アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

翁長前知事「音声データ」実在するなら公開を

2018年10月29日 | 沖縄・翁長知事

     

 歴史的出来事は、その評価とは別に、事実が客観的により正確に記録される必要があります。後世の教訓とするためにも。

 沖縄県知事選(9月30日投開票)で玉城デニー氏が当選し新知事に就任したことは、重要な歴史的出来事です。玉城氏の知事選出馬(写真左)、そして当選に決定的役割を果たしたのが、翁長雄志前知事が玉城氏を「後継指名」したとされる「音声データ」です。これ自体が重要な歴史的遺物です。

 ところが、この翁長氏の「音声データ」の内容はいまだに明らかにされていません。それどころか、実在することも確認されていません。

 先の「新聞週間」にあたって沖縄タイムスは10月15日付で特集を組み、知事選をめぐる「本紙記者取材ドキュメント」を掲載しました。その中で、「翁長音声データ」について次のような記述がありました。

 「突然、翁長氏の生前の音声データが発見された。音声は17日(8月―引用者)に翁長氏の遺族関係者から新里米吉県議会議長に渡されていた。(中略)突然のニュースに…政経部長で当日デスクの宮城栄作は取材班に『いつ録音されたものか、音声の中身を取材するように』とメールを送った。内容の骨子の掲載も目指すよう伝えた」

 デスクとしては当然の指示です。ところが、「ドキュメント」にはこの宮城部長の指示がどう実行されたのかについては一言も触れられていません。それどころか、「音声データ」自体についての言及がそれ以降全くありません。そして、翁長氏が指名したとされる玉城氏の出馬をめぐる動きに流れ込んでいきました。

 つまり、「翁長音声データ」は「いつ録音されたものか」も「音声の中身」も確認されないまま、まして「内容の骨子」は掲載されることなく、存在を当然の前提として選挙報道へ突き進んだのです。

 以後、今日に至るも、沖縄タイムスには宮城部長が指示した内容についての後追い報道はありません。琉球新報も同じです。

 「翁長音声データ」の経緯を振り返ってみましょう。

 それは、8月19日付の沖縄タイムス、琉球新報が、ともに1面トップで、「知事選 呉屋・玉城氏を後継指名 翁長知事が生前録音」(タイムス)、「知事選 翁長知事、後継2氏指名 音声で呉屋、玉城氏」(新報)と報じた時から始まりました。「ドキュメント」が言う通り、まさに「突然」でした。

 しかしそのニュース源は、「複数の関係者が明らかにした」(タイムス)、「関係者によると」(新報)と、いずれももっとも不明確な「関係者」なるものでしかありませんでした。

 「音声データ」をめぐって固有名詞が明らかにされたのは、「音声は17日に新里米吉県議会議長が遺族から受け取った」(タイムス)という新里氏(写真中)だけです。

 一方、「県議会与党会派おきなわは20日…音声データに疑義があるとして、音声が開示されるまでは、知事選の人選を進めている調整会議に出席しないことを同会議の照屋大河議長に伝えた。音声を聞いたという新里米吉県議会議長に対し音声の開示を求めたが、新里氏は開示を拒否した。…(会派おきなわは)開示しなければ、与党が擁立する方針の玉城デニー衆院議員を支援しないことを示唆した」(8月21日付琉球新報)

 会派おきなわが「開示」を求めたのには理由があります。「調整会議が17日に開いた選考委員会では、呉屋氏のほか謝花喜一郎副知事、赤嶺昇県議会副議長が推薦された」(8月19日付タイムス)からです。赤嶺氏は会派おきなわの県議です。赤嶺氏が知事選の有力候補だったにもかかわらず、「音声の存在で局面が急転し」(同21日付琉球新報)、玉城氏が有力候補となったからです。

 会派おきなわの再三の開示要求にもかかわらず、新里氏はこれを拒否し続けました。

  「県議会与党の会派おきなわが…音声の公開を求めている件で、音声を聞いたという新里米吉県議会議長は21日、公開を改めて否定した」(同22日付琉球新報)
 「新里氏は出張先の東京で記者団に、音声の提供者が望んでいないとし、『要望があるからといって公開できる話ではない』と重ねて否定した」(同22日付沖縄タイムス)

 「音声の提供者」とはだれなのか?選挙中の翁長氏の「遺志」を代弁した妻の樹子さんが「音声データ」の公開を拒否するとは考えられません(写真右は玉城陣営の集会の壇上に置かれた翁長氏の帽子)。ではいったいだれが?

 「音声データ」はその内容はおろか、存在の確認もされないまま、玉城氏が出馬を受諾したことによって、「音声騒動にケリ」(同24日付琉球新報)と報じられました。以後、「翁長音声データ」問題は沖縄タイムス、琉球新報の両紙の紙面から消えました。

 繰り返しますが、翁長氏が「後継指名」したとされる「音声データ」は歴史的意味のあるものです。プライベートな部分は別にして、その内容、特に「後継指名」に関する部分の内容は明らかにされる必要があります。新里氏をはじめ「オール沖縄」陣営には今からでも「音声データ」を公開する責任があるのではないでしょうか。


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翁長知事の本音が露呈した3つの重大発言

2017年11月28日 | 沖縄・翁長知事

     

 翁長雄志沖縄県知事の辺野古・米軍基地に対する姿勢、そして翁長氏の支持母体である「オール沖縄」について考えるうえで、見過ごせない発言が、翁長氏の口から相次ぎました。

