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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ウクライナ停戦和平・カギは「2022・3・29和平案」

2025年08月30日 | 国家と戦争
  ウクライナ戦争の停戦・和平協議の開始が切望されるなか、ロシアがウクライナ攻撃を続けていることは容認できません。攻撃を停止し、協議のテーブルにつくべきです。

 ゼレンスキー大統領は「ロシアによる攻撃は停戦と真の外交を求めてきた世界の人々への明確な回答だ」と断定しています。はたしてそうでしょうか。

 注目されるのはロシア・ラブロフ外相の発言です。

<ラブロフ氏は米NBCテレビのインタビューで、ウクライナの安全の保証はロシアの安全の保証と不可分の問題だと指摘。米欧による「占領軍」の派遣はロシアに対抗するのが目的であり「取るべき行動ではない」とけん制した。

 一方、22年春のロシアとウクライナの直接交渉で議論された「ウクライナの永世中立と安全保障に関する条約」で明記された内容については、ロシアは受け入れ可能とみられる。

 ラブロフ氏によると、同条約には国連安全保障理事会の常任理事国である米英仏中ロの5カ国のほか、ドイツやトルコなど関係国が「保証国グループ」を創設し、いかなる軍事同盟にも属さず非核、中立国であるウクライナの安全を保証することになっていた。>(28日付京都新聞=キーウ共同)

 「22年春の直接交渉」とは、ロシアの軍事侵攻からわずか4日後の同年2月28日に始まり、3月3日、7日、10日、14日、29日と相次いで行われた交渉です。
 3月29日の交渉で、ウクライナ側は「停戦に向けた和平案」を提示し、大統領府のウェブサイトで公表しました。その内容はこうです。

<・新たな安全保障の枠組みを作り、そこに国連安保理の常任理事国、さらにトルコ、ドイツ、カナダ、イタリア、ポーランド、イスラエルなどが、保証国として参加する。保証国は、ウクライナが攻撃された時は、ウクライナへの軍事的支援を行う。
 ・これが実現したら、ウクライナは(NATOも含め)軍事的同盟にも参加せず、外国の軍事基地も置かず、永久的な中立国になり、かつ核兵器も保有しない
 ・クリミア半島については、15年かけてロシアとウクライナで別途協議する。この間、ロシアとウクライナは、軍事的な手段でクリミア問題を解決しようとしない。
 ・(東部の)ドネツク州とルハンスク州の一部の区域(親ロシア派が実効支配していた地域)についての協議も、別途行う。>(東大作著『ウクライナ戦争をどう終わらせるか』岩波新書2023年2月より)

 これはウクライナ側からの提案です。そして「これに対してロシア側も、好意的に反応し…実際にロシアは、北方から首都キーウを目指していロシア軍を撤退させ始めた」(東大作氏、同前)のでした。

 ところが、これに反対した国がありました。アメリカです。
「米政府にとって、この時点でのロシアとの停戦は望ましいものではなかった。ウクライナに軍事基地を置かず、さらに軍事演習にはロシアを含めた合意が必要という「中立」案は、ロシアとの妥協であるとして、バイデン政権には不満であった」(下斗米伸夫著『プーチン戦争の論理』集英社インターナショナル新書2022年10月)。

 結果、ウクライナが提案した和平案は水泡と帰し、今日にいたるまで戦争が続くことになりました。

 ラブロフ氏は今、その幻の和平案に言及し、「受け入れ可能」を示唆しているのです。

「ウクライナ側が提示した内容にロシア側の交渉団がほぼ同意し、双方の交渉チームのレベルでは大筋の合意に達していたことは、将来、仮に本格的な和平交渉が再開された時の一つの大事な布石、礎になる可能性がある」(東大作氏、前掲書)

 それがまさに今です。
 「いかなる軍事同盟にも属さない非核、中立のウクライナ」という「22・3・29和平案」に回帰することが停戦・和平のカギです。ロシアの軍事侵攻の大きな原因が、アメリカが公約を反故にした「NATOの東進」だったことを改めて想起する必要があります。



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戦争トラウマの怒りから非戦へ―黒井秋夫さんの闘い

2025年08月13日 | 国家と戦争
   

 戦争トラウマからPTSD(心的外傷後ストレス症)に苦しんだ元日本兵を父に持った黒井秋夫さん(76)(PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会代表)の講演会が11日、京都市内でありました。

