アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

メディアの朝鮮差別報道は何をもたらすか

2023年06月05日 | 朝鮮・韓国差別とメディア
   

 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が5月31日、「偵察衛星」を打ち上げました(失敗)。日本政府・防衛省は発射直後から「弾道ミサイルと思われるものが発射された」(31日、岸田首相)と虚偽の情報を流し、沖縄にPAC3を運び込んで「迎撃態勢」をとりました(写真中)。

 県民からは「人々の不安をいたずらにあおり、国内の軍備強化が必要だという印象操作をしているように感じる」(清水早子ミサイル基地はいらない宮古島住民連絡会共同代表、1日付沖縄タイムス)との声が上がりました。

 それもそのはずです。「(自衛隊)幹部は「北朝鮮による発射を奇貨とし、台湾有事を想定して部隊を動かせた。…」と本音を語る。別の防衛省幹部は「地元調整も含め、有事の際のスムーズな対応につなげる『地ならし』になった」と自賛した」(1日付共同配信)。Jアラート・PAC3は自衛隊の有事予行演習だったのです。

 さらに日米韓の防衛相は、まさに朝鮮の衛星発射を「奇貨とし」、ミサイル情報の「即時共有」など一層の軍事協力で合意しました(3日、写真左)

 朝鮮の衛星発射を利用したこうした日米韓の政治的策動を後押ししているのが、メディアの偏向・差別報道です。特に見過ごせないのは次の3点です。

 第1に、「積まれた衛星の用途が何であれ、弾道ミサイル技術を用いた発射行為が、そもそも国連安全保障理事会決議に違反している」(1日付朝日新聞社説)とし、朝鮮の行為を「暴挙」と非難していることです。これは日米政府の言い分そのままで、すべてのメディアに共通しています。

 この点について朝鮮の金与正氏は1日の談話でこう述べました(写真右)。
どの国も行っている衛星の打ち上げを我々だけは行ってはならないという論理は、我が国の宇宙利用の権利を甚だしく侵害し、不当に抑圧する強盗さながらの間違い」(1日付朝日新聞デジタル)

 朝鮮への批判は「二重基準(ダブルスタンダード)」だという反論です。この与正氏の言い分にメディアはどう答えるのでしょうか。

 それでも安保理決議違反は否定できない、と言うしかないでしょう。では、その安保理決議自体は「二重基準」ではないのでしょうか。アメリカはじめ欧米諸国は(核)弾道ミサイルの実験を繰り返しながら、朝鮮には禁止する。それが「二重基準」でなくてなんでしょうか。「二重基準」とは差別ということです。

 第2に、「北朝鮮は昨年来、ミサイルの発射実験を繰り返し、攻撃力の向上を誇示してきた。…こうした北朝鮮の動きに対抗して、米韓両国は軍事演習を活発化させている」(1日付東京新聞社説)とし、それを「北朝鮮の挑発行為」と言い切っていることです。

 これは事実関係の完全な逆転(改ざん)です。朝鮮はアメリカとの首脳会談(2018年6月12日、シンガポール)以後、ミサイル実験は控えてきました。トランプ大統領(当時)が「米韓演習は挑発的。中止により多額の費用を節約できる」(首脳会談後の記者会見、共同配信)と述べ、米韓軍事演習の中止を約束したからです。

 その約束を一方的に破り、米韓軍事演習を再開したのはアメリカの方です。軍事演習は回を追うごとに規模を拡大し、今では日本軍(自衛隊)も公然と参加するようになりました。朝鮮がミサイル実験を再開したのはこうした米日韓の軍事行動に対する対抗です。今回の「偵察衛星」発射もその延長線上です。

 「挑発」しているのはアメリカであり、それに軍事同盟で追随している韓国、日本です。
 にもかかわらず、メディアは一貫して「北朝鮮の挑発」と繰り返しています。これこそ典型的なフェイクニュースと言わねばなりません。

 第3に、朝鮮に対し「ミサイル開発や衛星発射に投じる予算があるのなら、国民の暮らしの向上に振り向けるのが為政者の務めではないか」(1日付東京新聞社説)などという論調です。

 国家予算は軍事よりも民生に回すべきだという点に限ればその通りです。であるなら、メディアは同じ言葉をウクライナ政府に向けて発しているでしょうか。「祖国防衛」のために国民に犠牲を強いているのは朝鮮もウクライナも同じです(それを肯定するわけではありません)。ウクライナの「徹底抗戦」「反転攻勢」は支持(扇動)しながら、朝鮮のそれは「暴挙」と中傷・非難する。これが差別報道でなくてなんでしょうか。

 こうした差別報道の結論は、「日米韓は今回の発射を受けて改めて連携を確認しつつ…強めるべきだ」(同朝日新聞社説)、「日米韓三カ国をはじめとする国際社会は連携して…強めるべきだ」(同東京新聞社説)といずれも日米韓の連携=軍事同盟強化の主張になっています。それは朝鮮差別が何をもたらすかを示すものではないでしょうか。

