アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

安倍晋三版「ネット・アーミー」と防衛省支配

2022年07月05日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 防衛省の島田和久事務次官が1日、退任しました(写真中)。島田氏は2012年12月の第2次安倍晋三政権発足から19年7月まで安倍首相(当時)の秘書官を務め、20年8月から防衛事務次官に昇格しました。

 「次官就任後は防衛費の国内総生産(GDP)比2%を求める旗振り役」(6月18日の産経新聞デジタル)を務めるなど、安倍氏の軍拡分野のブレーンとなってきました。岸田政権でも年末に発表する「国家安全保障戦略(NSS)」など「戦略3文書」改定のとりまとめを主導していました。

 その島田氏の退任。「岸信夫防衛相は留任を求めたが、岸田文雄首相ら官邸側が認めなかった」(2日付共同配信)といわれています。自民党内でどういう綱引きがあったかは知りませんが、問題は島田氏と安倍氏、政権との関係はまだ終わっていないことです。

 島田氏の退任が閣議で承認されたとき、安倍氏は周囲に、「正直言って、あり得ない判断だ。功労者に対してそんなやり方では」と言って「憤った」(同産経新聞デジタル)といいます。

 島田氏は1日、事務次官退任と同時に「防衛相政策参与」に就任しました。4年間空白だったポストですが、安倍氏の実弟・岸防衛相が大臣権限で任命したものです。「岸氏は引き続き島田氏に戦略3文書改定に関与させたい考え」(同産経新聞デジタル)です。

 岸、島田両氏は、安倍氏が政府の軍事政策を支配するために防衛省に送り込んだ手駒です。「島田問題」は安倍氏の防衛省支配をあぶり出しました。

 あぶり出されたのはそれだけではありませんでした。

「島田氏は防衛費増額の旗振り役として積極的に行動していた。昨年には防衛予算の大幅増額をめざし、防衛省がユーチューバーらに「厳しい安全保障環境」を説明する計画を省内に指示していた」(6月17日の朝日新聞デジタル)

 防衛省がユーチューバーらに「厳しい安全保障環境」を説明し、軍事費大幅増額の世論形成を図る計画を島田氏が指示していたというのです。これが安倍氏の指示、あるいは安倍氏の意向を忖度したものであるのは明らかです。

 想起されるのは、ウクライナ戦争でゼレンスキー政権が行っている「インターネット・アーミー」です。SNS上の「兵士」を公募し、何を発信するか毎日細かく指示し、情報戦を有利に展開しようとするもので、インターネットを使って「市民」を広く戦争に巻き込む戦術です(4月18日のブログ参照)。

 島田氏がユーチューバーらを使って軍事費大幅拡大の世論形成を図ったのは、この戦術と同じ、いわば安倍晋三版「インターネット・アーミー」といえるでしょう。
 
 ウクライナ戦争を機に、軍事か外交か、軍拡か軍縮か、世界が大きな岐路に立っているとき、日本はひたすら日米軍事同盟強化・大軍拡の道を突き進もうとしています。その背景に安倍氏の防衛省支配があり、さらに、インターネットを駆使して「市民」を大軍拡路線に引き込もうとしている策動があります。年末の「戦略3文書」改定へ向けても、絶対に軽視できません。

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NATO会議初参加―軍事同盟拡大の画期

2022年04月09日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

     
 林芳正外相は7日(日本時間)、ベルギーで行われたNATO(北大西洋条約機構)外相会議に「パートナー国」として出席しました。日本政府がNATOの会議に出席したのは初めてです。

 これはたんなる「外交」の一環ではありません。日本の外交史において、さらに戦後史において、大きな分岐点となるものです。NATOの会議に参加することは、日米安保条約によるアメリカとの軍事同盟が欧州の軍事同盟と一体化し、地球規模に拡大することに他ならないからです。

 NATO外相会議に招かれたウクライナのクレバ外相は、「私のテーマは3つある。兵器、兵器、兵器だ」と述べ、さらなる武器供与を強く要求しました。

 これに対しNATOのストルデンベルク事務総長は、対戦車兵器や防空システムを含む幅広い兵器を供給する意向を示しました。

 こうしたウクライナの兵器要求、NATOの兵器供与が戦争の火に油を注ぎ、犠牲をさらに拡大し、停戦を遅らせることは明らかです。そのNATOの会議に日本政府の外相が出席していたことは重大です。

