「ウクライナ戦争」の早期停戦が求められる中、林芳正外相とブリンケン米国務長官は26日電話で会談し、「両氏は「日米同盟の抑止力、対処力強化が不可欠だ」との認識を確認」(27日付琉球新報=共同配信)しました。
「日米同盟の対処力強化」とは日米の軍事力強化のことで、ロシアの侵攻に対し、日米同盟すなわち日米安保条約に基づく軍事同盟の軍事力強化で対抗しようとするものです。これは、事態の平和的解決に逆行する本末転倒の主張と言わねばなりません。
なぜなら、「ウクライナ戦争は、「新冷戦の序幕」と呼んでもおかしくない性質を帯びている。この戦争は、米国とロシアという二つの強大国の間の勢力圏争い」(26日付ハンギョレ新聞日本語電子版)であり、「日米同盟の強化」はその「勢力圏争い」を激化させることにほかならないからです。
そもそも、「核抑止力」論が空論であるように、「軍事同盟抑止力」論も、軍拡・覇権競争を覆い隠すレトリックです。今回のロシアの軍事侵攻は、逆にそのことを証明したのではないでしょうか。
見過ごせないのは、今回の事態で軍事力・軍事同盟強化を図ろうとする論調が、日米両政府だけでなく、日本の比較的「リベラル」とみられているメディアにもみられることです。
朝日新聞は25日の社説で、「市民の悲劇を最小限にするため、北大西洋条約機構(NATO)による緊急対応も整えねばなるまい」と主張しています。「NATOによる緊急対応」とは、軍事的対応にほかならないでしょう。
毎日新聞は同じく25日の社説で、「NATOに加盟する東欧やバルト3国ではロシア脅威論が高まっている。防衛体制を一段と強化することが求められている」と述べています。「防衛体制」すなわち軍備を強化せよというのです。
一方、両紙の社説は、「列強国が力で覇を競う旧時代に戻ってはならない」(「朝日」)、「武力によって勢力を拡大しようとする風潮が広がると、民主主義は脆弱になる」(「毎日」)とも言っています。こうした言辞は、軍事的対応、軍事力強化の進言と矛盾しています。この矛盾は、両紙が日米安保条約=日米軍事同盟を支持する立場であることと無関係ではありません。
日本共産党の志位和夫委員長は、25日の新宿での街頭演説で、「主権の尊重」「領土の保全」「武力行使の禁止」を義務付けた「国連憲章」の遵守とともに、「どんな国であれ覇権主義を許さず、平和の国際秩序を築く」ことを強調しました(26日付しんぶん赤旗)。
NATO、日米安保条約は、いうまでもなく「武力行使」を前提にしたアメリカの覇権主義に基づく軍事同盟です。
ロシアの軍事侵攻を批判し、武力行使の一刻も早い中止を要求するのは当然です。同時に、この事態に乗じて軍事力・軍事同盟の強化を図ろうとしている日米両政府にも批判を向ける必要があります。
それが「どんな国であれ覇権主義を許さない」ということではないでしょうか。