アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

衆院3補選・過去最低投票率は何を示すか

2024年04月30日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 自民党の全敗となった3つの衆院補選(28日投開票、島根1区、東京15区、長崎3区)。最も注目すべきは投票率です。
 島根54・62%(前回比-6・61㌽)、東京40・70%(-18・03㌽)、長崎35・45%(-25・48㌽)、いずれも過去最低です。これは何を示しているでしょうか。

 自民党支持層のかなりが棄権したという見方はできるでしょう。「「政治とカネ」問題が直撃し、国民の不信がうずまく中、投票率は低迷」(29日付京都新聞=共同)という側面は確かにあるでしょう。

 しかし、最低投票率の理由はそれだけでしょうか。

 「政治とカネ」が重要な問題であることは言うまでもありません。しかし、それは果たしていま選挙で問うべき最大の問題(争点)でしょうか?

 この半世紀の日本政治を振りかえれば、ロッキード疑獄、リクルート事件はじめ数々の「政治とカネ」の問題がありました。総理大臣経験者(田中角栄)が逮捕もされました。それらはアメリカや大企業も絡んでいる点で今回の裏金よりさらに根源的な問題でした。そのたびに、自民党は直後の選挙で大敗しました。

 しかしそれで日本の政治は変わったでしょうか?「政権交代」による自社さ政権(1993年8月~96年1月)、民主党政権(2009年9月~12年12月)でいったい何が変わった(良くなった)でしょうか?

 日本の政治が根本的に変わらない、良くならないのは、政治を腐敗させている根源を一貫して不問にしてきているからです。
 それはアメリカに対する従属、具体的には日米安保条約による軍事同盟です。それは軍事はもちろん、経済、社会のあらゆる面に及んでいます。その是非が選挙で問われたことは、少なくともこの半世紀、全くありません。

 いま、市民(有権者)の最大の関心事は、はたして「政治とカネ」でしょうか?それは自民党に対する怒り(軽蔑)ではあっても、政治に対する期待ではないでしょう。

 最大の関心事は、仕事、生活、医療、教育であり、ガザやウクライナの停戦・平和ではないでしょうか。それらの問題の根源にあるのが、日米安保条約による大軍拡であり、対米従属の軍事・外交です。いまこそ「軍事費を生活・福祉・教育に回せ」「軍事同盟を解消して平和外交を」を最大の争点にすべきです。

 それが選挙で問われないのはなぜか。立憲民主党はじめ野党もそろって、さらにはメディアも含めて、「日米安保条約=軍事同盟」に賛同しているからです。日米安保=軍事同盟の視点から見れば、日本の政治はオール与党です。

 日米安保条約を歴史的に危険な段階に押し上げた先の日米共同声明(12日)の直前に、立憲民主が「経済安保法案」の衆院通過に賛成した(9日)のは記憶に新しいところです(11日のブログ参照)

 今回の補選で、「投票率は低く、野党第1党である立憲民主党が全面的に支持された結果とは言い難い」(小林良彰・慶応大名誉教授、29日付京都新聞=共同)のは当然です。

 低投票率に表れた政治不信の最大の要因は、政治の根源を問わない(争点にしない)オール与党化(翼賛化)です。日本共産党もそれに加わっています。この構造があらたまらない限り、低投票率=政治離れ=政治腐敗が変わることはないでしょう。

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「立憲デモクラシーの会」声明・6つの問題点

2024年04月23日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 立憲デモクラシーの会(共同代表・山口二郎法政大教授、長谷部恭男早稲田大教授)が19日記者会見し、「自衛隊と米軍の「統合」に関する声明」(以下「声明」)を発表しました(写真は左から、中野晃一、長谷部恭男、山口二郎、千葉真の各氏)。

 同会は2014年、集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対する学者らによって設立。樋口陽一、水島朝穂、最上敏樹、岡野八代、酒井啓子、浜矩子、高橋哲哉、池内了の各氏ら、日本のリベラルを代表する学者約60人が呼びかけ人に名を連ねています。

 「声明」は先の岸田首相訪米による日米共同声明が「作戦と能力のシームレスな統合を可能とするため、二国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させる」と明記したことについて、「少なくとも有事には実質的に米軍の指揮統制下に自衛隊が組み込まれることになる」点を中心に批判しています。

 その批判点は重要ですが、上記のような呼びかけ人によって設立された同会の性格・役割を考えれば、「声明」はきわめて不十分で問題が多いと言わざるをえません。

 第1に、軍事力抑止論の事実上の容認です。

「声明」は、「かりに抑止論を前提とするとしても…」としながら、論を進めるうちに「抑止論が…機能するためには」「日本としての抑止を高めることにならない」と述べるに至っています。これは歯止めのない軍拡を招く軍事力抑止論の容認であり、その土俵に立った議論です。

 第2に、「専守防衛」論の容認、すなわち自衛隊の容認・肯定です。

「声明」は、「責任ある政府は閣議決定等を通じて専守防衛に徹すると国会を通じて内外に表明してきた」と歴代自民党政権の「専守防衛」論を肯定し、さらには「日本国憲法に則った平和外交と専守防衛」とまで言っています。「専守防衛」論は自民党政権が憲法違反の自衛隊(日本軍)を保持するために使ってきたごまかしです。
 
