同委員会で確認されたこととして報道されたものを列挙します。

 ★地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」を2基導入(1基約800億円)

 ★計画を前倒しして今年度中にイージス艦を4隻から5隻態勢に(1隻約900億円)

 ★自衛隊初の宇宙部隊を航空自衛隊に設置(18日TBS報道) 

 ★米軍と共同で宇宙空間の監視ネットワークを強化(同) 

 ★ステルス戦闘機を探知するレーダー開発に日米共同で着手(18日NHK報道)

 膨大な費用がかかるこうした装備品(武器)はどうやって調達するか。アメリカから購入するのです。同委員会後、NHKのワシントン特派員は、「トランプ大統領は日米安保は不公平だと主張しており、アメリカ側は日本に防衛装備品の購入を期待している」(18日朝のニュース)と伝えました。

 事実、今年2月10日の安倍・トランプ会談後、こう報じられていました。

 「首相とトランプ氏は今月の日米首脳会談で「強固な同盟」の重要性と、双方の防衛力強化を確認した。日本政府は安全保障関連法に基づく日米協力の深化とともに、米国製の防衛装備品の購入拡大も含め、対応を検討する」(2月19日付共同配信)

 この安倍・トランプ会談の合意を半年後に具体化したのが「2×2」にほかなりません。そして膨大な費用がかかり予算を圧迫する「防衛力強化」「米国製の防衛装備の購入拡大」に対する世論の反発を回避するために、日米政府が前面に出しているが「北朝鮮の脅威」です。

 北朝鮮は一貫して話し合いによって朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にすることを主張しています。それを拒否して韓国と合同軍事訓練を繰り返しすなど、軍事的挑発・威圧を続けているのはアメリカの方です。戦争法によってこれに日本が加わろうとしています。
 日米両政府による「北朝鮮の脅威」の喧伝が、両国の軍事力を強化し、アメリカ製の武器を日本へ売り込むための情報操作・マッチポンプであることは明白です。

 


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「加害」に言及しない明仁天皇は批判しないのか

2017年08月17日 | 戦争・天皇

     

 15日の政府主催「全国戦没者追悼式」を報じたテレビや新聞は、異口同音に、天皇明仁が「深い反省」を口にしたことを「変わることのない、平和への思い」(16日付朝日新聞1面トップ)などと絶賛する一方、安倍首相が「アジア諸国への加害責任には今年も触れなかった」(16日付中国新聞=共同配信)ことを批判的に報じました。

 安倍氏が加害責任に5年連続言及しなかったのは、加害責任など微塵も感じていない安倍氏の右翼的本質を表したもので、厳しく批判されるのは当然です。
 しかし、加害責任に触れていないのは安倍氏だけではありません。天皇も同じです。
 天皇はこう述べました。

 「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して、心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります」

 「深い反省」の文言が入ったのは2年前の2015年からです。その時は「さきの大戦に対する深い反省」となっていました。それが、翌16年から「さきの大戦に対する」が削除され、今年と同じ文言になりました。

 天皇の「深い反省」が何について言っているのか分かりません。「さきの大戦に対する」を削除したため(削除したこと自体きわめて政治的です)、一層分かりにくくなりましたが、削除しなくても「先の大戦」の何に「深い反省」を加するのか分かりません。

 文脈からすれば、「さきの大戦」で多くの日本人・日本兵(皇軍兵士)が「戦陣に散り戦禍に倒れた」ことを「反省」すると言っているように思われます。
 明確なことは、天皇がアジア諸国民に対する「加害責任」や「謝罪」については一言も触れていないことです。
 これは明仁天皇の歴史観と深くかかわっていると言わざるをえません。

 明人天皇は皇太子時代を含め、会見などでたびたび戦中戦後の歴史観を語っています。注目されるのは天皇裕仁(昭和天皇=実父)に対する評価です。

 43年前、皇太子当時の「誕生日会見」(1974年12月18日)でこう述べています。
 「陛下(昭和天皇)の中に一貫して流れているのは、憲法を守り、平和と国民の幸福を考える姿勢だったと思います。昭和の前半の二十年間はそれが生かされず、多くの人命を失い、日本の歴史の中でも悲劇的な時期でした」(保阪正康氏『明仁天皇と裕仁天皇』より)

 さらに、天皇に即位してからの24年前の「誕生日会見」(1993年12月20日)でもこう述べています。
 「昭和天皇のことに関しては、いつも様々に思い起こしております。その一つ一つを取り上げていうことは、難しいと思いますが、やはり、昭和の初めの平和を願いつつも、そのような方向に進まなかったことは、非常に深い痛みとして心に残っていることとお察ししております」(宮内庁HPより)