①「就任3周年政治資金パーティー」(21日、写真左=沖縄タイムスより)でのあいさつ。

 <辺野古新基地建設を念頭に「腹八分、腹六分で我慢も大切。0点か百点かではなく、沖縄の政治の60点を実現する」>(22日付沖縄タイムス)

 辺野古新基地阻止の闘いは、基地を造らせないか、建設強行を許すかのどちらかです。その点ではまさに「0点か百点か」です。ところが翁長氏は「新基地建設を念頭に」、「60点を実現する」という。つまり、安倍政権と妥協するということです。
 新基地建設阻止において「60点」はありません。妥協して基地を造らせてしまえば、それは安倍政権に対する屈伏です。

②在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官との会談で(20日=写真中)。

 <翁長氏 日米が世界の人権と民主主義を守ろうというのが日米安保条約だ。>(21日付沖縄タイムス「会談要旨」から)

 翁長氏が「日米安保容認」派であることは周知の事実ですが、ここまで安保条約を賛美した言葉は初めて聞きました。
 日米安保条約は言うまでもなく軍事同盟です。しかも「安保法制」によってますます自衛隊と米軍の一体化(自衛隊の米軍従属化)が強まり、危険が増しています。沖縄の基地被害の元凶も日米安保です。その安保条約のどこが「世界の人権と民主主義を守る」ものなのでしょうか。
 日米安保条約をここまで賛美する翁長氏が、辺野古新基地はじめ、高江ヘリパッド、嘉手納基地、八重山諸島への自衛隊配備など、日米安保に基づく沖縄の基地強化とたたかえないことは自明です。

③同じく「就任3周年パーティー」でのあいさつで。

 <翁長知事はあいさつで…「(保革)互いの政治の中で新しい沖縄をつくる。ぜひオール沖縄に心を寄せてもらいたい、腹八分で和を取ってパワーをつくり、文化をつくるのが沖縄の良さだ」…「いま私に対する批判があるのも承知している。沖縄が言い合って孤立の道を歩んではいけない」と指摘。>(22日付琉球新報)

 翁長氏に対しては、さすがに「オール沖縄」陣営の中からも批判の声が表面化しはじめています。
 たとえば「パーティー」の前の15日にも、「基地の県内移設に反対する県民会議」の山城博治共同代表らが県庁を訪れ、県が、埋立石材海上搬入のための奥港使用を許可したことを撤回するよう要請しました。
 山城氏は、「知事はあらゆる手段で新基地に反対すると言っていたが、現状は公約違反、言行不一致だ」(16日付琉球新報)と翁長氏を名指しで厳しく批判しました(写真右=琉球新報より)。

 パーティーでの翁長氏の発言が、山城氏らの批判を念頭に置いたものであることは間違いないでしょう。翁長氏はこうした自らへの批判は「いけない」、「言い合って」はいけないと言うのです。それは「和」を乱すことになると。

 すなわち翁長氏にとって「オール沖縄」とは、自分への批判は行わず、「和」をもって支持を持続させ知事選で再選を果たすための「翁長翼賛体制」であるべきだ、ということです。これが図らずも露呈した翁長氏の本音です。

 「オール沖縄会議」をはじめとする「オール沖縄」陣営のみなさんは、それでいいのでしょうか?


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翁長県政で進行する市民の平和・文化・政治活動への圧力・敵視

2017年11月21日 | 沖縄・翁長知事

     

 辺野古埋立・新基地建設は翁長雄志知事の「海上石材搬入許可」で重大な局面を迎えています。一方その陰で、他にも見過ごせない事態が翁長県政の下で進行しています。
 市民・県民の自主的な平和・文化・政治活動に対する圧力・敵視です。

 ★ 県主催の文化祭パンフの審査委員長総評から、米軍ヘリ炎上事故などに触れた部分を無断で削除

 「「第46回県芸術文化祭」(県、県文化振興会主催)のパンフレットに寄稿した美術部門審査委員長の屋良朝彦さんの総評の原稿から、東村高江の米軍ヘリ炎上事故や衆院解散に言及した部分が、県の判断で「個人の見解」として削られていたことが19日までに分かった。屋良さんは反対したが、県はこれらの記述を削った総評をパンフレットに掲載した。屋良さんは「納得できない。平和が根幹にあってこそ芸術活動ができると伝えたかった」と憤り、無念さをにじませた」(20日付琉球新報)

 県が一方的に削った屋良さんの当初の原稿は次の通りです。

 「静謐に芸術に向き合えるかと思ったが予期せぬ衆院解散により巷は気忙しい雰囲気となってきた。追い打ちをかけるように高江での米軍ヘリ炎上事故の発生平和であることが芸術活動の大前提である。それさえも危うい沖縄の現状は容認できないし、やるせない」(同)

 「翁長直樹さん(美術評論家、元県立博物館・美術館副館長)の話 県芸術文化祭の総評の執筆をお願いした当該分野の審査委員長の文章に、県が一方的に手を入れたとすればまずい行為であり、やってはいけないことだと思う。…沖縄戦後美術は、沖縄のその時々の政治的、社会的な動きに翻弄される状況で創られた作品が多い。政治的、社会的文脈と密着し、無視できない状況で美術活動が行われており、その文脈を抜きにして作品を語ることはできないのではないか。」(19日付沖縄タイムス)