 「専守防衛」論容認と表裏一体なのが自衛隊の容認・肯定です。「声明」は、「一体化が進められることで自衛隊の出動が米国や米国の軍事的判断次第になってしまう」と述べ、自衛隊は「国家としての「意思」」で動くべきだと主張しています。

 第3に、問題の起点を2014年とし、それまでの自民党政権を不問・美化していることです。

「声明」は「そもそも2014年の解釈改憲の閣議決定と2015年の安保法制で憲法違反の集団的自衛権の行使を容認して以来」と、2014年以降を問題にし、それ以前の自民党政権の安保(軍事)政策を不問にしています。自衛隊・「専守防衛」論の容認・肯定はその帰結です。

 記者会見した千葉真氏にいたっては、福田赳夫首相と小渕恵三首相の名を挙げて賛美しました。福田赳夫は有事立法の研究促進を指示し(1978年)、小渕恵三は「国旗・国歌法」を成立させた(1999年)張本人です。

 第4に、日米安保条約(軍事同盟)の肯定です。

 自衛隊の容認と表裏一体なのが、日米安保条約の肯定です。「声明」には安保条約に対する批判は一言もありません。それどころか長谷部氏は記者会見で、「これでは安保条約の事前協議が機能しない」と述べ、安保条約の機能化を主張しました。
「自衛隊と米軍の一体化」の根源は日米安保条約です。「声明」はその廃棄を主張しないどころか、積極的に擁護するものです。

 第5に、対案・展望が全く示されていないことです。

「声明」は、「それは日本の安全保障政策の体を成していない」の言葉で終わっているように、批判に終始し(その「批判」も上記のようにきわめて問題)、いま「安全保障」のために何が求められているのか、「立憲デモクラシー」の名によるなら憲法原則に基づく安全保障とは何なのか、という対案・展望がまったく示されていません。本来それを示すことこそ、同会の責務ではないでしょうか。
「声明」がそれを示し得ないのは、自衛隊・安保条約を容認・肯定していることの帰結と言えるでしょう。

 第6に、同会の他のメンバー(呼びかけ人)の責任です。

「声明」には上記のように多くの重大な問題がありますが、問わねばならないのは、記者会見した4人以外の呼びかけ人の責任です。他のメンバーは本当にこの「声明」でいいと考えているのでしょうか?「声明」文を読んだうえで賛同したのでしょうか?

 他のメンバーの中には、自衛隊を違憲の軍隊とし、日米安保条約の廃棄を主張する真っ当な学者もいます。その人たちは、本当にこの「声明」に賛同しているのでしょうか。「立憲フォーラムの会」は事実上、山口二郎氏と中野晃一氏の主導になっているのではないでしょうか。

<資料1>
       自衛隊と米軍の「統合」に関する声明
                         2024年 4月 19日
                       立憲デモクラシーの会

 2024年 4月 10日岸田文雄首相はバイデン米国大統領と会談、両首脳が共同声明を発出し、この中で「作戦と能力のシームレスな統合を可能とするため、二国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させる」と明記したことで、有事ばかりか平時から自衛隊と米軍の作戦と軍事力の統合が、装備の共同開発・生産とセットになって、いよいよ本格的に推し進められることになる。林芳正内閣官房長官は記者会見で「自衛隊の統合作戦司令部が米軍の指揮統制下に入ることはない」と強弁するが、軍隊組織の運用の「シームレスな統合」と言った時に、両国がそれぞれ独立した指揮統制系統を並行させるというのは意味をなさず、少なくとも有事には実質的に米軍の指揮統制下に自衛隊が組み込まれることになる。

 そもそも 2014年の解釈改憲の閣議決定と 2015年の安保法制で憲法違反の集団的自衛権の行使を容認して以来、安倍、菅、岸田内閣と続く自公連立政権は、国民の生命、自由、および幸福追求の権利を守るためと言いながら、まるで憲法も国会も存在しないかのようにふるまい、主権者である国民を蚊帳の外に置いて、安全保障政策の歴史的転換を進めてきている。2022年 12月 16日に閣議決定され公表された「安保三文書」は、日本と東アジアの将来に禍根を残しかねない負の産物であった。集団的自衛権の行使を認めたことで、日本が攻撃を受けずとも米国などの他国の戦争に、地域の限定もなく巻き込まれるリスクが高まったわだが、その上、自衛隊と米軍の作戦と軍事力の指揮統制機能の一体化が進めば、単に憲法や国会が無視されるにとどまらず、米国の判断で始めた戦争に米軍が参戦する際に、作戦の遂行や部隊運用面ですでに一体化された自衛隊には、これを追認して出動するほかなくなり、主権国家としての安全保障政策上の主体的な判断の余地が全くなくなる可能性さえ予期される。すなわち、責任ある政府は閣議決定等を通じて専守防衛に徹すると国会を通じて内外に表明してきたものの、集団的自衛権行使の要件とされる「存立危機事態」の認定主体が、国会はおろか日本政府でさえなく、米軍の作戦上の判断が事実上主導する形でなされることになりかねない。

