アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

核汚染水放出1年・韓国の反対運動に学ぶ

2024年08月27日 | 原発・放射能と政治・社会
 

 自民党政権と東京電力が地元漁協はじめ多くの反対を押し切って福島第1原発の核汚染水海洋放出を開始して24日で1年たちました。

 日本のメディアは、「周辺海域のモニタリング(監視)では、放射性物質の濃度が国などの基準を大きく下回っており、政府や東電は安全性への影響はないとの見解を示している」(毎日新聞24日付社説)、「モニタリングで海水などに異常は確認されていない」(24日付京都新聞=共同)など、政府・東電の言い分そのままに「安全」を強調。

 その一方で、「中国による日本産水産物の輸入全面停止が続き、全国の漁業者や水産加工業者が打撃を受けている」(同「毎日」社説)、「放出に強く反発する中国は日本産水産物の全面輸入停止を継続」(同共同配信)などと、反対しているのは中国だけだという論調を続けています。

 こうしたメディアの報道は、核汚染水の放出に反対する世界の現実を隠し、政府・東電に追随するきわめて危険な偏向報道と言わざるをえません。

 核汚染水の海洋放出に反対しているのはもちろん中国だけではありません。端的な例が隣国の韓国です。
 22日、韓国の国会議員会館で抗議集会が開かれました(写真左)。その内容はたいへん示唆に富んだものでした。ハンギョレ新聞を抜粋します。

<韓国国内の市民・環境団体で構成された「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」(共同行動)と「民主社会のための弁護士の会」(民弁)などは22日午前、ソウルの国会議員会館で討論会を開き、日本の核汚染水投棄に対する法律的争点と今後の課題について話し合った。

 キム・ヨンヒ弁護士は「投入された物質とその影響間の因果関係を証明する決定的証拠がなくても、廃棄物投棄による環境保護のために適切な事前措置を講じなければならない」というロンドン条約の「事前主義原則」に触れ、「福島原発汚染水に対しても適用されるべきだ」と強調した。

 さらに、「日本の核汚染水の放出問題は、韓国だけの問題ではなく、地球に住むすべての人たちの問題だ」とし、「中国政府や太平洋島しょ国の一部の国と共同で国際海洋法裁判所に提訴すれば、『公海上の海洋汚染』に対する問題提起ができる」と説明した。

 韓国と日本の原発問題を長い間研究してきた日本の松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)名誉教授は「汚染水投棄問題は長期的被害を調べなければならないのに、韓国政府は『1年間何の問題もなかった』とし、汚染水に関する懸念を怪談だといって切り捨てている」とし、「この事案の原因をちゃんと理解していない。チェルノブイリ原発爆発当時にも即死した人は多くなかった」と指摘した。

 さらに張教授は「いま重要なのは、輸入水産物に対してストロンチウム89・90を測定した結果を必ず添付するよう日本政府に要求すること」だと語った。ストロンチウムはカルシウムと似た性質で、体内に入ると骨に簡単に蓄積され、骨髄がんと白血病の原因になりうる。>(23日付ハンギョレ新聞日本語電子版)

 こうした韓国の市民団体、学者、野党議員らの検討・議論は本来、汚染水の放出元(加害者)である日本でこそ行われるべきでしょう。

 日本のメディアは、中国を悪者にすることによって日本政府・東電の「正当性」を強調する偏向報道を改め、韓国はじめ世界(とりわけ環太平洋)の国々の市民、そして日本の市民・学者らが汚染水放出に反対している事実を公正に報道しなければなりません。


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日米比首脳会談で原発輸出を合意した岸田政権

2024年04月17日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 米バイデン政権の意向で行われた初の日米比首脳会談(日本時間12日)で、メディアが注目していない重要な問題があります。日本がフィリピンへ原発を輸出することで合意したことです。

 日米比首脳会談の共同声明には、「フィリピンのインフラ整備で協力する」とあり、その中に「フィリピンの民生用原子力の能力構築を支援する」があります(12日付京都新聞夕刊=共同)。

 これだけでは何のことかよく分かりません。実は首脳同士の会談と並行して、斎藤健経産相、レモンド米商務長官、パスクアル・フィリピン貿易産業相の会談が同日ワシントンで行われました。そこでは次のことが合意されました。

