アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日韓関係の「改善・正常化」とは何なのか

2023年11月27日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 韓国高裁が日本政府に戦時性奴隷(「慰安婦」)被害者への慰謝料支払いを命じる判決を下した(23日)ことについて、毎日新聞は25日、「慰安婦判決と日韓関係 対立の再燃招かぬ知恵を」と題した社説を掲載しました。

 この中で、「主権免除」を退けた判決を「無理がある」と批判するとともに、「両国関係は「国交正常化以降で最悪」と評されるまでに悪化していた。流れを変えたのは、尹錫悦政権が今年3月に徴用工問題の解決策を提示したことだ」「対立の時代に逆戻りすることのないよう、日韓両国は信頼構築の努力を続けなければならない」と書いています。

 共同通信も24日の配信記事で、「尹錫悦政権下で日韓関係が改善する中、両国間にしこりを残す可能性がある」と高裁判決を批判しました。

 日本メディアの主張はほぼ共通しています。①性奴隷(「慰安婦」)や強制連行・労働(「徴用工」)に対する補償問題は日韓請求権協定(1965年)で解決済み②さらに性奴隷問題は日韓合意(2015年)で決着済み③その見直しを図った文在寅前政権が両国関係を悪化させた④尹錫悦政権で関係は改善され正常化へ向かっている―。政府の言い分と歩調が合っています(写真右は「慰安婦合意」を強行した安倍晋三首相と朴槿恵大統領=当時)。

 一方、韓国のハンギョレ新聞(日本語電子版)は24日の社説でこう書いています(太字、改行は私)。

「韓国司法府は、日本企業を相手取った強制動員訴訟では2018年に、最高裁(大法院)全員合議体判決で損害賠償責任を認めている。今回「慰安婦」訴訟でも一貫した司法府の見解が確立されたわけだ。
 しかし、尹錫悦政権は対日低姿勢外交を展開する中で、司法府の判断まで歪曲し「歴史問題の封印」に躍起になり、強制動員関連の最高裁判決にもかかわらず「第三者弁済」という譲歩案を貫こうとしている。法治国家なら、政府は司法府の判断を尊重しなければならない。判決の趣旨に合わせて、歴史的正義の実現と国民の被害回復に努めなければならない日本政府も、韓国政府の一方的な譲歩に喜ぶだけではなく、歴史問題の解決に向けた真摯な努力を示さなければならない」(写真左は勝訴した李容沫さん=ハンギョレ新聞より)

 韓国司法判断の評価はこれまで繰り返し書いてきたのでここでは述べません。百歩譲って、それに異議があるとしても(「主権免除」の解釈等)、上記ハンギョレ新聞の太字の部分に反論することはできないのではないでしょうか。

 尹錫悦政権が「司法府の判断まで歪曲し「歴史問題の封印」に躍起」になり「歴史的正義の実現と国民の被害回復」に背を向けていることは客観的事実です。日本政府がそれを喜んでいるのも事実です。

 日本のメディアはそれを「日韓関係の改善」「正常化」と評しているのです。

 尹政権の「一方的な譲歩」は、東電福島原発の汚染水海洋放出でも顕著です。それに対しても韓国では市民の批判が広がっています。

 尹政権の対日「譲歩」の背景・根源に、韓米軍事同盟と日米軍事同盟(安保条約)の結合を図るアメリカの戦略があることは明白です。

 こうした日韓両国政府の動向のどこが「改善」「正常化」なのでしょうか。

「歴史問題の解決に向けた真摯な努力を示さなければならない」のは「日本政府」だけではありません。「日本のメディア」そして「日本の市民」も同じです。その努力の先にこそ本当の「正常化」があるのではないでしょうか。



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日米韓「共同訓練定例化」は何を意味するか

2023年08月23日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 19日にキャンプデービッドで行われた日米韓首脳会談で合意した「共同声明」は、「日米韓の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる」と宣言しました。それはどういう意味でしょうか。

 「共同声明」でとりわけ重大なのは、「3カ国は共同訓練を定期的に実施する」と決めたことです。

 韓国の文在寅前政権時代は、米韓共同訓練に自衛隊を加えることを避けてきました。それが特別な意味を持っているからです。

 7月27日に「休戦協定締結」70年を迎えた朝鮮戦争を想起する必要があります。朝鮮戦争はまだ終わっていないのです。

 米韓共同軍事訓練は、朝鮮戦争の当事国であるアメリカと韓国が、対戦国の朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の鼻先で軍事デモンストレーションを繰り返していることで、朝鮮に対する露骨な挑発であり脅威です。朝鮮が行う「ミサイル実験」は米韓共同訓練に対応するものです。日本のメディアは「北朝鮮の挑発」と決まり文句を繰り返していますが、事実は逆です。