 ウクライナ戦争の要因の1つが、「冷戦」終結時の約束を反故にしたNATOの東方拡大にあることは周知の事実です。そのNATOの会議に参画することは、日本がウクライナ戦争の一方の陣営に公然と加わることを意味します。日本はウクライナ戦争の当事国の1つになったと言っても過言ではないでしょう。

 日本、韓国、オーストラリアが「パートナー国」として出席したことについて、ストルデンベルク事務総長は、「ロシアのウクライナ軍事侵攻は欧州の安全保障に深くかかわるだけでなく、国際秩序全体を揺るがしている。パートナー国の参加は結束のしるしだ」と述べました。

 林外相は、「欧州とインド太平洋地域の安全保障は切り分けることができない」と、軍事同盟を一体化させる考えを示しました。ここにNATO外相会議参加の意味があります。

 ウクライナ戦争の最大の教訓は、軍事同盟こそが戦争を引き起こし、市民を犠牲にするということです。憲法9条を持つ日本は、憲法違反の日米安保条約の軍事同盟を廃棄し、戦争放棄・非戦を貫かねばなりません。
 岸田政権によるNATOへの史上初の参画は、それに真っ向から反するものです。


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「NATOは違法な組織」国際民主法律家協会が「声明」

2022年03月22日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

     
 ジャーナリストの乗松聡子氏は「ロシア「悪魔視」に疑問」と題した琉球新報掲載の論稿(17日付「乗松聡子の眼」)で、「この戦争を止めるためにも、西側だけに偏らない情報収集・発信をすべき」と述べています。きわめて重要な指摘です。

 この中で乗松さんは、「50カ国以上の法律家が参加する「国際民主法律家協会(IADL)」の声明では、ロシア軍の行動を「違法な侵略である」と非難すると同時に、NATOを「国連憲章に違反する違法な組織」とし、この侵攻を招いた西側軍事同盟の責任を厳しく問うている」と紹介しています。

 IADLは2月26日に「すべての当事者に軍事行動を直ちに停止するよう要求する」とする「声明」を出しました。そして3月8日、それに続く第2弾の「声明」を発表しました。その「声明」全文から、特に注目される記述を抜粋します(太字も原文)。

< 軍事活動の停止につながる即時停戦

 ロシアは、即時かつ永続的な停戦に同意し、ウクライナからの軍の撤退を開始し、その間に逃亡者のための人道的回廊を作り、人道支援を提供すべきである。 IADLは、ウクライナから逃れてきたアフリカや南アジア出身の人たちに対する人種差別に反対する。

 同時に、NATOは、NATOの直接介入につながりかねない行動を含め、その挑発を直ちに中止しなければならない。ロシアとの国境にあるNATO諸国でのさらなる軍事力増強は挑発的である。この増強には、ポーランドに建設中の新しい米軍基地が含まれ、ロシア国境からわずか100マイルのところに米国の核武装ミサイルを配備する可能性がある。 この基地は開設されるべきではない。

 西側による挑発の停止

 米国とNATOは、10年以上にわたってロシア連邦に対して極めて挑発的な振る舞いを行ってきた。 2014年、米国政府は、著しい超国家主義者やネオナチ勢力を含むマイダン運動を支援し、ウクライナの内政に大きく関与した。

 ソ連と東欧の社会主義諸国が崩壊したとき、米国とNATOは、旧ソ連とワルシャワ条約機構諸国をNATOに統合せず、非同盟・中立の地位に置くことを明確に約束した。 その公約の拘束力を否定しようとする無責任な声がある。しかし、国際法、特に国連憲章は、当時約束されたことを正確に要求しているのである。

 NATOは、国連憲章に違反する違法な組織である。国連憲章は、紛争の平和的解決において国連を支援することができる地域連合を認めているにすぎない。NATOはそのような組織ではない。 NATOは軍事同盟であり、その軍隊はセルビア、イラク、アフガニスタン、リビア、シリアなど多くの事例で攻撃的な目的のために使用されてきた。他国に対する武力行使は、武力攻撃に対する自衛の場合、または安全保障理事会の承認がある場合を除き、禁止されている。

 IADLがNATO軍事同盟を国連憲章の下で違法な編成と見なしているように、IADLは、米国やその他の外国の軍事基地が世界中に拡大することを、憲章の国際紛争における武力行使や武力行使の脅威の禁止に違反する挑発的脅威として一貫して反対してきた。

 世界的な平和交渉では、紛争の根本原因に対処し、中央ヨーロッパに平和地帯を作る必要がある

 この紛争の根本原因に対処し、NATOによるすべての挑発的な行動を阻止するだけでなく、逆転させない限り、中欧に永続的な平和はありえない。国連憲章の文言と精神は、ソ連とヨーロッパの旧社会主義諸国が崩壊した後、この地域全体を非同盟・中立・非武装の平和地帯にすることを求めている。