 これだけではありません。

 ★ 「強制集団死」(「集団自決」)のパネル展示拒否

 「「集団自決」(強制集団死)の軍命を明記するよう活動する「9・29県民大会決議を実現させる会」(仲西春雅世話人)が、県庁(写真中)1階の県民ホールで「集団自決」や会の活動を展示するパネル展を企画して県教育庁に後援を依頼したものの、「後援の規定」を理由に断られたことが31日までに分かった。…07年の県民大会から10年になることから、県民大会決議を実現させる会が改めて「集団決議」や教科書問題について考えてもらおうと企画。同会のメンバーが昨年から今年初頭にかけて複数回同庁に後援を依頼したが、断られた。同庁から後援できない理由は明示されなかったという」(4月1日付琉球新報)

 2007年の「9・29県民大会」には当時の仲井真弘多知事でさえ参加しました。翁長県政の姿勢の後退は明白です。

 ★ 第32軍司令部壕「説明版」の「慰安婦」文言復活を拒否

 仲井真県政は2012年に設置した第32軍司令部壕(那覇市首里)の説明板から「慰安婦」「日本軍による住民虐殺」の文言を削除しました。しかしその後、元「ジュリ」の正子・ロビンス・サマーズさん(享年88)の手記で、司令部壕内で20人余の女性が兵隊らと「共同生活」していたことが明らかになりました。これを受け、関係者が昨年、県に文言の復活を要請しました。

 「同壕説明板設置検討委員会の元委員長・池田榮史琉大教授ら元委員3人は26日(2016年9月ー引用者)、担当する子ども生活福祉部を訪ね、文言の復活と検討委員会を改めて開催し再検証することを求めた。元委員らは「総勢1千人余の将兵や県出身の軍属・学徒、女性軍属・慰安婦などが雑居していました」などとする原案について、「全面的な復活を要望」し、1カ月以内の回答を求めた」(2016年9月27日付沖縄タイムス)

 それから1年2カ月。

 「昨年、正子さんの証言に触れ、首里の司令部壕内での本人証言は無かった(説明板設置当時ー引用者)ので、(正子さんの証言によってー引用者)当然修正されると思い県に申し入れをしてきたが、なぜか放置されたままである。…沖縄県行政も本書(正子さんの手記ー引用者)を読まれ、首里司令部壕の文言復活をするべきである」(村上有慶氏=元説明板設置検討委員、14日付沖縄タイムス)

 以上の3つの事項に共通しているのは、いずれも沖縄戦や現在の沖縄の基地問題に密接に関係している問題で、市民の自主的な活動に、翁長県政が直接・間接に圧力をかけた、あるいは要請に背を向けた、ということです。

 対応はそれぞれ担当部署が行っていますが、いずれも翁長知事の指示・意向であることは言うまでもありません。どの場合も報道後に翁長氏からの「訂正・軌道修正」の指示は一切出されていないことがそれを証明しています。

 沖縄県民の自主的な平和・文化・政治活動に対する翁長県政の圧力、さらに沖縄戦の歴史の継承に背を向ける行為は、もちろん沖縄だけの問題ではありません。

 翁長氏を”支える”「オール沖縄」陣営(県議団、市民)はこうした翁長県政の実態に目をつむり続けるのでしょうか。来年の県知事選を控え、翁長氏本人はもちろん、「オール沖縄」陣営の姿勢が問われています。


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翁長知事は「ヘリパッド撤去」を直接日米両政府に要求せよ

2017年10月19日 | 沖縄・翁長知事

    

 アメリカ(在沖縄米軍)は18日、高江で炎上した(11日)普天間基地所属の大型輸送ヘリCH53の飛行再開を強行しました。「事故原因」の説明もないまま、日本政府の要求すら無視して。アメリカが日本をいかに属国扱いしているかが端的に表れています。

 これに対し、沖縄県紙2紙は19日付1面トップで、「知事「着陸帯撤去を」」(琉球新報)、「知事 着陸帯撤去求める」(沖縄タイムス)と、翁長知事が「米軍北部訓練場の六つのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の撤去を求める意向を初めて示した」(琉球新報)と報じました。

 翁長氏はこれまで高江のヘリパッド建設を容認してきました(16日のブログ参照)。それが「撤去」を求める姿勢に本当に転換したのなら、評価すべきことです。
 それが総選挙前のリップサービスでないなら、具体的な行動をとる必要があります。すなわち、翁長氏は直ちに、日米両政府・在沖縄米軍に直接会って、「高江のヘリパッドを撤去せよ」と要求すべきです。

 2紙の報道によれば、18日の翁長氏の「撤去」発言は次の通りです。

 「翁長知事は「私たちの気持ちからすると使用禁止だ。切なる思いは撤去だ」と記者団に述べた」(19日付琉球新報)

 「知事は今回の事故を受け、高江区が改めて6ヵ所の使用禁止を求めたことを念頭に「私たちの切実な思いは使用禁止、むしろ撤去だ」と踏み込んだ」(19日付沖縄タイムス)

 「「何でもやるなら、ヘリパッドこそ撤収してもらいたい」。知事は18日、菅氏の言葉を持ち出し(菅官房長官は事故直後に高江の仲嶺久美子区長に電話で「何でもやる」と述べた―引用者)、危険性の”元凶”を取り除くべきだと主張した」(同)

 この「撤去」発言を額面通り受け取ることができるかは疑問です。

 「事故後、県が態度を明確にしたのは、より住宅に近いN4とH地区と呼ばれる計3カ所のヘリパッドの使用中止まで。県首脳は知事が副知事や事務方との事前調整を経ずに発言した意味を「知事の思いだ」と語る」(同沖縄タイムス)