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NHK大河の朝鮮侵略・植民地主義者美化の系譜

2021年02月18日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

    
 今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一が朝鮮侵略・植民地支配の先頭に立った人物だったことは先に書きましたが(16日のブログ参照)、NHK大河ドラマ(以下、大河)が朝鮮侵略者・植民地主義者を主人公(モデル)などにして美化するのは今回だけではありません。

 大河は「青天…」が、第1回の「花の生涯」(1963年)から60作目になります。その中から、朝鮮侵略者・植民地主義者を主人公あるいは主人公に近い人物として登場させた作品をピックアップすると、以下のようになります(年代さかのぼり。作品名の次は主人公またはそれに近い関連人物)。

第60作 「青天を衝け」 渋沢栄一(主人公)
第59作 「麒麟が来る」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第57作 「西郷どん」 西郷隆盛(主人公)
第54作 「花燃ゆ」 吉田松陰・伊藤博文(主人公周辺)
第52作 「八重の桜」 吉田松陰・西郷隆盛・伊藤博文(主人公周辺)
第50作 「江~姫たちの戦国~」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第49作 「龍馬伝」 坂本竜馬(主人公)
第45作 「功名が辻」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第43作 「新選組!」 坂本竜馬(主人公周辺)
第41作 「利家とまつ」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第35作 「秀吉」 豊臣秀吉(主人公)
第30作 「信長」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第28作 「翔ぶが如く」 西郷隆盛(主人公)
第23作 「春の波濤」 福沢諭吉・伊藤博文(主人公周辺)
第21作 「徳川家康」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第19作 「おんな太閤記」 豊臣秀吉(準主人公)
第16作 「黄金の日日」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第15作 「花神」 吉田松陰・伊藤博文(主人公周辺)
第11作 「国盗り物語」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第6作 「竜馬がゆく」 坂本竜馬(主人公)
第5作 「三姉妹」 西郷隆盛(主人公周辺)
第3作 「太閤記」 豊臣秀吉(主人公)
  (西郷隆盛は「征韓論」、坂本竜馬は「竹島開拓」構想など=備仲臣道著『坂本龍馬と朝鮮』かもがわ出版2010年参照)

 以上、全60作中22作品(37%)が朝鮮侵略者・植民地主義者が主人公であったりその周辺の人物であったりした作品です。
 なかでも突出しているのが豊臣秀吉で、11作品(全作品の18%)に登場しています(主役・準主役3、周辺8)。

 秀吉は、1592年~1598年にかけて朝鮮半島を侵略しました。日本では「文禄・慶長の役」として教科書にたんなる事実として記述されていますが、被害を受けた朝鮮半島では「壬辰・丁酉(じんしん・ていゆう)の倭寇」と呼ばれる歴史的侵略として記録・記憶されています。
 「豊臣秀吉の朝鮮侵略は、後々まで日本人の思想に大きな影響をもたらした」(中塚明著『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研2002年)もので、秀吉こそ朝鮮半島侵略に先鞭をつけた歴史的犯罪人と言わねばなりません。

 その秀吉をはじめ上記の通り朝鮮侵略・植民地支配の中心的人物が大河ドラマで56年間(「太閤記」~「青天を衝け」)にわたって美化され続けていることは、NHKの重大な社会的責任を示すものです(中には必ずしも美化とは言えないものもありますが、歴史的重要人物として描いていることは変わらず、朝鮮侵略の素顔を隠ぺいしていることは共通しています)。
 同時にそれは、朝鮮侵略・植民地支配の歴史的責任に対する日本人の無知・無関心・思考停止を永年にわたって助長してきたと言わざるをえません。

20日(土)午後1時、NHKEテレ「こころの時代」(「沈黙は共犯 闘う医師」)で、コンゴの婦人科医でノーベル平和賞受賞者、デニ・ムクウェゲさんのインタビュー番組の再放送があります(2019年12月22日の再放送)。日本人(特に男性)はぜひとお薦めします。


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朝鮮半島・「挑発」しているのはどちらか

2019年12月28日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

    

 NHKはじめに日本のメディアは朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩委員長の言動や飛翔物発射実験を、「北朝鮮の挑発」と称することが常態化しています。安倍政権と歩調を合わせたものですが、事実を歪曲する偏向報道と言わねばなりません。

  「挑発」とは、「人を刺激して事件や欲情などを起こすようにしむけること。そそのかすこと」(国語辞典)ですが、朝鮮の言動のどこにそんな意味があるのでしょうか。
 日本メディアの朝鮮報道の特徴は、金委員長や発射実験などの背景、経過を一切捨象し、現象面だけを切り取って印象付けていることです。
 朝鮮がアメリカとの交渉のめどを「年末」においていることについても、メディアは「一方的な設定」と非難していますが、これにも経過があります。

 起点は2018年6月12日の金委員長とトランプ大統領の会談です(写真左)。その合意文書である「シンガポール共同宣言」はこううたっています。

 「トランプ大統領と金委員長は、新たな米朝関係の確立と、朝鮮半島における持続的で強固な平和体制の構築に関連する諸問題について、包括的で詳細、かつ誠実な意見交換をした。トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した」(2018年6月13日付共同配信)