 一方的な強制措置(制裁)を課すことは、外交ではない

 国連憲章は、加盟国が憲章を遵守し、攻撃的な行動をやめるよう圧力をかける方法として、安全保障理事会に加盟国に対する経済的強制措置を課す権限を与えている。これらの措置は、安全保障理事会だけが合法的に課すことができる。憲章は、加盟国がこのような強制的な措置を一方的に課すことを認めていない。>

 日本はアメリカをはじめとする「西側」が発する情報・論評で溢れています。そんな中、IADLの「声明」が、「NATOは直ちに挑発を中止しなければならない」「NATOは国連憲章に違反する違法な組織」「一方的な経済制裁は外交ではない」と断じたことはたいへん注目されます(写真中はNATO軍の軍事訓練、右はロシアを非難するストルデンベルクNATO事務総長)。

 一言付け加えます。

 NATOが「国連憲章に違反する違法な組織である」と同様に、日米安保条約による日米軍事同盟も国連憲章違反です。日米安保=軍事同盟はさらに日本国憲法にも違反しています。二重に違法です。日米軍事同盟をはじめすべての軍事同盟を廃止することが、かつてなく重要になっています。

 国際民主法律家協会(IADL) 1946年に設立された非政府組織。国際連合経済社会理事会(エコソック)と国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)での協議資格を有している。日本からは日本国際法律家協会が加入している。刑事法学者・新倉修が役員を務める。(ウィキペディアより)

 日本国際法律家協会 1955年にインド・カルカッタで開催されたアジア法律家会議、1956年にベルギー・ブリュッセルで開催されたIADL第6回大会に参加した日本代表による活動を母体に、1957年4月に設立。学者・弁護士はじめ、国際法、国際問題に関心を持つ人やNGO、NPOの活動を通じて人権問題に取り組んでいる人などが集い、活動している(同協会HPより)

 IADLの「声明」は日本国際法律家協会のHPに掲載されています。また、乗松氏が主宰する「ピース・フィロソフィー・センター」のサイトにも転載されています。http://peacephilosophy.blogspot.com/2022/03/statements-by-iadl-international.html


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ゼレンスキー大統領の「国会演説」は賛成できない

2022年03月21日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

    

 ウクライナのゼレンスキー大統領が打診していた日本の国会でのリモート演説について、自民党と立憲民主党の国会対策委員長が協議した結果(2党だけの密室協議は問題)、23日に国会内の会議室で行われることになったと報じられています(18日の朝日新聞デジタル)。22日の議院運営委員会理事会で正式に決定する見通しです。

 ゼレンスキー氏の国会演説は、イギリス(8日)、カナダ(15日)、アメリカ(16日)に続くものです。

 議運委理事会では与野党すべての賛成で決定するとみられます(れいわ新選組は理事会メンバーではない)。しかし、ゼレンスキー氏の国会演説には大きな問題があり、到底賛成するわけにはいきません。

 第1に、ウクライナは戦争当事国であり、その大統領の演説が国権の最高機関である国会で行われることは、日本が戦争当事国の一方の側に立つことを意味します。

 「ウクライナ戦争」の実態(真相)、背景、評価は今後明らかにされる必要がありますが、ロシアだけに責任があるものでないことは明らかです。

 たとえば英ガーディアン紙(2月28日付)は、「多くがNATO拡大は戦争になると警告した。それが無視された。我々は今米国の傲慢さの対価を払っている」とのタイトルで、「ロシアのウクライナ攻撃は侵略行為」だと断じる一方、「NATOの傲慢な聞く耳持たぬとの対ロシア政策が同等の責任を負う」とアメリカ・NATO(北大西洋条約機構)の責任を指摘しています(外交評論家・孫崎亨氏の3月14日農業協同新聞掲載論稿より)。

 そのアメリカ・NATO側のウクライナ大統領だけが国会で演説することは、明らかな戦争加担です。

 第2に、ゼレンスキー氏が「西側」諸国の議会で演説する目的です。

「ゼレンスキー氏が各国議会に向けた演説に力を入れる背景には、欧米から一層強力な軍事支援を引き出したい狙いがある」(17日の朝日新聞デジタル)のです。

 イギリス議会での演説(写真中)後、ジョンソン首相は「英国と同盟国は、ウクライナが必要な武器の供与を推進する」と表明しました。カナダでの演説(写真右)後には、最大野党・保守党の代表が「同盟国と一緒にウクライナの領空の安全確保に向けてさらに努力」すると述べました。そして米議会での演説(写真左)後には、バイデン大統領が約10億㌦(1180億円)の新たな軍事支援を表明しました。ゼレンスキー氏の思惑通りです。