 「知事も「撤去」と口にしたものの、同時に「撤去までいきたいが、現実の壁の中で一歩ずつしか前に進んでいけない」とも付け加えた。県がどれほどの本気度と緊急性を持って国に迫るかは現時点では不透明だ」(同琉球新報)

 曖昧な言葉で追及をかわし、「オール沖縄」の支持を繋ぎ止めようとするのが翁長氏の常とう手段です。辺野古新基地を阻止する決定打である埋め立て承認の「撤回」について、「撤回も視野に入れて…」と数年来言い続けて、いまだに「撤回」していないのがその端的な例です。

 今回の「ヘリパッド撤去」もその類である可能性は小さくありません。そうでないというなら、「思い」を口にしただけではないというなら、直ちに行動に移し、日米両政府・在沖米軍に直接「撤去」を申し入れるべきです。


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高江ヘリ炎上ーヘリパッド容認した翁長知事の責任を問う

2017年10月16日 | 沖縄・翁長知事

     

 米軍ヘリコプターCH53Eが東村・高江の民有地に墜ちて炎上した事故に対し、15日、現場近くで緊急抗議集会が行われ、県内各地から約200人が集まりました。

 集会では、「原因究明」とか「それまでの飛行中止」などという弥縫策ではなく、「基地があるゆえの事故。北部訓練場を全面返還させよう」(16日付琉球新報)という訴えが相次ぎました(写真左)。

 集会参加者の訴え通り、相次ぐ米軍機事故から住民の生命・健康・暮らしを守るためには、米軍基地を撤去するしかありません。

 そこで問われるのは、翁長雄志知事の姿勢・責任です。

 翁長氏は今回のヘリ炎上に対し、「ヘリコプターが訓練する高江で起きてしまった。沖縄の置かれている環境にただただ悔しくもあり、怒りもある」(12日付沖縄タイムス「一問一答」)と述べ、まるで高江のヘリパッド建設に反対してきたかのようにいいました。

 事実はまったく逆です。翁長氏は知事選時の公約も投げ捨て、高江のヘリパッド建設を容認しました。それは基地反対住民を失望させ、逆に、建設工事を促進しました。(写真右)

 2016年11月28日、翁長氏は記者会見でこう言いました。

 翁長 「北部訓練場は過半返還が予定されている」
 記者 「北部訓練場は地元が求める形での返還の進め方ではない」
 翁長 「北部訓練場なども苦渋の選択の最たるものだ。…現実には高江に、新しいヘリパッドが6カ所も造られ、環境影響評価などもされないままオスプレイが飛び交って、状況は大変厳しい
 記者 「知事選の公約会見では高江のヘリパッド建設に反対した。『苦渋の選択』は後退では」
 翁長 「オスプレイの全面撤回があればヘリパッドも運用しにくいのではないか。…オスプレイの配備撤回で物事は収れんされるのではないか」(11月29日付琉球新報「一問一答」)

 翁長氏は「苦渋の選択」「オスプレイ配備撤回で収れんされる」などの言い訳で、新たなヘリパッド建設を容認したのです。

 これに対し県民からは厳しい批判が相次ぎました。たとえばー。

 「世界に誇るべきこの貴重な森を、翁長雄志知事は軍事・戦争のために放棄したのだ。問われるべき責任はあまりにも大きい。…工事は急ピッチで進められることになり、環境への負荷も想像を絶する。北部はこうして軍事拠点となってしまうのではないか。…知事を信じて闘ってきた人々への裏切り行為は断じて許されない」(屋冨祖昌子元琉球大助教授・昆虫分類学、2016年11月29日付琉球新報)

 批判の大きさに驚いた翁長氏は12月2日急きょ記者会見し、「決して容認したわけではない」(12月3日付沖縄タイムス)と”釈明”しました。
 ところがその記者会見でも、記者が「『オスプレイが使う限りヘリパッド建設は反対だ』とはっきり言うと分かりやすいかと思うがどうか」と質問したのに対し、翁長氏は、「苦渋の選択をするということがそういう意味だ」(12月3日付琉球新報)と再び「苦渋の選択」を繰り返すだけで、けっして「ヘリパッド建設反対」とは言いませんでした。なんの”釈明”にもなっていません。

 翁長氏は今回のヘリ炎上に対しても、「事故原因の徹底的な究明と早急な広報、今回の事故原因究明がなされるまでの同型機の飛行を中止するよう強く要請する」(12日付沖縄タイムス)と言いましたが、住民が望む「北部訓練場(ヘリパッド)の全面返還」には一言も触れませんでした。

 こうした知事の姿勢を変えない限り、米軍事故から県民を守ることはできません。翁長氏を支える「オール沖縄」の責任はとりわけ重大です。
 


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見過ごせない翁長知事「平和宣言」の重大な変化

2017年06月26日 | 沖縄・翁長知事

     

 「6・23沖縄慰霊の日」の「追悼式典」における翁長雄志知事の「平和宣言」に対し、琉球新報は社説(24日付)で、「米国との軍事一体化に前のめりで、憲法に抵触する集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を成立させた安倍晋三首相の『積極的平和主義』の対極にある」と絶賛しました(沖縄タイムスの同日の社説も手放しで評価)。