 さらにトランプ氏は会談後の記者会見でこう述べました。
 「米韓演習は挑発的。中止により多額の費用を節約できる」(同、写真中)

 「朝鮮半島の完全非核化」は、アメリカが朝鮮に「安全の保証を与える」ことと一体不可分、セットだというのが会談の合意内容であり、その重要な具体化が「米韓(合同軍事)演習の中止」でした。トランプ氏は「米韓演習」を「挑発的」だとさえ言ったのです。 

 ところがアメリカは、早くも会談から半年後の昨年12月、規模を縮小したり名称を変えたりしながら、韓国との合同軍事演習を再開しました。

 「合同参謀関係者は『韓米空軍パイロットの技量向上のために、大隊級以下では小規模な合同演習を並行する予定だ』…と話した」(2018年12月4日付ハンギョレ新聞日本語版)

  さらに今年の4月。「韓米空軍は今月22日から朝鮮半島上空で、連合編隊軍の総合演習を行っている」(19年4月26日付同上。写真右は合同演習のため釜山基地に入った米原子力空母。同紙より)

  次いで8月。「韓米両国は北朝鮮の激しい反発にもかかわらず…9日にマーク・エスパー米国防長官の訪韓を機に合同演習日程と名称などを公式発表する」(19年8月7日付同上)

 そして11月。「韓国と米国の軍当局が、今月中に大規模合同軍事演習『ビジラントエース』の代わりに調整された形で行う予定だった演習を延期(中止でなく延期―引用者)することを決めた」(19年11月18日付同上)

 こうしてアメリカと韓国は昨年6月の朝米会談後、今日まで少なくとも4回、合同軍事演習を行っています(うち1回は延期)。朝鮮はこれを「シンガポール共同宣言に反する」と批判し、再三アメリカに合同演習を取りやめるよう言ってきました。しかし、アメリカは耳を貸そうとしませんでした。

 どちらが「シンガポール共同宣言」に反しているか、どちらが「挑発」しているかは明らかではないでしょうか。
 「挑発」というなら、トランプ氏自ら「挑発」と言明した韓米合同演習を繰り返しているアメリカこそ挑発者です。そしてそのアメリカに追随し、朝鮮敵視の姿勢を露わにしている安倍晋三首相は挑発者の片割れです。 

 こうした事実を一切捨象し、「北朝鮮の挑発」という決まり文句を繰り返す日本のメディアの責任はきわめて重大です。メディアは事実に反する「北朝鮮の挑発」なる表記・表現を直ちにとりやめ、事実に基づいた公正な報道を行わなければなりません。


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米韓合同軍事演習・「挑発」しているのはどちらか

2019年08月06日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 アメリカと韓国は5日、合同軍事演習を開始しました(20日まで)。
 これについてNHKは、「北朝鮮の新たな挑発が予想される」(5日朝のニュース)と報じました。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が「飛翔体」の発射実験を行ったことについても、日本のメディアは異口同音に「北朝鮮の挑発」と言いました。
 これは日本語の意識的な誤用によって事実を歪曲し、朝鮮に対する嫌悪感をかきたてる偏向報道と言わねばなりません。

 「挑発」とは、「相手を刺激して向こうから事を起こすようにしむけること」(「大辞林」三省堂)、「相手を刺激して事件などが起こるようにしかけること」(「広辞苑」岩波書店)です。

 「挑発」しているのはいったいどちら(誰)でしょうか。

 朝鮮の今回の「飛翔体」発射実験(7月25日、8月2日)は、米韓合同軍事演習の実施に対抗して行われたものであり、日本のメディアもそう報じています。米韓合同軍事演習がなければ今回の朝鮮の発射実験はなかったでしょう。

 そもそも、米韓合同軍事演習の実施は、朝米首脳会談(2018年6月12日)の合意違反です。

 「シンガポール共同声明」は、「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束」(2018年6月13日付中国新聞=共同配信)したと明記しています。

 さらにトランプ氏は、金正恩委員長との会談後の記者会見でこう述べました。
 「米韓演習は挑発的。中止により多額の費用を節約できる」(同日付共同配信)

 この「共同声明」「トランプ会見」に従って、アメリカは昨年の米韓合同演習を中止しました。ところが1年後の今年、一方的に、「朝鮮半島有事を想定した合同軍事演習」(韓国国防相)を再開したのです。どちらが「相手を刺激して」「ことを起こすようにしむけ」ているか、すなわち「挑発」しているかは明らかではないでしょうか。

 トランプ氏自身がいみじくも語ったように、もともと米韓合同軍事演習自体が「挑発的」なのです。朝米会談合意を無視してそれを再開したアメリカ・トランプ大統領の責任はきわめて重大です。

 NHKはじめ日本メディアの対朝鮮偏向報道は今に始まったことではありませんが、メディアである以上少なくとも日本語は正確に使わねばなりません。「北朝鮮の挑発」という日本語の誤用・事実を歪曲する報道は、メディアとして許されません。それは朝鮮半島の平和実現、日本と朝鮮の国交正常化に逆行するものであることを銘記すべきです。