 ゼレンスキー氏が日本の国会でも兵器提供を含むさらなる支援を求めるのは確実です。岸田政権はすでに2度にわたりウクライナへ兵器(防弾チョッキ)などを提供していますが、ゼレンスキー氏の演説が行われれば、それに呼応する形で、イギリス、カナダ、アメリカとともに、一層軍事支援を強化することは目に見えています。

 「ウクライナ戦争」を一刻も早く終結させることができるのは平和的外交だけです。憲法9条を持つ日本は非戦の立場から平和外交に力を尽くす必要があります。ゼレンスキー氏の国会演説を認めることがそれに逆行することは明らかです。


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「非武装中立」こそ憲法9条の道

2022年03月19日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

 「中立化」と日本は無縁だと思う人が少なくないかもしれませんが、実はそうではありませんでした。以下、礒村英司著『戦争する国にしないための中立国入門』(平凡社新書2016年)を参考に振り返ってみます。

 敗戦直後、外務省に「平和条約問題研究幹事会」が設置され、1946年に第1次研究報告が提出されました。その中で、「永世中立を希望すること、極東委員会構成国(11カ国)による集団的安全保障機構を設置すること」が提案されました。

 一方、連合軍最高司令官・ダグラス・マッカーサーは1949年、英紙デイリー・メールの会見で、戦争が起こった場合にアメリカが日本に望むことは、中立を維持することであるとして、こう述べました。
日本は太平洋のスイスとなるべきである

 これが朝日新聞で報道されると、永世中立国として長年にわたり戦争を回避してきたスイスのイメージが、敗戦直後の国民の反戦感情や九条の戦争放棄条項と重なりあい、中立化は広く支持されるようになりました。

 「日本の安全保障の方式」を問う新聞の世論調査では、「永世中立」を支持する人が、朝日新聞調査(1949・12・15)39%、毎日新聞(1949・11・21)48%、読売新聞(1949・8・18)73%でいずれもトップでした。

 当時、講和条約のあり方について、日本が交戦状態にあった55カ国との全面講和か、アメリカ中心の「西側」44カ国との片面(単独)講和かで国論が二分されました。そんな中で学者・研究者から永世中立論がさかんに発表されました。

 たとえば、法哲学者・恒藤恭、政治学者・丸山真男らの「平和問題談話会」は1950年、「講和問題は全面講和以外にない」とし、「講和後は中立不可侵とあわせて国連加盟を希望する」「いかなる国に対しても軍事基地を与えることは絶対に反対する」という方針を示しました。

 しかし、サンフランシスコ講和条約(1951年9月8日調印)は片面講和となり、同時に日米安保条約(軍事同盟)が締結され、「中立化」論は急速に衰えていきました。

 それでも「永世中立論」が消えたわけではありません。中でも注目されるのは、憲法学者・田畑忍(同志社大名誉教授)の主張です。田畑忍(1902~94)は、末川博、羽仁説子らと憲法会議を結成、土井たか子(元衆院議長)の師だったことでも知られています。礒村氏の前掲書の記述から引用します。

「憲法学者として1950年代から本格的に日本の永世中立論を主張しはじめた田畑忍は、1981年、『非戦・永久中立論』を著し、非戦力・非戦の中立国を提唱した。
 田畑によれば、永久で絶対の戦争放棄のなかには、当然に永世中立の理念が入っていなければならず、したがって、政府や国会は憲法九条にしたがって永世中立を宣言し、各国に承認を求めなければならない。憲法九条を厳守する限り、九条はそれだけで日本の大きな自衛力となるのであり、危険な戦争的自衛権を放棄して、武力・戦力・戦争によらない安全な平和的自衛権を確立するための条件として、永世中立を宣言し、非戦力・非戦の中立国となる必要性を説く。
 田畑の永世中立論の特徴は、非武装永世中立が憲法九条の要請であると指摘した点にある」

「ウクライナ戦争」に便乗して政府・自民党が、軍備拡張、日米軍事同盟強化、非核三原則骨抜き、憲法改悪を強行しようとしている今こそ、田畑忍のこの理論・主張が顧みられ、真剣に検討される必要があるのではないでしょうか。


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「中立化」はけっして悪いことではない

2022年03月17日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

     