 朝鮮は一貫して米韓共同訓練の中止を要求してきました。それが朝鮮戦争の終結に不可欠だからです。

 2018年4月27日、韓国・文在寅大統領と朝鮮・金正恩委員長の会談で合意した「板門店宣言」は、「(朝鮮戦争)停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制構築」に向かうと明記しました。

 これを受けて行われた朝鮮とアメリカの首脳会談(18年6月12日、シンガポール)でも米韓共同訓練が主要な議題の1つとなりました。
 その結果、トランプ大統領は会談後の記者会見で、「米韓演習は挑発的。中止により多額の費用を節約できる」「朝鮮戦争は間もなく終結するとの期待を持っている」(2018年6月13日付共同配信)と述べたのです。

 トランプ大統領はその後自らの言明を反故にして米韓共同訓練を再開しました。
 今回バイデン政権は、この米韓共同訓練に日本(自衛隊)を加え、3カ国で定例化させることを決めました。これは朝鮮戦争終結(平和協定締結)に真正面から反するものです。

 そしてそれは日本にとって、アメリカ、韓国とともに朝鮮戦争に公然と参戦することを意味します。

 日本は朝鮮戦争勃発(1950年6月25日)以来、アメリカの兵站基地になるなど事実上朝鮮戦争に関わってきました。しかし、日本政府は朝鮮戦争への参戦を公式には認めてきませんでした。たとえば、吉田茂首相は、「国会でも曖昧な、否定的な答弁で(朝鮮戦争への)協力の実態を秘密にしていました」(大沼久夫・共愛学園前橋国際大名誉教授、月刊「イオ」7月号)。朝鮮戦争への協力・参戦は日本国憲法の蹂躙に他ならないからです。

 その憲法の壁を、岸田文雄首相は「3カ国共同訓練の定例化」によって飛び越え、公然と朝鮮戦争の参戦国になったのです。
 朝鮮に対する最大級の「挑発」であり、朝鮮戦争の終結、朝鮮半島の平和に逆行するこの暴挙を絶対に許すことはできません。


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「朝鮮戦争の元凶は米国」カミングス教授の告発と日本

2023年06月26日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
  
 
 73年前(1950年)の6月25日、朝鮮戦争が「開始」されました。朝鮮戦争は朝鮮半島の分断を決定づけた戦争ですが、その「起源」をめぐって韓国のハンギョレ新聞(6月10日付日本語電子版)に興味深い記事が載りました。

 朝鮮戦争の真相を論究した書物として定評がある『朝鮮戦争の起源』(第1巻1981年)の韓国語完訳が今年完成。著者のブルース・カミングス氏(米シカゴ大客員教授=写真中、同紙より)が長文の序文で執筆の契機と所感を明らかにしたことに注目した書評記事です。記事の要点を抜粋します。

<「起源」は「開始」とは違う。カミングス氏は「誰が先に撃ったか」を問う前に「なぜ撃たざるをえなかったのか」を問わねばならないと述べる。

 カミングス氏は、朝鮮戦争の起源は、1945年8月15日の解放(日本の敗戦)直後の数カ月間に形成されたと述べる。9月8日にソウルで軍政を始めた米軍は、左派勢力が布陣した朝鮮人民共和国を認めることなく、保守・親日勢力と手を握った。さらに、日帝の警察機構をそのまま再活用し、日帝軍人を集め、国防警備隊を創設した

 ソウルの米軍政とワシントンが、米国の覇権戦略によって南側の勢力のうち一方の肩を持つ過度な内政介入をしなかったならば、南北分断という悲劇は起きなかったと、この本は語る。

 まさにそうした理由から、カミングス氏は韓国語版の序文で「1945年以降、この由緒ある国を軽率かつ無分別に分断させた米国の高位指導者」の過ちを追及し、「朝鮮を分断させたのがわが祖国であったため、私はいつも責任を感じていた」と告白する。
 ならば、朝鮮戦争を終結させる責任も米国にあるだろう。>

 カミングス氏は、朝鮮戦争を引き起こした元凶はアメリカの覇権主義による内政介入だったと告発し、アメリカ人として「いつも責任を感じていた」と自らに厳しい目を向けています。

 自らに厳しい目を向けなければならないのは、アメリカ人だけではありません。

 日本は朝鮮戦争でアメリカ主導の「国連軍」の兵站基地になったばかりか、掃海艇を出動させ、元日本兵らが戦闘に参加もしています。また、「朝鮮戦争特需」で主要企業が「死の商人」としてぼろもうけし、その後の「経済復興」の基盤をつくりました。

