関東大震災(1923年9月1日)をきっかけに発生した日本人(政府と市民)による朝鮮人、中国人、台湾人、社会主義者などの日本人に対する大虐殺から明日で100年です。
遠い昔の出来事のようですが、その根は断たれていません。それは、今日の在日コリアンはじめ外国人に対するヘイトスピーチ・ヘイトクライムに形を変えて生き続けています。
なぜなのか? 最大の問題は、いまだに大虐殺の真相が明らかになっていないこと、日本政府がこの100年、一貫して実態調査を放棄・妨害し、事実を隠蔽してきたことです。
関東大震災時に朝鮮人はどれほど虐殺されたのか。
大韓民国臨時政府(当時)の機関紙「独立新聞」社長・金承学氏の調査では6661人、吉野作造報告書では2711人(うち東京724人)、諸新聞の集計では1464人。朝鮮総督府の発表は832人です(在日本朝鮮人人権協会発行「人権と生活」誌2023年6月号)。
中央防災会議(内閣府)の報告書(2006年7月)では、「震災犠牲者10万5000人の1~数%」(1050人~)となっています。ばらばらで調査の主体によって大きな差があります。
日本弁護士連合会(日弁連)は、虐殺を目撃した文戊仙(ムン・ムソン)氏の人権救済申し立てを受け、2003年8月25日、日本政府に「真相調査・原因究明・被害者や遺族への謝罪」を要求する「勧告書」を提出しました。
しかし、政府はそれを今日まで20年間無視し続けています。
「勧告書」をまとめる中心となった梓沢和幸弁護士は、日本政府が真相を隠ぺいしているからくり、そして今度の課題についてこう指摘しています。
「当時、起こった虐殺事件のいくつかは裁判になっている。…ところが当時の裁判資料は裁判所にはなく、検察庁が保持しているのですが、この検察庁が全く出さないのです。…これからのポイントは、この検察庁にある判決資料を捨てさせない、そして公開させる、これが真相究明における一番のポイントではないでしょうか」(前掲「人権と生活」所収のインタビュー)
検察庁に資料があるが、出さない。この事実はほとんど知られていないのではないでしょうか(私は初めて知りました)。政府の狡猾さとともに、日本人がこの問題にいかに無関心かを示しています。
しかし、韓国は違います。
韓国では2022年7月、40余の市民団体が結集して「関東虐殺100周忌追悼事業推進委員会」が発足しました。「発足宣言」はこう述べています。
「日本帝国主義の朝鮮人に対する植民地支配を象徴的に示す関東大虐殺の真実を隠しておくことは、これ以上容認できない。…どれほど多くの人々が虐殺されたのか、犠牲者の遺体はどこにあるのか、(日本政府に対し)虐殺の被害者に関するあらゆる調査資料を公開することを求める。…散り散りになった被害者の遺体を故郷にお迎えするとともに、無念の濡れ衣で亡くなった被害者たちの名誉回復のために努力しなければならない」(2022年7月14日付ハンギョレ新聞日本語電子版、写真右)
ここで述べられていることは、本来私たち日本人こそが行わねばならないことです。
「日本が一刻も早くとるべき行動は、真相発表を要求する運動を封殺し被害者側に立証責任を負わせてきた態度を改め、加害者側から真相を調査・発表することであり…虐殺の罪を認め責任を果たすことである。それが100年間の「無責任」を終わらせる唯一の方法であろう」(鄭永寿・人権協会会員、前掲「人権と生活」)
加害国・日本の政府と市民の責任があらためて厳しく問われています。