 「ウクライナ戦争」の停戦交渉でロシアがウクライナの「中立化」を要求していることから、「中立化」に対するマイナスイメージが醸成されているように思われます。
 ロシアが要求している「中立」の具体的内容、さらに交渉の真意など、不明なことが多いので、ここでは一般論として言います。それは、国が「中立化」政策をとって「中立国」になるのはけっして悪いことではない、むしろ積極的に追求されるべきだということです。
 以下、礒村英司(福岡国際大准教授)著『戦争する国にしないための中立国入門』(平凡社新書2016年)をテキストに考えます。

 そもそも「中立」とは、「国家間の戦争の発生により、戦争に参加することを望まない国家が選択する地位」です。

 「中立」には、一時的な「戦時中立」と、平時から中立政策を実践する「永世中立国」があります。さらに「永世中立国」には、法的に中立政策を義務づけられる「国際法上の永世中立国」と、自国の意思で中立を追求する自由をもつ「中立主義国」の2つのタイプがあります。

 「国際法上の永世中立国」は、スイス、オーストリア、コスタリカ、リヒテンシュタイン、バチカン、マルタ、カンボジア、トルクメニスタン。「中立主義国」は、スウェーデン、フィンランド、アイルランドです(写真右はヨーロッパの中立国。薄い色はかつての中立国)

 礒村氏はこう指摘します。

集団的自衛権を前提とする同盟政策の対極にある安全保障政策ともいえるものに、ヨーロッパの小国が古くから採用してきた中立化政策がある。中立政策をとる国家(中立国)は、戦争に巻き込まれることを避けるべく、戦時においては交戦国のいずれにも与しない公平な態度をとり、平時においては戦時の中立を危うくしないようにするため、軍事同盟に加入しないといった方針を掲げる。したがってこのような政策をとる中立国は、軍事同盟と結びつく集団的自衛権の行使を控えることで、自国の安全保障を確保しようとするのである」

 集団的自衛権は憲法9条が禁じています。しかし安倍晋三政権は、「戦争法」(安保法制=2015年9月30日公布)でその行使に道を開きました。集団的自衛権は軍事同盟の前提です。その軍事同盟政策の対極にあるのが「中立化政策」なのです。

 さらに注目されるのは、礒村氏の次の指摘です。

「冷戦終結以降、ヨーロッパでは侵略的意図で戦争が発生することはもはやないとの立場が支配的となり、連帯と協力の名のもと中立を放棄する姿勢をみせる中立国も現れはじめた」

 これが礒村氏が前掲書を脱稿した2016年11月の状況です。いま、「ロシアのウクライナ侵攻」で「新冷戦」が始まったという論調とともに、ヨーロッパでは「戦争」の恐怖が広がっています。

 そうであるなら、「戦争が発生することはない」と思われて放棄されようとしていた「中立化」政策が、いまこそあらためて見直されるべきではないでしょうか。その意味・価値が再評価されてしかるべきではないでしょうか。

 ところが、今回の事態でスウェーデン、フィンランドはウクライナへの武器供与に踏み切りました。これは「中立化」に反し、「中立」の歴史に逆行するものと言わねばなりません。両国の方針転換はなぜなのか、背景に何があるのか、究明される必要があります(写真中はウクライナへの武器供与を表明するフィンランドのマリン首相)。

 そして私たち日本人にとって何よりも重要なのは、「中立化」政策はけっしてひとごと、他国のことではないということです。

 ウクライナの事態に乗じて武器供与を強行し、憲法改悪を図ろうとしている岸田政権・自民党、それを裏で操っている安倍晋三元首相の策動をみるにつけ、日本こそ「中立化」の意味・意義を正面から考える必要があると痛感します。この問題について、後日あらためて検討します。


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米欧日の武器供与は「ウクライナ戦争」の火に油

2022年03月15日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

    

 1日も早い停戦を願う世界の人々の願いもむなしく、「ウクライナ戦争」は終結の様相を見せていません。その大きな責任が、軍事侵攻したロシアにあることは明白です。
 同時に、アメリカはじめNATO加盟国およびその周辺の欧州諸国、そして日本の岸田文雄政権の行動も見過ごせません。なぜなら、これらの国が行っているウクライナへの武器供与・軍事支援は戦争の火に油を注ぐものだからです。

 バイデン米政権は先月26日、最大3億5000万㌦の軍事支援を追加すると発表しました。これでバイデン政権のウクライナへの軍事支援は12億㌦に達します。ブリンケン国務長官は13日、「アメリカはウクライナの主権・領土保全に関与し、必要な支援を続けていく」と表明しました。