 黒井さんは3日に那覇市で行われた「戦争PTSDを考える講演会・シンポジウム」(5日のブログ参照)にも出席するなど、全国各地でこの問題を訴えています。

 戦争がもたらした重大な被害であるにもかかわらず、この問題が広く知られるようになったのは近年になってからです。
 黒井さんはその主要な理由が、戦争神経症の兵士は「皇軍には皆無」と戦時中に日本軍・政府が虚偽発表し、メディアがそれに追随して報じたこと、さらに唯一の治療機関だった国府台陸軍病院の院長が「50年間の箝口令」を敷いたことにあると指摘しました。

 黒井さんは戦争トラウマ・PTSDに苦しんでいるのは元日本兵士とその家族だけではなく、日本が侵略した中国の人々も同様であり、日本は加害者としての責任を自覚しなければならないと主張。昨年、父親が戦った吉林省を訪ね、現地の人々に土下座して謝罪しました。

 黒井さんの講演のあと、受講者として参加していた精神科医の野田正彰氏がフロアから発言しました。
 野田氏は、「ベトナムでは今も枯葉剤など米軍の攻撃による被害に苦しんでいる人が多いが、アメリカの精神科医は全く目を向けようとしていない。ベトナムの被害者に手を差し延べているのはドイツの医師たちだ」とし、それは「自分の父・祖父が戦争で何をしてきたかを問いかけてきたからだ」と指摘。「日本は敗戦後、昭和天皇が生き残る社会をつくってきた。いま、どういう社会をつくるのかが問われている」と、戦争トラウマ・PTSD問題が今日的な課題であることを強調しました(写真右)。

 黒井さんたちの会は、戦争トラウマ・PTSDの被害・加害を、「戦争はしません 白旗を掲げましょう 話し合い和解しましょう」というスローガンに込め、非戦の活動に繋げています。

 そのことは昨年、同じ「家族会」の藤岡美千代さんの講演で知り、たいへん共感しました(24年7月28日のブログ参照)。その思い・思想を確認するため黒井さんに質問しました。「侵略者によって家族が殺される、犯されるという状況でも実力で抵抗しないで白旗を上げるのか、という俗論にはどう答えますか?」

 黒井さんは「よく受ける質問だ」としたうえで、「まず逃げる。それでもだめなら素手で家族の前に立って守る。だれにでもできる非暴力のたたかいを追求する」と答えました。

 私はさらに、「祖国を守るために戦っているウクライナ市民にも白旗を上げるべきだと言いますか?」とたずねました。黒井さんは間髪入れず「はい、そうです」。「なぜ?」「侵略に対して武力で立ち向かえば、戦争はなくならないからです」

 「白旗を掲げましょう」の思想・運動に共鳴・賛同します。ただ、「もし家族が…」という質問に対する答えはまだまだ検討する必要があると思います。「侵略に対する武力抵抗は正当な自衛権」という「国際法」の影響が、「平和民主勢力」を含めて根強いからです。

 その理論・思想をどう乗り越えるか。それを黒井さんたちの活動だけに依存することはできません。学者・研究者(とりわけ平和学、国際法、政治・外交、哲学)の役割が問われます。

 黒井さんは「これからアジア・世界にこの旗(写真中)を広げていきたい」と意欲を燃やしています。その活動を支持し応援したいと思います。


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ガザの飢餓地獄―イスラエル・アメリカの蛮行を止められない国際社会

2025年07月28日 | 国家と戦争
   

 ガザで急速に深刻化している飢餓・餓死。
 ガザの市民がカメラに向かって訴えました。「みなさんと同じ食べ物を、送ってください」(23日のNHKニュース)

 ガザの現状を朝日新聞デジタルはこう報じています。

<ガザ当局によると、2023年10月の戦闘開始以降、飢餓などで127人が死亡し、約7割を子どもが占める。今月22~26日だけで少なくとも39人が餓死した。

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の避難用シェルター。ハディヤ・サバフさん(16)が、生後7カ月の娘ジェニンちゃんを胸に抱えていた。UNRWAのスタッフが、ジェニンちゃんの上腕に測定バンドを巻くと、目盛りは「危険域」とされる11・5センチを下回っていた。

