今日(30日)の「花子とアン」(NHK朝ドラ)で、戦時中のラジオ局幹部が豪語しました。「われわれ(ラジオ局)は国民に国策への協力を促す立場にある」。
その言葉が決して過去のことではない、と思わせることが、同日尾道市でありました。
「瀬戸内水軍まつりin尾道」で、航空自衛隊の曲技飛行隊「ブルーインパルス」(青い衝撃)によるアクロバット飛行が行われたのです(写真左はウィキペディアから)。
それ自体、自衛隊の国民浸透戦略の一環として絶対に軽視できません。が、さらに驚くべきことがありました。
地元・尾道市のコミュニティ放送「エフエムおのみち」が、なんとこれを特別番組として生中継したのです。
中継は、まつりのメーン会場などをつなぐ3元中継。「ブルーインパルスを通して航空自衛隊を知っていただき、みなさんに夢と感動を与える」などという、会場に流される観客向けの現役自衛隊パイロットによる解説を約25分間、そのまま放送するという念の入れようです。
「エフエムおのみち」のは、「ラジオを片手に華麗な飛行を楽しんでもらいたい」(28日付中国新聞)、「ブルーインパルスを応援しよう」(当日の放送)とまで言っています。
「エフエムおのみち」だけではありません。
中国新聞が6月に「自衛官になる」と題して海上自衛隊呉教育隊をルポした連載は、あまりにも無批判に自衛隊を賛美するものだと、この「日記」にも書きました。その取材記者の顔写真付き感想記事が、29日付の「オピニオン」欄に載りました。
記事のタイトルは「海自 頼もしき若手たち」。記者は集団的自衛権行使容認の閣議決定や、土砂災害での自衛隊活動にふれ、「多様化する任務とこれから向き合うことになる若い隊員たち。厳しい現実も受け止めながら、成長していくのだろう」とエールを送っています。
集団的自衛権行使容認によって、自衛隊は“戦争をする軍隊”へ本格的に大きく変貌しようとしています。
それだけに隊員確保も含め、政府・防衛省は自衛隊に対する国民の違和感を払拭し、批判をかわすことに躍起になっています。
日本のメディアは今、自衛隊をどう報道するのか、その本質をどう伝えるのか、大きな責務に直面しています。
とりわけ「被爆地・平和都市」広島のメディアの責任は重大です。
しかしその現状は、あまりにもお粗末で、危険なものだと言わざるをえません。
沖縄はどうでしょうか。
沖縄県内で自衛官募集の業務を一部受託実施する市町村が35、全41市町村の85%と過去最高に上っていることが報じられました(沖縄タイムス8月4日付)。
沖縄でも自衛隊の八重山諸島への増強とともに、県民浸透作戦が確実に進行しています。
県内メディアが自衛隊への批判精神を堅持することができるかどうか。米軍基地問題とともに、自衛隊の増強・強化に対する県民の監視・批判が不可欠です。
<気になるニュース>
見過ごせない自衛隊の宇宙進出
「宇宙から画像収集強化 防衛省方針 JAXAと協力推進」(29日付中国新聞、2面2段)。
「防衛省は28日、宇宙からの画像収集能力の強化や、弾道ミサイルの発射や兆候を早期に探知するための技術開発、宇宙監視部隊の創設などを柱とする新たな宇宙開発利用に関する基本方針を決定した」
中国新聞はこう”客観報道”しています。
しかしこれは聞き流すことができない、きわめて重大な動きです。自衛隊が宇宙に進出し、宇宙軍を創るという計画にほかならないのですから。
防衛省の発表を無批判に垂れ流すこうした報道が、防衛省戦略の広報にほかならないことを、メディアは強く自覚すべきです。