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朝鮮敵視の偏向報道は日本をどこへ導くか

2019年06月01日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 NHKは5月31日夜7時のニュースで、「北朝鮮、対米交渉キーパーソン粛清か」との「ニュース」を、川崎の殺傷事件に次ぐ準トップで、5分間にわたって流しました。「朝鮮日報」の記事を検証することもなくそのまま流し、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対して「粛清国家」のイメージを植え付けるもので、きわめて重大な偏向報道と言わねばなりません。

 同種の「報道」は夕方のTBS「Nスタ」でも行われました。6月1日付の新聞も、産経をはじめ同様の記事が予想されます(ブログ執筆時は朝刊発行前)

 「朝鮮日報」の記事は、韓国統一省副報道官が同日の記者会見で「内容は確認できていない」と述べたように(写真中)、きわめて疑わしいものです。それを「事実とするなら」(NHKアナウンサー)という言葉を最後につけただけで、さも事実であるかのように延々と流すなど、報道機関としてあるまじき行為です。人を殺人者よばわりする風評を何の検証もせずに「ニュース」にすること変わりません。

  その一方で…。

 5月21日付の中国新聞第2社会面の雑報欄に、「拉致被害疑いの男性発見」の見出しで、次のような記事(共同電)が小さく載りました。
 「千葉県警は20日、『北朝鮮による拉致の可能性を排除できない』行方不明者883人のうち、1992年に失踪した50代の男性を今年4月に国内で発見したと発表した。…『特定失踪者問題調査会』は…53歳の元陸上自衛官と明らかにした」

 「北朝鮮に拉致された」と言っていた男性が実は日本国内にいたという事実です。
 これは氷山の一角です。「特定失踪者」が日本国内で発見されたのは今回が初めてではありません。朝鮮新報(29日付)によれば、少なくとも「13年8月と9月、14年11月、15年6月と10月、16年6月と12月」にも国内で発見されています。

 これは何を意味しているでしょうか。政府が発表してきた「拉致被害」の実態がきわめて不正確なものであり、「失踪事件」を「北朝鮮による犯罪」としてきた政府と日本のメディアの”拉致キャンペーン“がいかに偏向したものであるかを示すものではないでしょうか。

 朝鮮側は今回の千葉県警の発表についてこう論評しています。
 「朝鮮中央通信社論評(26日付)は、日本当局がけん伝する『拉致問題』の詭弁を如実に示しているとし、安倍政権は『詐欺と謀略のベテラン』だと揶揄した。労働新聞27日付論評は、空前絶後の特大型の拉致犯罪(植民地支配下の「慰安婦」、強制徴用など―引用者)を抱えている日本が、過去の罪悪を清算する考えは全くせず、かえって国内で行方不明となった人々をわれわれと故意に結び付けているのは、反朝鮮謀略の極みであると糾弾した」(29日付朝鮮新報)。

  問題は、この事実を日本のメディアがどう報道したかです。

  失踪者が国内で発見されたという千葉県警の発表を報じたのは、先の中国新聞(共同)のほかは、毎日新聞と産経新聞がいずれも第2社会面で雑報扱いしただけで、朝日新聞、読売新聞はまったく報じませんでした。NHKも同様です。
 朝鮮中央通信や労働新聞の論評にいたっては、1行でも報じた新聞、テレビは皆無でした(広島で私が見た限り)。

 朝鮮を「悪」とする新聞報道は垂れ流し、都合の悪い警察発表は無視(軽視)し、朝鮮側の主張は歯牙にもかけない―これが朝鮮を敵視する偏向報道でなくて何でしょうか。

 もちろん、朝鮮に対する偏向報道は今回に限ったことではありません。「発射実験」をめぐる一連の報道もその典型です。朝鮮を「悪」とみなす偏向報道は日本メディアの例外なき宿痾です。

 その結果、「市民」には朝鮮に対する先入観が植え付けられ、差別が増長されます。そして安倍政権は「強まる北朝鮮の脅威」なる幻影をふりまき、それを口実にアメリカ製の巨額の兵器を大量購入し、社会保障など生活関連予算を圧迫しながら、大軍拡を強行します。

  かつて「鬼畜米英」のプロパガンダが日本をどこへ導いたかを振り返るまでもなく、朝鮮を敵視する偏向報道がこの国をどこへ向かわせようとしているのかを、「日本市民」は冷静に考えなければなりません。

<お知らせ 『象徴天皇制を考えるⅡ』ご予約案内>

 『「象徴天皇制」を考えるⅡ その過去、現在、そして未来』を自費出版します。  前回(2017年11月)出版したものの続編で、17年6月から今年5月7日までの「アリの一言」の中から天皇制に関するものを拾いました(前書きと資料1点=明仁天皇の生前退位ビデオメッセージ)。印刷部数の目安のため、以下の要項で予約を募集します。
〇本の体裁=B6判、モノクロ、ソフトカバー、233ページ(1テーマ見開き、計110テーマ)
〇価格=1冊1000円(送料込み)
〇本の発送=7月上~中旬予定
〇代金のお支払い=振込先を本に同封しますので、お手元に届いた後にお振込みください(2冊以上の場合は1000円×冊数)
〇予約締切=ご予約は6月6日で締め切ります。予約数以上に印刷しますので、後日のご購読お申し込みも可能です(部数のある限り)
〇予約お申込み=件名に「本予約」とお書きのうえ、お名前、ご住所(お送り先)郵便番号、部数を以下のEメールアドレスにご送信ください。  Eメールアドレス:satoru-kihara@alto.ocn.ne.jp
 全くつたない内容ですが、何かの参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。