 さらに、今とりわけ強調しなければならないのは、今日の自衛隊増強・大軍拡の「起源」もまさに朝鮮戦争だったという事実です。

 朝鮮半島の最前線を視察した国連軍最高司令官のマッカーサー元帥は1950年7月8日、吉田茂首相に次のような書簡を送りました。

「私は日本政府に対し7万5000人から成る国家警察予備隊を設置すると共に、海上保安庁の現有海上保安力に8000人を増員するよう必要な措置を講じることを許可する」

 この「マッカーサー書簡」を受け、8月10日、警察予備隊が正式に発足しました。憲法違反の再軍備の開始です。

「米国軍占領下での日本政府の朝鮮戦争への協力は、その後の日米安保体制下での1960年代以降のベトナム戦争、91年の湾岸戦争、21世紀はじめのアフガニスタンでの対テロ戦争協力、そしてイラク戦争への自衛隊派遣による協力と続く、戦後日本の対米戦争協力のまさに第1歩であったのである」(大沼久夫・共愛学園前橋国際大学名誉教授『朝鮮戦争と日本』新幹社2006年)(写真右は横須賀の基地から朝鮮戦争に出航した米軍空母=月刊「イオ」7月号より)

 銘記しなければならないのは、この朝鮮戦争は休戦協定(1953年7月27日)が結ばれただけで、いまだに平和協定が締結されていない、すなわちまだ終わっていないということです。

 そして最大の問題は、日本人は朝鮮戦争が終わっていないことどころか、朝鮮戦争そのものの事実さえ知らない、まして日本とのかかわりなど知らない人が圧倒的多数だということです。都合の悪い歴史は隠ぺいする日本の国家戦略がここでも貫かれているのです。

 いまだ終結していない朝鮮戦争は、今日の朝鮮半島と日本の関係、日米安保条約(軍事同盟)による自衛隊の大軍拡に直結しています。今に続くその歴史を知ることは日本人の責務です。

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旭日旗・自衛艦釜山入港は日本の恥

2023年06月01日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 旭日旗を掲げた海上自衛隊護衛艦「はまぎり」が5月29日、釜山港に入港しました(写真左=ハンギョレ新聞より)。韓国市民からは厳しい批判の声が上がっています。

 釜山の市民団体は30日、韓国海軍司令部前で記者会見しこう主張しました。
我々は日本の軍国主義の亡霊を決して容認できない。日本の旭日旗を掲げた自衛隊艦は直ちにこの地から立ち去れ」(31日付ハンギョレ新聞、写真中も)

 2018年11月に韓国が主催した国際観艦式でも自衛隊の旭日旗が問題になり、文在寅大統領(当時)は旭日旗を掲げないよう要求しました。日本政府・防衛省はこれに反発し参加を取りやめました。

 ところが尹錫悦現大統領は、発足以来自民党政権に歩み寄り、この問題でも「旭日旗と自衛隊旗は違う」などの詭弁を弄して旭日旗の入港を容認。韓国の市民から批判を浴びています。

 しかし、肝心なことは、これは韓国の問題ではなく挙げて日本の問題だということです。

 旭日旗は、日清・日露戦争以来、帝国日本の中国・東アジア侵略、朝鮮半島植民地化の文字通り旗頭でした(写真右)。

 その旗が、日本の軍艦(自衛艦)によって、植民地支配した朝鮮半島・韓国に入ってくるのです。強盗が再び凶器を持って被害者宅に侵入するようなものです。韓国市民の怒りはあまりにも当然です。
 批判されるべきは、植民地支配をなんら反省することもなく、その象徴を被害国に持ち込む加害国・日本であることは明白です。

 ところが、この問題についての日本の報道はきわめて問題で、メディアの弱点を端的に示しています。

 釜山港入港の翌30日付の朝日新聞はまったく報道しませんでした。毎日新聞は2面ベタで報じましたが、「韓国では旭日旗が「日本による植民地支配の象徴」であるとして、掲揚を批判する声がある」とまるで他人事(韓国事)です。

 共同通信は尹政権が旭日旗を容認した時点で報じましたが、それは「日本側としては国際ルールに沿った通常の措置だが、韓国では…拒否感が強い」(5月26日付)と逆に自衛隊・日本政府を擁護する始末です。

 しかし、その「国際ルールに沿った」措置こそが問題なのです。
 旭日旗を容認した尹政権の国防部報道官は25日こう述べました。「外国港に艦艇が入港する際にはその国の国旗とその国の軍または機関を象徴する旗を掲げる。これは世界的に通用する共通の事項だ」(30日付ハンギョレ新聞)

 これが尹政権の言い訳であり、日本政府が頑として旭日旗を降ろさない口実でもあります。海軍旗を掲げるのが「国際ルール」だから、海上自衛隊の隊旗である旭日旗は降ろさない、というわけですが、この理屈は逆に問題の根源がどこにあるかを明確に示しています。すなわち、自衛隊(海上自衛隊・陸上自衛隊)が侵略戦争・植民地支配の象徴である旭日旗を隊旗にしていることこそが元凶なのです。

 今回の問題の解説記事で、ハンギョレ新聞(30日付)はこう書いています。

日本が過去の帝国主義時代の日本軍旗をそのまま自衛艦旗として使用し、日常で広く使いながらも特別の問題意識を感じないでいるという事実自体が、旭日旗論争の本質だという指摘もあります」