 これは翁長氏のこれまでの言動や「平和宣言」に盛り込まれた事実を無視した恣意的な「翁長賛美」と言わねばなりません。

 そもそも、翁長氏は「集団的自衛権の行使」にも「安保関連法(戦争法)」にも反対していません。日本共産党などが県議会で再三見解を求めても、翁長氏は「議論が十分ではない」など手続き上の問題は指摘しましたが、集団的自衛権や戦争法自体には反対せず、事実上容認してきました。

 「平和宣言」はどうでしょうか。翁長氏が「6・23平和宣言」を行うのは今回が3回目ですが、実はこの過程で重大な内容の変更が行われています。該当個所を比較してみましょう。

● 2015年6月23日の「平和宣言」…<沖縄の米軍基地問題は、我が国の安全保障の問題であり、国民全体で負担すべき重要な課題であります。>

● 2016年6月23日の「平和宣言」…<沖縄の米軍基地問題は、我が国の安全保障の問題であり、日米安全保障体制の負担は国民全体で負うべきであります。>

● 2017年6月23日の「平和宣言」…沖縄県は、日米安全保障体制の必要性、重要性については理解をする立場であります。その上で、「日本の安全保障の問題は日本国民全体で負担してもらいたい」と訴え、日米地位協定の抜本的な見直しや米軍基地の整理縮小などによる、沖縄の過重な基地負担の軽減を強く求め続けています。>

 一目瞭然です。「国民全体で負担すべき(負うべき)」ものとして、16年には15年になかった言葉が挿入されました。「日米安全保障体制の負担」です。さらに今年は、新たな一文が付け加えられました。「沖縄県は、日米安全保障体制の必要性、重要性については理解をする立場であります」。これはきわめて重大です。

 「日米安全保障体制」とは言うまでもなく日米安保条約による日本とアメリカの軍事同盟体制です。翁長氏の持論が日米安保条約(体制)賛成・擁護であることは周知の事実ですが、それが「慰霊の日」の「平和宣言」に盛り込まれたのです。しかも、翁長氏自身の考えとしてではなく「沖縄県」の「立場」として。沖縄戦の「慰霊の日」の「平和宣言」で沖縄県民が日本とアメリカの軍事同盟の「必要性、重要性」を「理解」しているという「宣言」が行われたのです。

 沖縄県民はけっして日米安保体制を「理解」などしていません。
 琉球新報と沖縄テレビ(OTV)が昨年行った県民調査(2016年6月4日付琉球新報)では、「日米安保条約」については、「平和友好条約に改めるべきだ」42.3%、「破棄すべきだ」19.2%、「維持すべきだ」12.0%という結果です。軍事同盟である日米安保には県民の61.5%が「ノー」と言っているのです。
 翁長氏の「平和宣言」はこうした県民の意思を無視し、自分の政治信条を「沖縄県」全体のものにすり替えたものです。

 さらに、翁長氏は「平和宣言」の中で、先日亡くなった大田昌秀元知事の名前を出し、その遺志を継承するかのように言いました。テレビのインタビューでも、「大田さんの思いが私の政治の中に入ってきている」(25日BS―TBS「週刊報道LIFE」)などとも述べています。

 しかし、米軍基地・平和に対する大田さんと翁長氏の姿勢には天と地ほどの違いがあります。大田さんは一貫して「沖縄からの米軍基地撤去」を主張し続けました。1995年の米軍による少女暴行事件に抗議する県民総決起集会でも「米軍基地撤去」を強調しました(写真右)。

 ところが、翁長氏は絶対に「米軍基地撤去」とは言いません。今年の「平和宣言」でも上記の抜粋の通り「米軍基地の整理縮小」です。それどころか、昨年、米軍属による女性殺害事件が起こり、抗議の県民大会で「海兵隊の撤去」が決議されたにもかかわらず、翁長氏は「平和宣言」であえて「撤去」を「削減」に変えたのです(昨年6月24日のブログ参照http://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20160624)。この一事をとっても、翁長氏と大田さんの違いは歴然です。

 あれほど大田さんに敵対していた翁長氏が、手のひらを返したように「後継者」を装うのは、辺野古埋立の「承認撤回」をあくまでも回避し、批判が強まっている中で、少しでも支持を繋ぎ止めたいということでしょうか。

 翁長氏は安倍氏と「対極」どころか、日米安保体制=軍事同盟を擁護・維持する点で本質的になんら変わりはありません。
 琉球新報、沖縄タイムスには、翁長氏に関して、事実に基づいた冷静な報道・論説が求められます。


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辺野古護岸工事目前、「承認撤回」は゛ラストチャンス”

2017年04月22日 | 沖縄・翁長知事

     

 辺野古新基地を阻止するために、翁長雄志知事は直ちに埋立承認を撤回すべきだ、とこれまで何度も言ってきましたが、ほんとうにもう一刻の猶予もなくなりました。あえて言いますが、「承認撤回」は今が゛ラストチャンス”です。

 「政府は…今週後半以降に着手を延期していた護岸工事について、来週にも始める方針を固めた。反対運動の活発化をにらみ、警備態勢の再確認を進めていたが、近く準備が整う見通しになった。政府関係者が20日、明らかにした。
 護岸工事では、海上に張り出す形で建設する施設の外枠を造る。大量の石材や消波ブロックが海底に積み上げられることで原状回復は困難となり、沖縄側が反発してきた辺野古移設問題は大きな節目を迎える」(21日付中国新聞=共同配信)