 「この子は生まれたときから元気で、よく笑う子だった。でも、3月ごろから急にやせ細り始めた。今はあばら骨が浮き出て、泣く力も弱くなってきた」とサバフさんは声を震わせながら話した。かつては支援物資として受け取れていた粉ミルクは3月以降、まったく手に入らなくなった。

 UNRWAのラザリーニ事務局長は24日、「(飢餓に苦しむ)ガザの人たちは歩く死体のようだ」というガザの現地スタッフの言葉を紹介し、ガザ市の子どもの5人に1人が栄養失調状態にあると明らかにした。この割合は増加傾向にあるという。

 世界食糧計画(WFP)によると、ガザに住む200万人以上の3人に1人は数日間食事をとれず、栄養失調が急増して9万人の女性と子どもが緊急治療を必要としている。>(27日付朝日新聞デジタル、写真中・右も)

 UNRWAの清田明宏保健局長(医師)は、共同通信に寄せた手記でこう訴えています(抜粋)。

<ガザがどんどん壊れていく。
 骨と皮だけのような栄養失調の乳幼児が診療所に連れてこられる。ガザの崩壊は進み、止まる気配はない。

 3月に5・5%だった急性栄養失調の乳幼児の割合が6月には10・2%にほぼ倍増。健康だった乳幼児にも急性栄養失調が広がる。今、必要なのは医療ではなく、大量の食料搬入だ。

 UNRWAの職員も限界を超えている。栄養不足で勤務中に失神する職員が増えた。15人に聞いたところ、1日3食取れるのは1人。>(27日付琉球新報)

 いうまでもなくイスラエルによるジェノサイドがもたらしている地獄です。イスラエルの蛮行は可視化されていますが、背後でイスラエルを操っている米トランプ大統領の責任を見過ごすことはできません。

 三牧聖子・同志社大教授(米国政治外交)はこう指摘します。

<昨日(7月26日)、米トランプ大統領は、イスラエル軍のガザからの撤退と恒久停戦を求めるハマスの要求をイスラエルとともに拒否し、イスラエルに「ハマスの掃討」を許す考えを示した。
「ハマスの掃討」の名のもとに正当化されてきた無差別的な軍事行動や人為的な飢餓作戦でどれだけのガザ住民が犠牲になってきたのか、今後どれだけ犠牲になるのかを考えても、つくづく人道的な関心が皆無の大統領という他ない。>(27日付朝日新聞デジタル)

 清田局長は手記をこう締めくくっています。

<21世紀にこんな事態が起きて良いはずがない。今すぐ停戦し、食料と人道物資を搬入しなければ、国際社会はガザを、そして人間の尊厳を見捨てることになる。>

 イスラエルとアメリカの暴挙を止められないどころか、トランプに振り回され、その一挙手一投足に一喜一憂する国際社会。
 私もその一員として、結果としてガザを見捨てている側に立っているこことに、どうしようもない無力感と申し訳なさを感じています。

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「沈黙ほど危険なことはない」グレタさんガザへ

2025年06月09日 | 国家と戦争
   

 スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが今月1日、人権団体と協力してガザ地区に食糧や医薬品を届けるため、イタリアのシチリア島を出航し、ガザに向かっています。

 ガザ地区周辺海域はイスラエル軍が海上封鎖しており、グレタさんの船がイスラエル領内に近づいた場合は阻止する見通しだとイスラエルメディアが伝えており(7日のNHKニュース)、緊迫した事態を迎えています。

 船でガザに支援物資を運ぶ危険性はもちろんグレタさんは百も承知です。しかし、グレタさんは出航前の記者会見でこう述べました。

このミッションがどれほど危険でも、(イスラエルによる)ジェノサイド、集団殺害を前に、世界が沈黙することほど危険なことはない」(7日のNHKニュース、写真左も)

 国連の報告では、ガザ住民の100%が「急性食料不安」に直面し、22%が「壊滅的飢餓」の状態にあります(5日付朝日新聞デジタル)。世界食糧計画(WFP)の発表では、ガザの子ども7万人以上が深刻な栄養失調に直面しています(5月26日付共同配信)。