 記事は婉曲に書いていますが、まさにこの指摘の通りです。昨年も日本中が熱狂したサッカーW杯で日本人が旭日旗を使って応援して問題になりましたが(2022年12月1日のブログ参照)、こうした問題が繰り返されるのも日本人が「特別の問題意識を感じないでいる」ことの表れです。

 これは単に「旗」の問題ではありません。

 自衛隊は旭日旗を隊旗にすることによって、帝国日本軍の侵略的精神・性格をも継承しています。なぜなら、自衛隊はその発足の経緯、発足後の歩み、さらに現在の実態から明白なように、日米安保条約=軍事同盟と一体不可分であり、世界最大の覇権国家・アメリカの軍隊に従属している軍隊にほかならないからです。

 旭日旗を掲げて釜山港に入港している自衛艦の姿は、日本が日米安保条約=軍事同盟の強化、「軍拡(安保)3文書」によって、再び戦争国家への道をまい進している姿にほかなりません。日本国憲法を持つ日本人こそが、声を大にして批判しなければなりません。

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強制動員被害者を踏み台に日韓米3カ国軍事同盟化へ

2023年03月18日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が16日来日し、岸田文雄首相との会談で強制動員被害者(元「徴用工」)に対する「第三者(肩代わり)弁済」方針を改めて確認し合いました。

 今回の日韓首脳会談の最大の狙いは何だったか。来日直前、ユン氏は朝日新聞などの文書質問に答えてこう述べています。

「安保分野で韓米日の連携の重要性が高まっており、そのために3国間で実質的かつ効率的な安保協力が行われる必要があると考える。…韓米日3カ国間の安全保障協力をより包括的かつ戦略的に深めていくことが重要だと考えている」(16日付朝日新聞デジタル)

 「安全保障(安保)」という言葉は「軍事」と置き換えて正解です。それはこの場合だけではありません。「安保3文書」は「軍事(軍拡)3文書」であり、「安保条約」は「軍事条約(同盟)」です。

 ユン氏は、今回の訪日・首脳会談の目的が、日韓米軍事協力を「包括的かつ戦略的に深めていく」ことにあると強調したのです。その背景にはアメリカの強い要請(圧力)があります。

 米国務省のプライス報道官は、日韓首脳会談について「米国の確固たる同盟国の二国間関係を前進させる努力を示すものになる」(14日の記者会見=16日朝日新聞デジタル)と賛美し、岸田政権幹部も「日韓正常化を一番喜んでいるのは米国だ」(17日付京都新聞=共同)と述べています。

 このバイデン政権の戦略を実現するために不可欠だったのが強制動員問題の「解決」であり、そのための「第三者弁済」方針です。
 だからバイデン大統領はユン政権が同方針を発表した直後に、「2つの同盟国間の協力関係の歴史における新たな章の始まりだ」とまで言って絶賛し(6日、写真中)、「ユン大統領を4月に国賓として米ホワイトハウスに迎えると発表し、「解決策」を示した韓国を厚遇する姿勢を見せた」(16日付朝日新聞デジタル)のです。

 日本のメディアが挙げて首脳会談を賛美したのとは裏腹に、韓国では強制動員被害者を先頭に各地で市民の激しい抗議活動が行われました(写真右)。

「韓日首脳会談が行われた16日、全国各地で政府の強制動員解決策に反対する集会が開催された。集会参加者たちは、回の韓日首脳会談は強制動員被害者の権利を踏みにじって行われたものだと批判した」(17日付ハンギョレ新聞日本語電子版)

「進歩系の56団体からなる「平和ナビ大田行動」はこの日…記者会見を行い、「強制動員被害者に対する政府の第三者弁済方針は…司法主権を放棄する屈辱的解決策であり、戦犯国家と戦犯企業に免罪符を与える親日売国解決策」だとし、「…首脳会談に反対する」と述べた」(同)(韓国で「親日」とは日本の侵略・植民地支配を免罪・容認する勢力のことです)

 今回の日韓首脳会談は、日韓米の軍事協力(実質的3カ国軍事同盟)をいっそう強化するためのものであり、その突破口になったのが「第三者弁済」方針です。強制動員被害者(大法院で勝訴した原告)はその踏み台になったのです。

 これは歴史的にどういう意味を持つでしょうか。

 強制動員被害者は、帝国日本の侵略・植民地支配の犠牲者である上に、「解放」(日本の敗戦)から78年たった今、今度は米戦略とそれに追随する日韓両政府の3カ国軍事協力・同盟強化の犠牲者になろうとしている。軍事大国の二重の犠牲者になろうとしているのです。

 そして日本は、強制動員被害者の二重の被害にいずれも直接かかわる二重の加害者です。私たち日本人はそのことを肝に銘じなければなりません。

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朝鮮(北朝鮮)はなぜミサイル実験を行うのか(下)根源は朝鮮戦争