 今すぐ工事を止めなければ、取返しがつかないことになります。「県民投票」などと言っている場合ではありません。

 「国は…護岸工事に着手するとみられている。取り返しのつかない環境破壊がなされる前に、直ちに撤回を行うべきである。…昨年暮れの最高裁判決は、知事には埋立承認権者として広範な裁量権があることを例示した。…知事は埋立承認権者として承認撤回ができる」(桜井国俊沖縄大名誉教授、4月16日付琉球新報)

 「翁長知事は埋め立て承認の撤回を打ち出し、これ以上の海の破壊を許さない姿勢を明確に示すべきだ。…埋め立て承認の取り消し・撤回は翁長知事の選挙公約であり、だからこそ沖縄の有権者は、公約を裏切った仲井真知事に10万票近い大差をつけて翁長氏を当選させたのだ。撤回に対する支持はそこですでに示されている。改めて県民を試すようなこと(県民投票ー引用者)はすべきではない」(目取真俊氏、4月19日付琉球新報)

 「今、世界に誇る辺野古・大浦湾の生物多様性は風前の灯です。緊急に必要なのは県民投票ではなく、埋め立て承認の撤回です。これまでに投げ込まれたコンクリートブロックは撤去可能ですが、石材や土砂が投げ込まれれば撤去不可能です。取り返しがつかなくなる前に、一刻も早く翁長知事が『撤回』に踏み切ること。それこそが、海の恩恵を知る地元住民、そして大浦湾海上、米軍キャンプ・ジュワブゲート前で、基地建設を何とか止めたいと必死で頑張っている県民の共通の切なる思いです」(浦島悦子さん・名護市、4月22日付琉球新報)

 翁長氏、そして「翁長与党」の共産党、社民党、自由党、社大党などの党会派、「オール沖縄会議」のメンバーは、こうした声をどう聴くのでしょうか。

 あす(23日)投票のうるま市長選で「オール沖縄」候補はあえて「辺野古新基地阻止」を前面に掲げず、何度も応援に行っている翁長氏も「撤回」はおろか「辺野古新基地」自体に触れようとしていません。選挙選を報じている「しんぶん赤旗」も同様です。

 その一方、「翁長与党」はじめ「オール沖縄」陣営は、今月29日にまた「県民集会」を行い、「翁長雄志知事にも参加を求める」(22日付琉球新報)といいます。
 しかし、翁長氏はすでに3月25日の「県民集会」で、「撤回を、力強く、必ずやる」と言明したではありませんか(写真中)。にもかかわらず、この切迫した情勢の中で、「撤回」は1ヶ月近く棚上げされたままです。これが翁長氏の手法であり、本性です。
 
 翁長氏の空約束・アリバイづくりの場となる「県民集会」を繰り返すより、県庁の知事室の押しかけ、その場で翁長氏に「承認撤回」を表明させる行動こそ、いま必要なのではないでしょうか。


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沖縄・うるま市長選でなぜ「辺野古・基地」を争点にしないのか

2017年04月18日 | 沖縄・翁長知事

    

 「辺野古新基地」の本格着工となる護岸工事について、沖縄防衛局は「作業の進捗具合や気象状況を踏まえて決定する」(18日付沖縄タイムス)としていつでもGOサインを出す構えで、情勢はきわめて緊迫しています。

 折しも、うるま市長選挙が16日公示(23日投票)されました。新人で前県議の山内末子氏=社民、共産、社大、自由、民進推薦と、現職の島袋俊夫氏=自民、公明推薦の一騎打ちです。
 「名護市辺野古の新基地建設を巡り対立する翁長雄志知事ら『オール沖縄』勢力と自民は、来年1月の名護市長選や11月の知事選に影響する重要選挙と位置づける」(18日付沖縄タイムス)選挙で、このタイミングに「辺野古新基地阻止」の民意をあらためて示す絶好の機会です。

 と思いきや、不思議なことに、この市長選では「辺野古新基地阻止」「基地撤去」が争点になっていないのです。当然争点にすべき「オール沖縄」の山内陣営があえて争点化を避けているからです。いったいどういうことでしょうか。

 告示第一声で山内氏は、「一番の政策として子育てナンバーワンの市をつくりたい」(17日付琉球新報)と述べ、「辺野古」には一言も触れませんでした(琉球新報、沖縄タイムスの報道)。玉城デニー衆院議員(自由)ら応援弁士も「辺野古」は一切言及しませんでした(同)。

 「第一声」だけではありません。山内氏は3月20日に7項目の「選挙政策」を発表しましたが、その中にも「辺野古」はありません(琉球新報の報道)。その後の新聞インタビューでも、「争点は」と聞かれて「辺野古」や「基地」を挙げることはなく、「基地問題は」と質問されても「辺野古」には言及していません(3月23日付琉球新報)

 山内氏だけではありません。翁長知事は応援のため山内氏の事務所開き(2月19日)に出席しましたが、「辺野古」にはまったく触れませんでした(2月20日付琉球新報)。

 山内氏や翁長氏をはじめ「オール沖縄」陣営が、うるま市長選であえて「辺野古」を争点から外していることは明らかです。
 なぜなのか。その背景が沖縄タイムスで報じられています。

 「『辺野古反対』が『オール沖縄』が結束するワードだが、うるまでは「『建白書』の実現」と表現される場面が多い。背景には反辺野古を全面的に打ち出して敗れた宮古と浦添(両市長選ー引用者)の経験がある。政党幹部も「『建白書』で辺野古反対を明確にしつつ、教育や経済など生活に近い政策を打ち出す必要がある」とし、こうした手法が今後の主要選挙での戦い方の試金石にもなるとの考えを示す」(18日付沖縄タイムス)