     

 

 


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朝米首脳会談<上>焦点は「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」

2019年03月02日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 2月27、28両日行われた第2回朝米首脳会談(ハノイ)が合意に至らなかったことについて、トランプ大統領は28日の記者会見で、「北朝鮮が全面的な制裁解除を求めた」からだと言いました。

 これに対し朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)のリ・ヨンホ外相は1日未明急きょ記者会見し、「我々が要求するのは全面的な制裁解除ではなく、一部解除、具体的には国連制裁決議11件のうち2016~2017年に採択された5件、中でも民需経済と人民生活に支障をきたす項目だけを先に解除してほしいというもの」(1日付ハンギョレ新聞)だと述べました。

 当事者双方の説明が食い違っているわけですが、リ外相の会見の具体性、また、「段階的非核化」と「段階的制裁解除」の同時進行が従来の朝鮮の主張であったことから考えれば、リ外相の説明は納得がいくものです。

 そもそも、朝米首脳会談に対するアメリカ主張、そしてメディアの報道・論評には根本的な誤謬があります。それは、焦点がいつのまにか「朝鮮半島の非核化」から「北朝鮮の非核化」にすり替わっていることです。

 朝鮮が核兵器の開発を始めたのは、戦争の相手国(朝鮮戦争は終結していない)であるアメリカが「停戦協定」(1953年)に反して韓国と軍事同盟を結び、核兵器を朝鮮半島に配備し、核で威嚇していることに対する対抗措置です。

 これに対してアメリカが国連安保理などを利用し、朝鮮の核開発を封じるために圧力をかけているのが「経済制裁」です。自らの核保有・配備を棚上げして朝鮮の核を封じようとするのは核超大国・アメリカの利己主義・覇権主義以外のなにものでもありません。アメリカと友好関係にあるイスラエルやインドの核保有は容認しているのですから、ダブルスタンダードの極みと言わねばなりません。

  朝鮮に「非核化」を要求するなら、自らも「非核化」する、少なくとも朝鮮半島からアメリカの核兵器を撤廃しなければ道理に合いません。つまり、焦点は「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」、朝鮮とともにアメリカも朝鮮半島から核兵器を引き揚げることです。

 それが第1回朝米首脳会談(2018年6月12日、シンガポール)で合意した「共同声明」の趣旨であったことを想起する必要があります。

 「共同声明」は、「金委員長は朝鮮半島の完全な非核化に対する揺るぎない意志を再確認した」「相互の信頼構築が朝鮮半島の非核化を促すと認識」するという前文に続き、4項目の合意事項の2番目で「(両国は)朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を構築するために共に努力する」とし、3番目で、「朝鮮民主主義人民共和国は2018年4月27日に採択された板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約した」と明記しています。

 当時は報道でも「朝鮮半島の非核化」が焦点だと言われてきました。ところがそれから8カ月の間にいつの間にか「北朝鮮の非核化」にすり替わり、「制裁解除」と引き換えに朝鮮に一方的に「非核化」の圧力をかけるようになってきました。

 繰り返しますが、焦点は「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」です。そのためには朝鮮の非核化と同時に、アメリカの核を朝鮮半島からの撤去し、さらに駐韓米軍の縮小・撤退へ向けた議論・動きを進める必要があります。
 それこそが「朝鮮半島で恒久的に強固な平和体制を構築する」(第1回朝米会談「共同声明」)道筋です。

 明日は「日曜日記」ではなく「朝米首脳会談」<下>を書きます。


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「朝米会談」か「米朝会談」か

2018年06月02日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)とアメリカの会談は、「朝米会談」というべきか「米朝会談」というべきか。

 5月6日のブログ(「日曜日記1」)では、「朝米会談」というべきだと思うが、抵抗もあり、迷っている、と書きました。その後私は「朝米会談」と言い続けています。

  どちらでもいいではないかと思われるかもしれませんが、私は重要な問題だと思います。日本ではメディアも圧倒的多数の「市民」も、「米朝会談」と言います。しかし、なぜ朝鮮よりアメリカが先にくるのでしょうか。

  日本がかかわる時は、「日米」「日朝」のように「日本」が先にきます。自分の国は先に言う。そして、自分に“近い”ところ(国)を先に言うのが習わしでしょう。

 アメリカと朝鮮はどちらが近いのか。言うまでもありません。朝鮮に限らず、「米韓」「米中」「米ソ」など、アメリカは遠い国であるにもかかわらず、すべてアメリカが先です。なぜでしょうか。それは、言葉(用語)における無意識のアメリカ中心主義、あるいはアメリカ従属ではないでしょうか。