 イスラエルは3月はじめから国連などのガザへの物資搬入を完全に遮断しました。そして5月27日、アメリカとイスラエル主導の「ガザ人道財団」が配給を始めました。
 しかし、国連の配給拠点が約400カ所あったのに対し、「ガザ人道財団」の拠点はわずか4カ所。しかもイスラエルはそのわずかな配給へ殺到するガザ市民に向けて攻撃し、多数の犠牲者を出しています。

 国連安保理に4日、イスラエルに対して人道支援の制限解除を求める決議案が上程されました。15カ国中14カ国が賛成しましたが、アメリカ・トランプ政権が拒否権を行使したため否決されました。

 赤十字国際委員会(ICRC)のミリアナ・スポリアリッチ総裁は、英BBCのインタビューでこう告発しています。

人類はガザ地区を見捨てている。ガザの市民が人としての尊厳を全て奪われていることを私たちはただ見ているだけだ。私たちはそのことに良心の呵責を感じるべきだ。民間人の尊厳を全て奪う戦争を世界が傍観している。各国の指導者は今、行動を起こすべきだ」(5日のNHKキャッチ=写真中)

 結果として「傍観」していることに、良心の呵責を感じます。何もできないことに無力感を禁じ得ません。せめてできることは、「沈黙」しないことだけです。

 ジェノサイドを続けているイスラエルと、その後ろ盾になっているアメリカを糾弾し続けます。そして、国連をはじめとする国際機関の奮起を求めます。

 グレタさんへの攻撃は絶対に許されません。

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トランプセールス・戦争の陰で膨大な利益上げる兵器産業

2025年05月15日 | 国家と戦争
  

 トランプ米大統領が13日にサウジアラビアを訪問し、約21兆円(1420億㌦)の武器売却契約を交わしたことが話題になっています(写真左)。
 中東はイスラエルによるパレスチナへのジェノサイドが大きな不安定要素になっていますが、そのイスラエルを支援し続けているアメリカによる巨額の武器売却は、戦争・紛争と軍事費・兵器産業の関係を改めて浮き彫りにしています。

 ロシアがウクライナを軍事侵攻し、アメリカ・欧州諸国がウクライナを軍事支援しているウクライナ戦争は、世界の軍事費を膨張させています(写真中はNATO軍の航空機=朝日新聞デジタルより)。

 ストックホルム国際平和研究所の発表(4月28日)によると、「2024年の世界の軍事費」は、前年比9・4%増の総額約390兆円(2兆7180億㌦)。10年連続の増加で、総額は統計を取り始めた1988年以降最大となっています。

 第1位はアメリカで9970億㌦(5・7%増)、世界全体の37%を占めています。以下、中国、ロシア、ドイツ、インドの順で、この上位5カ国で全体の60%です。
 日本の軍事費は、前年比21%増の553億㌦で世界10位。

 軍事費の膨張は言うまでもなく兵器産業に膨大な利益をもたらします。

「政府による防衛予算の増額が、防衛装備品を手がける関連企業の業績を押し上げている。各社の2025年の3月期(24年度)決算は、関連部門が大幅な増益となった。もしトランプ米政権が日本にさらなる防衛費の上積みを求めれば、関連企業への「追い風」はさらに強まる可能性がある」(9日付朝日新聞デジタル)
 
 日本最大の兵器生産企業である三菱重工の小沢寿人・最高財務責任者(CFO)は、「24年度も想定以上の規模で受注できた。…現状の我々のキャパシティー(生産能力)を超えているレベル」(同朝日新聞デジタル)だと述べ、笑いが止まらない様子で高収益を誇示しています。

 三菱重工は戦時中、朝鮮人「徴用工」に対する強制労働の責任を問われ、韓国の最高裁(大法院)から被害者への賠償を命じられている戦犯企業です(写真右)。しかし、同社はその命令に従わないどころか、韓国から交渉に訪れた被害者遺族や支援者らを門前払いしています。

 そんな企業が、自民党政権の大軍拡のもとでかつてない利益を上げているのです。

 各国の国家権力による戦争・紛争は、市民の生命・健康・安全を奪い、地球環境を破壊する一方で、兵器産業に膨大な利益をもたらします。
 というより、兵器産業は利益をえるために、国家権力(政権)に対して戦争の勃発・継続を要求します。三菱重工の自民党への政治献金は常に断トツ1位です。