「会談では、中国が影響力を強めるクリーンエネルギーでも協力が確認された。目玉は日米両国の大手企業が注力する次世代型原発の小型モジュール炉(SMR)。フィリピンへの導入に向けた調査や人材育成などを進める。
 原発輸出は中ロが先行し、核不拡散の側面で懸念が大きい。フィリピンにとっても、電力の安定供給は必須だが、対立する中国への電力依存は避けたい考えだ。日米にはSMR導入が、中ロの影響力の低下につながる」(12日付朝日新聞デジタル)

 日米両国の原発企業が力を入れる次世代型原発の小型モジュール炉(SMR)をフィリピンに輸出する。それは中ロに対する政治的対抗でもある、という合意です。

 日本(自民党政権)は東京電力福島原発「事故」に何の反省もなく、原発再稼働をすすめていますが、自国で原発を続けるだけでなく、アメリカと一緒になってフィリピンにも輸出するというわけです。

 岸田首相は米議会での演説(日本時間12日)で、「広島出身の私は、自身のキャリアを「核兵器のない世界」の実現という目標に捧げてきた」と述べましたが、それがいかに厚顔無恥なウソであるかはこの一事をとっても明らかです。

 さらに留意する必要があるのは、原発の輸出はフィリピンの人民・民主化運動への敵対でもあるということです。

 フィリピンはかつて、現在のマルコス大統領の父・マルコス大統領の独裁政治の下で、米ウエスチングハウス社製のバターン原発の建設が強行されました(1976年着工)。これに対し、原発に反対する各界各層の市民によって「非核フィリピン連合」が結成され(81年)、「非核バターン運動」が展開されました。

「マルコスの軍事独裁政権に立ち向かった人々にとって、バターン原発はマルコスの悪行と不正を象徴するモンスターだった」(ノーニュークス・アジアフォーラム編著『原発をとめるアジアの人びと』創史社2015年、上記の経過も同書より)のです。

 原発の輸出は、核の拡散だけでなく、現地の市民運動に敵対し、「モンスター」を再来させるものです。日本の市民として絶対に容認することはできません。

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能登と台湾・原発立地止めた市民の力

2024年04月10日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 能登地震の被災地は今なお多くの問題をかかえていますが、唯一の救いは福島と違って原発事故がなかったことです。
 この背景には、関西電力、中部電力、北陸電力3社が珠洲市に建設を計画していた原発を、市民の力で阻止した歴史があります(1976年1月・電力3社による構想発表→2003年12月・計画「凍結」)。

 反対運動の先頭に立ってきた北野進氏(志賀原発を廃炉に!訴訟原告団、元石川県議)はこう語っています。

「マグニチュード7.6、最大震度7という今回の大地震の震央は、かつての珠洲原発の予定地・高屋のすぐ近く、関西電力が立地可能性調査を計画していたエリアの裏山です。…隆起したのは海域だけではありません。原発が建設されたであろう陸域にまで及んでいることは間違いありません。…もし原発が立地されていれば、重大事故でも避難すらできず、福島以上に悲惨な原発震災となっていたかもしれません」(「ノーニュークス・アジア・フォーラム通信」4月7日号=写真左。※ノーニュークス・アジア・フォーラムは1992年結成されたアジアの人々と共闘する反原発ネットワーク)

 そして能登地震から3カ月後に起こった台湾地震(4月3日)。台湾にも市民が原発を止めた貴重な経験があります。

 台湾では長い戒厳令期間中(1949~87年)に、第1、第2、第3原発計6基が造られました。「原発は独裁と不正義の象徴」(ノーニュークス・アジア・フォーラムの佐藤大介氏、4日付京都新聞夕刊)だったのです。

 戒厳令が解除され(87年)、反原発の市民運動が広がりました。そして第4原発(1999年着工、2014年ほぼ完成)を、20万人規模(人口の約1%)のデモ(2013年3月)、非暴力直接行動の「ひまわり運動」(2014年)などによって「凍結」させたのです(2014年)。2021年12月の国民投票(写真中)でも第4原発の稼働を認めませんでした。

 この運動の過程で、蔡英文総統は2017年、「原発の運転を2025年5月に全て終了する」という「脱原発」を決定しました。台湾は来年、アジアで初めて「原発ゼロ」を達成することになります。

 日本人として忘れてならないのは、台湾第4原発の原子炉は日立と東芝製、タービンは三菱製だということです。日立の原子炉は2003年に呉港から、東芝の原子炉は04年に横浜港から輸出されました。、
 しかも、第4原発が建てられた地は、かつて帝国日本軍が台湾を植民地支配するために上陸した海岸の近く、「抗日記念碑」が建てられている海浜公園の隣です。