  だから、圧倒的多数に抗するのはそれなりの「勇気」がいりますが、私は「朝米」と言い続けるつもりです。

  そんな私の背中を押してくれた言葉に出会いました。

 「私たちはどう頑張っても、強いものが、勝ったものが著した歴史を多くの場合学ぶことになります。別に教科書だけではなくて、社会教育とか家庭教育とかメディアの中で行われる教育とか、この社会に充満しているさまざまな言葉遣いとか歴史観とか世界観というのは、やはりよほど注意深く受け止めないと、圧倒的に強いものの立場で書かれたもの、表現されたもの、それが社会には充満しているわけです」(太田昌国氏『新たなグローバルゼーション時代を生きて』河合ブックレット2011年)

  国家権力が使う用語に政治的意図が込められているのは、もちろん、「米朝」だけではありません。思いつくまま、分類して挙げてみます。

 A、本来の意味に基づく言い換えがかなり一般化しつつあるもの。

〇「太平洋戦争」⇒「アジア・太平洋戦争」「十五年戦争」
〇「従軍慰安婦」⇒「戦時(日本軍)性奴隷
〇「集団自決」⇒「集団強制死
〇「安保法制」⇒「戦争法制

B、一部で言い換えられているが、まだ一般化していないもの。

〇「北朝鮮」⇒「朝鮮」「共和国」
〇「琉球処分」⇒「琉球併合」「琉球植民地化」
〇「防犯カメラ」⇒「監視カメラ」
〇「働き方改革」⇒「働かせ方改革

C、ほとんど言い換えられず不適切なまま流布しているもの。

「新自由主義」⇒「自由」とは大企業・多国籍企業にとっての「自由」にすぎず、中小企業や市民にとっては営業・生活がますます圧迫される、弱肉強食推進主義にほかなりません。
「日米安全保障(安保)条約」⇒「安全保障」という言葉は、黒を白と言いくるめる国家権力用語の典型でしょう。適切な言い換えがみつかりませんが、私は必ず「日米安保条約(日米軍事同盟)」と「軍事同盟」を付記することにしています。

 これらを1つひとつ言い換えるかどうかは別にして、国家権力がメディアや学校教育を通じて流布する言葉(用語)には、実態とかけ離れた(あるいは真逆の)権力側の意図が込められていることに常に留意することは最小限必要ではないでしょうか。

 太田昌国氏はまた、先に引用した言葉に続けてこう言っています。

 「だから、われわれの中にもいつのまにか世界を今まで支配してきた欧米的な価値観、それに縛られたものの見方で見ているところが大きい。そう考えると、そうではないところに生まれ育った別な視点を持って自由に歴史を見たり世界を見たりすることができる人、そういう人の言うことは、非常に得ることが多いといえます」(前掲書)

 太田氏はその傾聴すべき人物の1人として、チェ・ゲバラ(1928~1967)を挙げていますが、もちろんゲバラに限るものではありません。

 私たちは、国家権力が流布する用語を無意識・無自覚に使ってその虜になってはいけないだけでなく、国家権力や大国(主にアメリカ)に抑圧・支配されている側(マイノリティ)のものの見方・考え方から積極的に学ぶ努力を意識的におこなう必要があるのではないでしょうか。


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いまこそ日米軍事同盟に反対する沖縄県知事候補の擁立を

2018年05月17日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 沖縄県の翁長雄志知事が15日記者会見し、「ステージ2のすい臓がん」で、切除手術をしたことを明らかにしました。「公務をしっかりこなすための体力の回復がいま一番の眼目」と述べましたが、「見つかった腫瘍が悪性だったことで、与党の一部には不安感も渦巻く。与党県議の一人は『2期目は厳しいのではないか。…』と指摘した」(16日付琉球新報)と報じられています。

 翁長氏のこうした状況に対し、県政与党も野党、そしてメディアも、翁長氏が秋の知事選に出馬するのかどうかに関心を集中させています。しかし、いま翁長氏に求めなければならないのは「知事選出馬」ではありません。「辺野古埋立承認の撤回」を即刻実行することです。

 知事就任から3年5カ月になる今日まで「撤回」を棚上げしてきたことは、すでに重大な背信行為・公約違反ですが、このまま「撤回」を放棄して退陣、あるいは知事選を迎えることは絶対に許されることではありません。安倍政権が7月に辺野古へ土砂を投入しようとしているいま、翁長氏がやるべきことは「承認撤回」以外にありません。

  ところが15日の記者会見で翁長氏は「撤回」について一言も触れませんでした。また、「撤回」について質問した記者も1人もいませんでした(琉球新報、沖縄タイムスの報道から)。

  逆に、いま何が焦点なのかをよく知っているのは政府(安倍政権)の方で、「この日の会見場には、外務省や沖縄防衛局の職員も姿を見せ知事の発言に耳を傾けた。…知事の公約である撤回について政府関係者は『ここまできたら主張を貫くのでは』と警戒を強めた」(16日付沖縄タイムス)といいます。