 すでに自衛隊と米軍の一体化は始まっており、配備の進む中距離ミサイルの運用において日米の指揮統制の調整が不可欠となっていたとの議論もあるが、米国は米国の安全保障上の利益のために軍事的な判断を行うのであり、かりに抑止論を前提とするとしても、これが常に日本の安全保障のためになる保証はない。例えば、盛んに喧伝される台湾海峡有事のシミュレーションは、米中両国がそれぞれの本土を「聖域化」し、相互にはミサイルを撃ち合わない前提で想定されている。したがって、米軍の始める日本の安全保障にも国益にも適わない戦争のために、日本が戦場にされ民間人が殺されたり、自衛隊が殺し殺されたりする可能性も否めない。

 さらに、抑止力が戦争を未然に防ぐための抑止として機能するためには、軍事的な「能力」だけでなく、武力行使のレッドラインがどこに引かれているのか、国家としての「意思」が相手国に伝わる必要がある。それがなければ、ただの軍事的挑発となるが、自衛隊と米軍の指揮統制機能の一体化が進められることで自衛隊の出動が米国や米軍の軍事的判断次第となってしまうと、いくら日本が中距離ミサイルの配備などの安全保障上のリスクや財政負担を増大させたところで、トランプ前大統領の返り咲きも懸念される米国のその時の「意思」次第となり、日本としての抑止を高めることにならない。

 日本国民の生命、自由、および幸福追求権を守るための安全保障政策であるならば、日本国憲法に則った平和外交と専守防衛で相手国に対する安心供与を行い、国民を代表する国会での熟議を経て国家としての「意思」を形成し、伝達しなくてはならないのは当然である。安全保障政策の大転換と言いながら、その現実が、米軍次第というのであれば、それは日本の安全保障政策の体を成していない。

<資料2>
       立憲デモクラシーの会 よびかけ人  (同会サイトより)
▶共同代表
長谷部恭男 早稲田大学・憲法学
山口二郎 法政大学・政治学
 故 奥平康弘 東京大学・憲法学(元共同代表)
▶憲法学(法学)関係
愛敬浩二 早稲田大学・憲法学
青井未帆 学習院大学・憲法学
阿部浩己 明治学院大学・国際法学
蟻川恒正 日本大学・憲法学
石川健治 東京大学・憲法学
稲正樹 元国際基督教大学・憲法学
君島東彦 立命館大学・憲法学
木村草太 東京都立大学・憲法学
小林節 慶應義塾大学名誉教授・憲法学
阪口正二郎 早稲田大学・憲法学
高見勝利 上智大学名誉教授・憲法学
高山佳奈子 京都大学・刑事法学
谷口真由美 大阪芸術大学・国際人権法
中島徹 早稲田大学・憲法学
樋口陽一 東京大学名誉教授・憲法学
水島朝穂 早稲田大学・憲法学
最上敏樹 早稲田大学名誉教授・国際法学
▶政治学関係
石田淳 東京大学・政治学
石田憲  千葉大学・政治学
伊勢崎賢治 東京外国語大学・平和構築
宇野重規 東京大学・政治学
遠藤乾  東京大学・国際政治学
遠藤誠治 成蹊大学・国際政治学
大竹弘二 南山大学・政治学
岡野八代 同志社大学・政治学
小原隆治 早稲田大学・政治学
五野井郁夫 高千穂大学・政治学
齋藤純一 早稲田大学・政治学
酒井啓子 千葉大学・国際政治学
白井聡  京都精華大学・政治学
杉田敦  法政大学・政治学
千葉眞  国際基督教大学名誉教授・政治学
中北浩爾 一橋大学・政治学
中野晃一 上智大学・政治学
西崎文子 東京大学名誉教授・政治学
前田哲男 軍事評論家
三浦まり 上智大学・政治学
柳澤協二 国際地政学研究所
 故 坂本義和 東京大学名誉教授・政治学
▶経済学関係
大沢真理 東京大学名誉教授・社会保障論
金子勝   慶應義塾大学名誉教授・経済学
高橋伸彰 立命館大学名誉教授・経済学
中山智香子 東京外国語大学・社会思想
浜矩子  同志社大学・経済学
水野和夫 法政大学・経済学
諸富徹  京都大学・経済学
▶社会学関係
市野川容孝 東京大学・社会学
上野千鶴子 東京大学名誉教授 ・社会学
大澤真幸 元京都大学教授・社会学
▶人文学関係
臼杵陽 日本女子大学・中東地域研究
内田樹 神戸女学院大学名誉教授・哲学
加藤陽子 東京大学・歴史学
桂敬一 元東京大学教授・社会情報学
國分功一郎 東京大学 ・哲学
小森陽一 東京大学名誉教授 ・日本文学
佐藤学 東京大学名誉教授・教育学
島薗進 東京大学名誉教授・宗教学
高橋哲哉 東京大学名誉教授・哲学
林香里東京大学 ・マス・コミュニケーション
三島憲一 大阪大学名誉教授・ドイツ思想
山室信一 京都大学名誉教授・歴史学
鷲田清一 大阪大学名誉教授・哲学
 故 色川大吉 歴史学
▶自然科学関係
池内了 名古屋大学名誉教授・宇宙物理学
 故 益川敏英 京都大学名誉教授・理論物理学
▶経済界
丹羽宇一郎 元中国大使

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岸田首相の米議会演説を「日本国民」はどう聞くか

2024年04月13日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 岸田文雄首相は12日(日本時間)、米議会上下合同会議で演説しました。支持率22%(朝日新聞の3月世論調査)の首相の言葉に重みはありませんが、対外的には日本を代表する者の演説です。軽視することはできません。
 岸田氏は何を表明したのか。特徴的な言葉を抜き出してみましょう(12日付朝日新聞デジタル・演説全文より)。