2023年02月21日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 朝鮮が米韓合同軍事演習に対抗してミサイル実験・核開発を行わざるをえない状況に置かれていることは、日本とけっして無関係ではありません。というより、日本はそのことに深いかかわりと責任があります。

 なぜなら、朝鮮のミサイル実験・核開発の根源は、朝鮮戦争(1950年6月25日~53年7月27日休戦協定調印)だからです。

 朝鮮戦争は、同じ民族が殺し合い、「休戦」後も分断されるという史上まれにみる悲惨な戦争です。それはそもそも、日本の朝鮮半島侵略・植民地支配がなければ起こりませんでした。日本の植民地支配の後、アメリカ・ソ連両核大国の覇権主義によって引き起こされたのが朝鮮戦争です。

「朝鮮戦争はそれ以前の5年間ずっと続けられた闘争の行き着いた当然の帰結に過ぎない。一言でいえば、1945年8月は、一度も途切れたことのない一貫した事件の連鎖をもって、1950年6月につながっている」(孫崎享・元外務省情報局長『朝鮮戦争の正体』祥伝社2020年)

 アメリカは「国連軍」の看板でこの戦争を戦いました。「国連」を隠れミノにするのはアメリカの常套手段です。総司令官はマッカーサー元帥。マッカーサーは劣勢の中で、核兵器を「26発」使うことを米政府に要請しました。
 NHK「映像の世紀」(今月13日)は「朝鮮戦争 そして核がばらまかれた」と題し、マッカーサーが本国政府に核兵器使用を要請した極秘文書の映像を流しました(写真中)。

 朝鮮戦争で核兵器を使用しようとしたのはマッカーサーだけではありませんでした。

 トルーマン大統領(当時)は、「1950年11月30日、朝鮮戦争で原爆使用辞せずと発言」(孫崎氏、前掲書)しました。
 
 さらに、トルーマンのあとのアイゼンハワー大統領も核兵器を使おうとしました。

「1953年3月から5月の間に、アイゼンハワー大統領をふくむアメリカの当局者たちは核兵器に訴えて戦争をエスカレートさせようと考えた。…通常兵器よりも「ドルに換算してより安価な」原子爆弾の使用に賛成していた。…アイゼンハワーが朝鮮ばかりでなく中国にたいしても原爆の使用を考えていたことは注目してよい」(ガバン・マコーマック・オーストラリア国立大学教授『侵略の舞台裏 朝鮮戦争の真実』シアレヒム社発行・影書房発売1990年)

 アメリカは朝鮮戦争での核兵器使用は断念したものの、「休戦」後には韓国に核兵器を持ち込んでいます。

 重大なのは、日本は朝鮮戦争のきっかけをつくった張本人であるだけでなく、核兵器を使おうとした米軍の兵站・後方基地となったことです。

 前記「映像の世紀」は、「休戦協定調印」翌日の1953年7月28日にキム・イルソン(金日成)がおこなった演説の映像を流しました。ここで彼は、「われわれはアメリカ帝国主義者の企てを粉砕した」と述べるとともに、「米国の空軍基地が日本にあり、日本が米軍の兵器廠、後方基地であったことをよく知っている」「停戦協定の締結は砲火の停止を意味するものではない」と語っています(写真右)。

 現在の朝鮮のミサイル実験・核開発が、朝鮮戦争に端を発するアメリカの核戦略にあることは明らかです。朝鮮戦争はキム・イルソンが言った通り、まだ終わっていないのです。米軍主導の「国連軍」の後方司令部は今も横田基地に置かれています。

 朝鮮戦争と日本の関係はそれだけではありません。朝鮮半島で戦っている米軍の穴埋めに、アメリカは日本に警察予備隊の創設を迫り、吉田茂政権は、国会にもはからず、一片の「警察予備隊令」(1950年8月10日)で再軍備しました。それが今日の自衛隊です。

 朝鮮戦争の特需はトヨタ、日産など主要大企業を育て、日本の「高度経済成長」の基礎をつくり、今日の日本経済につながっています。

 孫崎氏は前掲書でこう強調しています。

日本という国がどういう国か、そして今日の国際社会がどういうものか、それを理解するために、朝鮮戦争とは何だったのか、朝鮮戦争は何をもたらしたのかを、今改めて問う意義がある

 それはまた、「軍拡(安保)3文書」を撤回させ、東アジアの平和実現を進める上でも不可欠の課題です。
 朝鮮戦争はまだ終わっていないのです。

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朝鮮(北朝鮮)はなぜミサイル実験を行うのか(上)挑発者は誰?