「かつて日本軍が植民地支配を開始するために現れたのと同じ場所に、今度は日本の原子炉が現れたのだ。台湾の人々がこれを「第二の侵略」と表現する重みと痛みを、日本の人々が十分に受け止めていたとは言い難い」(「ノーニュークス・アジア・フォーラム通信」2022年2月20日号、写真右は1997年の海上抗議行動=同通信より)

 北野進さんは前掲の投稿をこう締めくくっています。

「原発に内在する莫大なリスク、リスクを回避できない地震学の限界、そして原子力規制委員会の限界を直視すれば、国内すべての原発の再稼働はありえません。再稼働した原発の運転継続もありえません。…アジアの脱原発の潮流を確実なものにできるよう、全国の仲間、アジアの仲間と一緒に頑張りたいと思います」

 日本が原子炉を輸出して「第二の侵略」を行っているのは台湾だけではありません。その加害責任を自覚し、原発の輸出を止めさせ、台湾に学び、日本の脱原発を実現しなければなりません。

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原発事故とPTSD-精神科医・蟻塚亮二氏が警鐘鳴らす

2024年03月13日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 東日本大震災・東京電力福島第一原発「事故」から2年後の2013年に、沖縄から福島県相馬市に移り(2004年に青森から沖縄に移住)、患者と向き合ってきた精神科医の蟻塚亮二氏が、沖縄タイムスのインタビュー(7日付)に答え、「原発事故とPTSD」について警鐘を鳴らしています(以下、抜粋)。

<(原発事故のストレスの特徴は?)福島は宮城や岩手に比べ関連死が多い。避難の長期化や回数の多さが、戦争トラウマ並みの精神症状や、果ては死にもつながってくる。

 原発事故による避難者はいわば国内難民であり、浪江町島津地区の調査では2人に1人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していた。

 (回復のために何が必要か?)①SOSを発信する能力②悲しむ能力③語れる相手の存在④仕事、住居、仲間、お金、医療⑤音楽や芸能⑥今を大切に生きる意思-の全てが必要だ。④の生活インフラの整備は基本。その上で①と②、③が重要だ。

 (「悲しむ能力」とは?)福島では原発事故のことを語れない。放射能の影響が心配だというと「まだそんなことを言っているのか」とバッシングされたり、風評と批判されるので本心を言えない。

 しかし、不安というのは姿の見えない危険に対して自己防衛するための体の反応だ。不安は否定されるのではなく、他人によって傾聴されるべきだ。

 悲しいときは悲しみ、不条理なことには怒る。そうした素直な反応がいま求められている

 福島の巨大なトラウマに見舞われた人々は、あの大災害をよく乗り越えて生きてこられたとリスペクトされるべきだ。

 そしてつらい記憶を抱えた人たちがもっと感情を発露でき、皆でそれを共有する場面が必要だ。>

 蟻塚氏の指摘で改めて気づくのは、政府による「汚染水」の言葉狩り、「風評被害(加害)」というレッテル張りが、被災者や放射能に不安を抱いている人々をいかに苦しめているかということです。

 そして、「悲しいときは悲しみ、不条理なことには怒る。そうした素直な反応がいま求められている」という指摘は、原発被災者だけでなく、この国のすべての市民に該当することではないでしょうか。

 もう1点、蟻塚氏が近著『悲しむことは生きること 原発事故とPTSD』(風媒社、2023年9月)で繰り返し強調していることを同書から引用します。

「福島の震災とは、地震・津波という「天災」と、原発事故という「人災」が複合した災害である。…「人災」の場合には、加害者を認定し、加害者が謝罪して賠償を行い、受けた被害が回復されなければ解決しない。…「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟において仙台高裁は「国と東電の責任」を認めた(2020年9月30日)が、国と東京電力はこれを不服として最高裁に上告した。つまり、わが国で未曾有の原発事故について、10年たっても加害者が認定されておらず、謝罪もされていない。これが人災と天災との顕著な違いである」

 東電原発「事故」は何一つ解決していません。それどころか事態はますます悪化し、福島の被災者の苦悩は深まるばかりです。私たちは被災者とともに、この不条理に強く怒らねばなりません。

 