 戦争・紛争と国家権力(政権)と兵器企業・産業のこの関係は、政権による情報隠しとメディアの沈黙によってベールに包まれています。

 その実態を明るみにし、悪の鎖を断ち切らない限り、世界から戦争・紛争をなくすることはできません。

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大軍拡・徴兵制へ向かうドイツを反面教師に

2025年05月12日 | 国家と戦争
   

 新しい首相に選ばれたメルツ氏の下で、ドイツが大軍拡へ突入しようとしています。メルツ氏は「われわれは攻防力を着実に強化し、国を守る心の準備もしなければならない」(3月28日)と述べています。

 大軍拡の第1の柱は、軍事費の大幅拡大です。「今後50兆円近くかける方針」(7日のNHK国際報道2025、写真はすべて同番組より))といいます。そのためにドイツは、3月に憲法(基本法)の「改正」に踏み切りました。

「(ドイツ)憲法には、年間の構造的な財政赤字を国内総生産(GDP)比で0.35%未満に抑える「債務ブレーキ」と呼ばれる財政ルールがある。世界金融危機のさなかの09年、メルケル前首相の政権が定め、財政健全化の柱となってきた。今回の改正では、国防費のうちGDPの1%を超える部分についてルールの対象から外し、国防費を柔軟に増やせるようにする」(3月19日付朝日新聞デジタル)

 憲法を「改正」し、「債務ブレーキ」を撤廃して軍事費の際限ない拡大に道を開いたのです。

 大軍拡の第2の柱は、徴兵制再開の模索です。メルツ氏が「国を守る心の準備」を強調していることに通じます。

 ドイツ軍の兵力は現在18万人余で、ドイツ国防相は「最大5万人足りない」と訴えています。その補充のために、「若者を軍に勧誘」する動きを強めています。

 こうした政府の軍拡・戦争国家化政策に対し、ドイツでは若者たちを中心に反対・抗議活動が広がっています。4月19日には約2000人が参加してデモが行われました。

 デモ参加者の1人は、「銃で人を撃ちたくない。多くの若者がそう感じている」と話しています。

 ドイツの書店では『私がドイツのために戦わない理由』というオーレ・ニモエンさん(27)の本が売れています。ニモエンさんはこう語っています。

「国家は、「安全のため」と称して、国民に犠牲を強いるものだ。今は左派ですらそうしたナショナリスティックな思想を広めようとしている」「今はみな自衛のためだけに武装することについて議論しているが、近い将来、ヨーロッパ各国は自らの利益を守るために世界各地で軍事力を行使するようになると思う。武器は操作する人間が必要で、それは普通の市民だ。メルツ氏やその子どもではなく私のような市民が戦場に行くのだ」(以上、7日のNHK国際報道2025から)

 日本は戦時中、大量の国債を乱発して戦費を調達した苦い経験から、戦後は財政法で国債(赤字国債)の発行を禁じました。そかし、1965年11月19日の閣議でこの規定を撤廃して初めて国債を発行して以来、国債の大量発行で軍事費を増強してきたことは周知の事実です。この点ではドイツより“先”を行っています。

 そして今、自衛隊は隊員不足に悩み、学校や地域への浸透を図り、若者の勧誘に並々ならない力を入れています。

 ドイツが憲法(基本法)を「改正」してまで大軍拡・戦争国家化への道を走っているのは、ウクライナ支援と、軍事力の増強を露骨に要求するトランプ大統領のためです。

 ウクライナ戦争とトランプ政権によってドイツはじめ欧州諸国は、大軍拡・戦争国家化の入り口に立っています。それに抗って戦うことを拒否し平和を求める市民・若者の活動も広がっています。
 大きな岐路に立っているのはもちろん日本も同じです。ドイツの現状はけっして他人事ではありません。

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一刻の猶予もないガザの子どもたちの命

2025年05月06日 | 国家と戦争
  「子どもの日」の5日、毎日新聞、東京新聞、琉球新報、沖縄タイムス、京都新聞が「子どもの日」をテーマにした社説を掲載しました(私が読んだ限り)。この中に、「ガザの子どもたち」に触れたものは1つもありませんでした。