2023年02月20日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が18日、ICBM級のミサイル1発を日本海に発射する実験を行いました。岸田文雄首相は「国際社会全体への挑発」だと述べました。日米韓3カ国の外相は訪れていたベルリンで急きょ会談し、朝鮮を非難しました(写真中)。

 朝鮮はなぜミサイルを打つのでしょうか。

 それは米韓の合同軍事演習に対抗するためです。今回も、米韓は今月22日の図上演習に続いて来月中旬から11日間、「2023フリーダムシールド(自由の盾)」と称する合同軍事演習を行うと発表しました。「両国は演習期間中に師団級の合同上陸訓練と20余りの韓米連合野外機動訓練を実施する計画」(18日付ハンギョレ新聞日本語電子版)です。

 さらに今回は、これに米国による国連安全保障理事会(安保理)非公開会議の開催が重なりました。安保理非公開会議は16日午後、「不拡散と北朝鮮」をテーマに行われました。安保理は1月30日にも「北朝鮮の核・ミサイル問題」をめぐって非公開会議を行なったばかりです。

 これに対し朝鮮は17日、「安保理を不法非道な対朝鮮敵視政策の実行機構に転落させようとする米国の策動が、もはや容認できないレベルに達している」とする外務省談話を発表しました(同ハンギョレ新聞)。

 さらに談話は、米韓合同軍事演習についてこう指摘しています。

「米国と南朝鮮が今年中に20回余りの各種合同軍事演習を計画し、その規模と範囲を過去最大規模の野外機動戦術訓練の水準で展開しようとするのは、朝鮮半島と地域情勢が再び緊張激化の渦に陥ることを予告している」「現実は米国と南朝鮮こそ朝鮮半島と地域の平和と安定を意図的に破壊する主犯であることを明確に示している」(同ハンギョレ新聞)

 アメリカはシンガポールで行われた初の朝米首脳会談(2018年6月12日)で、「米韓演習は挑発的、中止により多額の費用を節約できる」(会談後のトランプ大統領=当時の記者会見、2018年6月13日付共同配信)として、合同演習の中止を言明しました。「米韓演習は挑発的」とまで言って。

 ところがアメリカは、この言明をそれこそ一方的に反故にして、合同軍事演習を再開しました。その後の朝鮮のミサイル発射実験はすべてその対抗措置です。

 18日夜のNHKニュースで、朝鮮のミサイル実験についてコメントした元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏は、「やられたらやりかえす。まるで子どものケンカだ」と揶揄しました。しかし、語るに落ちるで、まさに朝鮮は「やられた」から「やりかえす」のです。はじめに「やった」のはアメリカの方です。

 「挑発」しているのはどちらなのか。事実経過に照らせば明白です。

 ところがアメリカは19日、朝鮮のミサイル発射への「対抗」だとして、朝鮮が強く警戒するB1爆撃機を使って韓国と合同訓練を、さらに日本の自衛隊とも合同訓練を行いました(写真右)。自分で挑発しておいて、相手がやり返したらそれを口実にさらにやり返す。これがアメリカのマッチポンプ手法です。

 アメリカに追随する日本政府は一貫して「北朝鮮の挑発」と事実を偽っていますが、それと符丁を合わせて日本のメディアも「北朝鮮の挑発」と言い続けています。
 この事実に反する報道(偏向報道)は朝鮮に対する誹謗中傷であり、政府の朝鮮敵視政策への加担であり、在日朝鮮人への差別を助長するきわめて犯罪的な役割を果たしていることを、メディア関係者、そして受け手である市民は銘記すべきです。

 さらに、日本市民は朝鮮がミサイル実験・核開発を余儀なくされている根本的理由(根源)に目を向ける必要があります。(あすに続く)

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Jアラート騒動が示した「ミサイル防衛」の虚構

2022年10月05日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
  

 4日午前7時27分、NHKなどテレビは一斉に放送を中断し、「北朝鮮によるミサイル発射」のJアラート警報(写真左)を流し、特番を組みました。Jアラートの発信は2017年9月15日以来5年ぶりです。

 日本のメディアは相変わらず「北朝鮮の挑発」という日本政府の言い分そのままの報道を繰り返しています。しかし、今回を含む最近の朝鮮民主主義人民共和国の「ミサイル発射」が、9月26日から日本海で行われている米韓合同軍事演習、それに続く30日からの5年ぶりの日米韓合同軍事演習(写真中)に対抗したものであることは明らかです。挑発しているのは日米韓の方です。

 一方、今回のJアラート騒動で改めて明らかになったことがあります。それは、政府・防衛省が膨大な予算を投入している「ミサイル防衛」なるものはまったく役に立たない虚構だということです。

 J アラートの内容と政府の発表によって時間的経過を振りかえってみましょう。

7:22ころ ミサイル発射
7;27 Jアラート(1回目)が「ミサイル発射」を告知し、北海道と東京都の島々に避難指示
7:28~29ころ ミサイルが青森県上空を通過
7:42 Jアラート(2回目)が「ミサイル通過」を告知し、北海道と青森県に避難指示
7:44ころ ミサイルは太平洋上のEEZ(排他的経済水域)外に落下