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「汚染水」の“言葉狩り”で市民に圧力かける政府

2024年02月29日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 東京電力福島第1原発事故の汚染水が海洋放出されて24日で半年。この間も汚染水に関連する事故が頻発しているにもかかわらず、東電は28日、地元住民や内外の反対の声を無視して4回目の放出を開始しました。

 原発事故からまもなく13年になるのを前に、京都市内で18日、「チェルノブイリ・フクシマ京都の集い」(実行委員会主催)が行われました。東電の旧経営陣を告訴・告発した福島原発告訴団団長の武藤類子さん(福島県三春町)が、「福島のいまと東電刑事裁判」と題して講演しました(写真左)。

 この中で武藤さんは、政府が汚染水の用語を使わないよう市民団体に圧力をかけている実態を報告しました。

 それによると、福島の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」が2021年11月に「廃炉・汚染水説明意見交換会」開催する直前、経産省資源エネルギー庁の職員から武藤さん宛てにメールが送られました。

「1点お願いですが、これは前回も指摘させていただいた通り、「汚染水を海洋放出する」という宣伝を地元にするのはやめてください。
明らかな事実誤認です。
我々は「汚染水の海洋放出」ではなく「ALPS処理水の海洋放出」について正しい情報をお伝えするために各所で説明活動を行っています。」

 こうした政府による「汚染水」の“言葉狩り”は、「市民」レベルにも広がっています。

 2023年1月、福島県三春町の市民団体が「原発汚染水はなぜ流してはいけないのか」というタイトルで小出裕章氏の講演会を企画した際、後援を決定していた三春町やメディア各社に「フリーライター」を名乗る男性から、「「汚染水を流す」という講演タイトルは事実に反するデマだ」と政府の宣伝を引き写したクレームが寄せられました。

 三春町は「言論の自由の場を提供する後援だ」としてクレームをはね返しました。しかし、後援団体の1つだった福島テレビはクレームを受ける形で後援を取り下げました。

 さらに政府は、福島県内の高校生を対象にした「ワークショップ」や「出前授業」、学校用のチラシ(写真中)でも、「ALPS処理水」キャンペーンを展開しています。(以上、武藤さんの講演より)

 都合の悪いことは言葉でごまかす。それは政府、東電の常套手段です。

 たとえば、今月7日にALPS処理前の汚染水が建屋の外に1・5㌧漏れる事故がありましたが(写真右)、東電は15日、「協力企業の作業員(の)…人為的ミスが原因」(16日付京都新聞=共同)と発表しました。

 「協力企業」といえば聞こえがいいですが、「下請け・孫請け企業」のことです。危険な作業を下請け・孫請けに丸投げしている無責任な実態を「協力企業」という言葉で隠ぺいしているのです。

 ALPS処理によって薄まるとはいえ、放射性物質がなくなるわけではありません。海に放出されているのは紛れもない汚染水です。
 政府・東電の“言葉狩り”を跳ね返し、汚染水(あるいは処理汚染水)海洋放出の危険性を告発し続けなければなりません。

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活断層・避難不可―能登地震が証明した原発の危険性

2024年01月18日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 「能登地震 志賀原発北9㌔断層動く 震源と連動か」―17日付京都新聞(共同配信)の見出しです。

「能登半島地震の際、震源となったとみられる能登半島北方沖の活断層と共に、内陸の活断層も動いた可能性が高いことが、日本地理学会災害対策チームの調査で分かった。…現地は北陸電力志賀原発の北9㌔。北陸電力はこの活断層の存在を否定していた

 能登半島地震によって、これまで想定されていなかった(電力会社が否定していた)活断層も動いたとみられる、という調査結果です。原発の危険性が改めて証明されたといえます。

 能登半島地震が示した原発の恐ろしさはこれだけではありません。

 かつて志賀原発(写真左)はトラブルが相次ぎ、金沢地裁から運転差し止めの判決を受けたことがあります(2006年)。その判決を出した井戸謙一元裁判長(現弁護士)は今回の地震を受け朝日新聞のインタビューで、「避難計画は絵に描いた餅」だとしてこう述べています。

「今回、避難計画が『絵に描いた餅』だということが非常によくわかったと思うんですよね。あれだけ道路が寸断され、土砂崩れがあって、そもそも救助隊が入れないのに、どう住民を逃がすのかという話です」

