「歴史の忘却に抗して―パレスチナにおけるジェノサイドを見すえながら、危機の時代における人文知の役割を問う―」と題した緊急学習会が27日夜、京都大学で行われました。岡真理氏(早稲田大教授、写真左)、駒込武氏(京都大教授、写真中)らが講演・発言しました。
岡氏は、イスラエル市民に対する殺傷、人質は戦争犯罪だが、ハマス(ハマース)はなぜ敢えてそれを行わざるを得なかったのかとして、イスラエルによるパレスチナ占領、それを後押しした欧米諸国の歴史的責任を指摘しました(23日のブログ参照)。
そのうえで、歴史的経過を踏まえないでハマスを「テロ集団」と断じる報道によって「何が忘却されているのか?」としてこう述べました、
「忘却されているのは、イスラエルが入植者植民地主義国家であり、ユダヤ人至上主義のアパルトヘイト国家であること。そして、ハマースはイスラエルの占領から祖国の解放を目指す民族解放運動だということ」
そして、「現在進行中のイスラエルによるジェノサイドに対して沈黙することはイスラエルと共犯だ」と指摘。とりわけ、「日本の市民が沈黙することは、自らの歴史の忘却にほかならない」とし、沈黙によって忘却されるものを次のように述べました。
「第1に、植民地支配・占領の歴史において、日本は朝鮮・台湾の人々の抵抗に対し、どのような暴力を行使してきたのか。
第2に、南アフリカのアパルトヘイトに対し、日本はどのような姿勢をとってきたのか。
第3に、惨事の衝撃(関東大震災)による流言飛語やそれに便乗した当局の言説に煽られ、メディアもそれに共犯し、いかなる集団虐殺をもたらしたのか。
そして第4に、核兵器によるジェノサイドを経験した国として、今、広島と長崎に核爆弾を投下した国(アメリカ)が、武器をイスラエルに供与してジェノサイドを行っていることに対する責任である」
続いて登壇した駒込氏は、帝国日本の植民地支配下の台湾で起きた霧社事件(1930年)とガザの事態の共通性に触れたうえで、次のように述べました(霧社事件については後日のブログで取り上げます)。
「占領(植民地化)は、長期間にわたって継続する構造的な暴力である。占領者はむき出しの暴力を行使する。一方、時に被占領者による対抗的暴力が噴出すると、占領者はそれを口実にさらなるジェノサイドを行う。
大切なことは、歴史の忘却に抗して、根源的な暴力としての構造的な暴力の歴史を透視し、可視化すること。そこに人文知の役割がある」
「沈黙」は「歴史の忘却」である―両氏の指摘はイスラエルによるジェノサイドについて述べたものですが、社会・世界のあらゆる出来事について言えることでしょう。
歴史、とりわけ自国の歴史はけっして忘却してはならない。その前に正しい歴史を学ばねばならない。そして不正義に対して沈黙してはならない、と痛感します。