 それぞれの社説が取り上げたテーマはどれも重要です。が、どのようなテーマを論じても、今、「ガザの子どもたち」を視野から外すことはできないのではないでしょうか。「ガザの子どもたち」こそあらゆる権利と自由をはく奪され、今まさに生命の危機の真っ只中にいるからです。

 5日付の共同電はこう報じています。

「国連児童基金(ユニセフ)は、パレスチナ自治区ガザで、今年に入ってから子ども9千人以上が急性栄養失調で入院したと発表した。
 ガザへの食料など支援物資搬入をイスラエルが停止してから2カ月。世界食糧計画(WFP)はガザの備蓄食料が底を突いたと表明しており、人道危機の悪化に歯止めがかからない。
 ユニセフのラッセル事務局長は「人道支援は子どもたちにとって命綱だったが、今やそれも尽きようとしている」とイスラエルを非難した。
 ユニセフによると、栄養失調の治療を受けられない子どもも数百人に上る。75%以上の世帯が飲料水の不足に直面しているほか、5歳未満を中心に下痢もまん延している」(写真は4月30日のガザの子どもたち=朝日新聞デジタルより)

 「人道危機」「人道支援」という言葉は本質を覆い隠します。実態はイスラエルとそれを擁護するアメリカ、欧州諸国によるパレスチナ人民に対するのジェノサイドです。

 「子どもの権利条約」(1989年国連採択、日本は1994年4月22日に批准)は、第1条で、「子ども」(a child)とは、「18歳未満のすべての者」と定義し、第2条で、「締約国は…子ども又はその父母もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的もしくは社会的出身、財産、心身障害、出生または他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」と定めています。

 子どものあらゆる権利、いわんや生命の安全は無条件で、どのような差別を受けることもなく保障・確保されなければならない、ということです。

 ユニセフのHPによれば、「子どもの権利条約」の締約国・地域は現在196。その中にはイスラエルも含まれています。しかし、アメリカは条約に署名はしましたが(1995年)、いまだに批准していません。それが「民主主義の国」と言われるアメリカの実体です。

 イスラエルは「子どもの権利条約」に照らしても、ガザ・パレスチナに対するジェノサイドを直ちにやめなければなりません。

 日本を含む国際社会は、イスラエルのジェノサイドを一刻も早く止めさせなければなりません。
 それは「子どもの権利条約」締約国としての義務でもあります。「子どもの日」に私たちがなによりも主張しなければならないのはこのことではないでしょうか。

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イスラエルを糾弾するBDS運動に注目

2025年03月25日 | 国家と戦争
 

 「3・8国際婦人デー記念のつどい」が23日、京都市内でありました。この中で、京都在住のジュマナさん(エルサレム生まれ、32歳、2児の母)が「パレスチナからの訴え」を行いました。

 イスラエルによるジェノサイドが続いている現状についてジュマナさんは、「パレスチナ人を人間として扱ってほしい」と訴え、「一番の問題は国際法違反の戦争犯罪を犯しているイスラエルがなんの罰も受けていないこと」と指弾。

 イスラエルのジェノサイドをやめさせ、パレスチナを支援するのために「日本でできること」としてジュマナさんは、政府・国会議員への要請、デモなど抗議行動への参加、パレスチナ文化の普及、寄付とともに、BDS運動を挙げました。

 BDSとは、Boycott Divestment Sanctions =ボイコット・投資撤退・制裁の略。イスラエルへの資金援助につながる消費・投資をやめようというもので、「イスラエルのアパルトヘイト政策を終わらせるためにパレスチナの市民から呼びかけられた国際キャンペーン」(会場で配布された日本のBDS団体作成のリーフレット。写真は同団体のHPから)。

 同リーフレットのよれば、BDSの対象・内容は以下の通りです。

イスラエル製武器を輸入したい日本政府
 防衛省は現在、「無人アセット防衛力能力強化」を目的として、イスラエル製の攻撃型ドローンの導入を検討中。その輸入代理店の4社と子会社5社がボイコット対象。
 ▶日本エヤークラフトサプライ▶海外物産▶川崎重工▶住友商事(住商エアロシステム)
(住友商事の子会社)▶サミット(スーパー)▶J:COM(インターネット・電話)▶ティーガイア(QUOカード)▶FEILER(タオル・カバン等のブランド)