「福島第一原発の事故後は、住民の避難はモニタリングポストの実測値で判断することになったのに、今回は原発の北側で機能しなくなった。また、今の避難計画は5キロ以遠は自宅待機が基本。屋内は被曝を軽減できるからですが、地震で屋根や壁が壊れた建物では被曝を防ぐことができません」(16日付朝日新聞デジタル、写真中も)

 原子力規制委員会の山中伸介委員長は10日の記者会見で、「木造家屋が多いところで(地震による被害を受けて)屋内退避ができない状況が発生したのは事実」とし、対策指針の見直しについて「十分検討したい」と述べました(16日付朝日新聞デジタル)。

 これについても井戸氏はこう指摘します。

「原子力規制委員長は『もう一度、考え直さなきゃいけない』と言っていますが、いろんなところから圧力がかかって、抜本的な見直しができない可能性もあると思っています。今回、規制委や規制基準のあり方も含めて考え直そうという世論が盛り上がれば、規制委もある程度のことはせざるを得なくなるでしょう。(能登半島地震を)良いきっかけにしなければいけないと思います」(同上)

 そもそも東日本大震災の最大の教訓は地震大国日本に原発はあってはならないということでした。今回、志賀原発で事故が起こらなかったのは、たまたま停止中だったことも含め偶然にすぎません。
 日々行われている今回の震災報道で原発問題がほとんど無視されているのはきわめて問題で、メディアの責任放棄も甚だしいと言わねばなりません。

 17日は阪神大震災から29年。東日本大震災からまもなく13年。多くの犠牲を無にしないためにも、原発全廃の世論を強めていかねばなりません。

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汚染水放出に懸念続出、岸田政権のウソがバレた

2023年11月14日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 オセアニアの地域機構・太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議が7日~11日(日本時間、以下同じ)、クック諸島で行われました(写真)。焦点の1つは、東電福島原発核汚染水の海洋放出問題でした。

 結果、11日発表された共同コミュニケに、「太平洋における核汚染の潜在的脅威の重大性に、首脳が強い懸念を持っていることに留意する」と明記されました(12日付共同配信)。「加盟国・地域で反対論が根強いことが浮き彫りになった」(同)のです。

「一連の会議では島しょ国側からモニタリング対象を太平洋諸国に拡大することや、島しょ国が独自のモニタリングを行うために日本に支援を求める意見があった」(同)といいます。

 ところが、日本政府から参加した堀井巌外務副大臣は12日、共同通信の取材に対し、「科学的証拠で判断することが広く浸透したと感じた」と述べ、「関係国の理解が進んだとの認識を示した」(12日付共同配信)のです。牽強付会とはこのことです。

 今回のPIF首脳会議で明らかになったことは、汚染水放出を強行するために岸田政権はウソをつき続けているということです。

 高市早苗科学技術担当相は9月25日、IAEA(国際原子力機関)の総会に出席し、「事実に基づかない発信や突出した輸入規制をとっているのは中国のみだ」と述べました(NHKニュース=写真右)。

 汚染水放出に反対しているのは「中国のみ」と喧伝し、中国に対する「ネガティヴイメージ」に便乗して放出を強行するのが岸田政権の戦術です。しかし、汚染水放出には韓国市民・団体が一貫して反対しているほか、太平洋の島しょ国にも「反対論が根強い」ことが改めて浮き彫りになったのです。

 PIF首脳会議で首脳らが求めた「モニタリング対象を太平洋諸国に拡大すること」や「独自のモニタリングへの支援」はきわめて当然の要求です。それは「支援」ではなく日本政府の義務・責任です。直ちに実行される必要があります。

 東電、岸田政権は汚染水の海洋放出を直ちに中止し、懸念・反対している国々・地域の人々の声を聞き、白紙に戻って協議をやり直さなければなりません。

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「ALPS洗浄で作業員が汚染廃液浴びる」が示すこと

2023年10月27日 | 原発・放射能と政治・社会
   

「福島第一原発で作業員が汚染廃液を浴びる ALPSの配管洗浄で飛散」

 25日深夜、朝日新聞デジタルがこんな見出しのニュースを流しました。記事の概要は次の通り。

< 東京電力は25日、福島第一原発の汚染水から大半の放射性物質を除去する「多核種除去設備(ALPS=アルプス)」の配管を洗浄していた20~40代の男性作業員5人が、配管を洗った廃液を防護服の上から浴びたと発表した。