「米国は、経済力、外交力、軍事力、技術力を通じて、戦後の国際秩序を形づくりました。自由と民主主義を擁護し、日本を含む各国の安定と繁栄を促しました。そして必要なときには、より良い世界へのコミットメントを果たすために、尊い犠牲も払ってきました」

「この世界は、米国が引き続き、国際問題においてそのような中心的な役割を果たし続けることを必要としています」

「日米同盟の抑止力の信頼性と強靱性を維持するために、日米間の緊密な連携がこれまで以上に求められています」

「世界は米国のリーダーシップを当てにしていますが、米国は、助けもなく、たった一人で、国際秩序を守ることを強いられる理由はありません」

「日本国民は、自由の存続を確かなものにするために米国と共にあります」

「今この瞬間も、任務を遂行する自衛隊と米軍の隊員たちは、侵略を抑止し、平和を確かなものとするため、足並みをそろえて努力してくれています。私は隊員たちを称賛し、感謝し、そして、隊員たちが両国から感謝されていることが、私たちの総意であると知っています」

「日本は既に、米国と肩を組んで共に立ち上がっています。米国は独りではありません。日本は米国と共にあります」

「日本は長い年月をかけて変わってきました。第2次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました」

「今日、日米同盟の抑止力は、かつてなく強力であり、それは米国の日本への拡大抑止によって強化されています」

「日本は…ウクライナに対し、対無人航空機検知システムを含む120億ドル以上の援助を表明してきました。このシステムの供与は、NATOによる支援策の一環であり……そう、日本は、地球の裏側にあるNATOとも協力しているのです」

「日本はかつて米国の地域パートナーでしたが、今やグローバルなパートナーとなったのです。日米関係がこれほど緊密で、ビジョンとアプローチがこれほど一致したことはかつてありません」

「日本が米国の最も近い同盟国としての役割をどれほど真剣に受け止めているか。このことを、皆様に知っていただきたいと思います」

「「未来のためのグローバル・パートナー」。今日、私たち日本は、米国のグローバル・パートナーであり、この先もそうであり続けます」

 米議会での演説ですからアメリカを賛美するのは当然でしょうが、それにしてもこれはひどすぎます。戦後、アメリカが覇権主義によっていかにアジア、世界の「自由と民主主義」を破壊してきたか。朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク、アフガン、そして沖縄の実態をみるだけで明白ですが、それらは一切捨象され、美化されています。

 そして、自衛隊と米軍の一体化に賛辞を送り、アメリカの核の脅しである「拡大抑止」への期待をあけすけに表明し、中国、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国への敵意をむき出しにしています。

 「グローバル・パートナー」とは、アメリカに全面的に追従する日米運命共同体のことです。

 かつて中曽根康弘首相が「日本列島不沈空母」「日米運命共同体」と口走ったときは国会で大きな問題になりました。さらに70年代には「専守防衛」を掲げる自衛隊の行動範囲はどこまでなのかという線引きが論争になりました。

 しかし今や、それらは一切問題にされず、自衛隊と米軍の一体化・軍事同盟は、線引きどころか、「地球の裏側」までまさに「グローバル」に広がってきています。
 問題は、それらがメディアでも、国会でも、問題にされることがなくなっていることです。

 これが日米安保条約=日米軍事同盟の実態です。岸田氏は「この先もそうであり続ける」と同盟相手国の議会で宣言(公約)したのです。

 それでいいのか。このまま沈黙してアメリカとの運命共同体に身を任せていいのか。そんな社会を子孫に残していいのか。問われているのは主権者である「日本国民」です。

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Nスぺ・下山事件-朝鮮戦争準備の米国陰謀

2024年04月01日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 3月30日のNHKスペシャルは、「戦後最大の未解決事件」といわれる下山事件(1949年7月5日、当時の国鉄総裁・下山定則氏が都内で「轢死体」で発見)の真相に、新たな未公開資料などで迫りました。注目されたのは以下の内容です(写真は同番組から)。

 国鉄は当時、GHQから10万人の人員削減を迫られており、下山総裁は労働組合との交渉の前面に立っていた。そんな中で事件は起こった。

 自殺説と他殺説に分かれたが、鑑定の結果などから捜査は他殺の線で進められた。その中で、李中煥という韓国人が浮上した。李はソ連が裏で糸を引いた犯行だと供述した。しかし、実は李はソ連とアメリカの二重スパイだった。

 布施健検事正を中心に進められていた捜査は核心に迫る手前で、アメリカの指示によって打ち切られ、やがて時効となった。

 李はGHQ配下の諜報組織・東京神奈川CICに属し、同じ諜報組織・キャノン機関のジャック・キャノン少佐、ビクター・マツイに情報を流していた(写真中)。李は1950年プサンに強制送還され、以後消息を断った。

 アメリカの反共工作の実態を突き止めた記者がいた。読売新聞(当時)の鑓水徹だ。鑓水は右翼の大物・児玉誉士夫から情報を得ていた。
 児玉によれば、アメリカは当時朝鮮戦争の準備をしており、その際はアメリカが国鉄を自由に使えるよう水面下で要求していた。それを下山総裁は拒んでいた。だから下山は殺された(写真左)。

