誰が次のアメリカ大統領になろうと、イスラエルのジェノサイドとウクライナ戦争は一刻も早くやめさせなければなりせん。どうすれば停戦できるのか、そもそもウクライナ戦争と日本の関係は―伊勢崎賢治氏(元国連職員、写真中)の近著『14歳からの非戦入門―戦争とジェノサイドを即時終わらせるために』(ビジネス社2024年6月)を手掛かりにあらためて考えます。
伊勢崎氏は、「近年とくに顕わになった「安全保障化」と、日本人の大半が気づいていない「緩衝国家」という2つのキーワードを軸に、世界と日本の危機をどう克服するかのヒントを提示したいと思い、急きょ書き上げた」(ブックカバー)と述べています。同書のポイントを抜粋します。
▷「安全保障化」…「安全保障化」とは、一般大衆に「恐怖」を植え付け、集団ヒステリーの凶行に走らせる一つの手法である。一例が、関東大震災朝鮮人虐殺事件である。
直近の2年間にわれわれは2つの大きな「悪魔化」を経験している。2023年10月7日に「奇襲攻撃」を引き起こしたハマスと、2022年2月24日にウクライナに侵攻したプーチンだ。
その喧伝が功を奏すればするほど、「悪魔がなぜその蛮行に至ったのか」を追及しようとする言説空間が消滅してゆく。
「プーチンの絶対悪魔化」に、保守右派勢力ならともかく、9条護憲を掲げる日本共産党などリベラル左派勢力まで、みごとに「安全保障化」で翼賛化してゆく。
▷「緩衝国家」…「緩衝国家」とは、地理的に敵対する大国や軍事同盟の狭間に位置し、大国のどちらにつくかによって、その「代理戦争」の戦場となる国のことである。大国の本土を無傷にとどめ、敵対する相手国を弱体化する戦争の戦場になる国々である。
ウクライナと同様に典型的な「緩衝国家」が日本だが、ウクライナにも存在しない国家の特質が、日本にはある。アメリカとの異様な関係性である。それを象徴するものが、「朝鮮国連軍」という「ゾンビ」である。
▷ウクライナ戦争の終結とは…ウクライナ戦争は2014年から始まったウクライナ東部紛争、つまり大国ロシアが介入した「ドンバス内戦」の延長である。ウクライナ戦争はこの段階から、ロシアといわゆる西側(アメリカ、EU&NATO)の対立が生む「代理戦争」だったのである。
だから、「親ロシア派住民が標的になったその内戦が起きた根本の原因に対処しない限り、この戦争に終わりはない」と考えるのが真っ当な学問的姿勢である。
つまりこの戦争の「終わり」とは、親ロシア派住民と親ヨーロッパ派住民の「和解」もしくは「民族融合」が達成されることである。
▷「停戦」と「終戦」…「停戦」は「終戦」ではない。人命を一人でも多く救うため、とにかく「戦闘を停止する」こと。
領土の帰属問題、戦争犯罪の裁定などの正義の追求は、停戦後に一つ一つ最大限の中立性を演出しながら実行する。そして「民族融和」へ導かれる復興と同時に、戦争で壊れてしまった社会正義を修復すること。
▷「同調圧力」…停戦を訴えることは、ウクライナの人々の戦う意志を侮辱するものでも揶揄するものでもない。「勝利する」という同調圧力の熱狂の結果、日本は(先の戦争で―私)どういう末路を迎えたか。末路を現実視することは、決して愛国心の敗北ではないということを、ウクライナの人々に訴えるのはわれわれ日本人の責務ではないのか。
▷「代理戦争」…この戦争は【ロシア】対【アメリカ・NATO】の「代理戦争」である。戦況の趨勢に最大かつ直接的な影響を与えるのは、当事者ウクライナではなく、「代理戦争」のマスターであるアメリカである。
「代理戦争」は、どんなものであれ、絶対に「成功」させてはならないのだ。それが一度起きてしまったら、関係するすべての国家間の対話と外交交渉で、一刻も早い停戦を実現することだ。それが「代理戦争」の処理に対する基本姿勢であるべきだ。
▷「新しい戦前」…国民が戦争と、それへの動員を受け入れる土壌と文化をつくるには、かならず仮想敵国を標的にする「絶対悪魔化」が、戦争に至る前の“平時”において必要となる。これが、ウクライナ戦争を機に、平時であるはずの今の日本で起きていることだ。
特記しなければならないのは、こういう状況では、単に愛国主義勢力が大手を振るだけでなく、その真逆に位置するはずの反戦勢力が、「平和を自衛する」ために、「絶対悪魔化」に加担し、翼賛体制をつくるということだ。こうなると、国家は戦争へのブレーキを完全に喪失する。「新しい戦前」とは、こういうことだ。(以上、同書より)
同じ「緩衝国家」でありながら「ウクライナにも存在しない日本の特質」。その元凶、日本がアメリカの「代理戦争」にいま加担している、そして新たな「代理戦争」の戦場になろうとしている、その危機の根源が、日米軍事同盟=安保条約であることを改めて銘記する必要があります。