 このうち4人に体の汚染を確認した。除染したが、うち2人は股間付近や両腕の表面で原発を出る基準濃度(1平方センチあたり4ベクレル)を下回らなかったため病院へ搬送する。

 東電によると、協力企業の作業員5人は汚染水が通る配管に硝酸液を流して洗浄していたところ、廃液をタンクに流すためのホースが抜けて、約100ミリリットルの廃液が飛び散った。うち1人は全面マスクの汚染があり、ベータ線の被曝線量が5ミリシーベルト以上になったことを知らせる線量計のアラームが鳴ったという。>

 短い記事ですが、けっして見過ごすことができない多くの問題を示しています。

 ①ALPSは先端技術のように喧伝されているが、その洗浄という重要工程は手作業で行われていること②その作業は「協力企業」すなわち下請け以下の企業が請け負っていること③原発事故で被曝の被害を受けるのは常に末端作業員であること④今回は「基準濃度」を超える重大な被曝であったため病院へ搬送されたが、被曝は日常茶飯事に起こっていると予想されること、などです。

 総じて、ALPSを通した汚染水の海洋放出の危険性は、放出先の海水の汚染だけでなく、放出以前の段階にもあるということです。

 同時に重大なのは、ほとんどのメディアが今回の重大事故を無視したかきわめて小さな扱いで済ませたことです(写真左・中は25日昼のTBS系ニュース)。NHKに至って は25日、事故を報じるどころか「検査で処理水の安全性が示された」という政府・東電の発表をいつも通り垂れ流しました(写真右)。

 こうしたメディアの実態は、原発事故を軽視する宿痾(政府の原発推進政策への追従)であるとともに、汚染水の海洋放出へのマイナスイメージを避ける政府・東電への忖度と言わざるをえません。

 今回の被曝事故は、ALPSを使った汚染水の海洋放出を直ちにやめ、地下貯蔵など他の方策を検討・実施することの必要性・緊急性をあらためて示しています。

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「汚染水の影響」研究報告書を隠ぺいした韓国政府と日本

2023年10月12日 | 原発・放射能と政治・社会
   

「東京電力が5日に福島第一原発の汚染水の2度目の放出を開始した中、汚染水放出が国民の健康に及ぼす影響に関する研究報告書を疾病管理庁が隠蔽していたことが明らかになった」
 10日、韓国・ハンギョレ新聞(日本語電子版)はこうした書き出しで始まる社説を掲載し、韓国政府をきびしく批判しました。社説はこう続きます。

「研究報告書は、低レベルの放射線にさらされるだけでも長期にわたれば有害である可能性があるため、国民に対して健康影響評価を実施すべきだと強調している。一貫して原発汚染水は安全だと強調してきた大統領室と与党の顔色を伺って政府が意図的にこれを隠したのではないかと疑われる」

 第1報記事(10日付同紙)によれば、同研究は日本政府が汚染水の海洋放出を決めた8カ月後の2021年12月から文在寅政権(当時)の依頼によって開始され、昨年6月に報告書が韓国・疾病庁(尹錫悦政権)に提出されていました。

「報告書には国民健康影響評価と関連し、汚染水放出時に出る物質のそれぞれの総量を把握する必要があり▽国民の水産物摂取流通量の調査を行い▽収集された資料を基に国民1人当たりの放射線累積総量を計算しなければならず▽最低20年以上の長期にわたる追跡調査を通じたビッグデータ研究が必要などの具体的な条件が示されている。また、国内外の様々な文献を検討した結果、福島原発の多核種除去設備(ALPS)の浄化能力が検証されていないため、信頼するのは難しいという意見も含まれている」(10日付ハンギョレ新聞日本語電子版)

 韓国・尹錫悦政権が隠ぺいした研究報告書は、①放出される汚染水に含まれる放射性物質はトリチウムだけでなくすべての物質(62核種)を把握する必要がある②低線量放射線の累積があたえる影響=内部被曝の重大性③長期追跡調査の重要性④「ALPS処理」の不確実性―など、日本の良心的研究者が指摘してきた問題点とほぼ共通しています(9月22日のブログ参照)。

 ハンギョレ新聞社説は、「一貫して原発汚染水は安全だと強調してきた大統領室と与党の顔色を伺って政府が意図的にこれを隠したのではないか」と指摘していますが、言い換えれば、尹錫悦政権が日本の岸田政権との「友好関係」を重視するため日本政府に不都合な報告書を隠ぺいしたということです。