 驚くべき話です。宮古と浦添で「反辺野古を全面的に打ち出して敗れた」から、うるまでは「反辺野古」を打ち出すのはやめ、「建白書の実現」をその代わりにする。これは今回に限らず「今後の主要選挙」の試金石にする、というのです。

 これは翁長氏の考えと一致するでしょう。「建白書」を掲げることで「オール沖縄」の支持を繋ぎ止めながら、「辺野古」は全面(前面)に出さない。たたかう前から「辺野古」を下ろす敗北主義であり、「新基地建設」を事実上容認しながら「オール沖縄」の票で「知事再選」を目指そうとするものです。

 再三述べているように、翁長氏は今すぐ「承認撤回」すべきなのです。それをしないで、これからは重要な選挙の争点からも外そうというわけです。
 「オール沖縄会議」は「辺野古新基地反対」の民意をあらためて示すために「県民投票」を検討していると報じられていますが、目前の重要選挙で「辺野古」を争点から外しておいて「県民投票」とは支離滅裂です。

 「辺野古」だけではありません。トランプ大統領が北朝鮮への軍事圧力を強める中、17日には嘉手納基地から大気中の放射性物質を観測する米軍機が初めて飛び立ち(写真右)、早期警戒機も飛来しました。朝鮮半島情勢は一触即発であり、沖縄がまた戦争の前線基地にされようとしています。

 こうした情勢の中で行われる「保革一騎打ち」の市長選で、「辺野古新基地阻止」「米軍基地撤去」を争点に掲げない「オール沖縄」とは、いったい何なのでしょうか。


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「集団自決」展の後援を拒否した翁長県政

2017年04月04日 | 沖縄・翁長知事

     

 沖縄県紙を読んでいないと分からない翁長県政の重大問題がまた起こっています。

 「『集団自決』(強制集団死)の軍命を明記するよう活動する『9・29県民大会決議を実現させる会』(仲西春雅世話人)が、県庁(写真中)1階の県民ホールで『集団自決』や会の活動などを展示するパネル展を企画して県教育庁に後援を依頼したものの、『後援の規定』を理由に断られていたことが31日までに分かった。同庁は取材に対し、後援を認めれば会を支持することになるとして『議論のある問題で教育庁が特定の立場をとることはできない』と話した」(1日付琉球新報)

 「議論のある問題」で「後援」はできないという口実で公共の施設を使わせないのは、保守自治体が市民の自主的活動に圧力をかける常とう手段ですが、それが沖縄県でまた起こっているのです。

 日本軍による強制集団死(「集団自決」)は沖縄戦の歴史の要といえます。それを「議論のある問題」とする県教育庁の言い分は異常です。
 しかも、パネル展を企画している「9・29県民大会決議を実現させる会」は、沖縄の現代史において重要な意味をもつ会です。
 「9・29県民大会」とは、2007年9月29日に宜野湾市の海浜公園で行われた「教科書検定の検定意見撤回を求める県民大会」。11万人(主催者発表)という「沖縄現代史上にも前例を見ない大群衆」(新崎盛暉氏『日本にとって沖縄とは何か』岩波新書)が結集しました。同年3月30日の教科書検定で文科省が「集団自決」から日本軍による強制の記述を修正・削除したことへの抗議集会です。これには当時の仲井真弘多知事、翁長那覇市長、仲村守和教育長らも出席しました。
 新崎盛暉沖縄大名誉教授はその意義をこう述べています。
 「沖縄社会が、改めて『沖縄戦とは何か』、『日本軍とは何か』を大衆的に問い返すきっかけになったのは、沖縄返還の際の自衛隊の強行配備である。二度目が八二年の教科書検定三度目が〇七年だといえよう」(前掲書)

 この県民大会の決議実現をめざして「集団自決」や教科書問題の真相を世代を超えて伝える活動をしている会が、大会から10年になるのを記念して企画したのがパネル展です。その度重なる要請を拒否して県庁ロビーを使わせない県の対応は言語道断と言わねばなりません。

 重要なのは、翁長県政が市民の活動や沖縄戦の歴史の普及に背を向けているのはこの問題だけではないということです。

 県立博物館・美術館が「政治色が濃い」という理由で孫崎享氏の講演に会場使用を拒否したのは記憶に新しいところです(問題化したのちに撤回)。使用を拒否した担当者は「県の指導があった」(3月4日付琉球新報)と述べています。

 また、首里公園にある第32軍司令壕の説明板(写真右)から、仲井真県政時代に「慰安婦」「日本軍による住民虐殺」の文字が削除された件で、同壕説明板設置検討委員会の元委員長・池田榮史琉大教授ら元委員3人が、その後明らかになった事実をもとに県に文言の復活を要求しましたが(2016年9月26日)、翁長県政はこれに背を向けたままです。

 安倍政権が自衛隊配備を強行しようとしている石垣市では、「南京事件」や「従軍慰安婦」の記述を理由に今年度から副読本の使用を中止しようとしています。

 こうした一連の動きは、市民活動への圧力とともに、沖縄戦をはじめとする戦争の史実を教育・普及することを妨害するものです。安倍政権が日米安保体制を強化し、戦争法(安保法制)の下で自衛隊と米軍の一体化を進めようとしていることとけっして無関係ではありません。