 鑓水はそうした真相を報じようとする。しかしその直前、「家族の命と正義とどちらを選ぶ」と脅され、報道を断念した。鑓水はまもなく記者を辞めた。

 実際、朝鮮戦争開始(1950年6月25日)から2週間で、でアメリカ・米軍は国鉄の客車7324両、貨車・5208両を自由に使った。

 吉田茂首相(当時)はダレス米駐日大使との会談で、「下山事件は一人の韓国人(李)が引き起こしたものだ」と公言した(写真右)。そして朝鮮戦争開始の翌年、吉田はサンフランシスコ「講和」条約と日米安保条約に調印した(1951年9月8日)。

 以上が主な注目点です。驚くべき真相ですが、重要なのはこれがけっして75年前の過去の問題ではないことです。

 CIA(米中央情報局)などによるアメリカの諜報・謀略活動は現在も世界各地で行われているのは周知の事実。もちろん日本においても。朝鮮(韓国)人を諜報に利用し、首相の吉田(麻生太郎の祖父)が公然と犯行責任をなすりつけた根底には民族差別があります。

 下山総裁暗殺の動機だったと児玉が語っていた朝鮮戦争はまだ終わっておらず(1953年7月休戦協定)、今も朝鮮半島、東アジアの緊張の根源になっています。

 なによりも、アメリカは自国の戦略・利益のためにはあらゆる手段を使って日本を利用しようとする。対米従属の軍事同盟である日米安保条約はまさにこうした経過の中、下山総裁暗殺という謀略の結果、調印されたものです。

 そして今、アメリカは中国を念頭に戦争準備を強め、日米安保条約によって、米軍と自衛隊が有事の際に、沖縄はじめ日本の基地・空港・港湾を自由に使える体制づくりに躍起になっています。かつて朝鮮戦争前夜に国鉄を利用しようとしたように。

 そうした日米軍事同盟=安保条約の危険性について、日本のメディアは沈黙を続けています。けっして「家族の命」で脅されているわけでもないのに。

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日米首脳会談で「今夜でも戦う」日本へ

2024年03月30日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 28日夜の記者会見で岸田文雄首相は、来月10日の「国賓」待遇の訪米・日米首脳会談について、「日米同盟の重要性はますます高まっている。緊密、強固な連携を世界に示す」と述べました(写真左)。
 それはたんなるお題目ではありません。今回の日米首脳会談は文字通り、日米軍事同盟(安保条約)体制を新たな危険段階に引き上げる歴史的な場になろうとしています(写真右は昨年9月の米軍と自衛隊の合同訓練)。

 バイデン政権で国家安全保障会議(NSC)東アジア部長も務めた米戦略国際問題研究所のクリストファー・ジョンストン日本部長は、朝日新聞のインタビューに答え、こう述べています。

「日本はいま、米国の真の軍事的パートナーになりつつあります。2015年に安全保障法制を整え、最近では長距離の敵基地攻撃能力といった新たな手段を獲得しています」「有事には日米がより緊密に連携して攻撃などの共同作戦を進め、さらに監視や海上警備など多くのことを共同で実行できる司令部が求められます。…日米は、二国間の指揮統制がどのようなものになるかを示すことになるでしょう。…日米首脳会談でこうした方向性を示すことは、日米同盟が変化し、日本が「新たな日本」として米国の真の防衛上のパートナーになったことを示す、強いメッセージになります」(28日付朝日新聞デジタル)

 ハンギョレ新聞(26日付)によれば、「英国のフィナンシャル・タイムズ紙は24日、米日の軍事問題に精通した消息筋の話を引用し、「米国と日本が中国発の危機に対抗するため、1960年の米日安保条約後では最大規模の安保同盟のアップグレードを計画している」として、「両国間の作戦計画と訓練を強化するため、在日米軍司令部を再構成する計画」だと報じ」ました。

 また、上記ジョンストン氏はハンギョレ新聞(同上)にも登場。「クリストファー・ジョンストン氏は、「司令部を部分的にでも共同配置すれば、米日同盟はさらに迅速に、地域の脅威に対する信頼できる対応が可能になり、『今夜でも戦う』(fight tonight)という(韓米連合司令部の)モットーにより近づくだろう」と分析した」

 こうした日米軍事同盟の新段階の意味について、ハンギョレ新聞(同上)はこう分析しています。

「日本は2022年、北朝鮮や中国などの周辺国の基地を直接攻撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)を保有することに決めた。過去70年あまり維持してきた安保政策を大転換した。自衛隊は「盾」で駐日米軍は「矛)」という役割分担は崩れ、自衛隊と米軍の一体化が急速に進展している。
 米国は、中国の軍事的・経済的な浮上への警戒から、日本を活用するためにこのような日本の変化を推し進めており、今回の米日同盟アップグレード案もこの動きの延長線上にある

 きわめて的確な分析です。一方、日本のメディアはどうでしょうか。

「日米で連携を深めつつ、日本の主体的判断をどう担保するのかが、今後の議論になる」(28日付朝日新聞デジタル)
 どちらが日米同盟の本質を捉えているかは歴然です。日米軍事同盟の危険性について批判を喪失したこの論評が日本のメディアの中では政権に批判的とみられている朝日新聞の編集委員らが書いた記事の結論です。