 より深刻なのは日本です。日本政府は昨年6月に同報告書が提出された時点でその内容を把握していたはずですが、完全に無視しました。政府だけではありません。今回ハンギョレ新聞が第1報、社説で相次いで報じたにもかかわらず、日本のメディアは後追い取材すらしようとしていません。

 汚染水放出に対しては韓国では市民団体が繰り返し反対・抗議行動を行っていますが(写真左は5日ソウル・日本大使館前の抗議行動=ハンギョレ新聞より)、日本のメディアはほとんど報道せず、反対しているのは中国政府だけであるかのような印象を与える報道を繰り返しています。

 日本のメディアが韓国市民の反対・抗議を報じないのは、日韓関係を重視して報告書を隠ぺいした日韓両政府と軌を一にするものです。

 尹錫悦政権が戦時強制動員(徴用工)問題でも日本政府と歩調を合わせて「韓日友好関係」を加速させている背景には、日米軍事同盟と韓米軍事同盟を一体化させる米バイデン政権の戦略があります。
 東電原発汚染水放出問題も、日韓米の政治的・軍事的戦略を背景に重大な事実が隠ぺいされていることを見逃すことはできません。

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汚染水放出を「外交(中国)問題」にすり替える常套手段

2023年09月28日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 高市早苗科学技術担当相は25日のIAEA(国際原子力機関)の総会で、「IAEAに加盟しながら事実に基づかない発信や突出した輸入規制をとっているのは中国のみだ」と述べ、福島原発事故汚染水の海洋放出に反対している中国を非難しました(写真左)。

 岸田政権と東電が汚染水海洋放出を強行して24日で1カ月。政府、東電は今月末にも2回目の放出を強行しようとしています。

 この1カ月の特徴は、海洋放出自体の是非についての議論は棚上げし、「反対しているのは中国だけ」としてこれを「外交問題」=「中国問題」にすり替え、肝心の海洋放出は既定事実として強行しようとしていることです。高市氏の発言はその典型です。

 この構図には既視感があるのではないでしょうか。

 そうです、政治家の靖国神社公式参拝問題です。「8・15」や春・秋の例大祭のたびに繰り返される閣僚や国会議員の靖国への参拝や「玉ぐし料」「真榊」の奉納。A級戦犯も合祀している靖国神社への公式参拝は、日本の侵略戦争・植民地支配の責任を否定するもので、絶対に許されることではありません。

 これに反対するのは、日本人の責任です。「靖国公式参拝問題」は日本人の、日本の国内問題です。それを「中国が反対する」という「外交(中国)問題」にしてきた(している)のが自民党政権であり日本のメディアです。 

 汚染水放出問題はこれとまったく同じ構図です。これは自民党政権の常套手段です。
 この常套手段には二重の危険性があります。

 第1に、日常的に醸成されている中国に対するマイナスイメージ=「嫌中感情」を土台に、「反対するのは中国だけだ」と喧伝することによって、汚染水海洋放出や靖国公式参拝に反対しづらい空気がつくられることです。「汚染水」という言葉を使うことすらタブーとされてきています。

 第2に、実際は国内問題、日本人自身の問題であるにもかかわらず、「外交(中国)問題」だとすることによって、日本人が主体的に問題を考える(賛成にせよ反対にせよ)ことを阻害していることです。
 これは主権者である日本の市民が国政の重大問題(汚染水問題、靖国問題)を自分事として考えることを妨害する国家権力の巧妙な統治手法です。

 汚染水海洋放出問題で今必要なことは、海洋放出以外の方法の検討です。

 原子力工学の専門家・今中哲二氏(京都大複合原子力科学研究所研究員)はこう主張しています。

「海洋放出の話が出た当初から私は…放射性廃水は大きなタンクで貯留するか固定化するかして、東電の責任で長期保管すべきだと言ってきた。…第1原発敷地内でもタンクの増設はまだまだ可能だ。政府・東電がやるべきことは、まずは海洋放出を中止して関係者の意見を聞き、同時に根本的な地下水流入防止対策を進めることだ」(8月24日付沖縄タイムス=共同)

 「中国だけが反対」(高市氏)といって国内問題を外交(中国)問題にすり替えることによって、今中氏が主張するような代替案の議論は封殺され、日本人の主権者としての自覚・責任感が奪われていることを銘記する必要があります。

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