 欧州各国は、▶EU=武器供与のために5億ユーロ(約650億円)拠出▶ドイツ=携帯型地対空ミサイル「スティンガー」500発・対戦車兵器1000基▶ノルウェー=対戦車兵器2000基▶スウェーデン=対戦車兵器5000基・防弾チョッキ5000個▶フィンランド=対戦車兵器1500基・ライフル銃2500丁・弾丸15万発など。
 NATO非加盟国のスウェーデン、フィンランドはこれまでの原則を破っての武器供与です。

 欧州以外では、▶カナダ=対戦車兵器100基・ロケット弾2000発▶オーストラリア=ミサイルや弾丸など5000万米ドル相当の軍事物資。(以上、朝日新聞デジタル、共同配信記事から)

 そして日本は8日、「防衛装備移転三原則」を恣意的に解釈して防弾チョッキ、ヘルメットなどを航空自衛隊小牧基地(愛知県)から空輸(写真中)。さらに10日、第2弾を航空自衛隊美保基地(鳥取県)から輸送しました。「防弾チョッキは…防衛装備品、つまり武器」(9日付琉球新報=共同)です。

 ちなみにNHKは、岸田政権が防弾チョッキ・ヘルメットなどの第2弾を輸送した3日後の13日、ウクライナでは「防弾チョッキ・ヘルメットが不足している」というニュースを流し、岸田政権を“援護”しました(写真右)。

 ウクライナの「徹底抗戦」は「国を守る」という意味合いがありますが(その評価は別として)、米欧日にとっての「ウクライナ戦争」は意味がまるで違います。それはかつて兄弟国といわれたいわゆる「東側」の国同士の戦争です。ロシア、ウクライナ双方にどれほど犠牲が出ても、米欧日が直接打撃を受けることはありません(エネルギーや食糧などロシアとの貿易・経済活動には当然影響しますが)。

 それどころか日本の政府・自民党は、「ウクライナ戦争」を奇貨とするかのように、この事態に乗じていっそうの軍備拡張、日米軍事同盟強化、そして「非核三原則」の骨抜きまで図ろうとしています。

 今必要なのは、戦闘による犠牲者をこれ以上出さず、外交によって一刻も早く戦争を終結させることです。ウクライナへの武器供与は戦争を長引かせ、戦禍を拡大するだけです。
 米欧日各国はウクライナへの武器供与・軍事支援を直ちに停止すべきです。


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「ウクライナ戦争」と石垣市長選の教訓

2022年03月03日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

    

 ロシアのウクライナ軍事侵攻から3日後の2月27日に投開票が行われた沖縄・石垣市長選。自衛隊配備を容認する現職の中山義隆氏(自民、公明推薦)が、「オール沖縄」が支持する前市議の砥板芳行氏を破り、再選されました。

 この選挙の最大の問題は、「陸上自衛隊の配備計画が進む石垣市は、辺野古の新基地建設問題を抱える名護市と同様、国の防衛政策の最前線となっている」にもかかわらず、「防衛政策が選挙の争点として浮上することはなかった」(2月28日付沖縄タイムス社説)ことです(写真中は配備予定地)。

 なぜでしょうか。自衛隊配備賛成を明言する中山氏に対し、砥板氏の公約は、「市長提案で住民投票を実施し、結果を尊重する」(2月22日付琉球新報)というだけで、「配備反対」を明言しなかったからです。

 そもそも砥板氏は、「自他共に認める自衛隊石垣配備の推進論者」(1月14日付琉球新報)です。「市議会野党に一部保守勢力も擁立に加わった砥板芳行氏だが…中山氏の側近として陸上自衛隊配備計画を推進してきた従来の立場に対し、革新支持層の反発は大きかった」(2月28日付琉球新報)のです。

 「オール沖縄」陣営はなぜこのような人物を重要な市長選挙の候補者に擁立したのでしょうか。

 日本共産党の井上美智子石垣市議は、党内にも砥板氏に反対の声があるにもかかわらず擁立する理由について、4年前の同市長選を引き合いに、「革新が一つになっても勝てなかった。配備反対を唱えても厳しい。…「反中山」でまとまるしかない」(1月13日付沖縄タイムス)と語っていました。政策よりも「保守票」の取り込みが重要という数合わせです。