  ところがこの期に及んでも、翁長氏周辺は「秋の知事選で与党陣営を勝利に導くことを見据えながら、『撤回』(の)…タイミングを計っており、県幹部は『知事の高度な政治判断になる』と指摘する」(16日付琉球新報)とこれまでの姿勢を変えていません。
 知事選に有利な「タイミング」を計っているとは、「撤回」を党利党略に利用しようとするものにほかなりません。

 沖縄タイムスは16日の社説で、「承認撤回も不透明さが増してきた」「仮に翁長氏が不出馬となれば、埋め立て承認撤回の権限行使は難しくなるのではないか、との見方も浮上している」などと「撤回」を疑問視していますが、こうしたメディアの論調が翁長氏の「撤回」棚上げを許していると言わざるをえません。

 「オール沖縄」陣営は翁長氏の「退院会見」を受けてもなお、「与党関係者の一人は『翁長の代わりは翁長。代われる人はいない』と語り、再選へ向け準備を加速させる構え」(16日付沖縄タイムス)、「与党幹部の一人は…『翁長知事の代役は誰も務まらない』と語り、翁長氏の2期目出馬に期待感をにじませた」(16日付琉球新報)といいます。

 退院したばかりで自ら「体力の回復が一番の眼目」と言い、再発も懸念される翁長氏を、なおあくまでも半年後に迫っているの知事選に出馬させようとする「オール沖縄」陣営の姿勢はまったく理解に苦しみます。なぜそこまで翁長氏に固執しなければならないのでしょうか。

  与党県議の一人はこう語っています。「翁長氏以外の候補だと『オール沖縄』の枠組みが維持できない」(16日付琉球新報)。つまり、「保守・中道・革新」がともに推せて選挙に勝てそうな候補は翁長氏しかいない、ということです。

  この発想はまったく逆立ちしていると言わねばなりません。

 選挙の出発点は言うまでもなく政策です。政策協定があって、それを実行する人物を擁立するのが選挙共闘の原則であることは言うまでもありません。

 翁長氏はどうでしょうか。辺野古・高江での公約違反・背信をはじめ、泡瀬干潟などの環境破壊、「沖縄戦」の県庁ロビー展示不許可、夜間中学への補助打ち切り、そして嘉手納はじめ米軍基地の容認(全基地撤去反対)、「離島」や「本島」への自衛隊配備強化の容認・推進。それが翁長県政です。

 その根底にあるのは、「沖縄県は日米安保条約の必要性を理解する立場だ」(3月16日付琉球新報)、「(アメリカと日本・沖縄が)日米安保体制の強い絆で結ばれるのはいい」(同15日付沖縄タイムス)、「日米が世界の人権と民主主義を守ろうというのが日米安保条約だ」(2017年11月20日、在沖米軍トップ・ニコルソン四軍調整官との会談で。同21日付沖縄タイムス)などと公言してはばからない、翁長氏の日米軍事同盟=安保条約容認・賛美の基本的政治信条です。

 こうした翁長氏がほんとうに沖縄県知事にふさわしいのか、日本共産党、社民党など「革新」政党、平和を願う市民勢力は、いまこそ再考すべきではないでしょうか。

 朝鮮半島に新たな動きが出ている今、日米軍事同盟に反対し、米軍基地・自衛隊基地増強を許さず、真に県民・市民の側に立って安倍政権と正面から対決する人物を擁立することが、沖縄の知事選にとどまらない、歴史的な意味を持つのではないでしょうか。

 

 


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「北朝鮮制裁は国民への打撃」ースイス大統領の注目発言

2017年09月07日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 5日スイスのジュネーブで行われた軍縮会議で、北朝鮮に対してアメリカ、日本などから非難が集中したと報じられました(写真中)。トランプ大統領は11日にも安保理で、「石油・天然ガス輸出禁止」を含む新たな制裁決議を挙げようとしています。
 ロシア、中国は制裁強化に賛同していないとされていますが、それは大国間の政治的駆け引きとして報じられています。

 しかし、北朝鮮に対する経済制裁に反対しているのはロシアや中国だけではありません。あくまでも中立的な立場から、制裁は北朝鮮の市民を苦しめるだけだと指摘し、「今こそ話し合いの時」と自ら仲介を申し出ている国があります。スイスとスウェーデンです。

 スイスのロイトハルト大統領(写真左)が4日行った記者会見は、たいへん注目される内容であるにもかかわらず、また軍縮会議と同じスイスで行われたにもかかわらず、「北朝鮮制裁」一色の日本のメディアはほとんど報道しませんでした。その内容はこうです。

 <スイスのロイトハルト大統領は4日、北朝鮮情勢を巡る問題の解決に向け、仲介役を務める用意があると明らかにした。
 大統領は記者会見で、スイス軍は韓国と北朝鮮の国境付近に配備されており、スイスはスウェーデンと共に中立的な外交の長い歴史があると指摘した。中国と米国は責任を果たす必要があるとし、北朝鮮の核実験に「過剰反応」しないよう求めた

 北朝鮮に対する制裁は国民に打撃を与える一方で、核開発を断念させるという目的に対して「あまり多くの変化をもたらさなかった」との見方を示した。

 その上で「今こそ対話の時だ。われわれは仲介役を申し出る用意がある」とし、「今後数週間で米国と中国がこの危機にどう影響力を行使できるかが重要な鍵となる。だからこそスイスやスウェーデンには舞台裏で果たせる役割があると考える」と強調した。…