イスラエルの武器を製造するFANUC(ファナック)
 山梨県に本社を置く世界シェア第2位の産業用ロボット製造企業。イスラエルに支社があり、イスラエル最大手の軍需企業エルビット・システムなどに販売。
 
マクドナルド
 イスラエルのマクドナルドはガザで虐殺を行っている兵士たちに無料で食事を提供している。パレスチナBDS民族評議会は、マクドナルドがイスラエルのフランチャイジーとの契約を解除するまで世界的なボイコットを呼びかけている。

イスラエル産の農作物
 イスラエル産の農産物にはパレスチナの土地を違法入植して栽培したものが多く含まれている。具体的にはイスラエルのレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツなどを使用したジュースやアルコール飲料。

 企業・製品以外にも問題があります。

年金がイスラエルの軍事企業に?
 日本の年金はイスラエル国債の約2270億円と、パレスチナの虐殺・民族浄化に関わる企業の株式を約8800億円保有している(2024年3月末時点)。

日本の大学
 以下の大学ではイスラエルの大学との協定関係の解消やアカデミックボイコット、イスラエルの攻撃に対する声明を要求して抗議活動が起きている。
 ▶東京大学▶上智大学▶青山学院大学▶筑波大学▶早稲田大学▶明治大学

愛知県
 愛知県は「Aichi-Israelマッチングプログラム」などの事業を通じ、イスラエルの政府機関と連携協定を結び、県内にスタートアップ企業を増やすため多額の税金を使っている。

 以上がリーフレットの主な内容です。

 リーフレットでは触れられていませんが、「(2010年ごろに)イスラエルのセキュリティー企業マグナBSP社が、福島第一原発をはじめとした複数の国内原発のセキュリティーシステムを納入するなどの動きがあった」(役重善洋氏「イスラエルと日本」、長沢栄治・栗田禎子編『中東と日本の進路』大月書店2016年所収)という関係もあります。

 安倍晋三政権によってとりわけ深くなったイスラエル政府・企業と日本政府・企業の提携関係。その実態に目を向け、BDS運動はじめ、できるところからイスラエル糾弾・パレスチナ人民支援に加わることは日本人としての責任ではないでしょうか。

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共同声明からイスラエル批判を削除したG7 の二重基準

2025年03月17日 | 国家と戦争
  カナダで行われていたG7 (「先進」7カ国)外相会合が14日、「共同声明」を発表して閉会しました。「声明」には「ウクライナの強固な安全保障が必要」との文言が盛り込まれました。

 ウクライナの「安全保障」が重要なのは言うまでもありません。ウクライナ戦争の「停戦」を支持しているのも当然です。しかし、この「共同声明」には、昨年11月の「共同声明」と比べて重大な後退があります。

「(共同声明は)中東情勢ではパレスチナ国家樹立によるイスラエルとの「2国家共存」への支持が盛り込まれなかった。昨年11月のG7 外相会合の共同声明には明記していたが、イスラエル寄りのトランプ政権の意向が反映されたとみられる」(15日付京都新聞夕刊=共同配信)

 「2国家共存」とは、1947年11月29日の国連総会で採択された「パレスチナ分割案」によるパレスチナとイスラエルの「共存」論です。これはもともとパレスチナの領土であったところにイスラエルの建国を認めるもので、「国連憲章違反」(アドホック委員会)と指摘され(岡真理著『ガザとは何か』大和書房2023年12月)、「帝国主義の権化」(高橋宗瑠・大阪女学院大教授「パレスチナ 続くイスラエルの不処罰と国連の無力」、「現代思想」2024年2月号所収)とさえいわれているものです。

 ところがトランプ大統領は就任早々、この国連決議にさえ反し、「ガザ地区の全住民を外部に移住させる」「ガザ地区をアメリカが所有してリゾート開発する」などと述べました。覇権主義・植民地主義の露骨な表明です。

 さすがに欧州諸国もこれには「反対」し、「2国家共存」を支持しました。その「支持」を今回の「共同声明」で削除したのです。

 それは、日本を含むG7 諸国が、イスラエルのパレスチナ侵略・ジェノサイドを、さらにイスラエルの後ろ盾となって自らガザを手に入れようとしているトランプの覇権主義を容認することにほかなりません。