 日本が今後、いや今、議論しなければならないのは、「日本の主体的判断の担保」などではなく、このまま日米軍事同盟によってアメリカに従属した戦争国家になっていいのか、それとも日米安保条約を廃棄して、憲法の非同盟・非武装・非戦の原則に立ち返るのか、の選択です。

 安保条約第10条には、「いずれの締約国もこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する」と明記しています。

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「辺野古代執行」の常態化図る地方自治法改悪

2024年03月21日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
  

 メディアが自民党の裏金問題と大リーグに集中している間に、国会で大変な悪法が強行されようとしています。地方自治法の改悪(3月1日閣議決定)です。
 
 岸田政権が辺野古新基地建設で「代執行」を強行したとき(昨年12月28日)、「国が地方の言い分を否定できる先例となり、(国と地方の)上下関係が復活する」(岡田正則・早稲田大教授)と指摘されました(12月28日のブログ参照)。地方自治法改悪は、いわばその「代執行」がいつでもできる体制をつくろうとするものです。

 幸田雅治・神奈川大教授はその危険性をこう指摘しています。

<政府は…危機の際…法律に規定がなくても、国が地方自治体に必要な指示ができるようにするとした地方自治法改正案を国会に提出した。幾つかの問題がある。
 第1に、国と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に変えた地方分権改革の流れに逆行し…自治体は国に従うべきという「上下・主従」の関係に回帰する考えと言える。
 第2に、導入される「国の補充的な指示」の必要性への疑問である。
 第3に、「補充的指示権」の乱用の危険性である。改正案の「指示」の要件には「おそれ」「重大な影響」「勘案して」などあいまいな表現が含まれており、指示権が乱用される懸念がある。>(3日付琉球新報=共同)

 法律にはあいまいな表現を並べ、政府の解釈でどのようにも使えるようにするのは、近くは土地規制法など、遠くは治安維持法などに顕著な国家権力の常套手段です。地方自治法改悪にもその手法が使われています。

 政府は「非常時」として「大災害」や「コロナなど感染症」を挙げています。誰も反対できないようなものを例示して悪法を強行するのも国家権力の常套手段です。

 しかし、政府の本当の狙いは、軍事(日米安保)体制の強化にあります。

 日米安保条約の「全土基地方式」によって全国どこにでも米軍や自衛隊の基地を造ろうとすれば、当然地元住民から反発を受けます。自治体も反対姿勢をとります。やがて裁判となり、司法の反動化も手伝って結局政府は軍事体制を強化します。「辺野古」はまさにその典型です。

 新基地建設だけでなく、民間の空港や港の軍事使用(軍民共有化)も沖縄各地はじめ全国に広がっています。これに対しても住民の反対が起こっています。

 そうした住民の反対を抑え、政府にとって面倒な訴訟などの手続きもすっ飛ばして、国が地方に指示=命令を下すことができるようにする。それが地方自治法改悪のほんとうの狙いです。

 いろいろな面で自民党の悪を体現している森喜朗元首相は、今月9日、都内のイベントで同席した岸田首相に、「超法規的なことで能登の再生、復興を」と述べました(9日付朝日新聞デジタル、写真右)。「能登の再生、復興」に名を借りた「超法規」体制の狙いをはからずも吐露したものです。

 地方自治法改悪は、戦争国家づくりのための有事立法にほかなりません。絶対に阻止しなければなりません。

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駐日米大使が絶賛する「戦略的パートナー・日本」

2024年03月02日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
  

 1985年、私は「赤旗」記者として国会報道を担当していました。当時の最大の政治課題は、ロッキード疑獄で1審有罪判決を受けた田中角栄元首相に対する議員辞職勧告決議案の提出でした。

 自民党は必死でその阻止を図りました。そこで出してきたのが政倫審(政治倫理審査会)の設置です。証人喚問と違って偽証罪にも問われない同審査会は、田中角栄の議員辞職勧告を打ち消して政治責任を不問にするための隠れ蓑でした。それを推進したのが、当時田中派「七奉行」の1人といわれた小沢一郎氏でした。

 こうした誕生のいきさつからも、その性格からも、政倫審はそもそも政治疑惑の追及を期待できる場ではありません(写真右は1日の政倫審)。

 メディアが自民戦略に乗せられて政倫審報道に終始している間に、着々と進んでいるのが日本の戦争国家化です。自民党と公明党の攻撃兵器輸出規制見直し協議、沖縄・北部訓練場で初めて行われている米軍と陸上自衛隊の共同訓練(2月25日~)などはその一端です。

 こうした戦争国家化深化の画期となったのは、岸田政権による「軍拡(安保)3文書」の改定(2022年12月16日閣議決定)です。
 日本人はメディアの影響もあって、その意味・危険性についての認識がきわめて乏しいですが、米バイデン政権はその本質をよく理解しています。

 ラーム・エマニュエル駐日米大使(写真左の左)がその本音を吐露していることを、沖縄タイムスの平安名純代・米国特約記者が報じています(2月26日付コラム「想い風」)。以下、抜粋します。

エマニュエル駐日米大使は、米紙ワシントンポスト12日付の寄稿で…誰も予想し得なかった変革の時代を日本は今、迎えていると説く。

 日本は…安保関連3文書を改定し、2027年度の安全保障関連費をGDP比2%に増額したと指摘。「日本は比較的短期間で、抑止力に関する考え方を再定義し、自衛権の行使や定義に制限のある国から、地域の安全保障パートナーとしての役割へ踏み出した」と評価し、21年時点で世界9位の日本の防衛費は3位に上昇すると期待感を示している。