 琉球新報の社説(2日付)は、「教育庁は歴史の事実を後世に伝える重要性を再認識すべきだ」と結んでいます。しかし、問題は教育庁のレベルですむことではありません。
 最大の責任は翁長知事にあります。翁長氏が事の経過を知らないはずがありません。教育庁の判断は翁長氏の判断です。そもそも教育長の任免権は知事にあるのです。万々一、翁長氏が知らなかったとしても、報道によって知った時点で教育庁を一喝し、会の企画を後援すべきですが、翁長氏はそれをしていません。

 県博の問題も、第32軍説明板の問題も、追及すべきは翁長氏の責任です。
 抽象的な「県」や担当部署の責任を問いながら、肝心の翁長氏の責任は問わない「報道」を、いつまで続けるつもりでしょうか。


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「翁長与党」(オール沖縄)はなぜ百条委に反対するのか

2017年04月01日 | 沖縄・翁長知事

       

 沖縄県議会2月定例会の最終本会議(3月29日)で、安慶田光男前副知事の「口利き疑惑」を調査する百条委員会の設置が、否決されました。翁長県政与党(日本共産党、社民党、社大=「オール沖縄」諸党派)と維新が反対したためです。県政与党の「百条委設置反対」はきわめて不可解です。

 経過を振り返ってみましょう。

 安慶田氏の「教員採用試験口利き疑惑」が表面化したのは1月18日。その後「教育庁幹部人事」への介入(圧力)疑惑も発覚。安慶田氏は疑惑を全面否定したまま副知事を辞任(1月23日)。
 一方、当時の教育長の諸見里明氏が、確かに安慶田氏の口利きはあったとする「告発文」を公表(同24日)。安慶田氏は諸見里氏を「名誉毀損」で告訴(同26日)。諸見里氏は「逃げも隠れもせず受けて立つ」と言明(同日)。

 県議会(文教厚生委員会)は、安慶田氏(2月20日)、諸見里氏(3月27日)両氏を参考人として招致。両者の言い分は真っ向から対立。

 この間、翁長知事は、「任命責任者として責任を大変自覚している」(1月24日の記者会見)としながら、真相究明や自らの責任の取り方については口をつぐむ。

 一方、県病院事業局の人事をめぐっても、伊江朝次局長が「県幹部から『辞めてくれ。まだ続けるのか』と言われた」(1月28日付琉球新報)とする疑惑が発覚。

 こうした中、県政野党の自民党が、「翁長雄志知事がどう関わっていたかも(百条委の中で)一緒に調査するのは当然だ」(照屋守之沖縄自民党幹事長、3月28日付沖縄タイムス)として百条委員会の設置を要求。

 これに対し翁長与党は、「議会として…真相究明に取り組んだ。安慶田、諸見里両氏の意見の違いは訴訟に発展しており、百条委の調査を並行させるべきではない」(3月30日付沖縄タイムス)として設置に反対。採決の結果、反対多数で百条委の設置は否決された。

 以上の経過から、翁長与党が百条委の設置に反対する理由らしき理由はただ1つ、「訴訟」になっているから議会での追及を同時に行うべきではない、ということです。
 これは驚くべき言い分です。なぜなら、司法と議会の調査権は別で、訴訟になっていても議会は独自の調査権を発揮して政治的道義的責任を追及すべきだ、というのが共産党、社民党など国政野党の一貫した主張だからです。現にそうやって東京では豊洲市場移転問題で百条委員会を設置し、国政では安倍昭恵氏らの証人喚問を要求しているではありませんか。

 都議会の百条委設置について、「百条委設置は…日本共産党都議団が早くから提案してきたものです。…全会一致で百条委設置を決めたことは、都民の声が都政を動かすことをはっきり示しました」(2月24日付「しんぶん赤旗」主張=社説)とまで言って百条委の意義を強調したのは共産党です。

 共産党や社民党など「オール沖縄」党派の、都議会や国会での主張・対応と、沖縄県議会でのそれは明らかなダブルスタンダードと言わねばなりません。

 なぜこうした理不尽なことが起こるのか。県政与党は、翁長氏自身の疑惑を含む県政の疑惑は追及しないでそっとしておくことが「翁長知事を支える」ことだと考えているからではありませんか。安慶田氏の参考人招致の時も「ほかの与党委員も…持ち時間を使い切らずに質問を終えた」(2月21日付沖縄タイムス)と、まるで国会での自民党のように消極的な姿勢を示したことにもそれは表れています。

 「質問や委員会を通し、採用試験の口利きの事実や教育庁幹部人事への翁長雄志知事の関与など、県政に向けられた疑惑の真相が明らかになったとは言えない。…二元代表制の一翼を担い行政を監視する県議会において、百条委を設置しないという対応は、チェック機能を十分果たしているとは評価しがたい。…本来、県議に与野党の区別はない。県議の役割は、政治的立場が同じ県政を守ることではなく、県政に浮上した疑惑を有権者の代表として鮮明にすることだ」(3月30日付沖縄タイムス、銘苅一哲記者の「解説」)

 その通りです。翁長氏や「オール沖縄」に゛遠慮がち”な報道・論調が目立つ中、注目される記事(指摘)です。

 諸見里氏は「県議会から要請があれば証人として出たい」(3月27日の県文教厚生委員会、同28日付沖縄タイムス)と明言しています。百条委員会を設置して、安慶田氏の一連の疑惑、そして翁長氏自身の関わりを徹底的に追及すべきです。


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