 この経過で明らかなのは、Jアラートがミサイル発射を告知し避難を指示したのは、ミサイルが上空を通過するわずか1~2分前だったことです。これでは避難できるはずがありません。J アラートは何の役にも立たないということです。

 役に立たないのはJ アラートだけではありません。

 松野官房長官は8時すぎの記者会見で、「自衛隊は(ミサイルの)破壊措置はとらなかった」と明らかにしました。その理由は、「日本領域での被害は想定されなかったため」だと述べました。これはおかしな話です。

 「被害は想定されない」ことが分かっていたのなら、なぜJ アラートで何度も避難を指示したのでしょうか。Jアラートによって北海道や青森は騒然とし、マラソン大会を中止した学校も出たほどです。被害がないことが分かっていながらJ アラートを鳴らしたのは、騒ぎを大きくして朝鮮への批判を煽るためではなかったのでしょうか。

 そうでないというなら、「破壊措置」は「とらなかった」のではなく「とれなかった」のではないでしょうか。
 上記の通り、ミサイルが日本上空を通過すると自衛隊が探知してJ アラートを発信してから実際に通過するまでの時間はわずか1~2分。ミサイルの速度は音速をはるかに超えていました。

 共同通信の磐村和哉編集委員は、フジテレビ系の特番で「(ミサイルの速度が)マッハ5以上だと迎撃は難しい」と述べましたが、韓国軍が発表した速度は「マッハ17」でした。とても迎撃できる速度ではないでしょう。

 「ミサイル防衛」と称してアメリカから巨額の費用で「イージス・アショア」(写真右)を購入したのは安倍晋三首相(当時)でした。それはなんの役にもたたず、ただ米兵器産業をもうけさせ、米政府を喜ばせただけの巨大な税金の無駄遣いだったのです。

 万一ミサイル戦が始まれば、「防御」は不可能です。「抑止」を名目にした軍拡は緊張を高めるだけです。沖縄諸島で進行している自衛隊のミサイル基地化は戦争の危険を現実のものにしています。
 戦争を防ぎ平和を維持する手段は外交と軍縮しかありません。今回のJアラート騒動は、そのことを改めて示したのではないでしょうか。


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「日韓条約」から今汲み取る2つの教訓

2022年06月22日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   
 57年前(1965年)のきょう6月22日、「日韓基本条約」が締結されました。条約と同時に、「請求権協定」「漁業協定」「法的地位協定」「文化財保護協定」の4つの協定も調印されました。

 元徴用工の強制労働問題で、韓国大法院(最高裁)が元徴用工らの訴えを認め、三菱重工、日本製鉄に損害賠償を命じました(2018年10月、11月、写真中)。
 しかし安倍晋三政権は、「請求権協定で解決済み」として逆に韓国を批判しました。岸田首相が「国と国の約束は守るべきだ」と言っているのもこのことです。

 しかし、「請求権協定」は国家間の「請求権」についての協定で、個人の損害賠償請求を縛るものでないことは日本政府も認めています。「請求権協定」を口実にした日本政府の言い分にはまったく道理がありません。

 日本政府の言い逃れの根底には「日韓基本条約」自体の2つの根源問題があります。

 第1に、同条約は、帝国日本が植民地支配のために武力を背景に強行した「第2次日韓協約」(1905年)、「韓国併合条約」(1910年)を既成事実化し、植民地支配の責任を隠ぺいしたことです。

 日韓条約の最大の焦点は、「日本が朝鮮を植民地とするにあたって強要した「旧条約の無効」をどのように確認するかという問題」(中塚明著『日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研2002年)でした。
 結果、日韓条約(第2条)は、「(旧条約は)もはや無効であることが確認される」としました。

「日本政府は、(旧条約は)本来有効であったが、時代が変わったので、1951年9月8日調印のサンフランシスコ平和条約で無効になっているという立場をとったのです。こうした考え方が、現在にいたるまで日本と韓国・朝鮮のあいだに、さまざまな困難をつくり出す原因になっているのはいうまでもありません」(中塚氏、前掲書)

 第2に、日韓条約は、アメリカが東アジア覇権戦略によって、軍事同盟国である日本と韓国に締結させた条約だということです。

「日韓条約はアメリカからすればインドシナ戦争(ベトナム戦争―私)の後方支援体制づくりとして結ばれた条約であった。すなわち、韓国がインドシナ戦争に軍事的に貢献し、この韓国を日本が経済的に支える仕組みがこの条約によってつくりだされた。…つまり、日韓条約は、六〇年代の軍事や経済をめぐる米日韓の利害の一致を反映するものであった」(文京沫著『新・韓国現代史』岩波新書2015年)

 日韓条約のこの2つの根源問題は、ウクライナ戦争の情勢下で、まさに今改めて問われている問題です。

 岸田政権は日本の侵略戦争・植民地支配の歴史的責任を完全に棚上げし、軍事費を大幅に拡大して「戦争をする国」へひた走っています。アメリカは対中国戦略から米日韓の軍事同盟の強化・一体化を図っています。3ヵ国軍合同演習の復活はその一環です。