 ここに示されているのは、明仁天皇は裕仁天皇が一貫した平和主義者であり、むしろ戦争の犠牲者だったと考えていることです。天皇裕仁の戦争責任、アジア諸国侵略・侵攻の加害責任など毛頭念頭にありません。明仁天皇のこうした昭和天皇への評価、アジア太平洋戦争に対す見方と「追悼式」での言葉はけっして無関係ではないでしょう。

 安倍首相の加害責任回避が批判されてしかるべきであるように、明仁天皇が加害責任に言及しないことも当然批判されなければなりません。天皇なら批判されるべき言動も「賛美」に代わるという本末転倒の「天皇タブー」を許すことはできません。

 


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朝鮮戦争で「広島平和式典」を中止させたアメリカ

2017年08月15日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 70回目の「8・6広島平和記念式典」(写真左)が終わりました。平和式典が始まったのは被爆2年後の1947年。だとすれば、今年は71回目のはず。なぜ70回目?

 その秘密を教えてくれたのが、中国新聞・西本雅実記者の記事(8月4日付)でした。要点を紹介します。

 1950年6月、浜井信三広島市長と大橋博長崎市長はスイスで開かれた平和の国際集会に参加。両氏の発言は諸外国の注目を集めた。折しも、朝鮮戦争が勃発したからだ。
 米大統領トルーマンは6月27日に朝鮮への出撃を命令し、連合軍総司令部(GHQ)のマッカーサーが最高司令官として陣頭指揮。マッカーサーは原爆の使用を公言し緊張は一気に高まった。

 浜井市長は8月2日、シカゴから助役に「時局緊迫の折から平和祭の成功を祈る」と電報を打った。ところが電報が届く直前に、この年開催されるはずだった第4回平和祭の中止が決まった。

 「式典は都合により取りやめることになった」(中国新聞50年8月3日付)と報じられるだけで、理由は公表されなかった。のちに市長室の藤本千万太主任が内幕を明かした。「占領軍から文句がついたと公には言えないでしょ。彼らがそうしろと言えば従うしかなかった」(中国新聞95年1月29日付)

 以上の記事から分かるのは、マッカーサーが朝鮮戦争で核兵器の使用を公言して半島情勢が一気に緊迫し、世界が広島の平和式典を注目する中、そのマッカーサーによって平和式典は中止させられた、ということです。

 朝鮮戦争でアメリカが核兵器の使用を示唆したことはよく知られています。マッカーサーだけはでなく、トルーマン大統領自身、「(1950年)11月30日の記者会見の席上、朝鮮で原爆をふくむあらゆる武器の使用を考慮中であると語った」(神谷不二著『朝鮮戦争』中公文庫)

 そもそも朝鮮戦争は、「本来(朝鮮半島のー引用者)内戦であったが、アメリカ軍の介入で国際化され、民衆の惨禍は一挙に拡大した」(梶村秀樹氏『入門 朝鮮の歴史』三省堂)ものです。

 その朝鮮戦争に日本はアメリカに追随して深くかかわっていました。

 「朝鮮の内戦に干渉するアメリカの韓国軍援助は、さしあたりまず日本からおこなわれた。武器弾薬は在日米軍から送られ、つづいて在日米軍そのものが出動した。…朝鮮戦争を契機とした日本の再軍備(50年7月8日、マッカーサーは日本政府に警察予備隊の設置を指令ー引用者)は、日本を基地化するというアメリカのプログラムの一つの側面であった」(信夫清三郎氏「現代史の画期としての朝鮮戦争」雑誌「世界」1965年8月号)

 重要なのは、この歴史がいま現在に連綿とつながっていることです。
 朝鮮戦争は「休戦」しているだけでまだ終わっていません。北朝鮮は一貫して平和条約を締結して終戦させることを主張していますが、アメリカは頑としてこれに応じず、韓国に核兵器を配備し北朝鮮を威嚇し続けています。それが北朝鮮の「ミサイル発射」につながっています。
 そして日本は、戦争法(安保法制)の集団的自衛権行使によって、米日韓の軍事一体化を強めています。

 歴史をみれば、朝鮮半島の緊張を高めている元凶がアメリカの大国主義、核戦略であることは明白です。日本はそのアメリカに日米安保条約(軍事同盟)で追随しているのです。
 朝鮮半島の歴史、とりわけ日本の植民地政策と朝鮮戦争の歴史・真実を、われわれ日本人は自分のこととして学び直す必要があります。


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