 「北朝鮮情勢は懸念すべき状況だ。関係国はスイスで交渉し、軍事的ではなく政治的な解決策を見出すことが可能だ」と訴えた。>(4日、ロイター)

 北朝鮮に対する経済制裁は国民生活に打撃を与えるだけである、という指摘は同大統領だけではありません。

 北朝鮮経済の仕組みに精通している元朝鮮労働党幹部(亡命して米在住)・李正浩氏は、制裁によって「金正恩氏が体制維持に不安を覚え、逆に核保有に固執する恐れがある」一方、大量の失業者、食糧難をもたらし、「国民だけが苦しむ結果になりかね」ないと指摘しています(8月14日付中国新聞=共同配信)

 また、富山大学の今村弘子教授(中朝経済)も、「国連安全保障理事会決議による経済制裁は一般の北朝鮮国民には徐々に効いてくるが、金正恩指導部には直接影響は及ぼせないだろう」(8月30日付中国新聞=共同配信)と述べています。

 トランプ大統領と安倍首相が旗を振り、平和的解決に逆行する制裁強化に突き進もうとしているいま、「制裁は国民に打撃を与える」だけ、「今こそ対話の時」というロストハルト大統領の指摘を広く国際世論にしていく必要があるのではないでしょうか。


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「朝鮮学校排除」に対する画期的判決と「ミサイル発射」

2017年07月29日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

     

 朝鮮学校を高校無償化法の対象から排除している国(安倍政権)の措置は違法であるとする画期的な判決が28日、大阪地裁でありましたが、その半日後の同日深夜、北朝鮮が「弾道ミサイル」を発射し、メディアは「ミサイル」一色になりました。

 くしくも同じ日に起こったこの2つの出来事に、私たちはどう向き合うべきでしょうか。

 大阪地裁判決(西田隆裕裁判長)は、こう断じました(判決要旨より)。

 「下村博文文科相は、後期中等教育段階の教育の機会均等とは無関係な、朝鮮学校に無償化を適用することは北朝鮮との間の拉致問題の解決の妨げになり、国民の理解が得られないという外交的・政治的意見に基づき、朝鮮高級学校を無償化の対象から排除するため、高校無償化法施行規則の規定を削除したものと認められる。従って、規定の削除は…違法・無効と解すべきである」

 「国は、朝鮮高級学校が北朝鮮または朝鮮総連と一定の関係を有する旨の報道などを指摘して…朝鮮総連から「不当な支配」を受けているとの疑念が生ずると主張している。しかし、国の指摘する報道などの存在及びこれに沿う事実をもって、適合性に疑念を生じさせる特段の事情があるということはできない

 判決はまさに、「政権の思惑で教育行政をゆがめてはならないことを明確に指摘し、司法の独立性を示した」ものであり、「朝鮮学校が学校教育法に照らし…適法な学校であるとの認識を示しており、ヘイトスピーチなどへの一定の歯止めにもなるだろう」(新藤宗幸・千葉大名誉教授、29日付朝日新聞)と思われる画期的なものです。

 こうした判決内容は、裁判の民主的な進め方によってもたらされたものでした。
 「訴訟の進め方も異なっていた(国の言い分を追認した今月19日の広島地裁判決とはー引用者)。大阪地裁では原告である学校法人の理事長のほか、卒業生や元教員を証人として採用、当事者の訴えに耳を傾けた。広島地裁が、原告が求めた証人尋問を実施しなかったのとは対照的だった」(29日付「朝日」)

 判決後の報告集会で大阪朝鮮高級学校2年の女子生徒が「声を詰まらせながら語った」言葉を、私たちは正面から受け止める必要があります。
 「判決を聞き、自分たちの存在が認められ、この社会で生きていていいと言われた気がした」(29日付「朝日」)

 そんな喜びの中、朝鮮学校元教員の複雑な思いがありました。
 「元教員は北朝鮮のミサイル発射のニュースが流れる度に『また学校が批判される。もう撃たないでほしい』」と願う」(29日付毎日新聞)

 元教員の悲痛な声です。しかし、「北朝鮮のミサイル発射のニュースが流れる度に」、なんの関係もない朝鮮学校とその生徒たちを攻撃しているのはわれわれ日本人(日本社会)であり、それをたきつけているのが安倍政権です(写真右は29日未明)。

 さらに、北朝鮮の「ミサイル発射」の背景には朝鮮戦争休戦協定を無視したアメリカの武力挑発、米日韓合同の軍事行動があります。それを棚上げして北朝鮮を批判するのは道理に合いません。そして、「北朝鮮のミサイル」を口実に在日朝鮮人を攻撃するのは民族差別以外の何ものでもありません。

 大阪地裁判決が直接断罪したのは高校無償化をめぐる安倍政権の違法性ですが、それは北朝鮮に関する偏向報道をはじめ、日本社会の根深い差別性に対する警告ともとらえるべきではないでしょうか。


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