 同氏は…「防衛費倍増から反撃能力の強化まで、日本はかつて神聖視されていた数十年来の政策を根底から覆した」と賛辞を送る。

 同氏は、岸田首相が4月に国賓待遇で訪米するのは「日本がこの2年間の成果と今後20年間で米国の戦略的パートナーとして果たす役割の拡大を強調するため」とその意義を説明する。>(2月26日付沖縄タイムス)

 日本のメディアが政倫審や日本人大リーガーの報道に明け暮れている間に進行しているもう1つの危険は、イスラエルによるガザへの更なる攻撃であり、「57万人が飢餓手前」という現実です。

 このイスラエルの蛮行を一貫して擁護・支援しているのがアメリカであり、そのアメリカの駐日大使が「戦略的パートナー」として絶賛しているのが、「安保法制」「安保3文書」下の日本です。

 この悪の鎖を断ち切る責任があるのは、われわれ日本の市民です。

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市長選挙で「軍拡反対」を主張する意味

2024年01月31日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 2月4日投開票の京都市長選挙で、日本共産党が支援する福山和人候補は「軍拡・戦争国家化反対」を政策や街頭で訴えるべきだと先日書きました(12月29日のブログ)。その後、その必要性が実証された選挙がありました。東京都八王子市長選(1月21日)です。

 八王子は裏金事件の中心・自民党安倍派「5人衆」の1人で安倍晋三元首相の側近だった萩生田光一衆院議員のおひざ元です。自民と公明が推薦した初宿和夫陣営は、「萩生田隠し」で臨み、「国政と市政は異なる」とアピールしました(22日付朝日新聞デジタル)。「萩生田氏自身も「迷惑はかけられない」と街頭に立つのを最小限に抑えた」(同)のです。

 自公陣営がこうした選挙戦術に徹した背景には、有権者の意識がありました。

 朝日新聞は投票日当日、市内30カ所で出口調査を行いました。その結果は、投票に際して裏金事件を「考慮した」という人が68%にのぼり、その43%が立憲民主、共産、社民などが支持した滝田泰彦氏に投票、初宿氏に投票した人は25%でした。

 また、岸田内閣を「支持しない」と答えたのは64%で、その45%が滝田氏に投票、初宿氏にはわずか19%でした(21日付朝日新聞デジタル)。

 この調査結果は、有権者は地元の市長選挙においても国政の重大問題や政権の政策・施策を考慮すること、そして、政権に批判的な有権者ほど自民党が推薦する候補には投票しないことを証明しています。

 だから自民陣営は「萩生田隠し」に徹した。陣営のプロパガンダとは逆に、「国政と市政は異なる」ことはないのです。

 そこで京都市長選。

 日本共産党の田村智子委員長は29日京都市を訪れ、福山候補の応援演説で、「金権腐敗かその一掃かが問われる」と訴えました(30日付しんぶん赤旗、写真右も)。

 八王子市長選の教訓からもこの訴えは重要です。しかし、田村氏はなぜ「軍拡・戦争国家化反対」を主張しなかったのでしょうか(しんぶん赤旗には1行もなし)。

 自民党の裏金・金権腐敗はたしかに大きな問題ですが、あえて言えば日本が直面している最大の問題ではありません。最大の問題は、「安保法制」「安保(軍拡)3文書」による日米安保条約=軍事同盟の深化の下で岸田自民党政権が強行している軍事費の大膨張、自衛隊の敵地攻撃ミサイル基地化、戦争する国家化です。その最前線に立たされ危険にさらされているのが沖縄であることは言うまでもありません。

 京都市長選挙で福山候補と自民・立民・公明・国民が推薦する松井孝治候補は「激しく競り合う」(29日付京都新聞)と報じられています。共産党、福山陣営はこれからでも「岸田政権の軍拡・戦争国家化反対」を強く訴えるべきです。

 京都市長選だけではありません。あらゆる選挙でそれを訴えるべきです。
そうやって全国津々浦々の選挙で有権者が「軍拡・戦争国家化反対」の意思を示すことが、ほんとうの民主主義であり、戦争を防ぐ力になるのではないでしょうか。

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「米軍トモダチ作戦」の裏で「トマホーク購入」

2024年01月22日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
  

 在日米軍は17日、能登半島地震の「救援活動」を行いました(写真左)。岸田自民党政権は他国の支援要請は断っていますが、木原稔防衛相は16日の記者会見で、在日米軍には「例外的に支援を要請した」と述べました(17日付沖縄タイムス=共同)。

 防衛省幹部は、「『トモダチ作戦』を能登でも行う、ということだ」(19日付朝日新聞デジタル)とし、2011年の東日本大震災における「トモダチ作戦」の再現だと語りました。

 「トモダチ作戦」は災害支援に名を借りて日米軍事同盟の強化・市民への浸透を図るものでした(9日のブログ参照)。今回も「「日米の絆」(木原稔防衛相)を国内外に示すとともに、現場での支援活動を通じ、自衛隊と在日米軍とのさらなる連携強化も図られることになりそうだ」(19日付朝日新聞デジタル)と報じられています。