 G7 はロシアのウクライナ侵攻を「力による現状変更」「侵略」と批判していますが、イスラエルやトランプがやってきたこと、やっていること、これからやろうとしていることも、「力による現状変更」「侵略」以外の何物でもありません。

 ロシアの軍事侵攻は口を極めて批判する一方、イスラエル・アメリカの侵略・植民地主義は容認する。G7 の二重基準(ダブルスタンダード)は明白です。

 こうしたアメリカ・G7 が主導する「ウクライナ停戦」が真の平和とはかけ離れたものになるのは必至です。
 中立・公正の国際的機関・組織による停戦・和平交渉仲介が今こそ求められています。


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ウクライナ停戦へ、国連は何をしているのか

2025年03月07日 | 国家と戦争
   

 トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談(2月28日)の「決裂」が波紋を広げています。EUは更なる軍拡の「ヨーロッパ再軍備計画」をすすめ、フランスのマクロン大統領は「核抑止」(核の脅し)を欧州全体に広げる考えを表明しました。
 こうした事態は何を示しているでしょうか。そもそもトランプ・ゼレンスキー会談の「決裂」と何だったのか(以下、発言の引用は共同配信記事より)。

 トランプ氏との〝口論“の中でゼレンスキー氏は、「2022年まで米国の各大統領はプーチンを止められなかった」「私は戦時大統領だ」と述べました。その発言の意味するところは、〝ウクライナは欧米(NATO諸国)を代表して戦っているのだ”ということでしょう。これはその通りです。

 そもそもウクライナ戦争は、「アメリカにとっての「夢の戦争」(アメリカの青年はこの戦争で誰も死んでいない。アメリカ製の兵器が政府に際限なく購入され、ウクライナの戦場で消費される―和田氏の説明)、ウクライナにとっての代理戦争」(和田春樹・東京大名誉教授『ウクライナ戦争即時停戦論』平凡社新書2023年)です。

 しかし、ゼレンスキー氏の最大の問題は、これまで「徹底抗戦」「領土奪還が停戦の条件」と主張し続け、武力による「解決」をはかろうとしてきた(している)ことです。

 これに対し、トランプ氏が「この問題を終わらせたい」、バンス副大統領が「あなたの国の破壊に終止符を打つ外交について話している」と述べたことは、この限りでは間違っていません。最も重要なことはこれ以上犠牲者を出さないことであり、「外交」こそが解決の道です。

 しかし、トランプ氏が「(ゼレンスキー氏は)全く感謝していない」と軍事「支援」を恩に着せ、ウクライナの鉱物資源を手に入れようとしていることは、盗人猛々しいにもほどがあります。ウクライナに「代理戦争」をさせて甚大な犠牲を出し、その上さらにウクライナの資源をわがものにしようとは…。アメリカの大国主義、覇権主義の最たるものです。

 つまりはトランプ・ゼレンスキー会談の「決裂」とは、この戦争をめぐるアメリカと、ウクライナを含む欧州(EU諸国)の内部矛盾の噴出にほかなりません。

 その矛盾を、欧州の更なる軍拡(それが各国の福祉・市民生活をさらに圧迫するのは必至)と「核抑止=脅し拡大」で〝収束“することが、真の平和に逆行するのは明らかです。

 事態がこうした好ましくない方向へ向かっているのはなぜか。その根源は、「停戦」に向けた交渉がトランプ主導で進められていることです。トランプが主導する限り、米欧(NATO)側とロシア側の戦略的駆け引き(ディール)に終始することは必至です。
 
 国連はいったい何をしているのでしょうか。こういう時こそ国連の出番ではないのでしょうか。

 国連がそもそも第2次世界大戦戦勝国の政治的思惑によって創設され、安保理常任理事国とりわけアメリカに舵を握られていることは周知の事実です。
 しかし、たとえそうでも、国連にはグローバルサウスの国々はじめ多くの中立的諸国が加盟しています。さまざまな専門機関の英知もあります。

 国連は今こそ、持っているものを総動員して、ウクライナ戦争の停戦・和平にイニシアチブを発揮すべきです。平和と人権を愛する世界の人びとがそれを支持し支援するはずです。


 

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