 今回の石垣市長選の最大の教訓は、政策よりも数合わせを優先した選挙共闘では、重大な問題を争点化して有権者に選択を求めることができないということです。

 問題は、この石垣市長選の誤りが、きたる参議院選挙でも繰り返される危険性が大きいことです。

 日本共産党は1月28日に発表した「あなたの「?」におこたえします」と題したリーフレット(写真右)で、「野党共闘」には「共通政策」「政権合意」「選挙協力」の「3条件」が必要だとし、「なかでも、「政権合意」は不可欠です」と強調したうえで、こう記しています。
安保条約や自衛隊など、他の野党と意見のちがう問題を政権には持ち込みません

 なんらかの「政権合意」を伴う「野党共闘」で「選挙協力」が行われれば、「安保条約や自衛隊など」野党間で意見が違う問題は持ち込まない、すなわち選挙で争点にすることはしない、ということです。

 それはすでに昨年の衆院選挙で実践されていました。安保条約を積極的に支持する立憲民主党との「共闘」によって、共産党が選挙で「日米安保廃棄」を訴えることはありませんでした。

 石垣市長選の結果を受けて沖縄の県政与党(「オール沖縄」)幹部は、「ロシアのウクライナ侵攻で、きな臭さは増す。陸自配備是非の議論はより重要度が増した」(1日付沖縄タイムス)と述べています。

 その通りです。「ウクライナ戦争」は1日も早い停戦が求められていますが、いずれにしても参院選では「安全保障問題」が大きな争点になることは間違いありません。

 その際重要なのは、日米安保条約という軍事同盟がいかに平和に逆行しているかを明らかにし、日本が対米従属の戦争国家になることを食い止めるために、「日米安保条約廃棄」を正面から訴えることです。

 「ウクライナ戦争」を受けた重要な参院選挙で、政策よりも数合わせを優先して自衛隊配備問題を争点化しなかった石垣市長選の誤りが繰り返されることがあってはなりません。


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ウクライナ情勢・「軍事力・同盟強化」は平和解決に逆行

2022年02月28日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

    

 「ウクライナ戦争」の早期停戦が求められる中、林芳正外相とブリンケン米国務長官は26日電話で会談し、「両氏は「日米同盟の抑止力、対処力強化が不可欠だ」との認識を確認」(27日付琉球新報=共同配信)しました。

 「日米同盟の対処力強化」とは日米の軍事力強化のことで、ロシアの侵攻に対し、日米同盟すなわち日米安保条約に基づく軍事同盟の軍事力強化で対抗しようとするものです。これは、事態の平和的解決に逆行する本末転倒の主張と言わねばなりません。

 なぜなら、「ウクライナ戦争は、「新冷戦の序幕」と呼んでもおかしくない性質を帯びている。この戦争は、米国とロシアという二つの強大国の間の勢力圏争い」(26日付ハンギョレ新聞日本語電子版)であり、「日米同盟の強化」はその「勢力圏争い」を激化させることにほかならないからです。

 そもそも、「核抑止力」論が空論であるように、「軍事同盟抑止力」論も、軍拡・覇権競争を覆い隠すレトリックです。今回のロシアの軍事侵攻は、逆にそのことを証明したのではないでしょうか。

 見過ごせないのは、今回の事態で軍事力・軍事同盟強化を図ろうとする論調が、日米両政府だけでなく、日本の比較的「リベラル」とみられているメディアにもみられることです。

 朝日新聞は25日の社説で、「市民の悲劇を最小限にするため、北大西洋条約機構(NATO)による緊急対応も整えねばなるまい」と主張しています。「NATOによる緊急対応」とは、軍事的対応にほかならないでしょう。

 毎日新聞は同じく25日の社説で、「NATOに加盟する東欧やバルト3国ではロシア脅威論が高まっている。防衛体制を一段と強化することが求められている」と述べています。「防衛体制」すなわち軍備を強化せよというのです。

 一方、両紙の社説は、「列強国が力で覇を競う旧時代に戻ってはならない」(「朝日」)、「武力によって勢力を拡大しようとする風潮が広がると、民主主義は脆弱になる」(「毎日」)とも言っています。こうした言辞は、軍事的対応、軍事力強化の進言と矛盾しています。この矛盾は、両紙が日米安保条約=日米軍事同盟を支持する立場であることと無関係ではありません。

 日本共産党の志位和夫委員長は、25日の新宿での街頭演説で、「主権の尊重」「領土の保全」「武力行使の禁止」を義務付けた「国連憲章」の遵守とともに、「どんな国であれ覇権主義を許さず、平和の国際秩序を築く」ことを強調しました(26日付しんぶん赤旗)。