 さらに、今回の「トモダチ作戦」には日米両政府のより露骨な政治的意図がうかがえます。

 「トモダチ作戦」は当初17日と18日の2日間行われる予定でしたが、18日は天候の関係で19日になりました。その18日、防衛省内で木原防衛相とエマニュエル駐日米大使が会談しました。米国製巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を正式に結むためです(写真右=防衛省HPより)。

 「トマホーク」の購入は、昨年10月に木原防衛相が急きょ訪米して約束していたものです。旧式のものを1年前倒しで買うという露骨な対米従属ぶりでした(2023年10月9日のブログ参照)。

 それは、「関連装備も含めた総額は約2540億円。日本は他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)として活用する」(19日付京都新聞=共同)もので、財政上も、憲法上もきわめて重大な武器購入契約です。

 10月にはメディアも一定の批判を行ったその武器購入の正式契約が18日に行われたのです。
 能登半島地震の支援・復旧だけでも多額の費用が必要なときに、2540億円もの税金を使って米製武器、それも敵基地攻撃のためのミサイルを買う―日米安保条約の害悪性を象徴する問題です。それが「トモダチ作戦」の最中に行われたことはけっして偶然とは言えないでしょう。

 安保条約に基づく「日米の絆」(木原防衛相)の本質は戦争のための軍事同盟、しかも対米従属の軍事同盟であり、自衛隊、在日米軍による「災害救助・支援」はその本質を隠ぺいするものに他なりません。今回の「トモダチ作戦」はそれを象徴的に示しています。

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「砂川事件」請求棄却は日米安保の違憲性隠ぺい

2024年01月17日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会
   

 東京・砂川町(現立川市)で1957年7月、住民が反対する米軍立川基地拡張の強制測量が行われ、デモ隊から23人が検挙され、7人が日米安保条約に基づく刑事特別法違反で起訴されました。砂川事件です。

 1審東京地裁(伊達秋雄裁判長)は1959年3月30日、「駐留米軍は憲法第9条第2項によって禁止される「戦力の保持」に該当する」すなわち憲法違反であると断じ、全員無罪を言い渡しました。伊達判決です。

 これに対し検察は、高裁に控訴せず最高裁に直接上告しました(跳躍上告)。最高裁は59年12月16日、「駐留米軍は違憲ではない」「安保条約は司法審査権の範囲外(統治行為)」として1審判決を破棄しました。

 ところが2008~13年にかけて公開された米公文書で、マッカーサー駐日米大使が藤山愛一郎外相に跳躍上告を勧める一方、田中耕太郎最高裁長官とも密談していたことが判明。元被告の土屋源太郎氏(89)ら3人が、最高裁判決は憲法が保障する公平な裁判を受ける権利が侵害されたものだったとして、2019年に国に損害賠償を求めて提訴しました(写真左は15日の報告集会。右から2人目が土屋氏=琉球新報より)。

 その1審判決が15日あり、東京地裁(小池あゆみ裁判長)は、米公文書について「(田中長官が裁判について)言及した事実が推認される」と認める(これ自体は重要)一方、「発言内容などを具体的に推認するのは難しい」「長官の行為に違法性は認められない」として土屋氏らの請求を棄却する判決を言い渡しました。

「最高裁長官がこの時期に当事者である駐日米大使と会ったこと自体、公平性への疑念を抱かせる行為である。当時、この事実が発覚していたら、裁判は弁解の余地なくアウトだっただろう。
 司法は、最高裁長官の「疑惑の行動」によって失われた信頼を回復するのではなく、最上位の長官の行動をかばうことによって、ますます不信を助長させてしまった」(16日付沖縄タイムス社説)

 その通りです。しかし、問題はそれだけではありません。「砂川事件・裁判」とは何だったのか。前後の主な出来事を振りかえってみましょう。

1957・2  岸信介内閣成立
   6  岸首相、訪米して「日米新時代」の共同声明
      6~7 立川基地拡張の強制測量。デモ隊逮捕・起訴(砂川事件  
1958・3  岸首相、国会で「在日米軍基地への攻撃は日本への侵略」と答弁
   9  藤山外相・ダレス米国務長官会談で、日米安保改定合意
   10 警職法(警察官職務執行法)改定案を国会提出
1959・1 キューバ革命
   3 砂川事件・伊達判決
   4 皇太子明仁・正田美智子結婚パレード
     安保改定阻止国民会議第1次統一行動
   6 沖縄・宮森小学校事件(嘉手納の米軍機が墜落)
   8 三池闘争
   10 自民党が安保改定を党議決定
   12 砂川事件・最高裁判決
1960・5 岸政権、新安保条約を強行採決

 以上の経過で明らかなように、砂川事件・裁判は岸信介政権による新安保条約強行策動の真っ只中で起きたことです。その日米安保条約を違憲とした伊達判決はきわめて画期的な歴史的判決でした。それだけに日米両政府はなんとしても伊達判決を消し去りたかったのです。

 田中耕太郎の策動・最高裁判決は司法がその日米両政府の政治的思惑(国策)に加担したものです。今回の小池判決はそれを追認したものにほかなりません。

 「日米安保条約は憲法9条違反である」。この伊達判決をめぐる攻防は、けっして過去の話ではなく、きわめて重要な今日的問題です。
  
 

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