 16日、韓国・釜山で、日米政府への接近を強めているユン・ソクヨル(尹錫悦)政権に対する抗議集会が行われました(写真右)。集会を主催した市民団体はこう主張しています。

平和憲法改定など戦争準備に拍車を加える日本政府に対し、韓国の軍事情報を提供するGSOMIA協定の正常化は危険千万だ。…米国は、対北朝鮮敵対政策、対中国封鎖戦略の最前面に韓米日軍事同盟を押し立てようとしている。日本政府はこれに便乗し、戦争国家となるべく本格的に展開している」(17日付ハンギョレ新聞日本語電子版)。

 きわめて正確な指摘です。
 「日韓条約」の歴史から私たちが今汲み取るべき教訓は、日本の侵略戦争・植民地支配の歴史的責任を明確にし、軍事同盟を廃棄し、非戦・非武装の憲法の道を進むことです。

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韓米合同軍がミサイル発射、朝鮮半島の緊張高めるユン政権

2022年06月07日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 韓国とアメリカの合同軍が6日、日本海に向けてミサイル8発を発射しました(韓国軍7発、米軍Ⅰ発)。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が5日に8発のミサイルを発射したことへの「対抗措置」だとしています。しかし経過を見れば、挑発しているのはアメリカ・韓国の側であることは明白です。

 問題の元凶は韓米合同軍事演習です。

 そもそも朝鮮戦争(1950・6・25~)は停戦協定が調印(53・7・27)されただけで、いまだに終結していません。その状態で、韓国とアメリカが合同軍事演習を行うことがいかに朝鮮にとって脅威であり、朝鮮半島の緊張を高めるものであるかは明白です。だから朝鮮は、再三にわたって韓米合同演習を行わないよう要求してきました。

 その外交努力の1つの到達点が、朝米シンガポール会談(2018年6月12日)で、トランプ大統領(当時)は記者会見で、「米韓演習は挑発的」と認め、「中止」を言明しました(同6月13日付共同通信)。

 その前段には、朝鮮・キム・ジョンウン(金正恩)委員長と韓国・ムン・ジェイン(文在寅)大統領の歴史的な板門店会談(2018・4・27)がありました。

 ところが、ムン氏に代わって5年ぶりの保守政権となったユン・ソクヨル(尹錫悦)氏が大統領に就任(5月10日)した直後から、事態は急速に変化してきました。

 5月24日、ユン大統領はバイデン米大統領との会談で、「韓米合同軍事演習の強化」を合意しました(写真左)。

 6月2~4日、韓米合同軍は沖縄南東海上で、米原子力空母も加わった軍事演習を強行しました。原子力空母が参加した合同軍事演習は2017年以来です。

 朝鮮はそれに対抗して8発のミサイルを発射し、韓米合同軍がさらにそれを口実に同じ8発のミサイルを反射したもので、どちらが挑発したかは明らかです。

 日本政府やNHKなどメディアは、今回も朝鮮のミサイル発射を「挑発」と言い、韓米のそれを「対抗措置」と言っていますが、これは事実経過を逆に描く典型的なプロパガンダ(偏向報道)と言わねばなりません。

 ユン氏は大統領選挙の時からムン前大統領がすすめてきた「南北融和」政策を「失敗」と断じてきました。バイデン大統領との会談では合同軍事演習の強化とともに、アメリカの核の「拡大抑止」でも合意しました。

 そして、ミサイルを発射した6日には、「より根本的で実質的な安全保障能力を備える」と述べ、軍事力・韓米軍事同盟のいっそうの強化を表明しました(写真中)。

 ユン氏のこうした言動は、ウクライナ情勢に乗じたバイデン政権の東アジアにおける覇権主義強化とあいまって、朝鮮半島、東アジアの軍事的緊張を急速に高めています。

 この情勢に日本はもちろん密接に関係しています。

 松野博一官房長官は6日の会見で、朝鮮を非難すると同時に、「反撃能力(敵地攻撃能力)を含むあらゆる選択肢」の検討、軍事力の「抜本的強化」をあらためて表明しました(写真右)。

 さらに今後予断を許さないのが、「日韓米3ヵ国合同軍事演習」をめぐる動きです。
 現在は日米、韓米がそれぞれの軍事同盟によって合同演習を重ね、アメリカを中心に間接的に連携していますが、さすがに3ヵ国の合同演習はおこなわれていません。

 それをバイデン政権は韓国に再三要求しています。韓国側はいまのところ承諾していませんが、ユン大統領の言動から、今後韓国が応じる可能性はけっして小さくありません。

 もし日韓米合同軍事演習が強行されれば、明白な憲法違反(集団的自衛権)であるばかりか、朝鮮半島の緊張激化に日本が直接関与する重大な画期となります。絶対に容認することはできません。

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