 NATO、日米安保条約は、いうまでもなく「武力行使」を前提にしたアメリカの覇権主義に基づく軍事同盟です。
 ロシアの軍事侵攻を批判し、武力行使の一刻も早い中止を要求するのは当然です。同時に、この事態に乗じて軍事力・軍事同盟の強化を図ろうとしている日米両政府にも批判を向ける必要があります。
 それが「どんな国であれ覇権主義を許さない」ということではないでしょうか。


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ウクライナ情勢・ロシアだけが悪いのか

2022年02月26日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

     

 ロシアのウクライナへの「軍事侵攻」はもちろん許されるものではありません。しかし、この事態の責任はロシアだけにあるのではありません。日本のメディアは日米政府の側に立って一方的にロシアを非難する論調が目立ちますが、それでは問題の本質を見失います。

 プーチン大統領は「特殊軍事作戦」を宣言した24日のテレビ演説で、こう述べました。

「ロシアの安全保障をめぐる要求に北大西洋条約機構(NATO)は冷笑と偽りで応え、我々の国境に迫っている。…欧米は、冷戦に勝利した絶対的な優位性からくる陶酔に陥り、自らに有利な決定だけを推し進めてきた。…NATOは(これまで)1インチも東に拡大しないと約束し、我々をだました。こうした行為は国際関係の原則のみならず、道徳にも反している」(24日の朝日新聞デジタル)

 プーチン大統領は一貫してウクライナがNATO加盟してNATOが「東に拡大しない」ことを求めてきましたが、アメリカなどはそれを拒否してきました。それが今回の事態の根本的誘因であることは周知の事実です。

 このことをどうみるか。韓国のハンギョレ新聞(日本語電子版)に注目される論稿がありました。寄稿したのはソ・ジェジョン国際基督教大学アーツ・サイエンス学科教授です。

< ロシアの軍事力がウクライナを圧倒して余りあることは、すべての人が知っている構造的暴力だ。ロシアの国防費だけを見ても、ウクライナの10倍を超える。ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)という軍事同盟に加入するという「夢」をみる理由の一つでもある。

 さらに、視野を全世界的に拡大すると、より大きな構造的暴力がある。米国とNATOの軍事力は、ロシアを圧倒して余りある。米国の国防費はロシアの12倍を超える。NATO加盟国のうち、英国、ドイツ、フランスの国防費だけを合わせても、ロシアの3倍に近い。ロシアにはそれでも頼れる核兵器があるが、これを無力化できるミサイル防衛システムがポーランドとルーマニアに構築されており、モスクワを数分以内に攻撃可能な中距離ミサイルがロシアの近隣に配備されようとしている。ロシアは欧州の「ウクライナ」だ。

 そういう背景のもと、プーチンは「現状」を揺さぶっているのだ。…しかし、まだ米国には「現状」を変えるつもりはない。現在の構造は米国が多くの資源を投資して構築したものであり、そのような理由があるものだ。いまだに力で現状を維持しようとしているのだ。…ロシアのウクライナ侵攻の可能性を浮上させればさせるほど、ロシアの構造的暴力はスポットに照らされ、米国の構造的暴力はその影に隠れる。>(22日付ハンギョレ新聞)

 日本のメディアの中では、琉球新報(25日付)に掲載された金成浩・琉球大教授の談話が注目されます。

< ウクライナでのロシアの軍事行動の背景にはNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大と、ミサイル防衛網の整備がある。東アジアでも日米がミサイル防衛網整備を進めており、沖縄も関連している。…ウクライナがNATOに加盟してミサイルが配備されれば、ロシアの首都・モスクワに短時間でミサイルが到着する。ロシアは、ウクライナのNATO加盟を安全保障上の脅威と認識している。(中略)

 地政学を根拠にする大国間政治は、そのしわ寄せが周辺の弱い地域に出てくる。東京では地政学的な視点でものごとを見がちだが、沖縄からは軍事力強化反対の声を上げていく必要があろう。>(25日付琉球新報)

 ソ・ジェジョン教授が指摘する「構造的暴力」、金成浩教授が言う「地政学的大国間政治」とは、この場合、米国、ロシアをはじめとする大国の軍拡・軍事主義、NATOという軍事同盟(軍事ブロック)を指すといえるでしょう。

 今日のウクライナ情勢の根底にあるのは、大国間の軍事力・軍事同盟をめぐる駆け引きです。その責任はロシアだけでなく、アメリカ・NATO加盟諸国も同罪です。
 そして、日本は同じく日米安保条約という軍事同盟によってアメリカに追随しているのです。

 「軍事力強化反対」、そして「軍事同盟反対」の声を上げていかねばならないのは、沖縄だけではありません。


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