東京電力福島第1原発事故の汚染水が海洋放出されて24日で半年。この間も汚染水に関連する事故が頻発しているにもかかわらず、東電は28日、地元住民や内外の反対の声を無視して4回目の放出を開始しました。
原発事故からまもなく13年になるのを前に、京都市内で18日、「チェルノブイリ・フクシマ京都の集い」(実行委員会主催)が行われました。東電の旧経営陣を告訴・告発した福島原発告訴団団長の武藤類子さん(福島県三春町)が、「福島のいまと東電刑事裁判」と題して講演しました(写真左)。
この中で武藤さんは、政府が汚染水の用語を使わないよう市民団体に圧力をかけている実態を報告しました。
それによると、福島の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」が2021年11月に「廃炉・汚染水説明意見交換会」開催する直前、経産省資源エネルギー庁の職員から武藤さん宛てにメールが送られました。
「1点お願いですが、これは前回も指摘させていただいた通り、「汚染水を海洋放出する」という宣伝を地元にするのはやめてください。
明らかな事実誤認です。
我々は「汚染水の海洋放出」ではなく「ALPS処理水の海洋放出」について正しい情報をお伝えするために各所で説明活動を行っています。」
こうした政府による「汚染水」の“言葉狩り”は、「市民」レベルにも広がっています。
2023年1月、福島県三春町の市民団体が「原発汚染水はなぜ流してはいけないのか」というタイトルで小出裕章氏の講演会を企画した際、後援を決定していた三春町やメディア各社に「フリーライター」を名乗る男性から、「「汚染水を流す」という講演タイトルは事実に反するデマだ」と政府の宣伝を引き写したクレームが寄せられました。
三春町は「言論の自由の場を提供する後援だ」としてクレームをはね返しました。しかし、後援団体の1つだった福島テレビはクレームを受ける形で後援を取り下げました。
さらに政府は、福島県内の高校生を対象にした「ワークショップ」や「出前授業」、学校用のチラシ(写真中)でも、「ALPS処理水」キャンペーンを展開しています。(以上、武藤さんの講演より)
都合の悪いことは言葉でごまかす。それは政府、東電の常套手段です。
たとえば、今月7日にALPS処理前の汚染水が建屋の外に1・5㌧漏れる事故がありましたが(写真右)、東電は15日、「協力企業の作業員(の)…人為的ミスが原因」(16日付京都新聞=共同)と発表しました。
「協力企業」といえば聞こえがいいですが、「下請け・孫請け企業」のことです。危険な作業を下請け・孫請けに丸投げしている無責任な実態を「協力企業」という言葉で隠ぺいしているのです。
ALPS処理によって薄まるとはいえ、放射性物質がなくなるわけではありません。海に放出されているのは紛れもない汚染水です。
政府・東電の“言葉狩り”を跳ね返し、汚染水(あるいは処理汚染水)海洋放出の危険性を告発し続けなければなりません。